元勇者提督   作:無し

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第592話

離島鎮守府跡地

綾波

 

綾波「……っ…」

 

目を開き、眩しさのあまりに手で顔を覆う

ゆっくりと起き上がり、周りを見る

 

綾波「…気絶、してましたか」

 

夕張「うん、キタカミさんを転移させたあとにね…」

 

…既に限界近い状態だった、タルヴォスを抜き取り、保管したり、横須賀内部の家具の位置などを読み取って転移させる

 

綾波(…少し、疲れることをしすぎた…)

 

ベッドに座ったまま、後方に手をつく

指先に何かが当たる

 

綾波(カートリッジ?……っ…これは…!)

 

夕張「あー…それね、キタカミさん転移させた時に…」

 

…壊れている

完全に、使い切ったわけだ

 

綾波「そんな……」

 

これが無くては、私は僅かな時間しか活動できない…

いや、暗い森にさえ接続できればいい…他のカートリッジでもなんとか融通を効かせる事はできる

だが、それも森と脳に負担が…

 

夕張「…綾波?ちょっと良い?」

 

綾波「…なんですか」

 

瑞鶴「私なら、多少の治療はできると思うんだけど…ほら、イニスで」

 

綾波「……ステーキを生肉に戻せるのなら、その治療を受けても良いですよ」

 

瑞鶴「それは…無理」

 

綾波「私の脳は熱を帯び過ぎて、加熱された状態…まさしくステーキを生肉に戻すことができない限り、治療はできませんよ」

 

夕張「となると、カートリッジを作り直すしかないか…」

 

綾波「……夕張さん、お願いできますか」

 

夕張「うん…でも、またちゃんと作れるかどうか…」

 

綾波「あなたが頼りです」

 

夕張「じゃあ、横須賀に戻るね、ここじゃできないし…」

 

瑞鶴「待って、誰か来た」

 

綾波「……神通さん」

 

神通「どうも、さっきからブツブツと、独り言ですか」

 

綾波「いけませんか」

 

…神通さんの眼を持ってしても、蜃気楼を捉えることすらできていないか

 

神通「…いいえ、しかし…違和感がありました」

 

綾波「というと」

 

神通「…誰かと話していませんでしたか?」

 

綾波「いいえ…ああ、意識内の人と、会話していたのかもしれません」

 

神通「……そうですか、それなら、構いません……ここに報告書は置いておきます」

 

瑞鶴「……危な、ばれたかと思った」

 

夕張「…バレちゃいけないんだっけ」

 

綾波「ええ、神通さんなら川内さん達に生存を報告する可能性がありますし、そこから漏れればどうなるか」

 

夕張「…ここに長居するのもマズいか」

 

瑞鶴「じゃ、私たちは横須賀に行くから」

 

綾波「ええ」

 

…全てが全て、順調というわけではない

 

綾波(ネットワーククライシスの時に仕込んだ爆弾は、爆発したな)

 

各国で様々な論文がいきなり公開され、様々な意見が飛び交い、艦娘の排除へと世界が動き出す

これで、艦娘を進んで雇用し続ける国は僅かになるだろう

 

綾波(あとは、クビア顕現の時に…)

 

あとは、時間との戦いだ

 

 

 

 

Link基地

駆逐艦 狭霧

 

狭霧「…よし、こちらは終わりました、お待たせして申し訳ありません」

 

大淀「いえ」

 

狭霧「…これで、貴方の話の真偽を確かめにいけますね」

 

大淀さんの話は、正直信じ難いものだ

綾波さんについても、軽くしか聞かされていない

別の思惑のために利用されているのかもしれない

 

大淀「サイバー特区…は、知っていますよね?ここ青森に作られた情報処理特区です」

 

狭霧「聞いた事はあります」

 

大淀「アクセスしたりは」

 

狭霧「いいえ、そもそもなんの理由もなくハッキングするようなクラッカーとは違いますから」

 

大淀「では…まず、それを調べるにあたって、二つの手段があります」

 

狭霧「一つはリアル」

 

大淀「もう一つはネット…さあ、どちらにしますか」

 

…となると、ここはリアルから忍び込む方が、早いだろう

本当に脳が保管されているのなら、私達の手で奪取すれば肉体を作り出す事も容易…

 

狭霧「作戦には何人参加しても良いものか」

 

大淀「3.4人が限度かと」

 

狭霧「大淀さん、貴方は置いていきますよ」

 

大淀「勿論わかってます、私も死ぬ真似はもう御免ですから」

 

狭霧「……私、タシュケントさん、ザラさん、グラーフさん…の、4人かな…」

 

Linkは特殊状況下での作戦行動を主に訓練を積んできた、こういう潜入任務は十八番(おはこ)

失敗はしない

 

大淀「私は役にも立たなさそうですし…そろそろ失礼します…鎮守府を長く空けてしまいました」

 

狭霧「ええ、情報提供感謝します」

 

…しかし、こうなると…

どう話したものか

 

 

 

 

ザラ「サイバー特区内の、研究所の調査?」

 

タシュケント「…今更そんなことを調べても…何になるのかわからないけど」

 

グラーフ「必要なことなんだな?」

 

狭霧「…ええ、今、必要な事です……研究所と言うよりは」

 

地図を広げる

地上階4階、地下階3階の施設…

 

狭霧「…皆さんの国には死刑制度はありますか?」

 

タシュケント「確か、ロシアは一時停止だったかな」

 

グラーフ「廃止したらしいが」

 

