元勇者提督   作:無し

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overwhelm

離島鎮守府近海

教導担当 キタカミ

 

キタカミ「チッ…何この数…!なんで接近に気づかなかったの!!見張りの機体は!?」

 

加賀『それが…突如現れて…!』

 

赤城『ついさっきまで間違いなく居なかったんです!』

 

…北に大量の深海棲艦が集中してる、か

最悪にも程がある

この方向は輸送船も通るから罠が極端に少ないんだ

 

キタカミ「被害報告!!」

 

加賀『不知火さんの班は全員手首を負傷し撤退、空母艦載機による攻撃のみの状況で…』

 

キタカミ「状況は要らない!被害だけ言って!」

 

赤城『死者、重症者は居ませんが手を狙われています!艤装の操作をできなくするのが狙いです!』

 

キタカミ「手…?深海棲艦がそんなことできるなんて…」

 

加賀『神通さんです!』

 

キタカミ「神通…!?」

 

あのバカ、また敵方についてるのか…!

 

赤城『どうやら操られているようです!』

 

キタカミ(チッ…仕方ないか!)

 

前方へ視界をやる

 

キタカミ(1000?もっとか、赤城達をすり抜けてもう島のギリギリまで迫ってきたこいつらを…)

 

どう仕留めるか

 

跳弾を利用した攻撃?一発の弾が敵を何体も仕留められる?

 

馬鹿を言うな、敵はあり得ないほど多い、頭を使え、敵の砲撃のタイミングを…

 

キタカミ「ッ!?」

 

一斉射

馬鹿げた数の深海棲艦が、島めがけて一斉に砲撃する

 

方向だけを狙った、対象物の存在しない砲撃

 

キタカミ(防げない…)

 

私が防げない、唯一の…

 

爆発音があたりに響く

島全体が大きく揺れる

 

キタカミ「…あ…」

 

建物に何発も砲弾が直撃する

 

これだ、こう言う作戦に、私はとことん弱い

2体や3体ならこれでもどうにかなる

だけど…この大群で1秒の狂いもなく同時に砲弾を撃たれると…私には防げない

 

私は無力…か?

 

いや、そんなこと、許せない

 

キタカミ「ああぁぁあぁぁああぁぁッ!!」

 

腰の主砲全てにカートリッジを突っ込む

 

頭が、焼き切れそうだ

 

腰に下げた主砲を全てばら撒き、そしてそれから砲弾が射出される

 

キタカミ(全部…全部全部全部!!止める!!)

 

カートリッジの効果で放たれた砲弾が全て散弾になり、近くの深海棲艦から順々に沈めていく

 

キタカミ(ここで全滅させてやる!弾が足りなくても!関係ない!!)

 

キタカミ「冷静になれ冷静になれ冷静になれ…」

 

ばら撒いた主砲が砲撃ができない高さまで落ちるまで12.7秒

そして深海棲艦はどのタイミングで砲撃してくるか

 

主砲の角度、砲撃のタイミング

 

それを全て読み取れ

そのタイミングを失うな、焦って何もかもを失うな!

 

キタカミ(最初の砲撃から既に15秒…16秒…なんでまだ撃ってこない?タイミングを合わせるにしても遅すぎ…!)

 

キタカミ「そうか!しまっ…」

 

主砲が砲撃できない高さまで落ちるのにあと7秒…

その7秒間、深海棲艦は砲撃をしない…

 

私の攻撃のタイミングを奪うために

 

キタカミ(私の手のうち全部バレてるのはわかってた…だけど、深海棲艦が指揮役もなくこんな行動…!)

 

でも、それなら艤装をワイヤーで巻き取ってもう一度…

 

キタカミ(待って、これ、そうか…もしこれが綾波の仕込みなら?…例えば私なら…もし、綾波のようになんでもできるなら…)

 

拳銃を抜き、指に引っ掛けて回して振り向かず背後に向けて発砲する

 

キタカミ「……だと思ったよ」

 

手首を押さえられ、銃口を逸らされる

 

綾波「素晴らしいですねえ、タイミング、予測した位置、何もかも完璧…逸らさなければ脳幹まで行ってましたよ」

 

キタカミ(最悪すぎ…!あの雑魚どもも止められない!綾波の相手もしなきゃならない!どうすれば…)

 

今の手持ちの武器はこの拳銃一つ

巻き取りを始めたら動きが制限される、なら別の…

 

綾波「接近を許したのは間違いでしたね、いや、このワープで好きに近寄れる時点で私の負けはありませんが」

 

手首を離され、急に体が自由になる

 

キタカミ「っ…ぁが…ごっ……ぐ…」

 

腹部に膝蹴り、そして背中に肘打ち

顎に蹴り上げからのかかと落とし…

ワープを使いながらの超高速インファイト…

 

キタカミ(この…っ……呪殺遊戯で…!いや、この攻撃の仕方、意識を奪おうとするだけで軽い…!)

