元勇者提督 作:無し
宿毛湾泊地
重巡洋艦 青葉
青葉「えるえすえふでぃー?」
キタカミ「…そう、夕張が消えたのはそのLSFDが絡んでるんじゃないかってのが、一日おいた私の仮説さね」
青葉「そ、それをなんで私に?」
キタカミ「…The・Worldが絡んでるっぽくてさ、青葉はそっちの専門でしょ?」
青葉(専門っていうか…まあ、確かに詳しくないわけではないと思うけど…)
キタカミ「アカシャ盤っていうのと、LSFDの同時起動で何が起きるかはわからないけど、青葉にも調べてもらうのが賢いかなあって」
青葉「は、はあ…」
青葉(まだ未帰還者を助けることもできてないのにやることばっかり増えちゃうなあ…)
キタカミ「ま、なんかわかったら教えてよ」
青葉「は、はい」
The・World R:1
Δサーバー 水の都 マク・アヌ
重槍士 青葉
青葉「っていってもなぁ…LSFDっていうやつはリアルとネットの融合装置みたいだし、アカシャ盤との関連性…よくわかんないし…」
LSFDについては色々聞いたけど、これがどう作用するのかを私は知らないし…
考えられる事象はThe・Worldのモンスターが突然リアルに現れるとか?
青葉「あ!リアルデジタライズ?」
この融合の範囲にいたら逆にネットに取り込まれるとか…
でも、アカシャ盤を利用する点には繋がらない
青葉(団長はメールの返信くれないし…いや、というかその辺は上層部の部外秘だろうから返信はないほうが当たり前かなぁ…)
青葉「…調べるにもわからないものはわからないし、一度ウイルスコア集めに行こうかな…」
青葉(確か、最近はカルミナ・ガデリカで活動してるって聞いたし)
Λサーバー 文明都市 カルミナ・ガデリカ
青葉「わっ」
カイト「あ、青葉さん、ちょうど良かった」
青葉「へ?」
カイト「今から、Λサーバー、蘇生する惑乱の裁きってエリアに調査に行くんだけど」
青葉「けと?」
カイト「メンバーが集まらなくて…ブラックローズは来てくれる事になってるんだけど」
青葉「良いですよ、一緒に行きます」
カイト「ありがとう!」
Λサーバー 蘇生する 惑乱の 裁き
青葉「っ…?」
ブラックローズ「ノイズ…!?」
ザザザとノイズが何度も走る
カイト「何か、いる」
青葉「…警戒しながら進みましょう」
エリアをゆっくり進み、ダンジョンへと足を踏み入れる
カイト「このエリアは、リョース曰く汚染度がかなり高いみたいだけど……」
青葉「汚染?」
ブラックローズ「ウイルスバグとかが多いって事」
青葉「じゃあ、ここの敵はウイルスバグだらけか…」
カイト「…待って」
ノイズが激しくなる」
青葉「!」
ブラックローズ「うわぁっ!またなんかでたぁーっ!」
ステンドグラスのような模様の、不可思議な形の石板…
カイト「こいつが…こいつが元凶?」
青葉(確か、これは第二相…イニス!)
カイト「はあぁぁぁぁっ!」
カイトがイニスに駆け寄り、連続で斬りつける
ブラックローズ「だ、ダメージが入ってない…!?」
イニスは後方に下がりながら姿を消した
カイト「……逃げた?」
青葉(というよりは、誘ってる…)
カイト「…追いかけよう」
ウイルスバグを仕留めながらダンジョンを潜り続ける
ブラックローズ「ま、また!」
激しいノイズとともにまたイニスが現れる
ブラックローズ「影なんだか、実態なんだか……いいかげんにしなさいよ!!」
青葉「閃矢の呪符!」
カイト「虎輪刃!」
攻撃はヒットしているものの、ダメージにならない…
先ほどと同様に後方に消えていく…
ブラックローズ「…まるで…おいでおいで…ってやってるみたい」
カイト「どっちにしたって、行ってやるさ…!」
青葉「…この先で待ち構えてるのなら、バフは入念にかけましょう…返り討ちにしてやりましょう…!」
ブラックローズ「そうね!」
ダンジョンの最深部へと歩を進める
カイト「…ここは」
青葉(スケィスとやり合ったステージとそっくり…)
瓦礫のエリア、そしてアメジスト色に輝く光の川
そのステージの中央に在る…イニス
ブラックローズ「もう逃がさないわよ…!」
視界の端にチラリと英文が映り込む
青葉(自己紹介どーも…!)
槍を振り、構える
青葉「火炎太鼓の召喚符!!」
カイト「炎術士の呪符…ビバクローム!」
二つの炎魔法がイニスを焼く…しかし
青葉「っ…効いてない!」
カイト「まさか、魔法耐性の能力?」
青葉「魔法無効…!?」
ブラックローズ「青葉知らないの!?敵によっては呪文は一切通じないのよ!!」
青葉「なら、物理で殴るだけです!!ダブルスィーブ!」
槍の2連撃を振るうものの、手応えがない
青葉「っ…今度は幻影…」
カイト「後ろだ!」
青葉「ぁ…っ…」
背後から魔法の焔に背中を焼かれる
青葉「っ…頭にキました…!」
青葉(使うか悩んでたけど、そっちがそんな事するならこっちだって!!)
