元勇者提督   作:無し

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Commando unit

離島鎮守府跡地

キタカミ

 

キタカミ「…へえ、こんな事になってんの?」

 

綾波「そのようです、しかし…青葉さんの事に構う暇はありませんよ」

 

キタカミ「……わかってるって」

 

銀行強盗が入ったって話は昨日、まあ、青葉がどうなったかは…今は気にする暇はない

 

キタカミ「で?紹介してくれるんだよね」

 

綾波「入ってきなさい」

 

綾波の声に従い、6名の駆逐艦と思しき艤装をつけた少女が入ってくる

 

キタカミ「あんまし強そうじゃないね」

 

綾波「…ある意味、当然です」

 

キタカミ「…?」

 

綾波「みなさん、この方はキタカミさん…あなた達と共に行動する事になる人です、覚えておいてください」

 

キタカミ「え?…面倒押し付けられてない?」

 

綾波「名乗りなさい、旗艦、そして補佐艦」

 

浦波「遊撃隊、旗艦、浦波です」

 

磯波「同じく遊撃隊所属、補佐艦、磯波です」

 

キタカミ「補佐艦?」

 

綾波「遊撃隊は基本的に複縦陣での戦闘を行います、その為、旗艦の役割を果たせる人間が2人必要なんです」

 

浦波「そして、右から順に、野分、嵐、萩風、舞風です」

 

キタカミ(こいつらが、あんだけいた深海棲艦を?)

 

綾波「…キタカミさん、事実です、彼女達が百をゆうに超える深海棲艦を撃破した…私の新たに作った部隊です」

 

キタカミ「どうやって」

 

綾波「キタカミさん、私はかつてあなたに言いましたね、チームで動く事は…逆に自身の動きを制限し、独力でこそ力を発揮できるあなたや私にとっては足枷にしかならない…と」

 

キタカミ「……否定する?」

 

綾波「いいえ、私もあなたもチームとして動くのは向いていません、ですが、この人達は…それに適性を見せた…だから私はこの人達で、全く新しいチームを組んだ」

 

キタカミ「全く新しい?」

 

綾波「…通常、砲雷激戦の際、一撃二撃で敵は仕留め切れません、当然です、キタカミさん、あなた達が異常なだけでね?…なので、我々もそうあるべきとして…まず全体にあるのがオートガードカートリッジ」

 

キタカミ「電撃のバリア」

 

綾波「そして、低くない耐久性を利用する事で、多少無茶が効くようになった…もちろん、死なないための無茶です、といっても、砲雷撃の精度はあなた達に遠く及びませんが」

 

キタカミ「……」

 

艦娘ってのは、基本的に深海棲艦を倒すのに主砲と魚雷を使う

で、私はその精度をとことん磨きに磨いて、戦ってきた

 

綾波が今言った事は、私の生き方への否定とも取れる…

 

綾波「そう怖い顔をしないでください、私が言いたいのは、変化の必要性です…カートリッジを主体に戦う特殊部隊のようなものなんです」

 

キタカミ「じゃあ、カートリッジに適性があるって話?」

 

綾波「いいえ、適正で言えば中程度、決して強くは…ああ、すみません、気を悪くしないで…」

 

浦波「いえ…事実ですし」

 

キタカミ(…?)

 

綾波「阿武隈さん、不知火さんは…お二人とも、一騎当千の実力者です、しかし、あなたが彼女らを起用するとしたら?どのような作戦を建てますか」

 

キタカミ「……まあ」

 

あの2人ならどんな作戦に出しても一定の成果を出す

でも、この前も演習して思ったが阿武隈は攻めが弱い、不知火は前に出過ぎる

 

キタカミ「大物とはやらせないかな、危なっかしいし」

 

綾波「あなたならそう言うと思いました、しかし、私は逆です」

 

キタカミ「…大物とやらせろって?」

 

綾波「事実…その2人に敗れたんでしょう?」

 

キタカミ「……なんでそこまで知ってんのさ」

 

綾波「予想です、あなたが私に救いを求めてやってくる、それは並大抵の理由ではありません…誤射というのも大きな理由でしょう、しかし…本質は?」

 

キタカミ「本質?」

 

綾波「あなたは人間です、人間は感情で動く…誤射の恐怖、海への恐怖を超える、何かがなくては私に会いにくるとはならない」

 

キタカミ「…言っとくけどさあ、大袈裟なだけで、本当は負けてないよ、誤射してやる気無くしただけだから」

 

綾波「本音は?」

 

キタカミ「だから、そんなんじゃないって!」

 

綾波「おや…なんにしても、あの2人なら、カバーをし合う実力もあるし、独力で格上を倒す力を十分に持っている…そして、そこに強いチームがカバーに加われば」

 

