元勇者提督   作:無し

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Gambit

宿毛湾泊地 執務室

教導担当 キタカミ

 

キタカミ「えー、報告…していい?というか、しなきゃダメ?書類にもまとめたし後で適当に読んでおいてよ」

 

アケボノ「ダメです、それに書類一枚にまとめてるあたり、ずいぶん簡素ですね?どういうことか説明してください」

 

海斗「僕もキタカミの口から聴きたいな」

 

キタカミ「んじゃ、なんかちょうだい?」

 

アケボノ「…なんか、とは何を指しているのですか、褒章の事ですか?」

 

キタカミ「まあ…そうかも?」

 

海斗(キタカミが何かを求めるなんて珍しいな…)

 

海斗「わかった、何が欲しいの?」  

 

キタカミ「んー…さあ、適当に選んどいてよ」

 

アケボノ「適当な…」

 

キタカミ「じゃあ、報告するけど…Link、アメリカ含め全員無事に帰ってきたよ…あー嘘、無事じゃない、特にアヤナミとか」

 

アケボノ「その辺りはもうわかっています、私たちが出立した後のことを…」

 

キタカミ「なら、デモ隊は一度完全に退いた、今はなんか2、3人で20分くらいやって帰ってを繰り返してるよ、楽に入れたっしょ?」

 

海斗「うん、助かったよ」

 

キタカミ「そんでさ、あ……忘れてた、ごめん、特務部の人が明日来るって、Linkの奴らについて話があるらしいよ」

 

海斗「Linkの…?」

 

キタカミ「うん、青森のニュースあるじゃん、あれやったのLinkだから」

 

海斗「えっ」

 

アケボノ「…それ、大丈夫なんですか?」

 

キタカミ「大丈夫大丈夫、ホントはやばかったんだけど、特務部が気を利かせて守ってくれたみたいでさ」

 

海斗「…何でそんなことになったのかは?」

 

キタカミ「あー…それは狭霧から報告…いや、いいか…提督、狭霧達はその爆発した施設でCC社とALTIMIT社って会社の関与を確認したんだよ」

 

海斗「…CC社…」

 

キタカミ「表向きには医療品メーカー、サイト読んだらかなりデカデカとやってるタイプのね…だけど、その実は…臓器売買とかに関わってるくさいんだよねえ…」

 

海斗「臓器売買…?」

 

キタカミ「そーそー、で、まあヤバくなって逃げてきたのが狭霧達…爆発したのは…」

 

アケボノを指差す

 

キタカミ「アンタの偽物がコルベニクを呼び出そうとしたせいだってさ」

 

アケボノ「偽物が碑文を?…悪い冗談ですね」

 

キタカミ「ネットの写真見た?綺麗に円形に消し飛んでたよ、どんな爆弾でもああはならないね、だからこそ…私は狭霧の与太話を信用した」

 

海斗「…狭霧の言ってることは真実だと思う、ただ、今気にしなきゃならないのはみんなの安全だ」

 

キタカミ「……かもね…デモとかに関してはその薄っぺらい書類読んでよ、面倒だしさ……抗議の電話はもう電話線抜いて無視してたから知〜らないってね」

 

アケボノ「……なんというか、キャラ変わりましたね」

 

キタカミ「そう?」

 

海斗「明るくなったね」

 

キタカミ「えー?そうかなー、えへへ」

 

アケボノ「提督、ストレートに軽薄になったというべきです」

 

キタカミ「あん?」

 

アケボノ「事実でしょう」

 

キタカミ「お出かけ楽しんでたアンタには分からないだろうけど、こっちはストレス溜まってんのさ、アトランタとガンビアベイが石投げられたってよ、2人とも怪我はしてないけどさあ…被害者を押さえつけなきゃいけないのは納得できないよね」

 

海斗「キタカミ、そういう事は先に報告して欲しいな」

 

キタカミ「…じゃ、差別とデモの無いとこへの慰安旅行が欲しいって要望も報告しとくよ」

 

海斗「できる限り期待に応える様にするよ」

 

アケボノ「……」

 

キタカミ(…足音?誰だろ…うるさいなあ…)

 

誰かが走ってくる足音…

そして扉を荒っぽくノックして扉が開く

 

阿武隈「失礼します!…あ」

 

阿武隈がばつが悪そうにこっちを見る

 

キタカミ「廊下は走っちゃダメだよ、で?」

 

阿武隈「し、哨戒部隊が大量の深海棲艦を目撃したと!急ぎ増援が必要だと考えます!出撃許可を!」

 

海斗「…アケボノ」

 

