元勇者提督 作:無し
横須賀鎮守府
重巡洋艦 青葉
青葉「……っ…はっ…?」
夕張「あ、起きた?」
青葉「夕張さん…?あ、あれ、ここは…?」
夕張「横須賀、離島鎮守府は襲撃にあったから放棄、みんな宿毛湾に避難してる」
青葉「しゅ、襲撃っ!?な、なんで!誰が…いや、深海棲艦か…!でも、キタカミさん達もアケボノさんも、Linkの人達までいたのに…!」
夕張「主導者は、綾波だった」
青葉「…え…?」
夕張「だったから、守りきれずに放棄、撤退…みんな宿毛湾に移ったわ、死者もいないし、怪我人も回復していってる」
キタカミ「ま、奇跡的だよねぇ」
青葉「きっききっキタカミさんっ!?なんでここに!」
キタカミ「私もボロボロにやられたからねえ」
青葉(キタカミさんでも、やられたのか…)
キタカミ「しかも綾波はまだ何かを狙ってる、ネットワーククライシスを引き起こした…おかげで交通機関も何もかもストップ、まあ、今のところ大きい損失の報道も…いや、まず報道ができないのか」
青葉「ネットワーククライシス…?そんな…」
青葉(あ、あれ?待って…もしかしてネットワーククライシスのおかげで、私は目が覚めたってこと?私はあの時、トキオさんにキルされて…そこから…うう…何も覚えてない…)
キタカミ「何、気になることでもある?」
青葉「少し、確かめたいことがあります…病院に行ってきます…」
夕張「病院?」
青葉「未帰還者達が、ほかの未帰還者達が戻ってきてるかも」
夕張「未帰還者…ああ…どうだろう…そもそも青葉ちゃんが未帰還者だったって保証はないんじゃないの?」
青葉「え?」
…言われてみれば、確かあの時、頭に強い衝撃を受けた気がする
それで気絶した?…まさか、だとしたらなんて情けない
青葉「……あああぁぁぁっ!?」
キタカミ「うるさっ」
夕張「な、何、どうしたの?」
青葉「わ、わた、わたわた…私の、フェイスマウントディスプレイもパソコンもコントローラーも…カメラも…ぜ、全部…」
キタカミ「…物資は何一つ持ってこれなかったよ」
青葉「そ、そんな…いや、今からでも取り返しに…!」
夕張「ちょ、ちょっとバカ言わないでよ、1人であそこまで行く気?何百キロ離れてると思ってるの?もし辿り着けても確実に死ぬ!」
青葉「アレは大事なものなんです!絶対に…取りに行かなきゃ…私が私じゃなくなっちゃう…」
キタカミ「…あのさあ、青葉、あんたのアイデンティティは物で成り立つの?」
青葉「アイデンティティの問題じゃありません!」
キタカミ(うわ、これ話通じないやつだ…)
夕張(どうしようかなあ…流石に1人で行かせるのは…かと言ってあそこは多分今の綾波の拠点になってるはず)
青葉「…私を心配してくれるのはありがたいんですけど、譲れないところなんです、行かせてください」
キタカミ「それで死んだら提督は悲しむだろうな、いや、自分を責めるかもよ、自分があげたもののせいで…って」
青葉「…それは、そうかもしれませんけど…」
FMDも、コントローラーも、パソコンも、カメラすらもあの時一度に揃えた物だ
全部全部、大事で、ずっと私のそばにいてくれた物だ
だけど…それを取りに行って死んで、提督に迷惑をかけるのも、良くはない
キタカミ「…機会を見て取り返せばいい、今は…宿毛湾に行きな、大丈夫、提督はそんなことで怒ったりしない」
青葉「……はい」
…仕方ない、と…諦めるのは簡単なんだけどな…
でも、心の底で、諦めたくないって声が、ずっと私を捕まえてる
夕張「車も電車も使えないから、高速艇を出してあげる、大体8時間で着くわ」
青葉「はっ…ち…じかん…」
愕然とした
いや、もっと長い船旅も有ったが、国内でそれほどなのか
夕張「管制塔も死んでる今、国内便を使う事もできないし…」
キタカミ「まあ、8時間も海の上は怖いだろうしさ、少し散策してきたら?」
青葉「そう、ですね…」
いつ攻撃されるかわからない海の上に8時間…は、かなり苦しい
仕方ない、一度、外を散策してみよう
市街地
青葉「…事故とかはあんまりなさそう…か…うーん、でも、あっちも、こっちも…多分あれ横須賀の候補生の人たちだよね…交通整理とかさせられてるんだ…」
信号などは一部動作しているようだが、逆に一部のものは動いていないようだった
でも、電気は通っているし、大きな事故も、騒ぎもない…
夕張さん曰くもうネットワーククライシス発生から一日は経っているとの事だし、ネットのない世界に適応しつつあるのかもしれない
青葉「…どう、しようかな…あ」
なんの気もなしにポケットに手を入れると財布が入っていた
…どうやら、できることはありそうだ
青葉(と言っても、お金があっても…飲食店やホテルとかしか営業してないだろうなあ…さっきの電気屋さんのテレビ、砂嵐だったし…あれ?)
