元勇者提督 作:無し
The・World R:1
Θサーバー ドゥナ・ロリヤック
重槍士 青葉
青葉(…Θサーバー、空疎なる因縁の深淵…)
私のメーラーにひっきりなしにメールが入り、最後に届いたメールはまたCC社からのものだった
内容はこうだ
[送信者:CC社
件名: 情報提供
当方、意識不明者を回復させるヒントを
持っているかもしれません。
興味がおありであれば、
Θ空疎なる 因縁の 深淵
にお越しください。
おまちしています。]
今更、こんな事を言い出すなんて明らかにおかしい…
でも、本当にヒントなら?
雲を掴むような目的を持っている私には、これはあまりにも魅力的すぎた
Θサーバー 空疎なる 因縁の 深淵
青葉「…ここは」
真っ白なエリア
いや、エリアですらない、どこまでも広がる白い地平線…白いながらに薄暗い空…
エリアがどうこうじゃない、デバッグエリアとかその類…
つまり
青葉(…私を誘い出すための罠として作られたエリアだ…!)
青葉「!」
トキオ「あ!お前…!」
カイト「あれ?2人も…?」
ブラックローズ「合わせて4人、怪しげなメールに呼び出されてきてみたんだけど、アンタらも?」
青葉「はい」
カイト「意識不明者を回復させるヒントがあるって…」
ブラックローズ「そう……ちょっと待って!」
ブラックローズさんが転送を試みるものの、できない
トキオ「た、タウンに帰れない…!」
青葉(やっぱり罠だったんだ…)
ジジジと電気が走る様な音が頭上に鳴る
上を見上げると、キューブ状のポリゴンがNPCを形作る
同じ手順でショップNPCが大量に作り出される
NPCはそれぞれが別の方向を向き、宙に浮かぶ
リョース「私は、リョース、The・Worldのシステム管理者だ」
一言一言を別々のNPCが話し、順々にこちらを向く
リョース「君たちは再三の警告を無視し、出過ぎた真似ばかりしている」
青葉「出過ぎた真似…?何を…!」
リョース「君たちが余計な事をしなければ、状況はこれほど悪化しなかったのだよ!」
カイト「意識不明者まで出しておきながら、なにもせず…それどころか、その事実を隠そうとさえした!あなた達の責任はどうなる!」
リョース「一連のトラブルは、心ないハッカーがウイルスを撒き散らした結果だ、恨むならハッカーを恨め」
ブラックローズ「恨んだら……恨んだら意識不明者は、元に戻るって言うの!?」
ブラックローズがリョースへと詰め寄る
ブラックローズ「戻しなさいよ…!今も病院にいる彼を戻しなさいったら!!」
リョース「意識不明者とThe・Worldこ因果関係その他は現在調査中だ、我々も手をこまねいている訳ではない、対策は進行している」
リョースがふんぞり変える様にカイトを見下す
リョース「が、それとは別に…これ以上の状況悪化を防ぐためにも、君達のPCを破棄してもらう必要がある」
トキオ「なっ!?」
カイト「このキャラを、捨てろと?」
リョース「君のPCはソフトウェア使用許諾に反している、不正な効果のインストール、身に覚えがあるだろう?そっちの君もだ、そして」
リョースが私を見る
リョース「君のPCに至っては不正規なAIとデバッガー用のアイテムまで持ち出した、見過ごすわけにはいかないのだよ」
青葉(呼び出された時点で分かってたけど、やっぱり私もか…)
リョース「では、デリートさせていただく!」
ヘルバ「待ちなさい!」
ヘルバさんが空間を割って入ってくる
リョース「ヘルバか…!」
ヘルバ「リョース、あなたも未帰還者になりたいの?」
リョース「なんだと…?!」
ヘルバ「ぼうやが、ここでデータドレインを使ったら…どうなるかしら?」
青葉(そうか、脅しの手がこっちにも…)
カイト「僕はそんなことしない!」
…どうやらそう言う話でもなさそうだ
ヘルバ「そうね、ぼうやはバカじゃない、バカな石頭はこの男」
ヘルバさんがリョースさんを見る
ヘルバ「何がどう作用するかもわからないのに、消してしまっていいのかしら?そもそも、本当にデリートできるの?」
リョース「……」
リョースさんが小さく唸る
ヘルバ「ぼうやのPCには管理者も干渉できない強固なプロテクトがかかっている、青葉も、トキオも同様にね…レアなアイテムを偽ったワクチンを用意はしてみたものの…管理できないものは排除してしまえ…石頭のやりそうなことね(笑)」
カイト「あの…いいですか?」
カイトが一歩、前に出る
カイト「ぼくは、このPCがどうなっても文句は言いません」