アケボノ「わかりました、同行します、阿武隈さんと私、それから翔鶴さんで行きましょう」

 

阿武隈「お願いします!」

 

アケボノが提督に一礼してさっさと部屋を出る

 

キタカミ「…私も、仕事しよっかな」

 

海斗「キタカミ」

 

キタカミ「…何?あー、青葉に渡す物の話?ごめん忘れてたわ」

 

海斗「そうじゃなくて…キタカミ、もしかして調子悪い?」

 

キタカミ「なんでさ」

 

海斗「阿武隈だって…わからなかったんでしょ?だから調子が悪いんだと思ったんだけど…」

 

キタカミ「なんでさ、ただ…急いでたから…」

 

海斗「だったら質問の後に注意すればいいと思うし、それに…よく廊下を走るとドア越しでも怒鳴られるって…」

 

キタカミ(…不知火の時?それとも誰の…いや…)

 

海斗「別に言いたく無いことなら無理に言わなくて良いんだけど…ただ、体調が悪いのかなって思っただけだから」

 

キタカミ「……提督はさ、私が弱くても、ここに居ていいと思う?」

 

海斗「勿論…だって、そうじゃなかったら僕は真っ先に蹴り出されるだろうからね」

 

キタカミ「…ふふっ…そっか……」

 

キタカミ(訓練、参加しときますかぁ…負けて死ぬのは良いけど、守れないのは…嫌だもんね)

 

 

 

 

波止場

 

キタカミ「おー、無事じゃん」

 

アケボノ「…ええ、交戦はありませんでした、しかし…」

 

阿武隈「キタカミさん…哨戒班が見た深海棲艦…全部、死骸でした」

 

キタカミ「は?」

 

阿武隈「別の誰かが、深海棲艦を殺して回ってるんです…」

 

キタカミ「…何が起きてんの?」

 

 

 

 

 

離島鎮守府跡地

綾波

 

綾波「夕立さん、戦況は」

 

夕立「正面入り口は完全制圧、建物内部に入ってきた奴らは完全に包囲したっぽい、それと海上部隊は深海棲艦の撃滅を完了、撤収中」

 

綾波「ちゃんと罠を使って戦わせてください、裏手の山は?」

 

夕立「まだ中腹で止まってるから問題ないっぽい」

 

綾波「わかりました、あなたはもう休んで構いませんよ」

 

夕立「…攻められてるのに?」

 

そう、攻められている

この廃墟に大挙して軍勢が押し寄せている

 

綾波「私は守りの戦いにおいて、無敵です」

 

しかし、相手が悪過ぎた

私にとって、防衛は得意中の得意なのだから

 

この廃墟が私達の居場所

そして、この堅牢な要塞に足を踏み入れた敵は身動きのできないままに死んでいくしかない

 

 

 

綾波「どうやら悪くない状況のようですね」

 

浦風「入口取り返して包囲した奴らは爆薬で粉微塵に消しとんだし、新しく入ってこようとしとるやつらも機銃で牽制しとります、言われた通りやったら…なんや、拍子抜けや」

 

山風「…裏手の山は…さっき、ワイヤートラップが作動してたから…起爆装置の電源を入れ、ました…」

 

綾波「上々です、しかし…良く付き従ってくれました、あなた達だって死ぬのは怖いし、痛いのは嫌なはずでしょう?…私と一緒に来ても、その嫌な思いをするリスクを背負うばかりだというのに」

 

山風「…生き方を…知らないの……人間としての、生き方」

 

浦風「そう…みんな知らん、それでも何とか人として生きることを試みた奴らもあるが、ウチらには怖くて堪らん…今日を生きてられるのは、綾波さんの側におる時だけや」

 

綾波「なら、無事に敵を退けねばなりませんね……おや、鬼級のご到着か」

 

今戦っている相手は人間ではない、深海棲艦だ

バケモノどもだ

 

装甲空母鬼「……」

 

綾波「おや、そんな死にそうな顔をしないでください、あなたでは私の相手にはなりません、なので…山風さん、浦風さん、あなた達が相手をしてください」

 

山風「え?」

 

浦風「…あんな強そうな深海棲艦の相手しろっちゅーんか!?」

 

綾波「大丈夫、戦闘の基礎は教えましたし…装甲空母鬼、あなたがこの2人を倒せたのなら、話くらいは聞きますよ」

 

装甲空母鬼「約束デス」

 

綾波「ええ…ほら、向こうはやる気です」

 

浦風「焚き付けたのは…綾波さんじゃ」

 

山風「で、でも…戦わないと…殺される」

 

綾波「私はここで見物していますから」

 

装甲空母鬼「……行ケ」

 

