元勇者提督 作:無し
The・World R:1
Δサーバー 水の都 マク・アヌ
重槍士 青葉
青葉「…あ…メール!?」
メールの通知音を聞いて即座にメーラーを起動する
[送信者:砂嵐三十郎
件名:無題
俺の方は二日も寝れば
どうにかなる程度だが、お前はどうだ?]
青葉「三十郎さんから…あ、なつめさんからも来てる」
[送信者:なつめ
件名:わたし、強くならなきゃ
手強い敵っているもんなんですねーっ。
なつめ、今日からかわります!
もっともっと強くなるために、
がんばります。]
青葉「…三十郎さんはこのゲームの裏側が少し見えてるのかも…」
何にしても、あの場に2人を連れて行って良かったのか、迂闊だったのではないか…
悩んでいるとまた通知音が鳴る
青葉「またメール?…司令官…いや、この時代のカイトさんから」
[送信者:カイト
件名:ありがとう
来てくれてありがとう。
きっとぼく達だけじゃやられてたかもしれない…。
それと、これはヘルバに聞いた事だけど、ぼくとパーティを組んでいると“腕輪の加護”って効果がついて、
これに守られている間は意識不明になる事を避けられるかも知れないんだ。
逆に言えばパーティを組んでないと守れない…。
だから、ウイルスバグやあんな強敵と対峙する時は、パーティを組みましょう。]
青葉「…腕輪の加護、か…」
それがみんなを守ってくれるのか…
青葉「…またメールだ、今日メール多いな………あ!?CC社から!?」
慌ててアドレスを確認する
このメールアドレスはこのPCボディと直結している
なので、この時代からメールを受け取った事になる…
「送信者:CC社
件名:当選のお知らせ
おめでとうございます!
貴方はThe・World発売開始一周年パワーアップキャンペーンに当選しました!
商品として、通常では手に入れられない特殊なレベルアップアイテムをご用意しました!
ルートタウンのショップでお受け取り下さい!]
青葉「…は…?さ、詐欺?……いや、でも受け取り場所ゲームないのNPCショップだし…え?」
応募した覚えがないんだけど…というか、応募せずにこんなのって…怪しすぎる…
青葉「……い、一応、確かめてみる…とか?…いや、無いかな、こういうのは無視無視…」
逆に罠の可能性の方が高いし
青葉「…あ」
どうやら、一斉にいろんなキャラがログインしてきたらしい
青葉(…何人かオンラインだし、誰か誘って冒険にでも…いや、よく考えたら…確かめるべきことがある)
青葉「行かなきゃ、Θサーバー、選ばれし絶望の虚無へ」
Θサーバー 選ばれし 絶望の 虚無
青葉「…あれは、この時代のカイトさん達だ…トキオさんも居る?」
ブラックローズ、カイト、トキオ
3人だけでこのエリアを調査しようというのか
私にも声をかけてくれても良かったのでは無いか
若干の不満を感じつつ、3人の跡をつけることにした
ブラックローズ「腕輪、光らないね」
カイト「うん…」
…前に来た時は腕輪が光ったのか?
何かあったのか
3人がゆっくりとダンジョンへと向かう
ブラックローズ「見た目は変わんないみたいだけど」
トキオ「…相変わらず暗いよなあ…」
ダンジョンを進むも、敵すらいない
何もない…
青葉(このエリア、やっぱりおかしいんだ)
ブラックローズ「あの無駄に大きいやつ、いるかなぁ?」
カイト「うん、いるかな?」
ブラックローズ「アタシが聞いてんの!聞き返さないでよ、もう…」
カイト「ごめん」
ブラックローズ「でも、もしいたら…勝てる?」
カイト「それは……無理」
ブラックローズ「……」
トキオ「…見つけたら、すぐに逃げよう…」
何もない部屋をブラックローズさんが先頭に立ち、怯えた様子で探索する
カイト「ねぇ」
ブラックローズさんが悲鳴を上げて振り返る
ブラックローズ「何よっ!?」
カイト「怖く、ないの…」
ブラックローズ「アタシ?アタシは恐くない……訳ないじゃない、アタシのコントローラーなんか、汗でグチャグチャなんだから…あんた達はどうなのよ」
トキオ「まあ…そりゃあ…」
カイト「うん…正直恐いよ、でも、そんな事…言ってらんない」
ブラックローズ「だよね」
なんの気なしに振り返ったであろうカイトと目が合う
カイト「…あ」
ブラックローズ「ひっ!何よ!!」
カイト「え、いや…」
ブラックローズ「…脅かしたかった訳?前にも言ったでしょ!そういうのマナー違反だって!」
カイト「ゴメン……その、そこの壁の模様が動いた様な気がして…」
青葉(…私に気づいた上で、放っておいてくれるんだ…?)
