元勇者提督 作:無し
宿毛湾泊地
秘書艦 アケボノ
…ここに戻ってくるのはいつぶりか
ここを出て以来、手付かずの基地…
建物の前に全員を集め、説明の為に前に出る
アケボノ「えー、では、本日からここが…」
アイオワ「本土ってところよね!?」
ワシントン「違うわよ、ここは四国」
ガンビアベイ「で、でも、電車も車も通ってるし…」
アケボノ「あの…」
アイオワ「これでお休みの日に遊びに行ける!!」
ワシントン「
アトランタ「でも、漸く酒が飲みに行ける」
アケボノ「……聞いてもらえますか」
アイオワ「あれ、ガングートは?飲み比べしたかったのに」
ワシントン「怪我人はみんなまだ横須賀よ」
フレッチャー「あんなに強い人たちがああなるなんて…
ワシントン「う……でも、今の私達なら傷くらいなら付けてやれる…!」
アケボノ「すみません、いいですか?」
アイオワ「
アトランタ「
ワシントン「
アケボノ「……」
地面を、軽く踏み鳴らす
ワシントン「
アイオワ「
アトランタ「
アケボノ「……チッ」
強く、踏み鳴らす
地面が唸るように揺れる
アケボノ「話を聞け」
ワシントン「ひっ…」
アイオワ「な、何…!」
アケボノ「
ワシントン「…は、はしゃいで悪かったけど…」
アケボノ「分かったなら、返事は一つ、「はい」だけですよ、ワシントンさん」
ワシントン「…は、はい…」
アケボノ「よろしい、さて…話を戻します、この宿毛湾泊地が我々の拠点となります、が…燃料や艤装の類は皆さんが装備していた分を除いて逃げる際に破棄してしまいました、故に暫くは防衛に専念し、戦闘時も無駄弾も抑えるように」
アイオワ「ってことは…お休みも…」
アケボノ「ないですよ、そんなもの…追撃戦に備えなくてはならないのに何故そう呑気なのか、理解に苦しみますね」
ワシントン「oh…」
アケボノ「それと、負傷者は横須賀から動かしていない為、実働できるのはここに居るメンバーのみであることを重々理解してください、今が一番狙われるタイミングであることもね」
アヤナミがダウンして逃げの手を失った今、向こうはいつどんな時でも仕掛けてこられる
…少なくとも、今は気を抜いてはならない…
狭霧「すみません、発言しても良いでしょうか」
アケボノ「…どうぞ」
狭霧「合流したばかりで私のことを知らない方もおられると思うので、名乗らせていただきます、私は狭霧、Linkのメンバーです、つまり…綾波さんと深い仲にあったものです」
一瞬のどよめき
狭霧「…そんな私には、おそらく今は追撃は難しいのではと思います」
アケボノ「何故」
狭霧「改二を使用した形跡があるからです、綾波さんの改二というのは体に大変な負担を伴います、なので…昨日の戦闘で改二を乱用したとなると相当に消耗してるはず…」
アケボノ「だから、追撃を警戒する必要はないと?」
狭霧「ええ…いや、間違いなく無いわけではありません、しかし横須賀からここまで撤退できています、追撃するなら体勢の整う前にやるべきです、となると今は最低限の警戒班を残して人員を一度休ませるべきです」
アケボノ「……それについては私が判断することではありませんので、一度この場での返答は控えます」
…短時間の戦闘とはいえ、精神に対する影響は大きい
休暇は必要、か
アケボノ「それでは、部屋などについて…」
執務室
アケボノ「説明なども一通り終わりました、荷物もほとんど破棄してきたので…皆荷解きもない為にやる事をなくしている様子で…」
海斗「ありがとう、本当なら僕がやらなきゃいけないんだけど」
アケボノ「多忙である以上仕方ないと思います、それと、此方が現在想定されている哨戒ルートになります」
海斗「うん……よし、わかった、ありがとう」
この部屋も、ずいぶんと久しぶりだ
海斗「……アケボノはどう思ってる?あの襲撃」
アケボノ「…どう、とは」
海斗「僕にはあそこから出て行かせることが目的だったように思えるんだ、誰かを殺すためでも、何かを奪うためでもなく」
アケボノ「…ちょっと待ってください、なんなんですかいきなり…」
海斗「……僕1人じゃ答えを出すのに手間取っちゃってね、わからないんだ、綾波の真意が」
アケボノ「……」
海斗「横須賀で相談しようにも、あそこは盗聴器も監視カメラあるし、何より人の目もある…」
横須賀はスパイ防止の為の監視網がある
内部の人間による盗聴器などがある
だから、秘匿したい話をするには向かない…
海斗「だから、こうして落ち着いて話せる環境で話したかったんだけど」
アケボノ「…確かに」
確かにそうではある
綾波ほど化け物じみた力を手にしていると、目的は逆に絞りやすい
綾波ならその気になれば攫う相手は一瞬で攫える
殺すならその場で殺せる
…その気がなかった、ということになるのか
あんな大軍を率いる意味とは何か
アケボノ「確かに私にも、そうは感じられました、しかし、目的は追い出すことだったとして…その理由は何か」
海斗「あそこを使いたかった、何かの為に」
…何の為だ?
