元勇者提督 作:無し
無人島
駆逐艦 夕立
夕立「…お腹、減ったっぽい…」
神通「たとえ地獄の底の底に落ちたとしても、こんな物、食べたくはありません」
…目の前に差し出された虫の素焼きを眺める
夕立としては、虫は死んでも食べたくない…
綾波「そうですか?魚を取るにも…用意してた銛などは使えなくなってまして…あむ」
カブトムシの幼虫の様な虫、の串焼き…を、綾波が頬張る
綾波「案外美味しいんですよ?…うん、お塩だけでも残っててよかった」
この無人島はどうやら綾波が開発していて、なんらかの理由で放棄した島らしく、雨風を凌げる環境は整っていた
だけど、食料事情はお察しの通り
綾波は誇らしげに油までは精製してあるので
と言っていた…けど、それは…どうなんだろう
その気になれば買いに行けるはずだし、凄さがわからない…
夕立(こ、これ、単純に節約生活に付き合わされてるだけじゃ…?)
神通(この果物は大丈夫…まともなものが食べたい…)
綾波「2人ともちゃんと食べましょうよ…体が持ちませんよ?瑞鶴さんはたべてるのに」
夕立「えっ」
神通「…嘘だ…」
本当に食べている…
瑞鶴さんは物言わぬ人形の様な状態、だからと言ってこうもためらいなく食べるなんて…
夕立(…うう…多分このまま2日3日はこのまま…)
…せめて形のわからないものにして欲しい…
夕立「…ぁぐ……むぐ…」
一つ、口に無理やり含む
神通(うわ、食べた…)
夕立「……美味しくはないっぽい…」
綾波「そうですか?…うーん、普通な美味しいと思うんですけど」
神通「……絶対私は食べませんよ」
綾波「イナゴの佃煮食べたことありますよね?アレだと思えば…」
神通「おぞましいです」
綾波「でも佃煮の瓶が冷蔵庫にありましたよ」
神通「食べるのは姉さんと那珂ちゃんだけです…!」
綾波「……多分あなたがよく食べていた兵糧丸に練り込まれてると思いますけどね」
神通「…あり得ませんよ」
綾波「わかりませんよ?良質なタンパク質も含まれてますし、案外鶏肉の代わりに…」
神通さんが串焼きの串を綾波に投擲する
綾波「あっぶないですね…止めなかったら首に刺さってましたよ…」
神通「そんなに食べたければ直接食道に捩じ込もうと思いましたが…」
綾波「…そう嫌がらないでください、結局文化の問題なんです、海を越えれば猿や羊の脳味噌、カメレオンにモモンガ、犬や猫まで食べる国もある、ウサギやカエルは最近日本でも…食べなくなったのか食べる様になったのか、どっちでしたか」
夕立「…うぇ…」
綾波「虫も少し日本を出ればポピュラーなものですよ」
神通「一般的か、は関係ありません、私は気持ち悪いので食べたくありません」
綾波「はいはい、お好きにどうぞ」
3日後
神通「………」
夕立(順調にやつれていってる…)
綾波「なんで拷問受けてるみたいになってるんですか、ほら、作りましたよ、お望みの兵糧丸…」
神通「…!」
手のひらサイズの団子を神通さんが口に含む
綾波「…数はありますから、焦らずに」
神通「……ふぅ…ようやく空腹が落ち着きました…」
綾波「空腹も何も、栄養失調そのものじゃないですか、どうでしたか、お味は」
神通「…美味しかったです」
綾波「虫で作りましたけどね」
神通「ごほっ!?だ、騙しましたね!?」
綾波「騙すも何も、あんな話の後なんですから、承知の上で食べたんですよね?」
神通「それは頭が回ってなかったからで…虫入りと知っていれば食べるわけが…」
夕立「羽とか脚とか見えてたっぽい」
綾波「これは見間違いだ、気のせいだと自分を騙し騙しで食べたわけですから…ね?」
神通「……」
綾波「で、食べた感想は」
神通「…多分、栄養も豊富で、味も申し分ないかと…」
綾波「ならなかった、虫ですけど」
神通「ぐ…!」
夕立(…すでになんの躊躇いもなく串焼き食べてたけど…よく考えたら夕立の感性が麻痺し始めてるっぽい…)
綾波「私が出しているのは全て毒を持たない、もしくは毒があっても除去したものです、安心して食べていいんですよ?」
神通「……その様で」
綾波「見た目で敬遠するのは理解できます、しかし、今はそれを受け入れなくてはならない時です」
神通(あなたのせいでしょう…)
夕立「日本に帰ったらお寿司が食べたい…」
神通「アメリカでTボーンステーキを食べてみたいです」
綾波「どちらの望みも叶えましょう、しかし、そうするには…新たな拠点が必要か…」
神通「寝泊まりだけここでして頻繁にワープする、ではダメなんですか?」
綾波「それはできませんね、私の力には制限がある、何度も何度も連続転移はできないんです」
夕立(…してたような…?)
神通(めちゃくちゃにしてたはず…)
綾波「そ案外私の力には弱点があるんですよ、言いませんけど」
神通「……そうですか」
夕立「これからの方針は?」
綾波「ま、静観の方針を貫きます、どうせ居場所はバレてるだろうし、用事があれば向こうから近づいてくる……いや、もう来てますか」
装甲空母鬼「ハイ」
綾波「仕事の内容は」
装甲空母鬼「離島鎮守府ヲ、落トセ…ト」
綾波「…いきなりですねえ、いや、とうとうなのでしょうか」
夕立「…落とせる?」
綾波「消し飛ばす事はできるはずです、でも落とすとなると…不可能に近い、あそこにある戦力はトップ中のトップばかり、もちろんザコもたくさんいますけどね?」
神通「要点だけお願いします」
綾波「防衛戦は楽なんですよ、おそらく全方位しっかり固めてある…上も、下もね」
夕立「上も下も?」
綾波「そうするのが、アヤナミの役目ですから…私と交戦する可能性は真っ先にに考え、真っ先に可能な対処を徹底的にやる…可能なら捕縛したい…という考えのはず」
神通「どうするんですか」
綾波「…女帝に伝えなさい、楽な仕事ではない、と」
装甲空母鬼「ハ」
綾波「大量の戦力を持ってすれば…無理ではないかもしれない…4人ではまず無理…となると…」
綾波がニヤニヤとこちらを見る
夕立「キモ…」
綾波「自分の実力を知るいい機会ですよ、2人とも」
神通「…そうですか」
…失敗する前提の作戦を立てている
綾波はそう言っている
そして、その顔はなんとも楽しげだった