元勇者提督 作:無し
駆逐艦 曙(青)
「ねぇクソ提督」
「何?曙」
「なんでアンタはその呼び方とアオボノを両方使うのよ」
「…だって曙は…2人いるけど、それぞれ曙じゃないか」
「紛らわしいでしょ」
「うん、だから曙が2人ともいる時はもう片方の呼び方で呼ぶようにしてるよ」
「………面倒でしょ」
「そんな事ないよ、それより、髪、ごめんね」
「…もう慣れたわ、それに…青も悪くないし」
「…ごめん」
「もう謝らないでよ、悲しくなるから、第一、区別しやすくていいでしょ?」
「君たちが例え同じ髪の色でも、誰も間違えないよ」
「…入れ替えたってバレたわよ」
「そっか、良かった」
「…ねぇ、なんで私にこれをくれたの?」
「…ごめん、僕にもわからない、あの時の僕は、ぼんやりとしか覚えてないけど、でも、確かに君なら腕輪を託せると思ったんだ」
「………良い迷惑」
「そっか」
「ありがとね…」
「曙ならそう言うと思った」
「…どういうことよ」
「………漣や、潮、朧、もう1人の曙、その中の誰にも限らず、自分以外が腕輪を持てば………苦しんだと思う」
「そうね、死ぬほど悔しいと思うわ」
「……北上がそうだった」
「…やっぱ、そうよね」
「うん、北上は…曙と同じだけ、仲間を想ってる」
「…私以上よ、私はあんなのに手を出せない」
「曙なら、同じ状況ならそうしたよ、間違いなく、だって…みんな見えないところで頑張ってるじゃないか」
「………みんな?」
「…ほら、曙と北上」
「みんなじゃないじゃない…北上さんの特訓って、普段の時間以外やってるの?」
「………一度、総員起こしより早く起きてみて、水平線を眺めてみるといいよ」
「………そんなところまで行ったらいつ襲われるかわからないわ」
「それでも北上は1人でやってる、最近は一緒に訓練する仲間がいるみたいだけど」
「…わかった、私も混ぜてもらう」
「曙」
「何?」
「君の頑張りはよく知ってるよ」
「………どっから見てんのよ」
「…山の上かな」
「岩山じゃない…毎晩登ってるの?」
「仕事が減って、時間が増えたからね、余裕があれば」
「そう、じゃあ明日からその余裕はなくなるわ」
「楽しみにしておくよ」
「………この腕輪は、一体なんなの?」
「…君の気持ち一つで、全てを滅ぼす兵器になる、だけど、君はきっと、みんなを救うために使ってくれる」
「答えになってないわ」
「みんなを救う力だよ」
「気に入った………改めて!…貰っといてあげるわ、クソ提督!」
「任せたよ」
「………次は勝手にいなくならないでよ?大変なんだから」
「…約束はできないかなぁ?」
「………本気?」
「必要ならば」
「……せめて嘘でも、居なくならないって言いなさいよ」
「………嘘ついたら、甘えちゃうから」
「…本気で死ぬ気なの?」
「そんなつもりは一切ないよ」
「………信じる」
「ありがとう」
「ふんっ…クソ提督」
駆逐艦 曙
「提督」
「やあ、曙、待たせてごめん」
「気づいてたんですか」
「うん、それで、なんの用?」
「………貴方にとって曙は…誰なんですか?」
「2人ともそうだよ」
「私たちは別人です」
「でも2人とも曙だよ、別人でも、同じなんだ」
「………ちゃんと理解ってくれてるんですよね」
「安心して、絶対に間違えない、それに、君は君で努力してるのも知ってる」
「それは、毎日付き合ってくれることに関しては…お礼を言います」
「そう言えばなんだかよそよそしくない?」
「………そんなことありません」
「そう?まあ良いか、でも曙、君の目的はわかるけど、今の訓練は必要かな?」
「………体力はあって損はありません」
「山に登って頂上から訓練や演習を見る、体力とみんなの動きをよく見るって言うのはわかるけど」
「私の戦術は確かに深海棲艦を想定したものというより、それ以上の知能を持った相手を想定してます」
「そう、何度聞いても、演習や暴走した相手を想定してるように感じてた、なんで?」
「………深海棲艦の対策なんて誰でもできます、それ以上の敵に対する刃が必要なんです」
「…否定したい気持ちはあるんだけどね」
「そうでしょうね……」
「辛くない?」
「いいえ」
「君のことを評価することはできないし、されることもこの先はしばらくないだろう」
「永遠にそうあるべきです」
「………僕はそうはいかないと思っている」
「私もです」
「…頼りたくはないけど、頼りにしてるよ」
「こちらこそ」
「………ありがとう」
「提督、一度だけ、その時が来たらもう一度だけ呼びますね」
「うん?」
「クソ提督って」
「…あはは」
「じゃあ、夕刻にお待ちしています、デート、楽しみにしてますから」
「…デート?」
「………クソ提督」