元勇者提督   作:無し

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離島鎮守府 執務室

提督 倉持海斗

 

海斗「……はぁ」

 

キタカミ「ため息とは珍しいじゃん」

 

海斗「…ちょっと難しい問題に直面しててね」

 

横須賀襲撃、これは拓海の提案で伏せられる事となった

綾波の動きに不可解な点が多すぎることが理由として挙げられたが……何よりも気になるのは「話と違う」と言う言葉

 

海斗(拓海は綾波とどういう話をしてたんだろう)

 

…でも、それを気にしても仕方ない

もっと警戒すべきものは他にある

 

オリジン…朝潮を狙われている

 

海斗(朝潮は今、アケボノが常につく事でガードを固めている、だけど…正直、負担も大きいだろうし、本当に守り切れるのかと言う不安もある)

 

たった一回、巻き込まれたと言うだけで…

 

キタカミ「なーんか、言えないことあるのはわかんだけどさぁ…」

 

海斗「…動けないなら、動いてもらうしかないか」   

 

キタカミ「…何?どういう意味」

 

海斗「Linkを引き入れる、あそこの戦力は喉から出るほどに欲しい…」  

 

キタカミ「…それを迷ってただけ?」

 

海斗(朝潮の護衛も、頼めば誰かは引き受けてくれるはずだ、だけど、少数で一騎当千の実力者じゃないと次そうなった時、無事に帰れる保証はない)

 

問題は、どう丸め込むか、そしてどう朝潮の安全を確保するか

綾波の目的もハッキリしない今…

 

海斗(あれ…?)

 

朝潮がオリジンを宿したのは知っていて当然だけど、朝潮からオリジンを抜き出した事は綾波も承知のはず

 

…東雲の意味を信じてもいいのか

 

そこだけはまだ不安だ、そこも含めて深読みを利用されている可能性がある

 

なら、よりLinkの力は欲しい

きっと、最後の防波堤になってくれる…

綾波と深い仲の人達ならきっと綾波を万が一の時に止めてくれる

 

海斗(…上手く、いけばいいけど…)

 

 

 

 

 

 

Link基地

青葉

 

青葉「っ……う…?」

 

The・Worldが落ちた時、私の意識も奪われていたらしい…

固い椅子にもたれかかって寝ていたせいで体が痛い

 

…まあ、この目覚めにももはや慣れたものだ

 

青葉「ん……ん〜〜っ!!」

 

伸びをするとポキポキと関節が鳴る

…目覚めは最悪、か…だけど

 

青葉(あれが、司令官の初ログインの時…か…)

 

少し、気分はいい

優越感だろうか

 

…部屋の外が騒がしいのを感じとり、部屋を出る

 

あの時以来ほとんど顔を合わせていないせいで…少し出づらいけど

 

 

 

 

ガングート「本当にここを捨てるのか!?」

 

狭霧「捨てるんじゃありません、目的を果たすまでの一時的な引っ越しです」

 

グラーフ「…目的は、なんだ?理由も目的も無く引っ越すのは納得いかん」

 

狭霧「離島鎮守府に移り、本格的な戦争に備えます」

 

タシュケント「…国の指揮下に入るつもりはないんじゃなかったのかい…!」

 

…どうやら、これは…

 

朧「国の傘下になるわけじゃないよ、ただここから移って安全を確保する為に…」

 

タシュケント「誰の安全なのか、教えてくれるかな…!?」

 

朧「……」

 

リシュリュー「それに、神鷹達は?あの子たちは置いていくの?それとも連れたいから危険な戦場に…さらに、神風たちとはかなり険悪な中って聞いたけど」

 

狭霧「向こうでも学問は学べます、それにあの人達も今は味方となった人に手を出すような真似は…」

 

リシュリュー「そうじゃないでしょ?」

 

狭霧「……連れて行きます」

 

グラーフ「…私は行かないぞ」

 

ガングート「私もだ、ここに残る」

 

朧「……待って、2人とも…アタシ達もまだ整理しきれてない事情があるんだよ…!」

 

タシュケント「それを先に話すのがスジなんじゃないのか」

 

狭霧「わかっています…しかし、難しい問題なんです」

 

ガングート「私たちに優劣はない、私たちに上下関係はない…違うか…!?」

 

朧「そうだけど…」

 

グラーフ「なら先にそれを話せ、それから考える」

 

