元勇者提督   作:無し

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記録 進む為

宿毛湾泊地

重巡洋艦 青葉

 

青葉「き、キタカミさんが失踪した!?」

 

加賀「しっ…声が大きいわ、彼女が面倒を見ていた子達が動揺するでしょう」

 

青葉「あ…ごめんなさい」 

 

加賀「特に、海防艦の子達…キタカミさんを探して泣いていたらしいわ、今は翔鶴が面倒を見ているけれど、とても不安がっているの」

 

青葉「…それで、私に面倒を見ろ…と?」

 

加賀「そうじゃ無いわ、キタカミさんの居所を知らないかと思って」

 

青葉「いや、知らないです…」

 

加賀「そうよね…どうしたものかしら…」

 

加賀さんに声をかけられて数分後にはそれが泊地全体に伝わっていた

書き置きも見つかったらしく、それには

[武者修行の旅に出ます。

探すのは時間の無駄なんで、やめといたほうがいいよ。

あと私の部屋に軟禁してる摩耶とアトランタを海防艦と駆逐のガキの守役にすると良いと思うから、そんじゃそういう事で]

と、あったらしい

 

摩耶さんが本当に居たのは驚きだったけど…

 

摩耶「…電車賃が無くて帰れねーんだよ」

 

との事で、正式に艦娘になったわけでも無い摩耶さんはその場凌ぎでキタカミさんの部屋にいたらしい

 

青葉(あとは、これか)

 

USBメモリ…司令官に渡された物だけど、どうやら映像が入っているらしい

 

青葉(確認しないと)

 

 

 

 

USBの中に入っていた映像は、平たく言えば私が作戦の間、司令官が過去のThe・Worldを見てきた記録映像

第4の八相、第四相、運命の預言者、フィドヘル撃破までが記録されていた

 

ただ、そう…私が興味を惹かれたのは、フィドヘルでは無かった

 

 

 

The・World R:1

Δサーバー 隠されし 禁断の 聖域

       グリーマ・レーヴ大聖堂

 

鏡のように磨き上げられた床に並べられた長椅子

その先にある、鎖に囚われた少女の像

 

いつ見ても、ここは変わらない

 

儚く美しい場所

 

そして、たった2人

 

ブラックローズ「アタシの弟はね…ここで意識不明になったの」

 

カイト「…!」

 

ブラックローズ「隠すつもりはなかったんだけど、なんだか言いそびれちゃって…ここで何が起こったのか、自分の目で確かめたかった、でも、1人じゃ怖くて来れなかったから……」

 

ゆらゆらと、天井の振り子が揺れる

 

ブラックローズ「今もそれは一緒、怖くて怖くて仕方ない……でもね、アンタがいたからここまでやってこれたんだよ…なのにアンタまであんなこと言い出したら…アタシどうすればいい?」

 

ブラックローズさんが一歩近く

 

ブラックローズ「お姉ちゃんは我慢しなきゃダメ?お姉ちゃんはいつも元気じゃなきゃダメ?…アタシだって……アタシだってねぇ……」

 

カイト「ブラックローズ……泣かないでよ…」

 

ブラックローズ「ば、バカねぇ!誰が泣いてるって?見えもしないくせに、勝手な想像で言わないでくれるっ!」

 

カイト「っ……」

 

ブラックローズ「まぁた、そうやって…てんてんてんじゃないっちゅーのっ!」

 

カイト「…ごめん…あやまるよ、オルカのことも、異変のことも、一人で背負ってた気になってた…みんな、どうにかしたいんだよね…」

 

最奥のステンドガラスから入る光が、幻想的に世界を照らす

 

カイト「ぼくだけじゃない、こんなこと、みんな、早く終わりにしたいんだよね」

 

ブラックローズ「うん……」

 

カイト「今、自分たちにできることは何か?とにかく…良いと思えることをやっていこう…そうすることでしか、前に進めないから」

 

ブラックローズ「うん、また一緒に頑張ろっ!きっと、うまくいく…へへ、アタシのカンは当たるんだからぁっ!」

 

