元勇者提督   作:無し

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記録 不意打ち

The・World R:1

Δサーバー 水の都 マク・アヌ

重槍士 青葉

 

青葉「…っ!?」

 

ログインした直後、背筋を舐めるような視線に振り返る

 

ミア「……」

 

青葉「だ、誰ですか!?」

 

…びっくりした、紫のネコPC…

……いや、この配色

 

青葉「…貴方は……ミア…?」

 

ミア「へえ?ボクを知ってるの?……ジロジロ見て悪いね、ほら、キミ、珍しい子を連れてるから」

 

ミアがリコリスさんを指す

 

青葉「…見えるんですか」

 

ミア「もちろん、キミにはこの可愛い女の子が見えないの?…目に見えなくても、そこにいるとわかってるなら、見えてるのと一緒だけどね」

 

青葉「……」

 

ミア「ありがと、良いもの見せてもらったよ…キミとはまた合うような気がする、何となくね」

 

ネコの斬刀士…

 

スタスタと私の前から歩いて去っていくミア

…気をつけたほうが、いい…

 

あのミアは、きっとエンデュランスさんの肩にいたあのネコなのだから

 

ミア「じゃっ、また、どこかで」

 

青葉「……ええ」

 

……

 

青葉「…ずっと見てたみたいですね、トキオさん」

 

トキオ「……ああ」

 

トキオさんが物陰から出てくる

私を見つけて、ずっと様子を伺ってたのか

 

青葉「ここはタウンの中です、安心してゆっくり話を…」

 

トキオ「もう、その手には乗らないぞ…!」

 

青葉「…トロンメルさんの事は、命令の行き違いだったんです、私達は貴方を攻撃する指示は受けてなくて…」

 

トキオ「じゃあこの時代で何をするつもりなんだ!時間データをめちゃくちゃにするつもりなんだろ?!」

 

青葉「…なんの話ですか」

 

青葉(一応、言われてるのはカイト復活の阻止、それだけ…)

 

トキオさんはこちらを睨みつけたまま剣を構える

 

青葉「…話がわからない人じゃないはずです、もう少し冷静になってください…!」

 

トキオ(彩花ちゃん!今ならいけるんだよね!?…よし、わかった!)

 

青葉(…目線、そしてあの頷き……やはり後方でモニタリングしてる誰かがいる、糸を引いてる誰かが…)

 

青葉「!」

 

トキオ「なっ…これは、結界!」

 

シックザールの結界…

青いバトルフィールドに閉じ込められる

 

青葉(なんで!?私はこの機能使えないのに…!ポザオネさん…は、この時間は居ないはず…別に誰かが居る!?)

 

トキオ「やるって事か…!やってやる!!」

 

青葉「ッ…待ってください!この結界は私が展開したものじゃ…」

 

トキオさんが詰め寄り、斬り掛かってくる

 

青葉「く…!」

 

前よりやはり強い…

剣戟を槍でいなすものの、完璧に防げるわけじゃない…

 

防具をつけてるのにこの削られ様…

 

青葉(モルガナ…!私のステータス全てに干渉した…!?)

 

ふとHPを見た時にはもうギリギリ、急いで回復アイテムを使うがその隙に追撃

 

青葉「ぅぐ…」

 

トキオ「斬烈破!!」

 

青葉「ああぁぁっ…!」

 

一方的…

私が今まで優位に立ててたのは、装備のおかげだった?

…武器も防具も、最低クラスの効果しか発揮できなくなった途端にこうもコテンパンにされるのか

 

トキオ「よし!…オレ、もしかしてめっちゃ強いかも!」

 

…違う

 

不安になってるだけだ

 

今も、怖い、痛いし、辛いし

 

戦いたくない

 

消極的で、不安だから

 

青葉(…落ち着いて…大丈夫だから)

 

…斬られれば私も痛いんだ

相手も痛いんだ

 

だから、戦いたくない

 

リコリスさんが結界を無視して転送してくれるのを期待している

リコリスさんならどこかへ逃してくれると信じてる

 

でも、今回はそうもいかないらしい…

リコリスさんは動く気配がない

 

青葉(…ステータスも何もかも、徹底的に弄られてるんだろうな)

 

私にできるのは、これだけだ

 

槍の中程を片手で持ち、全身を回しながらの斬撃…

 

トキオ(バックステップでかわして…回転の隙を!!)

 

青葉(詰めてくるはずだ、だから、これが効く)

 

槍を手の中で滑らせ、石突の部分を握り、柄で顔面を打ち抜く

 

トキオ「がッ…!?」

 

青葉「……初回でやるべきじゃないかもしれませんね、マジックスキルと合わせて二、三回転する事で射程を誤認させるのも…」

 

倒れたトキオさんに近寄る

 

青葉「…なんにせよ、私の勝ちです…」

 

トキオ「まだ、オレは戦える!!」

 

飛び起き、こちらに剣を向けられる

 

青葉「…痛いですよ」

 

トキオ「え?」

 

青葉「お互いに、痛いんです、辛いんです…勝ちだ、などと言って誤解させたかもしれませんが…別に私は負けてもいい、ただ、もうやめませんか?こんなの、間違ってる」

 

トキオ「…お前達が黄昏の騎士団や時間データをめちゃくちゃにしたんだろ!?」

 

青葉「彼らは、The・Worldを破壊しようと…」

 

地鳴りのような音…

 

青葉「な、なに…!?」

 

この感じ、ドタドタとした感じ…リアルだ!