トキオ「壁に紛れる敵か!?」
ブラックローズ「どこどこどこ!?」
カイト「いや…気の所為だった…」
ブラックローズ「もう…脅かさないでよ…!」
カイト「(笑)」
ブラックローズ「…(笑)じゃないっちゅ〜の!」
カイト「だって…(笑)前もこんな事なかった?」
トキオ「前?」
カイト「会ったばかりの頃、隠されし禁断の聖域でね」
ブラックローズ「あー!…ぅぅ……ええ、ええ、どうせアタシは強がってるだけの小心者だわよ」
トキオ「へー…意外…」
カイト「あのさ、聞いてもいいかな」
ブラックローズ「なによ!ムカつくわね」
カイト「ぼくが、こうしているのはオルカを助けたいからだけど、きみは、どうして…?」
ブラックローズ「それは…」
カツカツと金属製のブーツが石床を叩く音で声が遮られる
青葉「!」
…あの白銀の鎧、間違いない、バルムンクさんだ
全員が、バルムンクさんを視界に捉える
バルムンク「原因を突き止めてきてみれば……また、お前達がいる…どういうことだ!?」
ブラックローズ「アンタこそ何よ!!事情も知らないくせに!」
カイト「いや、事情はこの間話した」
ブラックローズ「え?そうなの?だったらなおさらでしょ!わかってやんなさいよね!!」
バルムンク「事情はともかく、事態を直視しろ、お前達が動くと事態が悪化する…オレにはそうとしか思えん、違うか!?」
それだけを言い、バルムンクさんは踵を返し、去っていく
ブラックローズ「ヤな奴」
カイト「…彼には、ぼく達とまた違った事情が、あるのかもしれないよ」
青葉(…同じオルカさんの友人なのに…)
バルムンクさんの後を追いかける
青葉「バルムンクさん!」
バルムンク「…貴様、何者だ」
切先を向けられる
青葉「私は青葉と言います、覚えてませんか、かつて、アルビレオさんのホームで…」
バルムンク「…思い出した、あの時の…だが、何故ここにいる」
青葉「私も、このエリアの調査に来ていたんです」
バルムンク「……」
青葉「ですが…いや…私の知ってることを全て、取り敢えず話します…なので、落ち着いて聞いてもらえませんか?」
バルムンク「…いいだろう」
青葉「…まず、オルカさんを意識不明にしたモンスターは斃しました」
バルムンク「お前が、か?」
青葉「私もですが、先程のカイトさん達と共に」
バルムンク「なんだと、ハッカーと手を組んだのか…!」
青葉「違っ…」
バルムンク「…やはり、あの時の俺の見立ては間違っていなかったのか…」
青葉「話を…」
バルムンク「ハッカーの仲間と交わす言葉など、有りはしない!」
青葉「私はハッカーでもハッカーの仲間でもありません!」
バルムンク「どうだかな…!貴様も、あのアルビレオも…」
青葉「っ…!貴方は…軽率にそんな事を言う人だったんですか…?」
バルムンク「あの槍も、仕様外の物だ…貴様のそれもな」
青葉「CC社の社員でもない貴方がそれを断言できるんですか…!?貴方は何様ですか…!」
バルムンク「黙れ…薄汚いネズミめ…!」
青葉「ネズミ…ああもう…私の癪に触る言葉ばかり…ああ、もう!!」
槍を一度振るい、目を閉じ、開く
青葉「…気が、変わりました…あなたを説得するのは、やめます」
バルムンク「やる気か」
青葉「いいえ、しかし……今後、カイトさん達の邪魔をするのであれば…私は貴方を討つ…」
バルムンク「…好きにしろ、その時は俺も引き下がりはしない」
バルムンクさんはアイテムでダンジョンから出て行った
青葉「……私は、貴方達の信じた、良いゲームであるThe・Worldを信じていた…でも、ここに悪意が溜まっていたら…人を信じられない憎しみしかなかったら…何にもならないじゃないですか…」
このゲームがいいゲームであり続けるには、ユーザーの善意や、良心が無くてはならないのに
それなのに、一番強く願っていたであろう貴方がそれでは…
槍を石床に突き立てる
青葉「…ちゃんと、止めますからね」
Θサーバー 高山都市 ドゥナ・ロリヤック
青葉「……わ…ぁ…?」
転送したら目の前にショップNPC…?
NPC商人「パワーアップキャンペーンに御当選されたお客様ですね?こちらをどうぞ」
青葉「…絶対の書…?」
NPC商人「今後とも、The・Worldをよろしくお願いします」
青葉「は、はあ…?」
絶対の書をアイテム画面から取り出す
青葉(…パワーアップキャンペーンの商品としか書かれてないな…何が上がるんだろう…使ってみようかな……)
青葉「いや、やっぱ怖いし……あとでゴミ箱にポイしとこう」
背後で転送音が鳴る
カイト「うわっ」
NPC商人「以前パワーアップキャンペーンに御当選されたお客様ですね、実はあの時お渡ししたアイテム、稀にインストールできないと言う不具合が出ることがわかりました、絶対の書と交換しますので、ご了承ください」
青葉(あ、同じやりとりされてる)
NPC商人がトレードを終えて転送されていく
ブラックローズ「パワーアップキャンペーン?そんなのあったっけ?」
トキオ「あれ?オレまで貰ったぞ…?」
カイト「……やっばり」
ブラックローズ「やっぱり?」
カイト「エラーが出て使えないんだ、インストールできないって」
青葉(…なんだか、クサいな…)
トキオ「あ、オレもだ」
青葉(貴方は生身なんだから当たり前でしょう…)
青葉「…ちょっと調べてみよっと」