カイト「(笑)」

 

ブラックローズ「じゃ、アタシ弟見てくるね」

 

カイト「病院?」

 

ブラックローズ「うん、来てくれてありがとね」

 

カイト「こっちこそ…ありがとう」

 

二人がエリアを出て行く

 

カイト「……今のが、過去の…」

 

…そうだった、この映像は司令官の画面をキャプチャした物だった…

 

カイト「…あれ?……腕輪に共鳴して……あの鎖か…」

 

少女の像を縛る鎖がいくつか薄らと発光する

 

カイト「……これは…スケィス…イニス…メイガス…」

 

三本の鎖が砕け散る

残された鎖は、5本

 

カイト「……」

 

右腕を持ち上げると、鎖が強く発光する

 

カイト「…フィドヘル、ゴレ、タルヴォス…コルベニク……これは…?」

 

一本だけ、発光していない

 

カイト「…マハ?」

 

マハ…

第六相だけ…

 

カイト「……マハだけ…居ない…?」

 

居ない…って?

 

 

 

 

気になったのはそこだけだった

フィドヘルも、比較的あっさりと倒された…

 

倒された際の予言は…司令官が「同じだ…」と呟いていたあたり、聞けばわかるはず

 

 

 

 

宿毛湾泊地 執務室

 

青葉「あの、司令官」

 

海斗「ごめん、少し待ってくれるかな…アケボノ、こっちの書類は郵送しておいて、それと明日また横須賀に行かなきゃいけなくなったけど、留守を任せる事になると思う」

 

アケボノ「了解しました」

 

青葉(か、かつてなく忙しそう…タイミング悪かったかなあ…)

 

海斗「一息ついたら声をかけるよ、それまでゆっくりしてて」

 

青葉「い、いえ…急ぎでは無いので…また改めて」

 

海斗「ごめん」

 

執務室を出る時、すれ違いに阿武隈さんが入って行く

 

阿武隈「提督!深海棲艦の死骸か漁港に大量に流れ着いたってクレームが…!」

 

海斗「…わかった…悪いけど、長門達に声をかけて…」

 

青葉(そういえば、昨日大量の深海棲艦が死んでたって……大規模戦闘も離島鎮守府なら気にしなくて良かったのに…)

 

それよりも深海棲艦を大量に倒したって、誰が?

 

青葉「……はあ…あれ」

 

ワシントン「あ、青葉、ちょうど良かった」

 

青葉「ワシントンさん?」

 

ワシントン「良かったら一緒に買い出しに行かない?その…預かってる子達のお菓子とかを買いに行くんだけど…」

 

青葉「大変そうですね、お手伝いしますよ!」

 

ワシントン「本当!?ありがとう!」

 

青葉(考えるのは、後でいいや)

 

 

 

 

離島鎮守府跡地

キタカミ

 

キタカミ「送ってくれてありがとう、提督達にはうまく言っといて」

 

イムヤ「了解」

 

キタカミ「……にしても、イムヤが内通者なのは知ってたけど、まさかねえ」

 

朝潮「私は、借りが有りますので」

 

キタカミ「その借りも元を辿れば綾波のせいじゃないの?…本当は別の理由があるんでしょ」

 

朝潮「……」

 

イムヤ「まあまあ、それは置いといて…キタカミさん、元気でね」

 

キタカミ「そーね、じゃあまあ、また」

 

朝潮とイムヤを見送る

 

キタカミ「さて、出てきて良いよ……って」

 

横に倒れて飛んできた砲弾をかわす

 

キタカミ「ちょっと待ちなよ、戦う気は…」

 

キタカミ(っ!ヘリの音…!)

