元勇者提督   作:無し

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Beginning of Twilight

横須賀鎮守府 執務室

軽巡洋艦 大淀

 

大淀「…はい、はい、私どもも被害を最大限抑えられる様に…はい…ええ、もちろんです……ええ…それでは、失礼します」

 

受話器を置き、外を睨む

 

大淀(こっちの事情もわかってないクセに勝手な事ばかり…自分たちでは何もしないクセに恥ずかしげもなく人を非難するあたり、程度が知れる…)

 

大淀「…終わりましたよ、お待たせして申し訳ありません」

 

綾波「いえいえ、こちらこそ急に来てしまい申し訳ありません、どうしても話がしたかった物ですから」

 

大淀「…お茶の一つでもお出ししたいところですが、不用意な事をしたくない物で」

 

綾波「どうぞお気になさらず、それよりも…」

 

大淀「先に伺っても?」

 

綾波「…どうぞ、まあ聞きたいことというのは電さんと夕張さんの居場所…かと思いますが」

 

大淀「…わかっているのなら、話は早そうですね」

 

綾波「…夕張さんからですが、殺しました」

 

大淀「…そうですか、勝手な事ばかりする人でしたから、不思議とは思いません、それより電ちゃんは」

 

綾波「おそらくネットの中です、リアルデジタライズという事象はご存知ですよね?」

 

大淀「…何故そんな事に?」

 

綾波「以前この鎮守府に襲撃があったでしょう?私たちが忍び込んだ時、偶然にも襲撃が被ったんです、今回同様に」

 

大淀「それで?」

 

綾波「…その時、夕張さんに聞いてるでしょうが、LSFDの実験を行なっていた様で、その際原因不明のリアルデジタライズが起こったと思われます…あれは特殊光による事象ですので偶発的に起こることもあるんです、体質も影響はしますけど」

 

大淀「……」

 

綾波「…不服そうな顔をしていますね?」

 

大淀「電ちゃんを取り戻すには?」

 

綾波「リアルとネットの融合度が疑似的に高まるLSFDは必須ですねぇ…でも今の不完全なLSFDでは足りない、もっと融合度を上げることができればLSFDの発動中にネットの中の人を取り出すなんて事もできるかと」

 

大淀「…何が欲しいんですか」

 

綾波「何も?あなたの要望に対して回答してるだけなので…さて、私のお話をしても?」

 

大淀「…どうぞ」

 

綾波「あなたの力が必要になりまして…いや、正確にはあなたの中のフィドヘルの力が」

 

大淀「続けてください」

 

綾波「…今返事をしてください、力を貸すか、貸さないか」

 

大淀「…何故」

 

綾波「返事次第で私のあなたへの協力の姿勢も変わります」

 

大淀「…いいでしょう…何をさせたいんですか」

 

綾波「そうですねえ……強いて言えば、LSFDを完成させるのに、あなたを使いたい…と言ったところか」

 

綾波さんが机に小さな機械を置く

 

大淀「それは」

 

綾波「LSFDの基本パーツです、これに碑文の力を組み込む…神通さんの力を借りてもいいんですが、電さんとあなたはフィドヘルに強い繋がりがある」

 

大淀「……それで」

 

綾波「あー、少し待ってくださいね」

 

綾波さんが拳銃を抜き取り、自身のこめかみに当てる

 

大淀「えっ」

 

引き金を引いたが銃声はしない

というより…拳銃と似てはいるものの…違う、なんだアレは

 

綾波「…ああ、これは違いますよ…ええ、大丈夫……っ…」

 

綾波さんが頭から倒れる

 

綾波「…はっ…あ……く…っ…」

 

大淀(何が起きて…)

 

綾波「…そ、それ…」

 

大淀「…これは」

 

足元に転がって来たひび割れたカートリッジを拾い上げる

 

綾波「くれますか…それ、ないと…私…」

 

大淀(…これを取り上げれば、今ならこの人を殺すのは容易なんだろうな…)

 

ジッと…ひび割れたカートリッジを見る

これは最後に夕張と話した際、見せてもらったものに酷似している

 

その時、夕張はこう言った

「私の発明が世界を守る」と

 

世界を守る、か

夕張は夢みがちなところがあるが…

 

 

 

 

 

綾波「…ふぅっ…助かりました、ナノマシンを全て機能停止に追い込んだものですから、身体がろくに動かなくて」

 

大淀「今のあなたの体はナノマシン頼り…ですか」

 

綾波「いいえ、ダメになってるのは脳だけです、思考速度を早くしすぎて、そのせいで発熱してそれでやられちゃいましてね、半分くらい死んでるんですよ、だからナノマシンで置き換えてたんですけど…視覚と聴覚のモニタリングがいい加減ウザかったので」

 

大淀「……」

 

綾波「あなたがこのカートリッジを私に渡してくれてよかった、やはり私は地獄に嫌われている……このカートリッジは、夕張さんが私にくれたものなんです、今の私が生きるには、これが必要不可欠なんです」

