元勇者提督 作:無し
横須賀鎮守府 医務室
実験軽巡 夕張
夕張「そういえば…そう言えばというか、元を辿ればなんだけど、川内達は謝りに来たんでしょ?」
キタカミ「…謝る?」
川内「まあ、ね…」
那珂「神通姉さんが寝返って、その…」
2人がガングートさんを見る
キタカミ「…そういや神通とやり合ったんだっけ?長門達が言ってたかな」
夕張「神通相手に辛くも勝利…って聞いてるけど…それが本当ならかなりの実力者ね」
川内「…マジ?神通に勝ったの?」
那珂「信じられない…」
夕張「え、知らなかったの…?じゃあなんで来たの?」
川内「Linkからね、神通を見たらすぐに連絡するように頼んでたんだけど…なんでも神通と戦って1人意識不明って聞いたから…」
那珂「でも、まさか神通姉さんを倒せるくらいに強いなんて…Linkってやっぱり猛者揃いだね…」
川内「うん…個人技は勿論チームでの動きも叩き込まれてる、すごい集団だよ」
キタカミ「なんかやけに詳しいね」
川内「演習何度かしてるし」
那珂「前も負けたっけ?」
キタカミ「…国を救った英雄だとか、取り上げられてるのは知ってたけど…」
川内「あー、らしいね、本拠地不明の多国籍軍Linkって」
夕張「へえ、そうなんだ」
川内「それより…その人、まだ目ぇ覚まさない?」
夕張「ああ、うーん…両腕にヒビとか色々ダメージは負ってるけど、カートリッジの効果で最小限に抑えられてはいるのよね、でも、一番重いダメージは背中とここ、こめかみの部分」
キタカミ「頭はわかるけど背中?」
夕張「そう、欧州に輸出された艦娘システムってさ、春雨ちゃんとかが使ってるような第二世代の手術が必要なタイプなの、要するにナノマシンを入れないやつ、無理矢理艦娘にしたら問題になるかもしれないから、ね?」
キタカミ「…第一世代のナノマシンだって、許可なく入れてたでしょ」
夕張「まあね、私は無関係だけど……あの時はまだ体内にまで侵入されるとは思ってなくて」
キタカミ「それは良いから、続きは?」
夕張「…背中に接続ユニットがあるの、まあ、見てもわからないように体内の皮膚と背骨の間に埋め込まれてる感じ…で、そこを攻撃されると体内にもろにダメージがいくわけ、筋肉のガードが薄いから…」
キタカミ「成る程、第二世代にとっての弁慶の泣き所か」
夕張「というより、文字通りの急所ね、見ての通り」
チラリとガングートさんを見る
夕張「体内へのダメージっていうのは思っている以上に大きなものでね、神通も多分全力を出していなかったから気絶で済んでるけど、その急所に全力の蹴りが入ったら…死んでたわ」
川内「……こめかみと背中、か…神通なら片方でも殺せる」
夕張「だから、多分…」
ガングート「加減、だと…?」
キタカミ「おお、起きた」
夕張「初めまして、ガングートさん、体調はどう?」
ガングート「ぐ…そんな事どうでも良い…加減していたというのは、本当なのか…!!」
夕張「た、多分…」
キタカミ「神通なら十分殺せるだけの技量がある、だから間違いないと思うね」
ガングート「…クソッ!!」
横になったまま、ベッドを殴りつける
ガングート「私は、まだ弱いままじゃないか…綾波…!」
ガングートさんがゆっくりと起き上がる
ガングート「……む…なっ…!な、何をしてるんだお前ら…」
キタカミ「へ?…うわ」
夕張「うわっ…川内、那珂、一応毎日清掃してるけど、流石に…」
2人揃って土下座は…
川内「この度はウチの妹がご迷惑をおかけしました!」
那珂「した!」
ガングート「…はあ…?な、なんだ?日本ではこういう風習でもあるのか?」
