元勇者提督 作:無し
The・World R:X
Θサーバー 蒼穹都市 ドル・ドナ
重槍士 青葉
青葉「たとえば、これは序章で混乱を引き起こすための布石、だとしたら…?今、携帯回線は」
ブラックローズ「使えるわけねえだろ」
青葉「だったら、何が起きても素早い伝達はできない…」
わざわざ回りくどくThe・Worldだけを残した、回線を全て遮断すれば済むのに、The・Worldのみを生かしている
これは、蜘蛛の巣だ
ヘルバさんは今、その蜘蛛の巣に囚われている
The・Worldに釘付けにされ、ひたすらに復旧作業に勤しんでいる
それが綾波さんの狙いで、別の何かに本命を隠しているとしたら?
…私は、未だ綾波さんを信じ切るとも、敵として見ることもできていない
別に仲が良かった訳じゃないし、強い思い入れも…他の人ほどではないのに
青葉(なんで、こんなに迷ってるんだろう…)
欅「…見つけました、確かに青葉さんのいう通り、改変の痕跡のあるデータが複数ありました、どうやら、狙いはこれのようです」
ブラックローズ「どういうデータなんだよ」
欅「今は解析中です」
青葉「……」
綾波さんは、すごいな、なんでもできて、ハッキングの技術もヘルバさん並みなんて
だから…きっと私には想像もつかないことをするんだ
青葉「欅さん、ネットを介した大規模な事件…黄昏事件に何かありますか」
欅「え?…色々ありますね、かなりの有名どころでいくと
青葉「そういうのじゃなくて、仕込み、っていうか…時限爆弾みたいな……あ!デッドリーフラッシュ…!」
ブラックローズ「で…?なんだそれ?」
青葉「社会か情報の授業でやりませんでしたか!?2003年に起きた、史上初のネットワーク犯罪における死罪の判決が下された事件です!」
欅「良くご存知ですね…ええと、全世界で7人の死者を出した事件です」
青葉「…欅さん、もし、さっき言ってたデータが…それに準ずるものなら…」
欅「大変な事件になるでしょうね」
ブラックローズ「ま、まてよ、ネットワーク犯罪でなんで死人が出てるんだ?」
青葉「…デッドリーフラッシュ、死の閃光…その名のとおり、その光を見たものは死んでしまう…」
欅「理由としては、その光を見ると生理機能が狂うんです、無意識下に働きかけるような、かなり特殊な閃光で、犯人である瀬戸悠里以外にそれを作成できたという話もありません」
ブラックローズ「…光を見て狂って死ぬ…」
欅「目眩やひきつけ、意識障害など、死者以外の被害者もたくさんいます」
青葉「綾波さんの目的がそんなことなら…止めないと…!」
ブラックローズ「止めるったって、どうするんだよ」
青葉「……The・Worldが蜘蛛の巣なら、そこから抜け出すしか…」
The・Worldの外から防ぐしか…
欅「待ってください、全てではありませんが、データを捕捉しました、そして、これらを…紐付けて……ショートメールを送ります」
欅[Σサーバー 賢知なる 騒乱の 黄泉国 Δサーバー 瓦解せし 禁断の 焼肉定食 Θサーバー 光放つ 月光の 妖精]
青葉「エリアワード?」
欅「このエリアの中に、先ほど言っていた改変データにアクセスできるポイントがあります、それを潰して回れば…事態は防げるかと」
青葉「…行きます」
ブラックローズ「アタシも行く」
欅「…今あげた3つは数ある中の本の数個です、圧倒的に手が足りません、なので貴方達には別々に行動してもらいます」
青葉「……わかりました、では…」
欅「あ、ちょっと待ってください」
青葉「はい?」
背中をぽんぽんと叩かれる
青葉「へ?誰?」
くるりと振り返る
…金色の何かが視界いっぱいに映る
青葉(…なんだろー…これ、なんだか見覚えがあるような…)
ぴろし3「ぬわーっハッハッハッハ!」
ブラックローズ「な、なんだ!?この金ピカ赤マスクの変態は!」
ぴろし3「ジュワッチ!強き非力なゴールデンベア!ぴろし3!ただいま参上ォーーーッ!」
青葉「……これ?」
欅さんの方を見ながらぴろし3を指差す
欅「はい、青葉さんにはその方と組んでいただきます、そしてエリアの調査に…」
青葉「え、本気ですか、あ、本気なんですね」
なつめ「青葉さん、そんなに悲観しないで!」
緑髪の双剣士がひょこっと顔を出す
青葉「あぇっ!?その姿にその名前…な、ななな、なつめさん!?」
なつめ「はい!私も手を貸します」
欅「それと僕も同行します、これで6人、今から3手に分かれて探索に」
青葉「6人?…5人ですよ?」
欅「いえ、6人です」
欅さんの隣にカイトが現れる
青葉「まさか、司令官…!」
カイト「……」
なつめ「…カイトさん?」
ブラックローズ「返事ぐらいしろよ」
ぴろし3「むむむ…?なるほど、そういうことか、目に光が灯っておらん」
欅「はい、このカイトはカラです、中身がいません」
青葉「え…?」
欅「そこで、青葉さん、あなたには、2つのPCを担当してもらいます、カイトと、青葉を」
…同時に2キャラをプレイするなんて…やったことない
欅「大丈夫、基本的には僕とぴろし3が仲間のいない方をカバーします、必要になったら集中してプレイしたい方に切り替えてください、カラになればオートバトルプログラムを起動して、AIが闘ってくれますから」
青葉「…それなら、いけるかも」
戦闘頻度が多いだけで操作するのは1キャラだけ
なら大丈夫!