 

トキオ(スキあり!!)

 

リアルの手がFMDにかかった瞬間、斬撃を連続で受け、HPがゼロになる…

 

青葉「っ…!」

 

…不意打ち

そして、この脳への衝撃…

 

青葉「…許さ…な…」

 

 

 

 

 

数刻前

 

 

 

リアル

離島鎮守府 波止場

 

天津風「……嫌な風ね」

 

島風「え?」

 

キタカミ「確かに、心地いい南風ではないね…今日の哨戒班誰だっけ?」

 

阿武隈「南は不知火ちゃんと龍驤さんの2班です、東西は今日は哨戒はありません」

 

キタカミ「私の独断になるけど、即座に撤収させて…東西に1班ずつ、北に2班、見張りを立てて……いや、北は偵察機のみにしようか…」

 

阿武隈「…どうしたんですか?」

 

キタカミが天津風の頭を撫でる

 

天津風「子供扱いしないで…」

 

キタカミ「天津風の勘はなんとなく当たりそうだからねぇ…」

 

天津風「…それは、悪い意味?」

 

キタカミ「んー…備えあれば、憂なし……ともいかないか、南風は何も運んできてない、だけど南は安全とも限らない」

 

阿武隈「キタカミさん…?」

 

キタカミ「阿武隈は、ここ以外に帰るところはある?」

 

阿武隈「…一応、両親も健在ですし…」

 

キタカミ「私もね、一応はあるよ……でもまあ、天津風も島風も、アメリカ連中も…ここが家なわけだからね」

 

島風「…来るんですか?」

 

キタカミ「匂いはしない……来ない、そう信じたい…でも…何か、天津風が何かを感じるように、私も何か…ものすごく嫌な何かを」

 

      

 

 

 

 

食堂

駆逐艦 春雨

 

春雨「……」

 

朝潮役は基本食堂に集まり、護衛の人間以外の目も有るようにする

 

これは指示されたわけではないが、暗黙の了解だ

 

私は医務室に引きこもりたいくらいなのだが

 

タシュケント「ここのお菓子は美味しいね、ウチじゃあお菓子作りなんて誰もしないもんだからさ」

 

春雨「本土ならスイーツ類も有るでしょう?」

 

タシュケント「田舎なんだ」

 

春雨「へぇ」

 

紅茶を口に含む

…なんとも、落ち着いて飲めないのは嫌なものだ

 

春雨「……あ、アヤナミさん」

 

アヤナミさんは私に一礼し、離れた席に座り、飲み物と菓子を頼む

 

タシュケント「…見れば見るほど、綾波にしか見えないな…」

 

春雨「…そうでしょうね」

 

綾波さんは今どうしているのか、なぜLinkから消えたのか…

それはまるでわからない

 

春雨(…満潮さん達とも仲、良いなあ…)

 

アヤナミさんの交友関係は意外と広い

誠心誠意接し、相手のことを思いやる姿勢を曲げたことがないからこそ、相手も受け入れてくれるもう1人の綾波さんの事を別の存在として見てくれる

 

如月さんと満潮さんは宿毛湾時代に綾波として交友関係を持っていたからか、他の人たちよりも仲がいい…

 

タシュケント「楽しそうだね、少し混ざりにいかない?」

 

春雨「……そうですね」

 

席を立ち、3人に近寄る

 

満潮「そうそう、最近は山雲も落ち着いててね、この前まで野菜を使ったお菓子には猛反対してたのに」  

 

如月「「お野菜に砂糖をつけるのはダメですよ〜」って、笑顔でにじり寄ってきてて…結局お砂糖は使えなかったの」

 

綾波「でも、このキャロットケーキ、すごく出来がいいですよ…うーん、この感じ、甘味はかぼちゃと玉ねぎ……あ、あとお米ですか?」

 

満潮「そうそう!頑張って甘くする方法を探して作ったんだけど、材料を軽くバターで炒めて甘味を出す事でね」

 

如月「下拵えに時間がかかるから、2人だったらできなかったけど…」

 

綾波「吹雪さん達も手伝ってくれてるんですね」

 

…菓子についてか、私はあまり詳しくないな

 

タシュケント「そう言えば、ここのアヤナミも眼帯をしてるんだね」

 

春雨「ものもらいらしいですよ」

 

タシュケント「もの、貰い?」

 

春雨「ものもらいというのは簡単に言えば瞼が腫れる事で…」  

 

かちゃり

フォークを皿に置く音が響く

 

綾波「ごちそうさまでした」

 

そういってアヤナミさんが立ち上がる

 

春雨「……あ…あれ…?」

 

体が、固まって動けない

 

タシュケント「どうかしたのかい」

 

春雨(この感じ、この恐れ…あれ、なんで…この、危険を伝えてるかのような感覚は、何…)

 

綾波「あれ、あそこにいるのは誰でしょう」

 

アヤナミさんがキッチンの方を指す

満潮さんと如月さん、そして近くにいたタシュケントさんも…

アヤナミさんに意識を向けていた人が全員そちらを向く

 

恐怖で固まった私を除いて

 

春雨(アヤナミさんが、笑った…?)