青葉「ネットカフェが、空いてる…ああ、漫画喫茶として営業してるのかな?」
…でも、ネットカフェも管理システムはデジタルだったはず…アナログでやるのは大変そうだけど…
青葉「ん…?」
ネットカフェから出てきた人達の会話が耳につく
「なんでThe・Worldにだけアクセスできるんだろうな?」
「……さあ」
青葉(The・Worldに、ログインできる…?)
なんでだ?なんで?
The・Worldのサーバーにはオンラインでしか繋げない、直接コードで繋がってる訳でもないのにどうやって?
青葉(その回線だけ開いてる…って事…?…いや、わざと開けてるんだとしたら…これって誰かによる全世界のネットワークに対するハッキング!?)
そんなことができるんだとしたらただ1人
青葉「綾波さんは何をしようと…?」
目的はなんだ?なんの意味がある?これによって生じるメリットを探せばわかるはずなのに、私には想像もつかない
青葉(The・Worldの回線を生かすことで、The・Worldで何かをする?…The・Worldには絶対何かがある…!)
その足でネットカフェに入る
青葉「…周辺機器すっごく高かった…」
ディスプレイデバイス、コントローラー、その他諸々を借りたところ、通常の数時間に相当する値段に跳ね上がった…
青葉(…私のお財布、軽くなっちゃって…しかも、このままだと2時間しか居られないし…ああ…ATMなんか動く訳ないし…)
青葉「あ、あれ?そういえばログインIDとパスワードとか覚えてない…い、いや!携帯に……そうだ、離島鎮守府で充電器に挿しっぱなしだ…」
詰んだ
青葉「…新垢…も、CC社のサイトがダウンしてて作れない、か…ええと、ええと…」
思い出せない…
青葉「……どうしよう…」
The・Worldには何かある
新しいアカウントでもなんでもいい、とにかくログインさえできれば何かが掴める
そう思っていたのに、私は…
???「あークソッ!どうなってやがんだ!」
隣のブースから怒鳴り声と机を叩く音がする
青葉(怖っ…な、何?……あれ?今の声って…)
自分のブースを出て、隣を小窓からチラリと覗く
青葉「!…摩耶さん…?」
摩耶さんがこちらへと振り返る
摩耶「あ…?何見てんだテメー!」
青葉「ひっ!」
すぐに自分のブースに引きこもったが…扉を叩かれる
摩耶「開けやがれ!」
青葉「ご、ごごっごめんなさい!知り合いに似てて…!」
摩耶「うるせえさっさと開けろ!」
青葉「あ、開けますから!勘弁してください!」
…なんで開けるんだろう私は…
青葉「…え、ええと…覗いて申し訳ないとは思ったんですけど…知り合いと声がすごく似てて…」
摩耶「間違ってねえよ」
青葉「へ?」
摩耶「…合ってる」
青葉「…まさか、記憶が?司令官からは記憶が戻ってないって聞いてたのに…!」
摩耶「…あァ…つっても、わりかし最近だ、The・Worldにログインするようになって、カイトと変なエリア行ったりしてるうちに…ブラックローズがやけに馴染むと思ってな…そん時に思い出した」
青葉「そ、そうなんですね…よ、よかった…殺されるのかと…」
摩耶「あ?ンだよ、なンでそんなに怯えてんだお前」
青葉「…ええと…」
すぐ睨んでガンつけるところ…とは言えない
青葉「そ、それより!なんで怒ってたんですか?」
摩耶「…カイトのメーラーにアクセスしたんだがな、バグメールばっかでなんもわかんねえんだよ、アイツ最近ログインしねえし」
青葉(司令官…ログインできてなかったんだ…)
青葉「それ…離島鎮守府が襲撃されたからですよ…ニュースになってないんですか…?いや、すぐネットワーククライシスになったから…知らなくても無理はないのかな…」
摩耶「襲撃?離島がか…!?」
青葉「はい…」
摩耶「……そうか…なら、ログインできなくても仕方ねえのか…チッ…」
青葉「…あれ?それより…メーラーって…今、メールのやりとりができるんですか!?」
摩耶「あァ、The・World経由のメールなら送り合える見てェだけど…」
青葉「…そういえば、カイトのメーラーって…そ、それならまさか!司令官の…カイトにアクセスしてログインできるんじゃ…」
摩耶「…できっけど…」
青葉(この際だ!手段を選ぶ余裕はない!)
青葉「教えてください!ログインIDとパスワード!」
The・World R:X
Θサーバー 蒼穹都市 ドル・ドナ
双剣士 カイト
カイト「で、できちゃった…」※中身は青葉
ブラックローズ「…なンでアタシまで…」※中身は摩耶
カイト「今のThe・Worldには何かがあります!それに…」
多分、ヘルバさんなら私たちにすぐに気づく!