青葉「でも、本物の司令官を呼べば良いんじゃ…?」
欅「連絡を取るためにメールなどを送りましたが、応答はありませんでした…やはり此方も連絡がつかない状態にあるようで」
青葉「…仕方ありませんね…わかりました、早く行きましょう…!」
欅「では、僕はΘサーバーのエリアを」
ブラックローズ「アタシはΔだな」
青葉「じゃあ、Σサーバー…よし、わかりました!」
ぴろし3「よし、行くぞ!良き目をした人よ!……む?」
ぴろし3とパーティを組んだ途端、ぴろし3が止まる
私の少し隣をじっと見つめるように…
青葉「……あっ」
いつの間にか、リコリスさんもここに居た…
ぴろし3「…よし!行こうぞ!」
青葉(何も触れないんだ!?)
Σサーバー 賢知なる 騒乱の 黄泉国
青葉「トリプルドゥーム!!」
並み居る敵を薙ぎ払う…
つもりだったのだが
青葉「き、効いてない…!?こ、このモンスターまさかウイルスバグ…」
モンスターをいくら攻撃しても、ダメージがほとんど入らない…!?
ぴろし3「とぉっ!!」
ぴろし3の一撃でモンスターが消し飛ぶ
青葉「じゃ、ないですよね…そうですよね…」
槍がモルガナの手によって弱体化されて以来、私の火力は大幅ダウン…
ヘルバさんに頼んで直して貰えば良かった…
青葉「で、でも、呪符もバフアイテムもあります!」
ぴろし3「うむ!では支援に努めてくれたまえよ!」
後衛に徹して、バフアイテムと魔法を呼び出す呪符での後方支援に努める
青葉(…ぴろし3のあの初めて会った時みたいな派手なロールは…今日は無いな…空気を読んでるんだろうけど、なんだか悪い気もしてきた)
私の護衛の仕事も、何もかも的確に果たしてる姿から、むしろ頼り甲斐すら感じる始末だ…
見た目はアレだけど
青葉「騎士の血!騎士の切札!」
味方に物理ステータスのバフを、敵に物理防御のデバフを
サポートに徹して……
ぴろし3「む」
青葉「あれは…」
何かが大量のモンスターを惹きつけて…
ぴろし3「むむっ…あれは」
青葉「光った…攻撃エフェクト…!?」
そして、モンスターたちが消滅する
青葉「あ、あれは…!竜賢宮の宮皇…太白…!?」
モンスターの群れたちの中から現れたのは、白いロングコートの老人のような出立ちの男性キャラクター
そして、The・Worldを少し遊べば嫌でも名前を聞くことになる…最強と謳われる宮皇
紫の銃剣マクスウェル、そしてそれを扱う太白
間違いない、アリーナに関する記事で読んだ通り、でも…R:2で引退したと思っていた…
太白「…来客か」
青葉「あ、いえ…その…私たちはこのエリアの調査に…」
太白「…では、君たちが」
青葉「え?」
太白「話は聞いている、この先だ」
青葉「も、もしかして!」
太白「案内しよう」
なんと贅沢な水先案内人か
この宮皇に案内してもらうのなら、敵などいないに等しいのでは無いか
太白「このエリアにはメイジ系のモンスターが多い、故に、私が適任だった」
モンスターたちが此方へと迫ってくる
太白「塵球至煉弾!」
弾丸の雨に一瞬で消し去られるモンスター達
しかし、その奥にはすでに
太白「マクスウェル」
太白さんが銃剣を掲げると、詠唱中だった呪紋全て消える
青葉「スペル無効化…!?…ど、どんなチート武器なんですか、それ…」
ぴろし3「いや、アレは仕様にある武器!断じてチートでは無い!」
太白「あなたの反応も無理はない、しかし、このエリアと私は相性が良かった」
あっという間に呪文を構えていたモンスター達が切り刻まれる
太白「…次だ」
青葉「こ、これは?」
太白「データの歪み、というものらしい、ここから先には通常のPCでは進めないらしい、君達の健闘を祈る」
青葉「へ!?」
太白「さあ」