 

綾波「お察しの通り、その技は通じない…ね?」

 

回し蹴りがこめかみを打ち砕き、地面へと投げ出される

 

キタカミ「…か……あぁ……」

 

…仲間を、みんなを、守れない

 

綾波「もう立たないでください」

 

キタカミ「あああぁぁぁぁッ!!」

 

両肩を踏みおられる 

 

キタカミ(…こ、の……惨敗……か…)

 

 

 

 

食堂 

駆逐艦 天津風

 

連装砲くんの砲撃に合わせながら島風に接近を試みるものの…

 

間合いに踏み込んだ瞬間回転斬りで接近を拒まれる

 

天津風「…島風、すぐ元に戻してあげるから!」

 

…でも、砲撃は一切当たらないし、近づけない

 

天津風(…わかってる、痛いのは嫌だけど、痛くないまま止められるなんて思ってない…)

 

島風「……」

 

左右へと体を振りながら島風が高速で接近してくる

 

天津風(……やるしか、ない!!)

 

天津風「連装砲くん!!」

 

天井を撃たせて瓦礫を崩落させる

 

島風「!」

 

瓦礫の位置を把握するために島風の動きが止まった…

 

天津風(今しかない!)

 

天津風「いっけえええええ!!」

 

島風に飛び付き、そのまま転がりながら押し倒す

 

天津風「捕まえた!!連装砲くん!!」

 

そのまま、私ごと…

 

島風「!!」

 

何発かかってもいい!撃たせて、ダメージを蓄積させて気絶させる!

 

天津風「ぐ…!」

 

砲弾が私の腕に直撃する…

痛みで腕の力が緩まないように、歯を食いしばり、力を込め続ける

根比べだ…絶対に負けない…絶対に!!

 

島風「っ…!」

 

天津風「島風ぇ!!」

 

何発も何発も、私達に砲弾が当たる度に身体が痛む

 

綾波「よく頑張りますねえ?」

 

天津風「綾波…!?」

 

瓦礫の上に腰掛け、私を見下ろす綾波…

 

綾波「覚えてますか?台湾遠征の時、留守番してる満潮さんや青葉さん達と一緒にお茶した時のこと」

 

天津風「…覚えてるわ…!」

 

…あの時は、戦うことなんて考えてなかった

 

綾波「……また、してみたいものです」

 

天津風「え?」

 

…力が、緩んだ…

 

天津風「ふぐっ!?」

 

島風が拘束を抜け出し、私の腹部に掌底を叩き込む

 

天津風「かはっ…ぁっ…か…」

 

綾波「思ったより深く入ったみたいですねえ?…息ができてませんよ、ちゃあんと、息を吸わないと…死んじゃいますよ?」

 

天津風「か…ひ……ひ……」

 

あ、ダメだ、息ができない

涙が出てきたのに、息が吸えない、もう肺の空気を全部吐き出したのに

 

お願い、息をさせて、死んじゃう…

 

綾波「呼吸困難で死ぬか…ふふ、まあそれでもいい」

 

目の前が暗い

嫌だ、島風を助ける前に死にたくない

 

息ができない

 

怖い、暗いよ…

 

 

 

 

 

 

綾波

 

綾波「さて、ここもケリがついたか……おや?」

 

食堂の壁に大穴が空く

 

神通「……」

 

AIDAで作られた軽巡棲姫の面をつけた神通さんが壁を蹴り砕いて入ってくる

 

綾波「おや、良いところに」

 

神通「……」

 

綾波「隠れてる人を1人残らず見つけ出して叩きのめしなさい」

 

神通「はい」

 

綾波「さて、隠れてるといえば…そこで隠れてる春日丸さん」

 

春日丸さんがゆっくりと姿を表す

 

綾波「乱心だ、と言いますか?それともついてきますか?」

 

春日丸「……綾波様」

 

綾波「さあ、求めなさい、あなたの主人を」

 

春日丸「……今の私は、主人に使えるだけの走狗ではありません」

 

綾波「ほう?」

 

春日丸「…其方に倒れておられるアヤナミ様を御守りする事…それが今私に求められていること」

 

綾波「……」

 

春日丸「たとえ!この命に代えても!!」

 

春日丸さんが艦載機を取り出す

 

綾波「この至近距離、閉鎖空間で艦載機?…舐めてるんですか、相手は近接戦闘のエキスパート、私相手にそれが通じると…?」

 

春日丸「……では、ご覧に入れましょう…!」

 

春日丸さんが艦載機を二機、両サイドに飛ばす

 

そして、本体は私に向けて…

 

綾波「…成る程、あなたらしい」

 

春日丸さんの作戦は至極単純

艦載機は攻撃目的じゃなく回収目的

 

自身を犠牲に時間を稼ぎ、艦載機達はこの場にいる15名を回収する…

 

綾波「…なるほど、素晴らしい」

 

あの艦載機も戦闘用ではない、後方支援特化に改装してある

ワイヤー付きのフックを射出し、遠距離の人間も回収できるようにしている…

 

