元勇者提督   作:無し

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出戻り

離島鎮守府

綾波

 

綾波「…結局、此方の被害は深海棲艦502体…」

 

寄ってきたイ級を撫でる

 

夕立「…完全に懐いてるっぽい」

 

綾波「当たり前でしょう?太平洋棲鬼のところから来たのですから……彼女らは深海棲艦でありながら下級の深海棲艦を見下している、故に部下として戦闘を強要するだけ」

 

神通「…貴方は違う、と」

 

綾波「ええ、あなたたち同様に手厚く扱っています、深海棲艦が自身の存在を維持するのに必要なエネルギーを供給したり、ね」

 

夕立「……それにしても、これだけの被害で…」

 

神通「大勝利、と言えるでしょう」

 

綾波「ええ…はぁ……Linkがここに来てるとわかってしまったからつい気合が入ったのと…何より、計算が狂ってしまいましたねえ」

 

夕立「本当なら負け戦、が…大勝利っぽい」

 

綾波「ええ、その通りです、しかし…神通さんは危うく死にかけてましたが」

 

神通「……」

 

綾波「ガングートさんの使うナイフは私が仕込んだものです、本当なら毒薬も仕込むんですけど、あの人は手入れを怠っていた…お陰で、増殖で助かりましたがね」

 

神通「不覚を取りましたが、もう有りません」

 

綾波「当たり前でしょう、同じ手に2度引っかかるのは間抜けと言うんです、あなたは阿呆ですか」

 

神通「っ……」

 

綾波「特に、3対1で闘ったこと自体は構いませんが、相手の力量を見誤ったのは宜しくない…その眼は飾りか」

 

神通「……申し訳、ありません」

 

綾波「夕立さんもそうです、簡単に囲まれてしまって…撤退してくれなければ負けてましたよ?…時間をかけすぎです、そもそもあなた達2人は共に行動するべきでしたね」

 

夕立「……ぽい」

 

綾波「…説教はここまでにします、それと、あなた達2人とも、戦闘能力は著しく上昇しています、それについては称賛します」

 

神通「…そうですか」

 

夕立「……」

 

綾波「主に、艤装操作、その点については他の艤装へ換装したときにも役に立つ技術です、ある基地では艤装は体の一部のようなもの、と教えられるそうですが、道具は道具です、使うコツを探しましょう、そして身体に覚えさせる」

 

薬瓶から錠剤を取り出し、噛み潰す

 

…力があふれる感覚

アケボノさんとアヤナミ、あの二人の私室から見付けたものだが、これは良い…

 

綾波「…さ、て……久しく、まともな食事ができそうですね…自家発電機も1ヶ月は動かせる燃料がある、夕立さん、倉庫の備蓄を確認してきてくれますか、神通さんは調理場の片付けを」

 

神通「…貴方は」

 

綾波「私は……」

 

…そこに佇んでいるだけの、瑞鶴さんを見る

 

綾波「これを始末します」

 

歩みより、首に手をかける

 

神通「っ!…本当に殺すんですか…!?」

 

綾波「ええ…もう役に立ちません、居なくてもいい…元より、イニスの能力が敵方にあるのが厄介という理由での確保でしたから」

 

瑞鶴さんの首がへし折れ、首が異様な角度に曲がる

 

血が吹き出し、肉が裂ける

 

綾波「さて、神通さん、早く片付けてください、お食事を出しますから」

 

夕立「わーい、お肉が食べられる?」

 

綾波「残ってればですけどね」

 

神通「……」

 

綾波「どうしました」

 

神通(……)

 

綾波「まさか、今更怖気付きましたか」

 

神通「…いいえ、片付けます」

 

 

 

 

横須賀鎮守府 応接室

提督 倉持海斗

 

火野「こうしているとふと思う、昔は人と話すのにも(タウン)の一角の薄暗い路地やゲートの前の人混みを気にしなかった、いつからだろうな、人と話す時に場所や周りの人間を気にするようになったのは」

 

拓海が周りにいる護衛の人たちをチラリと見る

 

海斗「それだけ君が凄くなったって事だよ」

 

火野「だとすれば、あまり気分の良いものではないな…」

 

海斗「それより、急に来たのに、受け入れてくれてありがとう、本当に助かったよ」

 

火野「それについては気にすることはない、しかし、よく逃げ延びたものだ」

 

海斗「…そうだね」

 

海斗(…アヤナミ達の事を含めて色々言いたいけど、ここでいうのはリスクがあるかな)

 

海斗「ところで…」

 

火野「ああ、負傷者についてだが、致命傷を負ったものはいない、しかし、未だ意識を失ったままの者も居る」

 

海斗「…アヤナミ、青葉、春日丸…他にも、Linkのメンバー2名…」

 

火野「既に把握しているか」

 

海斗「……」

 

火野「離島鎮守府は完全放棄、元々敵の拠点を此方に利用しているだけだ、仕方あるまい」

 

海斗「…僕達は、どうなるの」

 

火野「宿毛湾泊地に戻ってもらう、あそこには別の部隊が入る予定だった、が…結局手付かずになっている」

 