 

右手に持っていた杖の先を向け、取手のトリガーを引く

飛び上がったヘリのプロペラのローターを撃ち抜く

 

キタカミ「……っ…」

 

プロペラがバラバラに飛び散り、そのうちの一枚が私の頬を薄く切りつける

 

キタカミ(腕、鈍ったかなあ…)

 

夕立「…2人目」

 

キタカミ「あ?」

 

夕立「このヘリ落としたのは2人目っぽい…そもそも、3回しか使えてないけど」

 

キタカミ「…そりゃ光栄だわれ

 

夕立「…試しに標的に使ったら、自分でも当てられないくらい…艦載機とは違うのに、どうして当たるの?」

 

キタカミ「そりゃあ…今まで練習してきたからね、味方を守る為に、私は最強になろうとしたし…」

 

夕立「……素敵なパーティ…しましょ?」

 

夕立の艤装が音を立てる

何が起きたのかは正確には掴めてないけど…

 

キタカミ(ヤバそうだねえ…杖に仕込んだ小型の主砲じゃ…話にならないし、弾込めないと撃てないし……)

 

夕立「…行けッ!」

 

キタカミ「…マジか」

 

ミサイルが空に向かって飛び出す

そしてこちらへと…

 

キタカミ(1発ずつ込めて撃ってたら間に合わんし…つーか、これは……)

 

かなりの小型だし、オモチャみたいだけど…

多分、威力は本物並みだ

 

つまりまあ、防げなければ死ぬ

 

キタカミ(仕方ない、やりますか)

 

砲弾を一つ掴み、さっさと杖に込めて向ける

 

キタカミ「………まだ」

 

着弾まであと5秒か?それとも4秒か

一瞬で蹴りをつけなくてはならない

 

カートリッジを握りしめ、引き金に力を込める

 

寸分の狂いも、一瞬の遅れも許されない

この刹那の早撃ちは、予測によって成り立つ

 

その瞬間が来ると…予測して

 

キタカミ(来い!)

 

引き金を引き、放たれた弾丸が小型ミサイルを弾き飛ばす

 

ミサイルがぶつかり、砲弾がぶつかり、誘爆する

 

キタカミ「………はっ…死ぬかと思った」

 

パンパンと衣服についた煤を払い、弾をこめて夕立に向ける

 

夕立「……」

 

キタカミ(…笑ってる?…チッ、余裕綽々かよ………いや!)

 

大きく体を沈める

頭の上を何かが通過した…

 

キタカミ「…ハッ……なるほどねえ…遊びに来たっていうか、用事があって来ただけなのに…ここでホントに消すつもり?」

 

神通「必要とあらば」

 

…今真上をすり抜けたのは…神通から伸びるAIDAの触手

破壊力は碑文のそれと遜色もないのに…それを、全力で振るうか

 

キタカミ「今の私は碑文の力すらないんだっての…非力な女の子相手によってたかって」

 

神通「その物言いをするのなら、私達だって非力な女の子ということになるのでは」

 

キタカミ「おー、でも2対1なんだしさあ…っ」

 

迫るAIDAの腕を杖でいなす

 

神通「やはり、あなたは異常だ…碑文使いの力を失い、全てが人間のそれと遜色無いはずの貴方がなぜ今の攻撃を見切り、かわせるのか…先程のミサイルを全て破壊する技量も含め…ただの人の領域を超えている」

 

キタカミ「んな事ないって、それより…マジに話聞いてくれんかね、私家出してきただけなんだしさ」

 

神通「…家出?」

 

キタカミ「そーそー、今の私じゃ弱いなあって、思ってさ?」

 

夕立(冗談キツイっぽい)

 

キタカミ「頭おかしくなりそうになりながらなんとか海渡って来たんだよ?もう少しなんかあるでしょ」

 

せっかく我慢して海を渡ったのに、この言われようではやっていられない

 

キタカミ「で?綾波は何処よ」

 

夕立「……」

 

神通「答えられません」

 

キタカミ「じゃあいいや、えーと、ここの奴らって普段何処にいんの?」

 

神通「なんでですか」

 

キタカミ「…正確には、アンタらのとこの部隊に用が有るだけなんだよね、深海棲艦のこと皆殺しにする強〜い奴らにさ」

 

夕立「どうして」

 

キタカミ「……私が強くなる為に」

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