カイト「…ところで、なんでこのキャラのログインIDとパスワードを…?」
ブラックローズ「…本物のブラックローズ…つまり、まあ、この世界では姉貴にあたるんだけどよ、そのブラックローズに伝えてあったんだ、何かあった時のために」
カイト「…その何かのための備えを、今私が借りている…か」
ブラックローズ「そうなるな」
カイト「…そういえば、バグメール!」
メーラーを開く
たくさんあるメールの中から一つを選ぶ
[from:ア#*
件名:*め#
もう、こ%以×#めて#いけない。
ト*が頂#に来たら私は
#なら、ま*間に合う。今なら、#*間に合う。*なら、ま#間に合う。*なら、ま#間に合う。#なら、まだ間に合う。今*ら、まだ間に合う。今な*、まだ間に合#。]
カイト「な、なにこれ…」
ブラックローズ「どうやら、全部のメールがバグっちまってる、このネットワーククライシスでメールシステムもイカれてるのに、The・Worldだけ通るってんでな、みんなこぞってログインしてるから大量に送るだろ?」
カイト「…それでメールがバグった?」
ブラックローズ「多分な」
ヘルバ「流石の洞察力…と言うことにしておこうかしら、紛い物の勇者さん達」
ヌッと2人の間にヘルバさんが現れる
カイト「ヘルバさん!」
ブラックローズ「コイツが、ヘルバ…」
ヘルバ「あいにく、時間はないの、ネットワークの復旧なんて大仕事を私達に丸投げされてるから」
カイト「ヘルバさん!私、青葉です!あの、私のPCの…」
ヘルバ「私はカスタマーセンターじゃないのよ?」
カイト「あ…ええと…カスタマーセンター扱いしたい訳じゃなくて…」
ヘルバ「私は手が離せないわ、少し待っていて」
ヘルバさんが転送されて消える
ブラックローズ「…な、なんなんだ?」
カイト「…ヘルバさんは今、釘付けにされてるんだ……ヘルバさんを拘束するのが目的だったとしたら…?目に見える激流が、水面下で全く別の方向を向いているんじゃ…」
ブラックローズ「おい、何言ってやがる」
カイト(…綾波さんの目的は、復旧が済んだネットにあるんじゃ…ネットの復旧が済んだら何かが始まる…?それって…何?いいこと?悪いこと?)
欅「何かお考えのようですね」
カイト「ひゃっ!?」
ブラックローズ「…こいつ、見たことあるぞ…た、確か!月の樹の欅!」
カイト「…つ、きの…樹っていうと……あ、あの最大手と呼ばれたギルドの…?」
ブラックローズ「そのトップだよ!」
カイト「え……」
欅「そう言う扱いを受けるのは久しぶりですね!」
白い和装、そして頭からはえた2本の龍のツノ
明るい少年にしか見えないのに…
カイト「そ、そんなすごい人が…なんで?」
欅「The・Worldを敢えて生かしている、貴方はそうお考えだ」
カイト「…はい、その目的は、ヘルバさんを釘付けにすることにもあるんじゃないかと思ってます…」
欅「…現在、リアルタイムでダウンしたサーバーを復旧させていますが、復旧した端から再度ダウンさせられ、現場は混乱を極めています、貴方の予想はあながち間違っていないでしょう…」
カイト「……あの、とりあえず…」
欅「そうでしたね、貴方のログインIDとパスワード、メールしておきました」
青葉「…よし!」
ブラックローズ「お、お前…お前本当にあの青葉か!?」
青葉「え?な、何を驚いて…」
ブラックローズ「アタシだよ!ほら、パーティ組んだろ!」
青葉(…私が真っ当にパーティ組んだことあるのって…司令官、三崎さん、明石さん、それと…桜草さん…あれ?そう言えばあの時も声が摩耶さんっぽいなって…)
ブラックローズ「桜草だよ!」
青葉「えええぇぇぇっ!?」
まさか本当にそうだとは
ブラックローズ「お、お前…凄くなったな…」
青葉「あ、は、はあ…どうも…」
ブラックローズ「まさか名前でゲームするバカがいるとは思ってなかったけどな…」
青葉「ば、か…か…」
欅「そんな事より、今の話をしましょう」
青葉「そんな事…」
欅「青葉さんは、何を思っていますか?」
青葉「……ええと…その、回線は取り戻せてるんですか?」
欅「回線自体は、死んでいません、データのやり取りをブロックされているんです、サーバーダウンなどの攻撃で」
青葉「…そっか、サイバー攻撃には回線が必須……あ、あれ?…じゃあ、復旧したサーバーにダウンさせる前に何か仕込んだりもできるんですか?」
欅「…できは、しますが…」
青葉「…それをヘルバさんはチェック…」
欅「していません、する余裕もない…」
青葉「……多分、狙いはそこなんじゃ…全部の回線を落とす必要なんてない、だから大規模なサイバー攻撃にして、回線自体は生き残ってて…」
つまり、これは…何か大掛かりな作業の仕込み
欅「すぐに調べます」
…でも、綾波さんの狙いって…何?