海斗「……わかった」

 

火野「…しかし、出撃は控えてくれ、仕方ないとはいえ、燃料も弾薬も持ってこれなかったのだろう」

 

海斗「…そうだね」

 

海斗(動きが制限されてる以上、綾波の動きを探ることは難しいか…ハワイのことも気になるのに…)

 

状況は停滞気味だったとはいえ、もう既に動き出した

 

一度動き出した以上…止めるのは簡単じゃない…

 

 

 

 

医務室

秘書艦 アケボノ

 

アケボノ「失礼します」

 

夕張「ああ、アケボノさん、どうも」

 

アケボノ「…その…どうですか、容体は」

 

夕張「春日丸って子も青葉ちゃんも傷一つない、こっちのアヤナミもね…でも、キタカミさんとこのアヤナミは力を使いすぎてる、目を覚ますまでには時間がかかるかなあ…」

 

アケボノ「他2人はすぐに目を覚ます?」

 

夕張「それは断言できない」

 

アケボノ「……」

 

やはり、私も戦えば良かったか

 

夕張「それと、Linkのメンバーの残りだけど、こっちのガングートって人はさっき目を覚ましたんだけど…」

 

アケボノ「けど?」

 

夕張「暴れたから眠らせた、完治もしてないのにね…タシュケントって人はさっき出て行った……ねえ、linkとはいつ合流したの?」

 

アケボノ「今日です、合流して数時間で襲撃に遭いました」

 

夕張「それは…御愁傷様、どうにも一枚岩って感じしないわけだ」

 

アケボノ「…と言うと」

 

夕張「心の底から信用しあえるくらいの関係にならないと…このままじゃ厳しいんじゃないかなって」

 

アケボノ「……」

 

夕張「…命懸けの仕事である時に、仲間が信用できるかどうかは凄く大きい要素よ」

 

アケボノ「ええ…そうですね……どうにも、ここに居ては耳が痛くて仕方ない、失礼します」

 

 

 

実験軽巡 夕張

 

夕張(ふぅ……なんとか出て行ってくれたか…)

 

ノートパソコンを開き、メールを打ち込む

 

夕張(……このデータは重要、絶対に…綾波に届けなくちゃ)

 

夕張「っ」

 

首元に冷たい感覚

目線を下ろしても何が当てられてるか見えない

 

息を吸い込むと同時に、皮膚が裂ける感覚

 

夕張「…誰…」

 

アヤナミ「……私です」

 

夕張「…なんで、起きて…」

 

アヤナミ「綾ちゃんと…繋がってますよね……話してください…」

 

夕張「……」

 

呼吸を整え、状況を整理する

 

ゆっくりと咀嚼して飲み込むように…

 

夕張「…私は、何も喋らないわ、今ここでベッドに戻るなら…っ」

 

鋭い痛みが走る

 

アヤナミ「ふざけないでください」

 

夕張「……ふざけてない、確かに貴方はその気になれば私を殺すはず、だけど…私に手を出すという事の意味を知ってる以上、貴方は私を殺さない…違う?」

 

私を殺したら、情報も何も手に入らない

そして、綾波の強襲が成功した今、自信に向けられている目もわかっているはず

 

夕張「ここで私を手にかけたら、とうとう居場所はなくなる」

 

アヤナミ「…私が、居場所なんかに固執すると思ってるんですか…私は独りでも…」

 

夕張「…あなたは、暖かい場所に長居しすぎたのよ」

 

アヤナミの腕を掴み、立ち上がって組み伏せる

 

アヤナミ「っ…!」

 

夕張「…無茶したわね、その体で…音もなく背中を取ったのは凄いと思うけど、私に組み伏せられるようじゃ…ね」

 

アヤナミ「…!」

 

アヤナミがポケットに手を突っ込む

 

アヤナミ「…あ、あれ…無い!?な、無い!」

 

夕張「…ああ、これ?」

 

改二カートリッジを取り出して見せる

 

アヤナミ「…何故…」

 

夕張「連絡は受けてたから」

 

カートリッジを机に投げ捨てる

 

夕張「……今は、休んだほうがいい、よく眠って」

 

薬液の入った注射器を向ける

 

アヤナミ「一つ…!」

 

夕張「…何?」

 

アヤナミ「一つだけ、教えてください…!……綾ちゃんは…どう言うつもりなのか…!」

 

夕張「……」

 

「どういうつもり」か…

私が知ってるのは、計画のなかではほんの一端だ

 

だけど、私は…それから読み取ったデータで、想像している

 

夕張「これは、私の憶測だけど……綾波は、貴方と離れてから…貴方の知ってる綾波から一度だって変わったことはない…んじゃないか、って思う…何も確信はないけど…」

 

アヤナミ「……そう、ですか…」

 

アヤナミががくりと項垂れる

 

夕張「……薬は要らなかった…か」

 

体力も何もかも限界を超えた体をよく動かしたものだ

 

夕張(…寝かせて、私の止血と掃除…はあ…仕事増えちゃった…)

 

夕張「…ま、いいか、これも世界の為だし!」

 

…そう信じてるから、私は…

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