狭霧「…最近、横須賀に2度襲撃がありました、その両方に綾波さんが加担している可能性が…あります」

 

ガングート「何?」

 

グラーフ「……綾波はこの国が嫌いだと言っていたな」

 

タシュケント「横須賀って言えば、綾波が囚われてた場所?」

 

リシュリュー「恨みを晴らす為…」

 

狭霧「そんなわけないでしょう…!綾波さんがそんな感情に呑まれるわけがない事くらい知っていますよね…!?」

 

グラーフ「わかっている、だが、綾波の事を知れば、知るほどに…綾波に起きたことが許せない気持ちもある、その基地が潰されても私たちは何も思わないぞ」

 

朧「……綾波は次に、離島鎮守府に居る朝潮を狙うかも知れないと言っていたそうだよ」

 

リシュリュー「その子と綾波の関係は?」

 

狭霧「平たく言えば、担当医と患者」

 

ガングート「狙う理由はなんだ」

 

朧「……言いたくない」

 

ガングート「何故だ」

 

朧「…疑うのが間違ってるとは思う、だけど、それでも疑わざるを得ない…これはそれだけの事情があるんだ」

 

タシュケント「ここまでいって今更伏せる理由って何?」

 

…朝潮さん、と言う事は…

 

青葉「アウラ」

 

全員が一斉にこちらを向く

 

タシュケント「青葉…また、キミも知ってるって事」

 

青葉「いいえ、私の発言はただの憶測ですが…アウラが絡んでるんですよね…?」

 

リシュリュー「アウラって…何?名前?誰なの?」

 

ガングート「いや…アウラ、アウラか…そう言うことか、まさか、オリジンが出てくるとはな…」

 

タシュケント「知ってるの?ガングート」

 

ガングート「…そうか、タシュ、お前は知らなくても無理はない…私は要人の警護などの任務も多かったが故、聞いた事があるのだが…詰まるところ、オリジンだ」

 

グラーフ「オリジンだと…!?」

 

ザラ「知っています、ここに来る契約の時に聞かされました」

 

リシュリュー「…それは、私も聞かされてる」

 

タシュケント「…うん」 

 

狭霧「やはり、聞かされていますか」

 

グラーフ「日本に舞い降りた女神の存在も、うっすらとだけ聞かされた…要するに、綾波と同レベルの危険な存在だろう」

 

狭霧「危険、ですか…」

 

狭霧さんがクツクツと笑う

悲しそうに

 

狭霧「…綾波さんが危険に見えるんですか…?」

 

グラーフ「それは…」

 

狭霧「私には、オリジンも危険には見えません、ただ、神として存在したが故に…愚かな人間が手を伸ばし続け、今にも地上へと引き下ろされそうな…!」

 

リシュリュー「…信用してくれなくていい、オリジンがどんな危険なものかは聞いていないけど、もし情報や、その物を手にした場合、即刻持ち帰れと言われてる、でも、私はそうはしない」

 

タシュケント「右に同じ、そんな事をして何もかもを失うような真似…」

 

グラーフ「…皆、要求されてるんだな、オリジンを」

 

狭霧「当然でしょう、オリジンを掌握することができたら、世界を手にしたような物、誰もが欲しがる…ネットワーク掌握の鍵」

 

リシュリュー「そんな名を持ってるような子が、その基地に…?」

 

グラーフ「……裏切りを警戒する理由もわかったし納得した…だが、私は…」

 

朧「アタシ達は…別にアウラの、オリジンの流出そのものは恐れていない…」

 

ガングート「本当か…!?」

 

狭霧「なんで食いつくんですか」

 

ガングート「……オリジンを入手した場合、莫大な報奨金がもらえることになっている…日本円にして、数百億…」

 

タシュケント「それで?オリジンが欲しいってこと?」

 

ガングート「…金は誰でも欲しい物だろう」

 

狭霧「…朝潮さんは、オリジンと一度融合しましたが、綾波さんによってネット世界へと還されました」

 

リシュリュー「…じゃあ、オリジンには関係ないんじゃ…」

 

狭霧「いいえ、誰もそうは思わないでしょう…あの子には、残り香があるんじゃないか…みんなそう考えてるんですよ…だから、捕まえてなんでもする」

 

グラーフ「なるほどな…ようやく目に見える形で尻尾が現れた…皆躍起になって探し出したくなる」

 