そして何より素晴らしいのは

その仕事の精度を落とさず、此方を注視しながら迫り続ける春日丸さんと言ったところか

 

綾波「ですが私にそんな行動を見せて許されると…」

 

足を引き、足刀蹴りを直接叩き込む

 

綾波「!!」

 

…足を、掴まれて、動きが…

この蹴りはただの蹴りではない、人の身体くらいなら貫ける威力があるのに…

 

蹴りは確実に貫いた感触があるのに…

 

護衛棲姫「かはっ……あ…!綾波、様…!」

 

綾波「……なるほど、命を削ってなお、私を捕まえることを選びましたか……素晴らしい…!!」

 

これではまるで動けない、姫級に捕まっては動けない…!

 

綾波「全員回収されましたか…しかし、何人生き残れるやら」

 

建物に砲弾が当たり、大きく揺さぶられる

 

綾波「屋内にいては、そろそろ倒壊して全滅ですよ?」

 

護衛棲姫「…大丈夫…ですよ……ね…?」

 

安心しろと、そう言うように、笑ってみせる

 

…今にも意識が潰えそうな筈なのに

 

綾波「……強い人だ」

 

 

 

 

 

 

軽巡洋艦 神通

 

ガングート「居たぞ!!」

 

アケボノ「神通さん…!」

 

グラーフ「コイツが敵か!固まって朝潮を守ることを優先しろ!!」

 

…朝潮?

 

神通(朝潮さんの姿は見えない……いや、そうか、アケボノさん達が朝潮さんの役…事前情報にあったが、よくわからなかった…でも、そう言うことでしたか)

 

此方へと飛んでくる砲撃を紙一重でかわす

 

ガングート「な…あの面で見えてないんじゃないのか!」

 

アケボノ「視えるんです!あの人は!」

 

グラーフ「有利だと思うな!目が見えようと見えまいと敵が危険であることは変わらん!!」

 

神通(……良い闘気です、鍛錬を積んでいることがわかる)

 

ガングート「消えっ…なッ!?」

 

那珂ちゃんの消えるような移動…そして、私の蹴り

 

ガングート「ぐ……!」

 

刀を盾にして塞がれたが、刀は刃が砕け散ったか

 

グラーフ「ガングート!!」

 

ガングート「心配は要らん!!…だが、コイツは…」

 

グラーフ「ああ、今の動き…倒れるかのように深く沈み、そして大幅な移動…まるで消えたようだったな…」

 

神通(…綾波さんに教えてもらって、形にはしましたが…やはり、まだ不完全ですね、動きを理解されているようではなかちゃんほどではありません)

 

脚をサッカーボールを蹴る前のように振り上げ…

 

ガングート(なんだ…?この、恐れは…)

 

グラーフ「何か……ヤバいぞ!!」

 

床を蹴る

 

蹴られた部分が破壊され、抉れ、前方に散弾のように射出される

 

神通(……少し、力が入ってしまいましたね…死んでなければ良いのですが……おや)

 

砂埃が晴れ、視界が戻る

 

大和「大丈夫ですか…!?」

 

長門「ここは我々に任せてもらおう!朝潮は先に行け!」

 

アケボノ(流石に深海化はまだ伏せるしかないか…!)

 

アケボノさんが逃げ出す

 

ガングート「お前らは…日本の戦艦か!」

 

神通(大和さんと長門さんが艤装を盾にして守った、か…ここの戦艦はタンク役が多いですね…)

 

コンコンと爪先で地面を叩き…

 

長門「大和!」

 

大和「はい!」

 

電光石火の如く迫り、2人の艤装に蹴りを放つ

 

長門「ぐッ……!!」

 

神通(守ってばかりか)

 

怒涛の攻め…

蹴る、蹴る

何度も蹴り続ける

 

神通(戦いというものを理解していない、この程度では…)

 

神通「!!」

 

体を大きくのけぞらせる

イナバウアーのように体をのけぞらせ、そのまま背後にバク転の要領で下がる

 

体制を整え、面に手を当てる

 

AIDAの面が大きく裂けていた

 

刀傷…

 

長門「つい最近な、我々も接近された時の対抗策として、帯刀することを許可されたんだ」

 

大和「持つのは一部のメンバーのみですが!」

 

2人が切先を此方に向ける

 

ガングート「……せっかくだ、私もまぜろ」

 

大和「え?」

 

長門「貴様の刀は折れただろう」

 

ガングート「…刃物はこれ一つじゃない」

 

ガングートさんが此方へとナイフを向ける

 

ガングート「奥の手…ってな」

 

神通(…近接戦闘を専門とする私に近接戦闘で挑んでくるとは…)

 

踏み込もうとするものの、すぐに後方に跳ぶ

 

先ほどまでいた地点に大穴が空く

 

大和「…刀だけではありませんよ」

 

神通(これは遊び甲斐がありますね)

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