USBを取り出し、パソコンに突っ込む
青葉「マクスウェル!!」
イニスが魔法を放つために止まった瞬間、槍を掲げる
イニスが放とうとした魔法が消滅する
青葉「よし!効いた!」
ブラックローズ「何それ!」
青葉「借り物の力です!」
槍を大きく振るい、勢いのままに斬りつける
カイト「炎舞!」
ブラックローズ「カラミティ!」
青葉「トリプルドゥーム!」
戦闘は順調に、こちらのペースで進んでいった
青葉「マクスウェル!」
相手の呪文攻撃を防ぎ、カウンター…
物理攻撃も火力は高くないからダメージを受けてもそこまで苦しくない
カイト「また来るよ!」
青葉「マクスウェ…っ!?」
呪文に合わせて槍を振り上げたはずが、
青葉(ま、まさか…これは麻痺のバッドステータス!?しかもスキル封印まで…!)
対策された
敵はこのゲームそのもの、何度も何度も使っているばかりに、マクスウェルの特殊能力を見切り、それに対しての耐性を得たとでもいうのか
ブラックローズ「ちょっ…青葉!」
カイト「リプシンキ!」
即座にカイトが状態異常を治す
青葉「すみません…どうやら、もう呪文を防ぐのは無理みたいで…」
カイト「大丈夫…このままでもきっと倒せる!」
ブラックローズ「バクドライブ!!」
ブラックローズさんがイニスに剣を叩きつける
ブラックローズ「前の奴よりは、弱い!」
確かにそうだ
確かにスケィスは破格の強さだった
そう考えると、まだ楽だと思う
青葉「トリプルドゥーム!」
カイト「蘭舞!」
…でも、終わりが見えないのは、苦しいものがある
青葉(いつ、プロテクトが壊れるの…!?)
カイト「青葉さん!危ない!!」
青葉「え?」
背後からモンスターのような形の石像が飛んでくる
青葉「ぁ…」
…死んだ
ブラックローズ「蘇生の秘薬!」
青葉「っ……」
蘇生はされたけど、一瞬で全身をぺちゃんこにされた感覚は消えない
私はゲームのダメージがリアルにフィードバックする
指が、麻痺して動かない
立ち上がれない、声が出ない
ブラックローズ「青葉!?何やってんの!」
カイト「リプキシン!…状態異常じゃない…?」
痛い…
全身が痛くて、壊れそうで…
青葉「……」
ふわりと、持ち上げられるような浮遊感
データドレインが、イニスの正面に展開される
カイト「何か、おかしい……ブラックローズ!止めるよ!」
ブラックローズ「わかってる!!」
カイト「炎舞紅蓮!」
ブラックローズ「バクディバイダー!!」
2人の攻撃で、とうとうイニスのプロテクトが砕ける
カイト「データドレイン!!」
イニスがデータドレインを受けた事で、私は空中から投げ出され、地面に落下する
青葉「っ……」
朦朧とした意識の中、ようやく痺れがおさまりつつある指をなんとか動かし、コントローラーを操作して立ち上がる
カイト「これでトドメだ!」
私がなんとか、必死に立ち上がる頃には、イニスのHPはすでに削り切られており
崩壊を始めていた
青葉「っ……!?」
激しいノイズが続く
頭が痛くなる
何度も、何度も、叫び声にも聞こえる音と、ノイズが…
それが止むと、イニスは消え失せた
ブラックローズ「なんか今、様子が変じゃなかった?」
カイト「うん、とにかくタウンに戻ってみよう」
Λサーバー 文明都市 カルミナ・ガデリカ
青葉「…これ、は……人が、居ない…?」
…タウンは無人だった
誰も、どこにも居ない
ブラックローズ「なんか…雰囲気違くない?」
カイト「…調べてみよう」
リョース「その必要はない」
すぐ後ろから声がした
リョース「またやってくれたようだな…!」
カイト「他の人たちは?」
リョース「危険な状態だったので強制的にログアウトさせた…またクレームが増える…」
青葉「危険な、状態?」
リョース「君たちは一体何をしてくれたんだ!?私は調査しろと言ったのだぞ!」
青葉「待ってください、一体何が…」
リョース「指示があるまでは動くな!これは命令だ!」
リョースが転送されて消える
ブラックローズ「…アタシ落ちる」
カイト「…うん、僕も落ちるよ」
……八相のうちの2体目、イニスを倒したのに
何故こんな事に…
青葉「私も落ちよう…」
ゲームをログアウトした
リアル
宿毛湾泊地 私室
青葉「っ…な、なにこれ」
ゲームを落としてみると、パソコンが見た事ない様な画面に早変わり…
青葉「ウイルスに感染した…?あ、あれ?」
何かをダウンロードするバーが表示され、それが完了するとパソコンが元に戻り始める
青葉「えっ?え?なにこれ…」
ヘルバ『ワクチンプログラム、と言ったところかしら?』
青葉「うわっ!ヘルバさん!?」
通話を繋いだ覚えはないのに、何故か声が…
ヘルバ『あなたが受け取ったUSBに仕込んで置いた、モルガナの組んだウイルスに反応するように』
青葉「モルガナの、ウイルス…?」
ヘルバ『過去の世界で第二相と出会ったようね?…第二相…惑乱の蜃気楼、イニス、斃すのは簡単だけど、自身の崩壊時にウイルスを散布するように仕込まれた…厄介な敵よ』
青葉「待ってください、過去の敵が散布したウイルスがなんで……あ」
ヘルバ『そうね、おそらくアカシャ盤の影響じゃないかしら』
青葉「アカシャ盤に接続してる私が、こうなった……じ、じゃあ!まさか!」
LSFDとアカシャ盤を利用すれば、過去に起きたネットワーク事件を全て現代に持って来られる
デッドリーフラッシュも、プルートキス、第一次ネットワーククライシスも…
青葉「それが、狙い…だとしたら…ヘルバさん!調べて欲しいことがあります!!」