 

大淀「…それより…」

 

綾波「それより、あなたに先に伝えておくべきことがあります」

 

大淀「…なんですか」

 

綾波「夕張さんを殺したと言いましたが…嘘です、生きています」

 

大淀「生きている…?」

 

綾波「夕張さんは生きています、多分今は工廠にいるんじゃないでしょうか」

 

大淀「…本当に…?」

 

綾波「ええ、それで…それを確かめる前に聞いて欲しいのですが…私の達成したい目標についてです」

 

大淀「達成したい目標…」

 

綾波「…反存在クビアの完全撃破…この世界を侵す可能性の排除」

 

 

 

 

 

みなとみらい

重巡洋艦 青葉

 

青葉「…川内さんも居たんですね」

 

川内「うん、まあ…那珂の付き添いに来てたんだけど…立てる?」

 

青葉「なん…とかっ…」

 

川内さんに助けられ、立ち上がる

 

川内「…あの光…一瞬だけ見たけど…」

 

青葉「神通さんはメイガスと言っていました」

 

川内「……そっ…かぁ……使えるんだ、この世界でも…でも、それじゃあ…それは、良くないことだよね…この世界も、ネットに侵されつつあるって事だよね…?」

 

青葉「…おそらく」

 

川内「……私の中に、スケィスは居ない…となると、これか」

 

川内さんがカートリッジを取り出す

 

青葉「それは?」

 

川内「夕張から渡された、深海棲艦の力を得るカートリッジ…でも、これにはもう一つ力があって…ネットにも接続できる…らしい…」

 

青葉「……それで、どうするんですか?」

 

川内「碑文の力は…スケィス達は、元々The・Worldの中にあったもの…これをうまく接続できれば…とは思ってるんだけど」

 

青葉「……方法に関しては手詰まり、ですか…」

 

川内「まあね…とりあえず、引き上げようか…仮の復興拠点作ってるってさっき連絡あったし」

 

青葉「…ネットが回復したんですか?」

 

川内「うん、40分程度で回復したって」

 

青葉「……」

 

川内「どうかした?」

 

青葉「…私達は、ネットワーククライシスを防ぎに来たのに…結局防げなかったんだなって…」

 

青葉(というか、綾波さんの話を鵜呑みにするなら…私達は余計なことに注力して、防げる被害を防ぎ損ねたことになる…)

 

夕立「残り物発見っぽい」

 

川内「…大湊の夕立…?」

 

夕立「もうそこに夕立は居ないっぽい」

 

青葉「何をしに来たんですか」

 

夕立「回収するものができたっぽい…持ってたUSBメモリ、渡して?」

 

青葉(マクスウェルを…?いや、特定条件下において有用だとわかれば…それは欲しくもなるか)

 

川内「…やり合ったほうがいい?」

 

青葉「できれば渡したくはありません…」

 

夕立「川内さん、指輪、破損してるし…武器は尽きてるっぽい」

 

川内「…確かに、この指輪の艤装はもう役に立たないけど…はあ…」

 

川内さんがため息をついて俯く

 

夕立(…格闘戦…?いや、近づかせない…!)

 

川内「…ふっ」

 

夕立さんの方を向いて、息を吹くような動作…

そして、何かが光る

 

青葉(今、何か飛ばした?)

 

夕立「……あッ!?」

 

バチバチッと音を立てて何かが弾け飛ぶ

 

川内「チッ…電気バリア…!」

 

夕立(今、何か飛んできた…!?針?)

 

川内「…仕込みの武器じゃ無理かなぁ…視界を潰してもダメだろうし…」

 

夕立「…やるなら、とことんやるっぽい」

 

青葉「待ってください!…夕立さん、なぜ貴方なんですか?神通さんはさっきまで私といたのに、しようと思えばあのUSBを強奪できたのにしなかった…今になって何が変わったんですか?」

 

夕立「変わった…とは違う、役割が違うだけ…神通さんは、口が軽いし、悟られ易いから…深いところまでは知らない」

 

川内「…人の妹を好き勝手言ってくれるね」

 

夕立「妹?あんな風にやられておいて…まだそう言えるの?」

 

川内「言えるよ、血の繋がりとか、前の世界とか、艦娘としての姉妹艦とか…そういうの抜きにしてもさ…あんまりにも長い時間、一緒に居たんだよ、小さい喧嘩一つで…今さらそのつながりを絶てる程、安く無いんだよ」

 

夕立「ふーん……ちょっと羨ましいかも」

 

川内「白露のとこに帰って、甘えてみれば?」

 

夕立「…今は時期尚早っぽい、それに…夕立達は、帰れない覚悟をしてこの場に立った…ホントはこうなるはずじゃなかったけど」

 

青葉「やっぱり…この街の破壊は…」

 

