元勇者提督 作:無し
The・World R:1
Λサーバー 文明都市 カルミナ・ガデリカ
重槍士 青葉
青葉「…はあ…疲れる1日だったなあ…」
思い返せば今日は随分と面倒ごとが多かった
キタカミさんに無理難題をふっかけられたことも、ガングートさんにつまみ食いされたせいで狭霧さんに事情聴取を受けた事も
青葉「…あれ、あんな人…居たかな」
ふと隣を誰かが通り過ぎる
落ち着いた雰囲気の、浅黒い肌に白髪の…老人のようにもみえる呪紋使いのキャラクター…
見た事のない人だ、何もしていないのにこれほど鮮烈な印象を受けているのだから…
青葉「……」
キタカミさんに言われたからじゃないけど、気になった
青葉(…話しかける?でも、パーティに誘うと否が応でもリコリスさんの事を知ることになり、迷惑をかけるかもしれない…黄昏事件ほどじゃないけど、リコリスさんも問題が無いわけではないし…)
…でも、不思議と気になる
まるで、鼻につく臭いを発しているように気に触る
青葉「…あの」
つい、話しかけた
ワイズマン「トレードかい?」
普通はそうだろう、このゲームにおいて人に声をかけるときはアイテム交換のトレードかパーティに誘う時だけ
青葉「いえ、そうじゃないんですけど…」
ワイズマン「では何の用事かな」
青葉「……用事」
特に用事があったわけではない
何か気になったから声をかけただけで…
青葉「いや、その…あ」
思いついた、理由
青葉「じ、実は、知り合いに友達を作れって言われて…私とメンバーアドレスを交換してもらえませんか?」
何も嘘はついていない…が
キタカミさんに言われたから、という点は否定のしようを失った…
ワイズマン「ハッハッハッ…面白い理由だ、が…構わないよ、私はワイズマンだ」
青葉「あ、青葉です…」
ワイズマン「…青葉?」
青葉「へ?」
ワイズマン「いや…何でもない、よろしく、青葉」
青葉「は、はい」
ワイズマン「それで?君と私は晴れて友達になったわけだが」
青葉「え?」
ワイズマン「友達になった、のなら…仲を深めるべきだと思うが」
青葉「…そ、そうですよねー…」
青葉(どうしよう、勢いで言っちゃったから何も考えてない…)
ワイズマン「…折角だ、一緒にエリアでも行くかい」
青葉「え?…あ、はい」
カオスゲートの前に移動し、エリアワード入力画面を呼び出す
青葉「…行きたいワードとかあります?」
ワイズマン「その前に、パーティに誘ってくれないか?」
青葉(…やっぱり、そうなりますよね)
観念してパーティに誘う
ワイズマン「…おや?…その子は」
青葉「…ええと…NPCです、その…」
ワイズマン「NPCか…成る程、イベントの類か」
青葉「イベント…そう!そうです!…多分」
ワイズマン「……Λサーバー、花開く約束の散歩道は如何だろうか」
青葉「えーと…花開く、約束の…散歩道…と」
エリアワードを打ち込み、転送ボタンを押す
青葉「わっ!?」
エラーメッセージが表示される
青葉(プロテクトエリアだ…!)
ワイズマン「どうかしたか?」
青葉「このエリア、転送できません」
ワイズマン「そうか、では仕方がない」
青葉「…何か思い入れのあるエリアだったんですか?」
ワイズマン「いや、そこにはスパークブレイドという剣があって、中々に強い武器なんだ」
青葉「ブレイドってことは剣ですよね…?使えるんですか…?」
ワイズマン「いいや、売るんだ、実はスパークブレイドは入手難易度もかなり高い、しかし強い、欲しがるプレイヤーは少なくない」
青葉「だから高値で売れる…」
ワイズマン「そういうことだな」
青葉「…そういうプレイはしたことがないです」
ワイズマン「トレードもあまりしたことが無さそうだな、如何だ、試しに私のとっておきのアイテムとその槍を交換、というのは」
青葉「…この槍を?」
ワイズマン「ああ、勿論、釣り合うようにアイテムを差し出す、どうかな」
青葉「お断りします」
ワイズマン「…理由を聞かせてもらおうか」
青葉「これは人から譲り受けたものですので」
ワイズマン「譲り受けた…か…では、これはあくまで善意からの言葉だが…その槍は
青葉「…それで」
ワイズマン「不正なアイテムを使い続ければアカウント停止の恐れもある、そのアイテムの出どころははっきりしているのか?」
青葉「ええ…これは、仕様の内部にあるものです」
ワイズマン「それは間違いのない事なのか」
青葉「はい」
ワイズマン「…ならば、無用な詮索を詫びよう、見た事のない槍だったものでね」
青葉「…いえ」
ワイズマン「しかしこれで確信できた、君があの連星の騎士だと言うわけだ」
青葉「…へ?」
ワイズマン「違ったかな?」
青葉(…連星の……って、言うと…?)