青葉「えっ」
ブラックローズ「ちょっと!何言い出すのよ!」
カイト「いいんだ、何度も言う様だけど…ぼくは友達を助けたい、ほんとうにそれだけなんだ…」
トキオ「カイト…」
カイト「ヘルバさん、管理者の人……ぼくは、どうすればいいんですか?」
ヘルバ「残念だけど、ぼうや…私はその答えを持っていない、いわんや、そこの石頭においてをや(笑)」
…ヘルバさんも、リョースさんも、先の事を見通せない…
ヘルバ「ただ…この世界が黄昏の碑文を元にデザインされていたのなら、そこにヒントが…」
リョース「くだらん」
ヘルバ「リョース」
リョース「なんだ」
ヘルバ「システム管理の責任者に与えられるそのコード名、碑文に出てくる光の王の名前だって知ってた?」
リョース「そうなのか…?」
青葉(確か、碑文の一節は…リョースの王、アペイロン…とあったはず……あ!?あの時のミストラルさんに値切りされてたPC…!)
気がつかないところでどうやら色々裏方もしていたらしい
ヘルバ「押さえ込むばかりが管理じゃない、もう少し、この子達の様子を見てみない?」
リョース「おまえの指図は受けん!」
ヘルバ「指図?とんでもない、提案よ…ネットは世界中に広がっている、この先、もしトラブルが拡大したら、あなた…責任が取れる?」
リョース「っ…」
ヘルバ「結論は、あなたが出しなさい」
リョース「……現時点での処分は保留!君達には後で決定を伝える!」
リョースさんが、NPC全てとともに消える
ヘルバ「…だってさ(笑)じゃあね」
ヘルバさんも同じように…
そして、私たちだけが取り残される
カイト「黄昏の、碑文…」
ブラックローズ「アタシたちには情報が足りなさすぎるね…」
Θサーバー 高山都市 ドゥナ・ロリヤック
青葉「はぁ……」
カイト「大変だったね」
ブラックローズ「アタシ、落ちるわ」
トキオ「オレも、ちょっと休むよ」
…大変だったのもそうなんだけど…
よく考えると、私CC社側のPCなんだけどなあ…
青葉「…はあ」
カイト「…青葉さんは落ちないの?」
青葉「……ここで落ちると、脚が止まる気がして」
カイト「じゃあ、よかったらエリアに行かない?」
青葉「…今からですか?ホントに…?」
カイト「…そんなにおかしい?」
青葉「…気が滅入るものじゃないかなって…」
カイト「まあ、確かに…でも、森林のエリアらしくて、前々から行ってみたかったんだ」
青葉「あ…もしかして、Θサーバー、柔らかき孤高の三色すみれ?」
カイト「そう、BBSで見たんだけど…」
青葉(た、たしかこの前変なファンクラブとかが入り浸ってるみたいな…いや、時間も経ってるし、流石にいないか…)
青葉「是非、御同行させてください」
Θサーバー 柔らかき 孤高の 三色すみれ
青葉「ほ…居ないか…」
カイト「何が居ないの?」
青葉「あ、いえ、なんでも…」
青葉(…でも、エリアの中じゃなくてダンジョンの中にいたり…いや、ないか)
森林浴くらいのつもりでのんびりとエリアを探索する
青葉「…良いエリアですね」
カイト「うん、落ち着いたエリアだし、敵もそんなに強くない…あれ?」
…落ち着いたエリアだって言った途端、変な嬌声が…聞こえてくるような…
青葉(…あー、ダンジョン前に群がってる、なんか…変な人たち)
カイト「…なんだろう、あの人たち」
女性PCの群れが困ったように声をあげている
が、まあ…
青葉「無視しましょう」
カイト「え?」
青葉「関わらないが吉です、ほら、触らぬ神に祟りなし」
カイト「あ、うん…」
ヘリル「ねえあなたたち!」
カイト「…話しかけられたよ?」
青葉「…前も塞がれましたね」
ヘリル「あなたたち強そうね!この先のダンジョンにガル様が1人で入っちゃって…これ、ガル様に渡しといてーっ!」
青葉「はい…?」
ガルデニア宛のラブレターを押し付けられた
カイト「…困るんだけど…」
ヘリル「あなた宛じゃないわよ!頼んだからね!捨てたりしたら承知しないからっ!」
青葉「いや、それが人に物を頼む態度かって話…」
カイト「青葉さん、もう諦めて行こう…」
青葉「…そうですね、ちゃんと届く保証はしませんから…後、それ以上に何かしゃべったら、迷惑行為としてCC社に通報しますからね!」
カイト「あ、青葉さん…」
青葉「すみません、ついかーっとなって…」
カイト「ま、まあ…気持ちはわかるけど…」
青葉「でも…ああ言う人たちにはなりなくたいです…」
青葉(アイドルの追っかけみたい……あれ?)