装甲空母鬼が艦載機を放つ

 

浦風「本気か…!?ウチらで勝てる相手なんか!?」

 

山風「わかんない…!」

 

対空母戦のセオリーは、艦載機を撃ち落とすことに専念する

艦載機を失った空母は撃ち放題のただの的…

 

でも、2人は背中を向けて逃げ始める

 

装甲空母鬼「…?…追エ」

 

装甲空母鬼は艦載機を操りながら2人をおいかける

 

浦風「山風!ええな!?」

 

山風「わかってる…!」

 

建物の内部に逃げ込む2人、追いかけて建物に入る装甲空母鬼

 

綾波(ああ、勝負あったな…)

 

建物に入るというのは最悪の選択だ

なぜなら艦載機は小回りが効かない、というより、あの2人には近接戦闘と罠に嵌める戦いを重点的に教えた

それに対して過去に装甲空母鬼といた時に教えたのは艦載機運用のことばかりだ

言うまでもないことだが、私は接近戦を挑むなと教えたのだ

 

装甲空母鬼が私の言うことを聞かなかった時点で勝ち目はない

 

浦風「こっち来おった!…っぐ…!」

 

浦風さんは注意を惹きつける役割

わざとやられると言う役割だ

 

浦風(直撃せんでもこんなダメージ受けんのか…!怖くて足が動かん!…山風、はよしてくれ…!)

 

山風(今なら、注意が向いてるから!)

 

散弾銃の音、そして爆発音

 

深海棲艦の肉体なら圧倒的な力の差で一方的に戦えると勘違いしたのだろう

なんと哀れなことか

 

深海棲艦だって、殺そうと思えば簡単に殺せる

 

装甲空母鬼「ギッ…アアァァアア…!シ、東雲様…!」

 

綾波「“相変わらず”…あなた達は、私を“そう”読んでくれるのですね、もう意味のない事ですが」

 

腹部と両腕が穴だらけのボロボロの装甲空母鬼を見下ろす

 

綾波「対深海棲艦弾、私が開発した物です、使える銃火器は限られますが…凄い威力でしょう?」

 

装甲空母鬼「シ、東雲様!東雲様ァ!」

 

綾波「何を縋っているのですか、あなたは私を殺しに来た、いや…利用できるように脅しに来たのでしょう?…わかっていますとも」

 

大きなため息が、つい出る

 

綾波「監視ができなくなった途端これとは、臆病にもほどがある…ヴェロニカ・ベインと話す必要がありますね」

 

装甲空母鬼「オ助ケヲ…!オ助ケ下サイ綾波様…!痛イ、痛インデス!ズット痛クナカッタノニ!」

 

…かつての同胞がこれとは、もはや哀れという言葉すら似つかわしくない

 

綾波「……2人とも、楽にしてあげなさい」

 

装甲空母鬼「ヒッ…!」

 

山風さんが頭に散弾銃の銃口を押し付ける

 

山風「ごめんなさい…痛いのは、私も嫌だから…」

 

くぐもった銃声で、懇願の声が止む

 

綾波「良い子ですね、ちゃあんと…仕事ができた……あとは雑魚の掃討です、浦風さん」

 

浦風「…」

 

綾波「一度全員を引かせなさい、怪我をしている者も居るでしょう、手当てもしてやりなさい、正面入り口と西側入り口は死守させて下さい、残った場所は一度くれてやりなさい」

 

浦風「おう、了解じゃ…」

 

綾波「それと、さっきは敵が目の前にいましたから指摘しませんでしたが…言葉遣い、戻ってますよ」

 

浦風「…すみません、わかりました」

 

綾波「戦闘時の高揚で言葉が崩れる事は大目に見ます、しかし、それ以外ではできる限り言葉遣いに気をつけなさい、恥をかくのはあなたですよ」

 

浦風「はい」

 

綾波「大丈夫、あなた達は優秀な子です、やればできる…良いですか?あなた達の家を守るために、明日を得るために」

 

浦風「全部、払い除けて…」

 

綾波「そうですよ、海上部隊ももうすぐ帰って来ます、挟み撃ちにして全部倒す」

 

浦風「わかりました」

 

綾波「…あなたの個性を殺すようなことを言ってすみません、私の前では喋り方一つ自由がないのは辛いでしょう」

 

浦風「…気にしないように、してます」

 

綾波「そうですか」

 

…あまり残されている時間は長くはないのに

できる最大のことをやり遂げたいだけなのに

 

綾波(…っ…)

 

綾波「…私は下がります、何かあったら夕立さんを」

 

山風「はい」

 

浦風「了解しました」

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