ワイズマン「かつてのザワン・シンのイベントで2人の英雄、蒼天のバルムンク、蒼海のオルカ、この2人の戦いを見守った連星の騎士…というのが君だと思ったが」
青葉「ち、ちちっ…違います!あれはアルビレオさんで…あ」
ワイズマン「アルビレオ?…成る程白鳥座か…だから連星の騎士…」
ワイズマンさんが納得したように頷く
ワイズマン「君がそう言うのなら確かに君は連星の騎士ではない、のだろう…しかし、君はその錬成の騎士を知っている」
青葉「…えーと…」
ワイズマン「今のが出鱈目だと言うのは通じない、君もご存知の通りアルビレオというのは白鳥座の恒星の連星のことだ、それがすぐに出てきたあたり、何も考えずに言った言葉とは思えない」
青葉「…それは、その…」
ワイズマン「そして、君のキャラクターのエディットもそうだ、そのオッドアイはその二つの星と同じ色になっている…親しい仲、もしくは憧れの対象なのか」
青葉「……何が言いたいんですか、それを調べ上げてどうしたいんですか…」
ワイズマン「っと…いや!失礼、信じてくれ、とは言わないが、他意はないんだ…ただ、興奮してしまった、だって君が連星の騎士ならあのW・Bイェーツ達とも深い仲な訳だからな」
青葉「W・Bイェーツ…?あ、ああ、有名なネット詩人でしたっけ…」
イベントがあるごとに詩をBBSに書き込む、古株の有名プレイヤーだとか聞いたけど…
ザワン・シンの時にも?
ワイズマン「その反応では本当に知らないのか…是非会ってみたかったのだが」
青葉(…あれ?そういえばクリムさんも知ってたし、なんで連星の騎士が広まって…)
青葉「そ、そういえば、その連星の騎士って、どこから…?」
ワイズマン「W・Bイェーツの詩にあった、連星の騎士と共に…とな、それが何かあるのか?」
青葉(うっっわ…絶対ほくとさんだ…あの時アルビレオさんと一緒に居たのはほくとさんだけだし…)
青葉「…詳しいんですね」
ワイズマン「好きなんだ、その手のものには興味があってね」
青葉「そうですか…」
ワイズマン「君に不愉快な思いをさせてしまったお詫びに…」
お札セットをワイズマンから受け取った
青葉「…アイテム…?…呪符がこんなに……なんで?」
ワイズマン「あると便利だろう?」
青葉「……何で私の戦闘スタイルを知ってるんですか」
ワイズマン「何のことだ?」
青葉「普通、このゲームの槍を使うキャラは魔法攻撃のステータスが高くありません」
ワイズマン「ふむ」
青葉「相手のことを思い、渡すものを選ぶなら…こういうアイテムではなく、ステータスを変化させるバフアイテム、もしくは回復アイテムの詰め合わせみたいな物を選ぶはずです」
ワイズマン「それで、私がそうしなかったから私の行動はおかしい、と?」
青葉「はい、貴方は私を知っている…そうなれば納得がいくんです、だって私は呪符を多用する戦闘スタイル…普通ならあまり喜ばれないアイテムが私には逆に刺さる」
ワイズマン「君のニーズにあった商品を提供できた、と言うわけか」
青葉「…はぐらかさないでください、あなたは何者なんですか?」
ワイズマン「…やれやれ、本当に警戒心が強いな、狼というだけはある」
青葉「……」
ワイズマン「クリムという男は知っているな」
青葉「クリムさん…?ええ、知っています」
ワイズマン「紅い稲妻クリム、もうログインをやめたようだが…彼は過去、面白いプレイヤーに出会ったと言っていた、それが、君だと私は考えた」
青葉「…それで」
ワイズマン「まさか君から接触してきてくれるとは思わなかったが、君にこれを」
青葉「
炎属性と雷属性のスキルを持った槍…
ワイズマン「これを手に入れられるエリアも、すでに入れなくなっている…つまり、今のところ…これを持っているプレイヤーはほんのひと握りだ」
青葉「…私はアイテムの希少性に、レア度には興味はありません」
ワイズマン「では言い方を変えよう、これはクリムからの贈り物だ」
青葉「そう言うことなら、喜んでいただきます」
ワイズマン「さて、折角友達になったのなら…の続きだが」
青葉「続き?」
ワイズマン「来て欲しいエリアがある、君にも私を知ってもらおう」