ザラ「こっちもです」

 

狭霧「日本には、まだあります…私の憶測を交えた話ですが、構いませんか?」

 

ザラ「はい」

 

狭霧「…黒い森、と言う都市伝説があるんです、人間の脳だけでできた森…あくまでも比喩表現です、それほど大量の脳が保管されていると言うね」

 

タシュケント「…そんなの、無理じゃないの?」

 

グラーフ「大体、誰の…」

 

狭霧「私は死刑囚だとか、終身刑になったものだとか、そう考えていますよ…そうする事によって、要らない人間の脳でできた、巨大なコンピュータを作り上げる…それが黒い森だと思っています」

 

私は、綾波さんの改二艤装で一瞬だけ接続したけど…すぐに弾き出された

それ程のものだった

 

ザラ「待ってください、確か…綾波さん…」

 

狭霧「ええ、正常に活動する時に、黒い森に接続して脳の機能を肩代わりしてもらっているんです」

 

グラーフ「…そうか、綾波が絡んでいるのか」

 

狭霧「調査しておけば、綾波さんを一時的に無力化、拘束する手段になるかもしれません」

 

タシュケント「そう言う事なら喜んでやるよ」

 

狭霧「内部構造は外から軽く調べましたが…この地図にある通り、不明瞭な点が多く、目的の物はどこにあるのか、そして監視カメラなどのセキュリティはどうなのかも不明です…表向きは医療機器のメーカーですので、決して緩くはないでしょう」

 

グラーフ「よくそんな企業を名乗れるな」

 

狭霧「国絡みなんですよ…」

 

タシュケント「…出てくるのは、人間って事になるんだよね」

 

狭霧「ええ…なので、やり方としては先ず、セキュリティのハッキングからです、私がサイバー攻撃を仕掛けるので、タシュケントさん、システムに接続できそうなところにこの装置を」

 

タシュケント「わかった」

 

グラーフ「良いのか?派手にやれば次が…」

 

狭霧「構いません、その装置でローカルネットワークにオンライン接続し、内部の機器をハックします、その後はこちらからの指示を受けて動いてください」

 

ザラ「…人と会ったら」

 

狭霧「殺さない様に、殺さない事を心掛けて…ただ、やられるくらいなら、やって構いません」

 

グラーフ「私がこの作戦にいると言う事は…」

 

狭霧「ええ、ドローンで周辺の様子を、流石に艦載機は使えません」

 

グラーフ「ああ…」

 

狭霧「では、早速準備を…ん?」

 

今、床に何かが擦れる音が

 

タシュケント「…誰かいる!」

 

グラーフ「捕まえろ!!」

 

2人が飛びかかる

 

秋津洲「ぎゃんっ」

 

ザラ「あ…」

 

狭霧「秋津洲さん?」

 

秋津洲「ひっ…や、やややややヤバいかも!殺さないでほしいかも〜!」

 

狭霧「いや…えっと」

 

グラーフ「なにしてたんだ」

 

秋津洲「こ、ここから大艇ちゃんを撤収させたいから許可を取りに来たのかも〜!」

 

狭霧「……明後日まで待ってもらえますか?」

 

秋津洲「わ、わかったかも…」

 

ザラ「…今の話、漏らさないでくださいね?」

 

タシュケント「いや、不安だし此処でやっちゃわない?」

 

秋津洲「へっ!?」

 

タシュケント「国の施設に侵入する話なんて、漏れたらマズいしさ、此処で殺しちゃダメかな?」

 

グラーフ「確かに、その方が安心だな」

 

狭霧(二人とも、悪ノリがすぎますね…)

 

狭霧「ちょっ…」

 

ザラ「んーちょっといいですかー!…流石に殺すのは可哀想ですよ、不慮の事故ですし…」

 

狭霧「そうですね、だか…」

 

グラーフ「じゃあこうしよう!二式大艇を一機、人質として預かろう!」

 

秋津洲「かもっ!?」

 

狭霧「なっ…?」

 

タシュケント「あーそれは名案だね、二式大艇が死ぬほど大事みたいだし?」

 

秋津洲「だ、大艇ちゃんは許してほしいかも!」

 

グラーフ「じゃあ消すしかないな…お前が持っていると言う他の二式大艇も後々解体されるんだろうなあ」

 

秋津洲「えっ…」

 

タシュケント「どうする?一機、置いていくかい?…そうしたら…そうだねえ、適当な頃に返してあげてもいいけど」

 

ザラ「勿論貴方の命も保証します」

 

狭霧(そう言う狙いか…いや、流石に止めないと…)

 

秋津洲「お…置いていくかも〜!だから!命と他の大艇ちゃんだけは!勘弁してほしいかも〜!」

 

グラーフ「よしよし、話がわかるじゃないか」

 

タシュケント「もう行って良いよ」

 

狭霧(止める間なく終わってしまった…)

 

狭霧「ちょっと、流石にこれは…」

 

ザラ「必要な事ですよ、だって海外に飛べる飛行機なんて今手元に無いのはマズいでしょうから」

 

…確かにそうだ、情報操作で海外も艦娘排除に動き始めてる

私たちが必要になる場所はたくさんあるはず…

 

狭霧「…仕方ない、仕方ない……」

 

グラーフ(よし、うまく丸め込めたな)

 

タシュケント(ナイス!グラーフ、ザラ)

 

ザラ(綾波さんならこうはいきませんけどね)

 

狭霧「では、準備をして裏手に集合」

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