夕立さんは俯いて首を振る

 

夕立「街の破壊自体は必要なプロセス…でも、ここ迄の予定じゃなかった、狭い区域の中でだけ起きるはずの騒ぎが…ネットの完全沈黙によって拡大して、この街の全てを破壊するに至らしめた…」

 

青葉「…ネットワーククライシスが止まっていれば、こんなことにはならなかった…?」

 

夕立「神通さんがガス爆発を起こした時も、ネットの接続が切れてたから、被害が拡大したっぽい…安全装置作動しなかったって」

 

青葉(…綾波さんを止めれば、全て止まると思った私は、やはり間違ってたんだ…)

 

夕立「でも、気に止む必要はない…本懐は果たした…闇の(とばり)が降りて、黄昏が世界を包み込んでも…大丈夫だって、教えてもらったから」

 

青葉「黄昏…?何のことですか…!」

 

夕立「…ちょっと待つっぽい、こちら夕立…回収はまだしてないっぽい…ぽっ!?…要らないって…どういうこと?……了解、帰るっぽい…」

 

川内「……なんだって?」

 

夕立「どうやら…コソコソする理由も無くなったっぽい、はあ…しんどいのはお互い様って事で…」

 

川内「…今回は大人しく返すけど、次はそうはいかないよ」

 

夕立「期待してるっぽい」

 

 

 

 

 

青葉「っ……酷い…」

 

川内「おーい…誰か居ないの…?」

 

…完全に街が壊れてる…

地面が裂けるように爆発してて、それがいろんな方向に…

 

川内「…ガス管ってさ、普通爆発しても大規模な爆発にはならないんだよ、ガソリン満タンの車が派手に爆発しないのと同じようにね」

 

青葉「…そうなんですか?」

 

川内「うん、だからホントはこんなには大爆発じゃないんだけど…神通にいいように遊ばれてさ、地面ごと叩き割ってたからガス管も何箇所か一緒にね…それで空気とガスが混ざって…ドカン」

 

青葉「じゃあ…」

 

川内「うん、爆発の範囲拡大の原因は私です…ってね……」

 

すでに鎮火はしているようだけど…

 

川内「緑地とか山じゃなくてよかったよ、それに…先に綾波達の騒ぎがあったし、そのおかげで人的被害も多分抑えられてる…」

 

青葉「…携帯、壊れてなければ他の人に連絡できるのに…」

 

川内「こっちの無線も、さっきの通信を最後にうんともすんとも……って…青葉、アレ見て」

 

青葉「え?……うっ…」

 

…死体…

しかも、深海棲艦に変質を始めてる…

 

青葉「…初めて見ました、その…深海棲艦になるところ…」

 

川内「…呪符あるんだよね、使える?…その…介錯、したほうがいいと思う…」

 

青葉「…ええ」

 

呪符を一枚放ち、焼き払う

 

青葉「……良い気持ちじゃありませんね…その…頭ではわかってたんですけど…どこか、違うって…信じたかったので…」

 

川内「……仕方ないよね」

 

青葉「本当に仕方ないんですか…?…私、私たちは…ここにネットワーククライシスを防ぎにきたのに、中途半端に手を出したばかりに…綾波さん達を無視していればもっと、もっと被害は少なかった…」

 

川内「それは結果論だし…これでもかなり被害は少ないほうだよ…きっとね……あー…車も何も無いとこの街を端から端まで歩くのはしんどいなあ…」

 

青葉「……できるだけ無事な区域に行きませんか?バイクがあるかも」

 

川内「免許あるの?」

 

青葉「はい、持ってないんですか?」

 

川内「んにゃ、自転車だけ」

 

 

 

 

 

青葉「やぁっと…ついた…」

 

ワシントン「青葉!無事だったのね、これでこっちのメンバーは全員かしら?」

 

川内「那珂は?」

 

朧「処置室です、その…非常に良く無い状態で…」

 

川内「……そっか、今ここは頭誰?」

 

朧「狭霧です、負傷してるんですけど…他に適任が居なくて」

 

青葉「…今どうなってますか?」

 

朧「とにかく怪我人の手当てに注力しつつ、襲撃に対する防御の体制を整えています、犠牲者の捜索とかは…その、まだ無理です」

 

川内「っていうかさ、ほかに動いてる部隊ないの?横須賀とか宿毛以外で動いてるとかないの?警察は?自衛隊は?」

 

朧「…一線を引いたところで防御姿勢を取っています…」

 

川内「なんで!?相手は深海棲艦じゃないんだよ?!」

 

ワシントン「…ニュースの類は見てないのね?」

 

川内「こんなとこいて見れるわけないじゃん!」

 

青葉「…携帯は壊れてて…」

 

朧「…2人とも、落ち着いて話を聞いてもらえますか」

 

川内「…何を?」

 

朧「……この襲撃、というか一連の騒動…一部の艦娘による反乱として、報道されています」

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