元勇者提督 作:無し
みなとみらい
綾波
綾波「……おや」
狙撃の弾丸をかわす
綾波「…敷波か、青葉さんの情報は全く当てにならなかったな」
神通「南700メートル」
綾波「…会う価値もない」
神通「そうですか?自分の不始末とも言えるのでは」
綾波(…今になって、神通さんは私の本心を測ろうとしている…しかし、わざわざ神通さんに悟られない様に気を払ってるのにも理由がある…)
綾波「そこまで気になるのなら貴方に任せても構いませんが」
神通「…いえ、結構です」
綾波「射角からみて狙われたのは肩…使用弾から……っと、この弾…」
神通「どうしました」
綾波「ライフル弾ですけど口径が小さい…何を使ってるんでしょうね、狙撃銃かと思いましたが、自動小銃の可能性も有りますよ」
神通「興味がありません」
綾波「…しかし、混沌としてきましたねえ…」
綾波(敷波も、私を殺す気は無かったらしい…それに、初弾以降撃たないのは…いや、撃てないのか……敷波…)
綾波「場所はわかってるはずです、適当な人にいかせてください」
神通「わかりました」
綾波「……さて、私の相手は…」
アヤナミ「あなたの相手は、私達です」
神通「おや」
…瓜二つ、片目を眼帯で隠していること以外違いの無い、私がいる…
正確には、オリジナルボディ
川内「神通、逃がさないよ」
綾波「運命、とでもいうのでしょうか?…ふふっ…」
まだ居る
狭霧「…綾波さん」
…周りを見渡せば、見慣れた顔しか居ない
綾波「…同窓会か何かですか?ああ、会場は壊してしまいましたが…」
神通「ふざけている場合ですか?」
綾波「問題は…っ…?」
頭が…
綾波「っ…ぁ……ああぁぁぁぁぁぁッ!?」
悲鳴
頭が、焼ける
肌がヒリつく
…始まった、想像していた以上の規模で
神通「な、何が…」
アヤナミ「綾ちゃん…!?」
綾波(ああぁ…!ダメだ!割れる割れる割れる!!)
震える手でカートリッジに触れる
指先で引っ掻き、なんとか起動しようと…
綾波「っ!…ぁ…」
カートリッジが起動した途端、多少頭痛がマシになる
狭霧「やっぱり…やっぱり限界なんですよね…?綾波さん!貴方の体はもう…!」
川内「待って、様子がおかしい」
綾波「…ぁ…はは…?アハッ……はぁ…いや失礼…別に今狂ったわけではないですよ、元々狂っていますから」
立ち上がり、辺りを見渡す
綾波「…それより…朧さんと那珂さんは、どうなりました?」
狭霧「近隣の病院の集中治療室行きになるはずです」
綾波「助かりましたか、ですが…病院かあ…」
遠くで、何かが爆発する
川内「っ!?」
神通「あれは…」
狭霧「…間に合いませんでしたか…」
綾波「全て手遅れ…この場のネットワークは全て…使えない、電気も通らない、電波も届かない、あーあ…最悪が、始まった」
LSFDの結界が展開されていったのだろう
空気が異質だ
綾波「…アヤナミ」
アヤナミ「……」
綾波「先に一つ、言っておきましょう、先程“綾ちゃん”なんて呼んでくれましたが、今の私は東雲です、最も…味方ですらそうは呼んでくれませんが」
アヤナミ「…何が、目的なんですか…ここで何をするつもりなんですか」
綾波「会話ぐらいしてもらいたいものですが」
アヤナミがカートリッジを取り出して起動する
アヤナミ「もうこれ以上罪を重ねさせたりしません、私が止めますから…だから…」
アヤナミの偽装が展開される
綾波(改二艤装…?どうやって…!この場には無かったはず、警備隊に紛れていたのか?)