誰かいる、女性の…重槍士…?
腰まであるブランドの女性…だけど雰囲気の凛々しさから女性ウケもしそうではある…
青葉「…この人がガルデニアさん…?いや、でもまさか…」
ガルデニア「なんだ、お前は…礼儀を知らないようだな」
カイト「ごめんなさい、あなたがガルデニアさんですか?」
ガルデニア「そうだが、なんの用だ」
カイト「人に頼まれて…手紙を渡すようにって」
ガルデニア「人?」
カイト「ええと、たぶん、あなたのファンクラブの人に…」
ガルデニア「断る!」
ガルデニアさんはダンジョンの奥深くへと走っていった
青葉「に、逃げた…?」
カイト「…あの人も嫌みたいだね…」
青葉「……逃げられると、追いたくなりますよね」
カイト「え?」
青葉「行きましょう!」
カイト「あ、うん…」
青葉「快速のタリスマン!」
移動速度アップのアイテムを贅沢に使って走る
カイト「あ、居た」
ガルデニア「…しつこい!」
カイト「約束しちゃったから…」
ガルデニア「おおかた、強引に押し付けられたのだろう?」
青葉「ええ、よくご存知で…」
ガルデニア「そんなものは約束とは言わん、ほおっておけ」
ガルデニアさんも加速アイテムを使って走っていく
青葉「…行きましょうか」
カイト「う、うん…でも、追いかけるのが目的になってない…?」
青葉「そんな事ありませんよ!」
カイト「最終層まで来たけど…」
青葉「…いるとしたらこの先、ボス部屋ですか、殆どの敵をソロで倒してるし、かなり消耗してるはずなのに…」
カイト「…行ってみよう、必要なら手を貸そう」
最後の部屋の扉を吹き飛ばす
カイト「…扉は攻撃しなくても良いんじゃ」
青葉「あ!居ましたよ!」
カイト「ボス相手に苦戦してるみたいだ…」
青葉「あの敵は…確か土属性の高耐久タイプ…なら別の槍を…良し!行きましょう!」
カイト「ジュローム!」
青葉「ジュリパルス!」
木属性の攻撃でボスをのけぞらせる
ガルデニア「ここまで来たのか…!」
青葉「悪いですが…私はしつこいので!!」
槍をボスモンスターに叩きつける
ガルデニア「トリプルドゥーム!」
青葉「ジュドゥーム!」
カイト「蘭舞!」
3人の連続攻撃で一気にボスモンスターのHPを削る
カイト「データドレイン…!」
青葉「ダブルスィーブ!!」
ボスモンスターが崩れ落ちる
ガルデニア「…ふう……お前たち、強いな…気に入った、その手紙、受け取ろう、ただし、条件がある…」
青葉「条件?」
ガルデニア「私が呼び出したら冒険に付き合う事、さん付けは今で終わりにする事…以上だ」
カイト「わかった、よろしく、ガルデニア」
ガルデニア「では、私はアイテムで脱出させてもらう、どうせダンジョン周りには奴らが居るしな…」
ガルデニアさんがエリアを出て行く
青葉「…報告、しに行きます?」
カイト「何か貰えたりして(笑)」
青葉「……いや、それはないと思いますよ…やっぱり私達もアイテムで出ましょう」
精霊のオカリナを掲げてエリアを出る