狭霧「事情を言えば、互いが怪しく見える、互いを疑うことになる、軋轢を生む…だから、伏せたかった」

 

朧「朝潮はアタシの、ずっと前からの仲間…絶対にそんな目に合わせたくない」

 

狭霧「いいですか、私たちは…仲間なんです、お互いを信用したい、だけど…オリジンを手に入れたら、それは…世界が崩れる」

 

ガングート「だから秘匿していた、私たちに余計な手出しをさせない為に…か」

 

グラーフ「…ガングートは置いていこう、こいつは金に釣られる」

 

ガングート「な…!」

 

タシュケント「同意だね」

 

ガングート「違う!金に釣られるわけじゃない!…それだけの金があれば、もう戦争のない場所にみんなで移れるんじゃないかと…」

 

リシュリュー「そんなメルヘンな頭してないでしょう…?」

 

ガングート「メルヘンだと…!?」

 

青葉「…あの」

 

狭霧「なんでしょうか」

 

青葉「……朝潮さんの顔は割れていません、なら…方法はあります」

 

朧「どんな方法ですか」

 

青葉「先にみんなに連絡するんです、この人を朝潮と呼べ、と」

 

朧「そっか、偽物の朝潮を作って…でも、警護は…」

 

青葉「…ランダムに行う形を取るべきだと思います、偽物も本物同様に守るテーブルを作ります」

 

狭霧「それなら…しかし…」

 

朧「それでいこう、みんなで、ここを一度出よう」

 

狭霧「…そうですね、改めて、離島鎮守府に行く人と、嫌な人、ハッキリさせましょうか」

 

 

 

 

 

神通の家

軽巡洋艦 神通

 

神通「それ、文字見えてるんですか?」

 

綾波「いいえ、しかし何を入力してるかくらいわかります」

 

綾波さんはパソコンの画面も見ずに、私と向かい合ったまま何かを入力し続けている

 

かつてもそうだった、同じだ、同じ事をしていた

 

綾波さんはパソコンにモニターをこちらに向け、私に文字列を見せる

 

[決行は先延ばし、ナノマシンがおかしいです]

 

…これが、綾波さんの抜け穴

視覚情報は全て筒抜け、リアルタイムでモニタリングされている為に、見ずに文字を打ち込んだり書いたりする事で本来の目的を秘匿し続けるという荒業をこなす事で私達は裏切りを続けられる

 

しかし、本来なら今日、ある実験を行う予定だったのだが…

 

神通(先延ばし、か…悪いことの前触れのようですね……)

 

神通「!」

 

…ざわつく様な感覚

 

神通「姉さん達が、帰ってくる」

 

綾波「なんですって?」

 

神通「此処に、戻ってきます」

 

何もおかしい事はない、私達の家だ、帰ってくるとはおかしい事じゃない、だけど…このタイミング

 

神通(まさか、勘づかれて…!)

 

綾波「仕方ありませんね」

 

神通(転移…!?)

 

 

 

 

 

 

 

川内「…気づかれたか…感知系の神通が居るんじゃ、厳しいとは思ったけど」

 

那珂「暗殺は無理かなぁ…」

 

川内「…見て、これ」

 

那珂「[決行は先延ばし]…なんの?」

 

 

 

 

 

 

綾波「…ここなら、勘づかれない」

 

夕立「な、何が起こったの?…ここど…ど、どこ…?」

 

神通「……どこかの、島の様ですね」

 

瑞鶴「……」

 

綾波「無人島です、つぎの潜伏先が用意できるまでここに潜みます」

 

神通「…外国では無く?CC社にアメリカに用意させる話は?」

 

無言で綾波さんは私に向かって2度瞬きをする

否定の合図

 

…それもそうだ、監視カメラ、盗聴器、今の様なやり取りも完全に不可能になる…

 

綾波「それも良いですが、私はアメリカでも嫌われ者ですから」

 

神通「…そうですか」

 

綾波「さて、と…野宿は好きですか?星空が綺麗で楽しいですよ」

 

夕立「…虫が多いっぽい…」

 

神通「……それは勘弁願います」

 

綾波「貴重な食料ですよ、虫も」

 

夕立「えっ」

 

神通「……」

 

気の所為だ、と思いたい

 

綾波「さて、数日楽しく暮らしましょう?」

 

…気が遠くなる

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