決して手狭ではない島だ、だが…
ミサイル基地でも作るか?飛行場か?
だとしたら何のためだ?
そんなに回りくどい事をする理由は何だ
綾波は自身が盤上に立つ事を望むタイプだ
自身がゲームマスターになる事を好むタイプではない
積極的に干渉する、そして自身が場を動かす事を好むタイプだ
だからわざわざ軍隊を引き連れながら、戦火の火蓋を自身が切って下ろす真似をした
アケボノ「……私には、わかりません」
まるで、私の中にある想像は…綾波という存在のイメージからまるでかけ離れている
一線を引いた位置に立ち、そこから指示するだけの人間に綾波がなるのか?…本当に?
海斗「僕は、綾波は誰かの元に降ったんだと思う」
アケボノ「……東雲、ですか」
かつて私が名乗った、名前
海斗「うん、それも潜入という形で…綾波は何か、もっと大きな何かを解決する為に、敵についたフリをした…それが昨日まで、僕は深海棲艦なんだと思ってたけど…」
アケボノ「…違うと?」
海斗「多分、深海棲艦にも関わりのある何かだと思う…深海棲艦なら綾波も深海棲艦の姿になると思う、それに大湊の夕立、呉の神通…佐世保の瑞鶴、この3人も深海棲艦にはなっていなかったって報告があったしね」
アケボノ「……」
果たして、それが判断材料とするのに正しいのか
海斗「結局は憶測だよ、綾波が本心から全て壊そうとしてるのかもしれない…でも、本当はどうなのか…」
離島鎮守府跡地
綾波
綾波「どうですか?私はちゃ〜んと、やりましたよ」
携帯を見下ろしながら喋る
ヴェロニカ『その様ね』
綾波「太平洋棲姫さんは聞こえてますか?あなた方2人とも、私との約束を守るんですよ?」
太平洋棲姫『…イイダロウ』
綾波「ったく、称賛の言葉ひとつないとは…あなた、そのうち背中を刺されますよ?」
太平洋棲姫『貴様ニカ?』
綾波「いいえ、あなたの部下にです、だって私があなたをやるなら真正面から行きますから」
太平洋棲姫『チッ…貴様ノ戯言ニ付キ合ウ暇ナドナイ』
綾波「あ、信じてませんね?…ま、いいや、それと…これ、今送ったファイル、その設計図通りに組み立てお願いします」
ヴェロニカ『これは?』
綾波「艤装ですよ、深海棲艦用のね…カートリッジを取り込めるパーツなどを追加してあるので、基礎戦力が大幅にアップします、費用も…まあ、この程度」
太平洋棲姫『…人間ノ金ニツイテハワカラン、安イノカ高イノカ』
ヴェロニカ『かなり、安いわね』
綾波「あなた達が用意するのに困らない程度に抑えてあげたんですよ、もう少し強化すると莫大な費用になりますけど?」
太平洋棲姫『…貴様ハ本当ニ気ニクワン…ナンダソノ見下シタ態度ハ…!』
綾波「あなたが私を見下すからですよ、対等でありたいのなら…」
太平洋棲姫『対等ダト!?フザケルナ!貴様ノ様ナ下等ナ存在ガ…』
綾波「私の存在無くして…Cubiaの誕生はあり得ませんよ?」
太平洋棲姫『貴様…!』
綾波「改めて私たちの目的を再確認しましょう?私達の目的はこの世界を無比なる力であるCubiaのものとする事、違いますか?その為に私の力がいる、違いますか?」
太平洋棲姫『……』
綾波「仲良くしましょうよ、あなたが深海棲艦のトップなんでしょう?お行儀よくしないと部下に愛想を尽かされますよ?」
ヴェロニカ『煽るのはそこまで、今後の方針を聞かせてもらおうかしら』
綾波「何も変わりません、ここからは実験を重ね、確実な召喚を成せる時に全てを進める」
ヴェロニカ『果たしてそううまくいくのかしら』
綾波「私は天才ですよ?そのくらい簡単です、それに…良いものを持ってますから」
眼帯を外す
ヴェロニカ『…なるほどね、それが?』
太平洋棲姫『ダミー因子、トイウ奴カ』
綾波「ええ、素敵でしょう?」
…計画は、狂いなく
私の世界は、歪みなく
綾波「ではまた」
道はもう見えている
あとは切り開き、進み続けるだけ