キタカミ「…まあ、一番深い謝罪を伝える時かな…」
ガングート「…そ、そうか…」
キタカミ「っていうか、神通の事で謝られるなら私にもその言葉があるべきなんじゃないの?不知火達が怪我してるんだよ?」
川内「ああ、その…そっちの謝罪は曙に任せてるから…」
キタカミ「いや、そういう問題じゃないでしょ」
ガングート「……謝罪は要らん…だから、貴様と勝負がしたい!川内!」
川内「…は?」
ガングート「手加減をした相手とやり合って負けた屈辱…更に強いものを打ち負かして手に入れる達成感でしか払拭できん!」
夕張「いや、加減した神通に負けてるならどう足掻いても川内には勝てないでしょ」
ガングート「ぅぐ…」
キタカミ「まあ、その話はまた今度にしたら?アンタ自身が強くなってから挑めば良いわけだし」
ガングート「…まあ、そうか……逃げるなよ川内!」
川内(え、受けたことになってる…)
宿毛湾泊地
駆逐艦 朧
曙「まっ…待てって言ってんでしょうがあぁぁぁぁッ!」
アケボノ「アンタ達!アイツを逃したら容赦しないわよ!!」
漣「あいあいさー!」
潮「ごめんね!曙ちゃん!」
曙「だから逃げないって!あ、コラ!撃つな!当たるでしょうが!!」
アケボノ「2、3発当てても死なないからとりあえず当てなさい!」
曙「アンタねぇ!!」
龍驤「朧は混ざらんでええんか?」
朧「…帰っては来たけど、アタシが原因で曙が離島を抜けたわけだしね」
龍驤「ほーかほーか、まあええわ、うちも参加するでェ!」
曙「龍驤っ…アンタまで!!」
龍驤「曙のアホ捕まえて縛り付けて!二度と離れられんくしたるわ!!」
曙「だから呉から宿毛に移るって言ってるでしょうがあぁぁぁぁッ!」
離島鎮守府跡地
綾波
夕立「はあ……白米にお肉にお味噌汁…幸せっぽい…」
神通「…そうかもしれませんね」
綾波「たかが食事で喜べることは本当に素晴らしい事です…さて、次の計画を伝えますよ」
夕立「ご飯の最中っぽい」
綾波「聞き流しても構いません、やるのは私ですから」
神通「標的は」
綾波「特に居ません、民間人の混乱が狙いだとか」
夕立「民間人?」
綾波「戦争の仕方、教えてあげますよ」
神通「戦争の、仕方…ですか」
綾波「私がやった取りにやれば良い、味方でも敵でもない、ただの一般人のように入ってきて、気取られる前に制圧する…なんなら爆弾でも毒ガスでも良い、そうすれば大混乱を起こせる」
神通「つまり、民間人を無差別に…殺す、と?」
綾波「それでも良いんですけどね、無意味なことをするのは好きじゃない、そういう事件があったという報道を作るだけで…人々は恐れるんですよ」
ノートパソコンの画面を見せる
神通「っ…これは」
夕立「アメリカで、実行済み…?」
画面にはさっき言った通り、喫茶店に入り込んだ客が自爆テロを起こしたという事件の報道、そしてそれが同時に四箇所で合計100名を超える死者を出したと…
綾波「フェイクニュースです」
神通「…フェイク?」
夕立「つまり、これは本当には起きてない事件…」
綾波「そうです、少し調べれば真実はわかることですが」
パソコンの画面が消える
綾波「今、ネットワークをハッキングしてほとんどのサーバーをダウンさせ、ネットにアクセスできなくしました…私は今から二日間、それを維持します…するとどうなるでしょうか」
神通「…ネットワーククライシス…混乱が起きる、か」
綾波「さあ、どうなるか、試しましょう?サイバー戦争です」
夕立「それの、目的って…?」
綾波「時間稼ぎですよ、私の目的に気づいた人間がいても、邪魔をされないように、ね?」