アヤナミ「…綾ちゃん、あなたが開発したものです」
アヤナミが指輪を見せる
綾波「ああ、それに記録してたんですか…なら………やはりダメか、コントロールを奪えない」
アヤナミ「……私とあなたは、同じであって違う…その証明です」
背後から、狭霧が歩み寄る
狭霧「…私も、貴方を止める為に…死力を賭して戦います」
綾波「あなたも改二艤装を?…良いでしょう、二人まとめてでも…」
狭霧がカートリッジを起動する
狭霧「っ…あ…!」
綾波(…なんだ)
狭霧の持っているカートリッジから火花が散り、放電する
アヤナミ(拒絶反応…!何故?何が起きて…)
川内「な、何、あれ」
綾波「…まさか!…なんて馬鹿なことを!今すぐそれを捨てなさい!」
狭霧「お、お断りします…!っ…ぐ…!」
狭霧の表情が苦痛に満ち、カートリッジを握っている手が電撃で裂ける
狭霧(お願い…お願いします…!どうか…私に…)
カートリッジが破裂する
狭霧「…あ…」
綾波「……馬鹿なことを、私の改二艤装を使おうとするなど…あなたには無理に決まっています、そんな無茶をしたところで…」
狭霧「無茶をしなきゃ…私は、貴方には…届きませんから」
狭霧さんの傷が塞がり始める
綾波(な…傷が、消えて…)
狭霧「…みんなは違う、みんなはそれぞれ個性があって、みんなは…ちゃんと見てもらえる……でも私は違う…私は狭霧、だけど、私は貴方なんです…貴方は私なんです…」
狭霧さんの周りに、艤装が展開されて…
狭霧「強くならなきゃ…無茶をしなきゃ…貴方の想像の先にいかないと…!貴方は、私を見てはくれない…私は貴方の想像の内側では、終わらない…!」
綾波「…私の改二艤装…」
まさか、それを扱えるとは思わなかった
いや、だが…
アヤナミ「…綾ちゃん、さっきのあの反応…まだ、狭霧さん達に…気持ちがあるんじゃないですか…?」
綾波「…私のカートリッジを壊されたく無かった、なのによくも壊してくれましたね」
アヤナミ「綾ちゃん!!」
綾波「私をそう呼ぶな…!」
大きく息を吐き、前を向く
綾波「…私は、私は綾波ではない」
狭霧「…綾波さん…」
綾波「だから…っ…」
振り返り、狭霧さんを見る
虚ろな目は、私を捉えていても、私を見てはいない
視覚が死んでいる…?
綾波(…当然だ、あれほどの外傷ができるようなダメージ、体内も深刻なダメージを受けているはずだ……神経が焼けたのか…でも、回復の途中…なら、回復する前に)
狭霧さんの方に踏み込み、迫る
アヤナミ「待っ…」
綾波「嬲り殺しにしてあげますよ…!」
腹部を殴りつける
狭霧「…あっ…?がっ…」
綾波(…この、感触…内臓が既に…いや、戻りつつあるこの感じ…本当に再生して…)
狭霧さんに腕を掴まれる
綾波「っ!」
狭霧「綾波さん…私じゃお力になれませんか?…私は、貴方の役に立ちたい…ただそれだけだった」
綾波「何を…!」
狭霧「何かの為に必要だから、こんなことをしているんですよね…?違うんですよね?綾波さんは…本当は…」
アヤナミ「綾ちゃん…戻って来てください、私たちが…」
綾波「ふざけるな」
狭霧の手を振り払い、蹴り飛ばす
綾波(戻れだと?今更?……ふざけるな、だったら何のためにこんな事をした…私にそんなことを言うな…私の意思は何一つ動くことはない)
カートリッジを操作し、アヤナミの背後を取る
川内「っ!後ろ!」
アヤナミ「……」
後頭部に拳打を叩き込むも…びくともしない
アヤナミ「綾ちゃん…」
綾波「…硬い…」
アヤナミ「これで最後です、一緒に帰りましょう…?今なら、まだ取り返しがつくようにできるはずです…」
綾波「…取り返し?…じゃあ、つかないようにしてあげましょうか!なんなら…」
側頭部が地面のアスファルトに叩きつけられる
綾波「っあ…」
何が起きた、今何をされた?