青葉「さ、さあって…うわっ!?」
強制転送される
青葉「…っ…たた…?あ、あれ?」
ぴろし3「うーむ、なんだここは、グラフィックがないではないか、こんなに広大な空間にグラフィックが無いとはなんともけしからん」
青葉(ぴろし3は居るんだ…というか、ほんとにグラフィックがない)
青色のグリッドの上に立っているだけ
床らしい床もなく、ポリゴンが周囲に散らばっている無機質な世界
青葉「…あ、もしかしてターゲットって…!」
紫色のエフェクトを伴った巨大なネズミ…
モンスターなのか、それとも仕様外の何かなのか
青葉「なんでもいい!ここで倒します!」
呪符を大量に構える
青葉「まずはこれ…火焔太鼓の召喚符!!」
ネズミを爆炎で焼き払う
炎に包まれたネズミはキュゥと小さく鳴き、倒れる
青葉「えっ!弱っ!?」
ぴろし3「む?おわったのか?」
背後からぴろし3さんに声をかけられて振り返る
青葉「みたいです、ぴろしさ…」
パチン
背後から弾ける音と、強い光を受けたような感覚
そして…
青葉「え…?」
倒れる、ぴろし3
青葉「な、なんっ…」
ネズミの方を向くと、跡形もなく消滅していた…
今になって私の頭が理由を探し始める
こういう時の頭の回転は思いのほか早い
そして、導き出した結論を、私は即座に否定した
青葉「違う…」
別の可能性を模索する
青葉「違う…違う…!」
何度否定しても…私の頭に浮かぶ可能性
青葉「…違う!絶対違う!…あれが、デッドリーフラッシュなんて…」
そうだ、瀬戸悠里は死罪になったはず…!
ならばそれを扱える人なんて…
欅『青葉さん、此方に来られますか?』
青葉「け、欅さん!助けてください!ぴろし3が…!」
欅『どうやら、そちらも状況は良くなさそうですね』
青葉「そちらも…って、まさか…」
欅『なつめさんが、閃光を浴びて倒れたと報告が入りました』
青葉「…っ……」
聞きたくなかった…
より、確信に近づいた
青葉「これの正体はデッドリーフラッシュです!ネズミを倒したら…そいつらが…!」
欅『…わかりました、すぐに対処しましょう』
青葉「対処…?」
視界が切り替わる
カイト「っ…これは…」
場所が変わった?
グラフィックが無いせいでほとんど違いが分からないけど…
欅「青葉さん、今あなたのプレイしているキャラを切り替えました、アレが見えますか?」
カイト「…!」
また、あの巨大ネズミ…
欅「あのネズミを解析したところ、どうやら剥き出しのデータのようでした、データドレインを使って改竄してください」
カイト「で、データドレイン!?私が!?」
欅「今は、カイトです」
カイト「あ、そっか……ええい!…えと…どうすれば」
腕を突き出しても反応しないし…
欅「まずステータスを呼び出して、スキル欄から選択してください」
カイト(え、そんなシステムなの…?)
言われるがままにデータドレインを選択して放つ
カイト「データドレイン!!」
欅「目を閉じて!」
目を瞑る
…どう、なったんだろう…わからない…
何もわからない、今にも襲われるんじゃないだろうか…
欅「もう大丈夫…ネズミは消えました」
カイト「よかった…フラッシュは!?」
欅「無かったです、データドレインでネズミのデータを改変すれば、安全に倒せるようですね」
カイト「……でも、そんなの今わかっても…」
欅「…ぴろし3となつめさんについては任せてください、僕がなんとかします」
カイト「…はい」
欅「だから、今は、ネズミの駆除に力を貸してください」
カイト「…わかり、ました…」
…今は、仕方ない、私のやれることを…
カイト「あれ?これって……」
ネズミから抜き取ったデータ…?
欅「どうかしましたか?」
カイト「……いえ、なんでもありません」