宿毛湾泊地
提督 倉持海斗
海斗「…入店を拒否された?」
ワシントン「ええ、アメリカで自爆テロが相次いであったらしくて、それが原因でお断りだって…顔馴染みですらないから、仕方ないんだろうけど」
アイオワ「というか、そもそもその事件についてもネットにアクセスできなくて何もわからないのに…!」
海斗「……ネットが、使えない…?……なんで、どうなって…」
横須賀鎮守府
実験軽巡 夕張
夕張「…始まった」
キタカミ「何が?」
夕張「フェーズ2…情報伝達を止める」
キタカミ「なんのために」
夕張「今のネットに頼りきりの社会ではそれが止まるだけで致命的、それが簡単に止まるとなると…国のネットに対する危機感が薄いとなる、つまり人材を軒並みそっちに回すほかなくなる」
キタカミ「…そういうもんなの?」
川内「多分」
夕張「横須賀ほどの基地になれば間違いなく苦情殺到」
キタカミ「なんでそんなのに協力してんのさ」
夕張「私がなんの考えもなく協力するとでも?」
川内「え、うん」
那珂「前科あるしねぇ…」
夕張「ないですー!犯罪したことありませーん!」
キタカミ「前の世界で提督のパソコンから色々データ抜き出そうとしてたじゃん」
川内「しかも未だに綾波に手を貸してるじゃん、死刑囚の逃亡幇助してるじゃん」
那珂「あれ?死刑って失敗したら無罪になるんじゃないの?」
川内「それは執行してたらね、綾波の死刑はどれも執行の器具とかが破損して先送りになってるんだよ」
夕張「…はー…まあ?その…実を言えば私も全部を知ってるわけじゃない」
川内「じゃあなんで手を貸してんの」
夕張「それはまだ言えない、言ったら最後、みんな消されるか、こっちに着いてもらうまで…殺し合いになる」
春日丸「あの」
夕張「はい、なになに?」
春日丸「…私は、どうすれば」
夕張「…ここに居るのは実力申し分なしのメンツばかり、そして、綾波に複雑な感情を抱いてるものばかり……そこで提案なんだけど」
川内「会いに行く、って?」
夕張「そう」
キタカミ「お断りだね」
川内「私も」
那珂「同じーく」
夕張「え!?あ、あれ?!な、なんで!」
春日丸「私も、遠慮させていただきます」
夕張「うっそ……何故に…?」
キタカミ「よくもまあ敵か味方か微妙な立場で誘えたね、罠にしか見えないよ」
川内「そうでなくても、今の私たちじゃ綾波相手にするのはちときついかな」
那珂「うん…力量差を測れない訳じゃない、今行くのは賢くない……時間稼ぎをするってことは、今すぐ行動に移す訳じゃない」
キタカミ「綾波の目的をぶっ潰しに行ってこっちが全滅でもしたらさ、止める奴が誰も居なくなる…それだけはダメだね」
川内「という訳で、まだ行きませんって事で」
夕張「…残念、じゃあ…はい、これ」
カートリッジを配る
キタカミ「…ダイバーのカートリッジ?」
夕張「これはネットワークに接続してはじめてその真価を発揮するの」
川内「真価?」
夕張「……ただし、これは…自身の強化にも使えるけど、もしかしたら、全てを失うかもしれない、賭けのカートリッジ」
那珂「…内容はまだ言わないんじゃなかったの…?」
夕張「そのつもりだったけど、急いで力が要るなら…これは絶対役に立つ、それに3人とも、このカートリッジの適格者だからね」
キタカミ「カートリッジの適格者?」
夕張「それは碑文使いが使うと少し違った力を発揮するの」
川内「どんな」
夕張「口で説明すると長いから、後でメールしとくわ、ちゃんと読んで使ってね?…決して、取り込まれないで」
キタカミ「取り込まれる…か」