蹴られたのか?それとも…
アヤナミ「……私は、あなたが例えどんな間違いをしても目を瞑りましょう…それは、例えば物を盗んでも、壊しても、人を殺しても、私だけはあなたのそばにいること…味方として…でも、一つだけ許せないことが、あります」
アヤナミと目が合う
アヤナミ「…今、あなたはなんと言おうとしましたか…間違っても、敷ちゃんを傷つけるようなことは…言おうとしていませんよね」
涙を流しながら、怒りに顔を歪ませた般若
自身のこんな顔を見たことはない
普通なら見ることもないだろうが…
綾波「…だとした…ふぐっ…あ…!」
腹部をサッカーボールのように蹴られる
綾波「かはっ……あ…っ……はーっ…ひっ…」
息ができない
呼吸をするたびに体が軋む
アヤナミ「もしそうだとしたら、私は一切の躊躇いも、容赦もなく…あなたの敵になります」
綾波「…はっ…はあー…な、なれるものなら、なれば良い…」
アヤナミ「…狭霧さんに対してもそうです、あの子は、あなたにとってなんですか」
綾波「…狭霧…?」
チラリと、蹴り飛ばした先から起き上がってくる狭霧を見る
どうやら視覚が回復したのだろう、此方をしっかりと見ている
…我ながら性格が悪い
綾波「…妹ですよ」
アヤナミ「…なら!なんで…」
倒れたまま、かかとで地面を蹴り、逆立ちの要領でアヤナミの顔に向かって蹴りを放つ
アヤナミ「っ!」
あえて防がせ、アヤナミの上に転移し…自由落下
そのままアヤナミを捕まえ、首を両脚で締め上げる
綾波「アハッ!馬鹿ですよねえ…せっかくの艤装もなあんにも役に立たない、だってあなたも私と戦う心構えができていないんだから…このまま絞め殺してあげましょうか?それとも頭をかち割りましょうか?」
アヤナミ「…あ、綾ちゃん…あなたは…考える時間が欲しい時…饒舌になりますね…」
綾波「っ……黙れ!!」
前方に自重をかけ、バックマウントポジションを取る
アヤナミ「…殺せば、いい…あなたの体…好きにすれば良い…」
綾波「…!」
…未だにその体に、生に執着が無いというのか
未だに…生きると言うことを…
綾波「…死ね!そう言うのなら、ここで死ねば良い!」
顎と頸に手をかけ、引きちぎりにかかる
狭霧「待ってください」
背後から肩に手を置かれる
狭霧「…お願いします…綾波さん…やめてください…」
綾波「…黙れ、お前もお前だ、なぜ背を撃たない、やる気のないくせに一丁前に艤装を装備し私の前に立つ癖に」
狭霧「……貴方が、私にとって特別だから…だから、私にあなたが撃てるわけがないんですよ…」
綾波「……」
狭霧さんの方に拳銃を向けて撃ち込む
狭霧「…え…」
綾波「そうですか、あなたには、私が撃てませんか…そうですよね、そう誘導しましたから」
狭霧さんがよろよろと後退し、膝をつく
狭霧「…綾波…さ…」
綾波「特別な相手を撃てない…気持ちはよーくわかりますよ、でも、あなたは私の特別じゃない」
狭霧「……妹だって…」
綾波「そう言えば、あなたは私を攻撃できない、少なくとも躊躇うでしょう?……馬鹿馬鹿しい、私が作ったクローンがそんなに意思を持つなんて、笑えてきますね」
立ち上がり、狭霧さんの方に近づく
綾波「…ふ…アハハハハハハッ!」
狭霧さんに向けて何度か引き金を引く
腹部、脚、二の腕、頬…
引き金を引くたびに傷が増える
綾波「どうしました?打たれてるのに悲鳴の一つもあげなくては…つまらないでしょう」
背後からの回し蹴りを頭を下げてかわす
アヤナミ「……」
綾波「しまったなあ……先に殺さないから、起きてきちゃった」
アヤナミ「……これからする事は、全てあなたのためです」
綾波「…何を寝ぼけたことを」
アヤナミ「狭霧さんがあなたの妹だと言うなら、私は狭霧さんを護らなくてはならない」
綾波「…あんなでまかせを…」
アヤナミ「でまかせなんかじゃない、例えそうでも…私の知ってる綾波のために…私が1番そばで見続けた綾波のために…!」
綾波「……」