 

一瞬だった

瞬きの間に、何が起きたのか満潮さんと如月さんが崩れ落ち、次は私達へと…

 

春雨(違う…これはアヤナミさんじゃない!)

 

因子に意識を向けようとした瞬間、額と胸部に打撃を受け、そして顎を打ち上げられ意識を揺さぶられる

 

タシュケント「えっ」

 

この護衛は、役に立たなかったな

気づいた時には、すでに遅い

 

 

 

 

 

綾波

 

綾波「ふぅ……制圧完了、かな」

 

パンパンと手を打ち、汚れを払う

 

血も流れてないからキタカミさんに匂いで気取られることもないだろうし

万事順調か

 

綾波「あーあー、聞こえますか?夕立さん、進めてください、神通さんはちゃーんと、教えた通りによろしくお願いします」

 

神通『はあ…』

 

夕立『本当にうまくいってるの…?』

 

食堂に居たのは春雨さん達含め12名

非戦闘員4名も含め、同時に全滅させた

 

…が、唯一、予想外が起きてしまった

 

綾波「にしても、なぜここにいるんですか、タシュケントさん…貴方だけじゃない、Linkは何故ここにいる」

 

…ついてないなぁ

 

楽な仕事ではなくなった

 

たった今、難易度が跳ね上がった

 

しかし、誰かに感知される前にこの食堂を制圧できたのは非常に大きい

 

次に来たやつも、即座に…

 

アヤナミ「綾ちゃん…」

 

綾波「おや、意外と早かったですね、あと20分は遊べるかと思ってたのに」

 

アヤナミ「……」

 

アヤナミが私にゆっくりと歩いて近寄ってくる

 

綾波「勝てると思ってるんですか」

 

即座に、迷わずにカートリッジを起動する

改二カートリッジを、起動して…

 

綾波(…亀裂……カートリッジに入ってた小さいヒビがどんどん大きくなってる)

 

…耐久性に難がある

あまり使いたくない、だけど

 

相手は警戒すべき3人のうち1人…

 

計画を破綻させるわけにはいかない!

 

綾波「さあ、楽しみましょうか…!」

 

互いに蹴り

ハイキック、脛のあたりが互いに交叉する

 

アヤナミ「…なんでこんな事を…綾ちゃん…!」

 

綾波「私をそう呼ぶのをやめなさい、不愉快ですよ、偽物風情が」

 

アヤナミ「!」

 

アヤナミの表情に動揺が見て取れる

 

一歩近寄り、姿勢を低くし、床に手をついたまま…

 

綾波(一撃で仕留める)

 

アヤナミ(蹴り…!)

 

突きのような蹴り…のモーションを見せ、アヤナミに防御姿勢を取らせ、アヤナミの背後に短距離の転移

 

アヤナミ「っ…!」

 

アヤナミの肩を掴み、そのまま背中を蹴り砕く

 

アヤナミ「ぁがっ…」

 

綾波「やはりその顔は、苦しんでいる時こそ輝く…!」

 

アヤナミがテーブルや椅子を巻き込み、壁まで転がっていく

 

綾波「…アハッ…さて、他の面々も来たようですね」

 

島風「!なにこれ!」

 

天津風「綾波…!」

 

綾波「今は基本的に東雲と名乗ってるんですが、まあ、どうもどうも…キタカミさんとアケボノさんは別の方に行ったか」

 

島風「別?」

 

手を島風さんに向ける

黒いモヤが手に集まる

 

天津風「な、なにあれ」

 

綾波「さあ、パーティータイムです」

 

島風さんにモヤが飛び、まとわりつく

 

島風「えっ…や、やだ!これって!嘘!やだ!やだヤダヤダヤダ!!」

 

天津風「島風!ちょっと!島風に何を…」

 

天津風さんが血を流し、倒れる

 

島風「……」

 

天津風「え…?」

 

島風さんの手に握られた剣に、ベッタリと天津風さんの血が付着する

 

綾波「さて、Enjoy(楽しんで) Ciao(また)

 

そう言って転移する

 

天津風「う、うそ…島風…」

 

島風「……」

 

島風は天津風に目もくれず、どこかへと行こうとする

 

天津風「……だめ、行かせない」

 

立ち上がり、天津風が島風の進路を防ぐ

 

島風「……」

 

天津風「安心して、島風……私が止めてあげる」

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