キタカミ「強い、チーム…Linkみたいな?」

 

綾波「Linkは素晴らしいチームでした、今なら困難な作戦も自力でやってのける事ができる、私がいなくても生きていける」

 

キタカミ「……」

 

綾波「さて、彼女達遊撃隊は…敵を捕捉する、拘束する、そして可能なら撃破する…その三つの目的を持っています」

 

キタカミ「3つの目的?」

 

綾波「というか、そもそも…まず意識が違うんでしょう…私たちって、戦うメリットはないんです」

 

キタカミ「…待って、そうだよね、あんたらが深海棲艦と戦うのはなんでよ」

 

綾波「自分の身を守るため…死なない為に戦うんです、浦波さん」

 

浦波「はい、私達は金銭を得ていません、食料はこの島に自生していた作物、および周辺の魚介類、鳥類を主としており、わずかながら本土より拝借した保存食で飢えを凌いでいます」

 

キタカミ「…弾薬は」

 

綾波「それも本土への襲撃の際に、撤退する代わりとして貰いました…横須賀から」

 

キタカミ「なるほどね、艤装、燃料、弾薬、鋼材、ぜーんぶ、横須賀とグルってわけだ」

 

綾波「そもそも、私たちにできる事は限られている、ここに残された物資も、時間的に残りわずかなことくらい、想像には難くないでしょう?」

 

キタカミ「まあね、で?大淀はなんで黙認してんのさ」

 

綾波「そうですね、なんと言えば納得してくださるか…いや、ストレートに行きましょう、火野提督の為です」

 

キタカミ「…なんでそうなんのさ」

 

綾波「火野さんはThe・Worldで意識不明になりました、いや、一応は回復したのですが…あまり芳しい状態ではない、私は大淀さんに電さんの話とは別に交渉を持ちかけた」

 

キタカミ「電?」

 

綾波「ああ、知りませんでしたっけ、彼女、今ネットに囚われてるんです…さて、本題に戻しますよ」

 

キタカミ(今サラッととんでもないこと言ったな…)

 

綾波「いまの火野提督は、目を覚ましはしましたが、会話もできず、ただ単語の羅列を繰り返すのみ…要するに…まともじゃないんです、だから、政府は艦娘に関する騒動全てを火野提督に押し付けて体制を大きく変えたいと考えている」

 

キタカミ「……で?あんたは何をしたのさ」

 

綾波「放火です」

 

キタカミ「…放火?」

 

綾波「各省庁のデータを漏洩しやすくするためにセキュリティをダウンさせました、これで火消しに必死になっているうちは問題ありませんよ」

 

キタカミ「そんなの数日でしょ」

 

綾波「ええ、でも問題ありません、その頃には火野提督は戻ってきますから…というより、あなたはそんな話を聞きたかったんですか?」

 

キタカミ「…んや…」

 

綾波「遊撃隊の演習、見ていきますか」

 

キタカミ「……ん」

 

綾波「皆さん、そういうことです」

 

浦波「承りました」

 

 

 

 

波止場

 

前は、このコンクリートでできた波止場の淵に腰掛けて、膝から下をダラリと海の方に垂らしていた

なのに、それすらできない

海に近づくのが怖い

 

今、演習のために出て行った奴らを見るのも怖い

 

海を見ていると、私の知らない何かが現れる気がして、怖いんだ

 

無線の音が聞こえるけど、ぼんやりとしか入ってこなくて…

頭がぼやける

まるで高いところにいるみたいにふわふわしてしまう

 

キタカミ「……やっぱ、弱いなあ……」

 

だから、いま、この場で直視するべきなんだ

私にない強さを

 

キタカミ(……始まる)

 

6対1、神通を相手取った遊撃隊の演習…

複縦陣で迫るのかと思いきや、2つの縦陣の距離はかなり広い

 

キタカミ(あんだけ離れてたら声も聞こえない…いや、無線があるのはわかるけど……あれは?)

 

距離があるのに、狙いも正確でないのに先頭の2人が砲撃…

いや、何かを飛ばしているような…

 

それは神通を通り過ぎて着水する

 

キタカミ(浮きがついてる?海の上に旗が…何かのマーカー?…いや、そうか、あれって)

 

2人が互いに砲撃した旗を拾う

遠すぎて視認できないが、おそらくそれにはワイヤーのような何かがあるはずだ

 

キタカミ「拘束…敵の動きを封じるわけだ」

 

複縦陣であれだけ離れた距離を取るのは、敵が間をすり抜けるように

挟み撃ちの形を常に作り、すれ違う時には中間に張られたワイヤーが自由を奪う

 

確かに新しい戦法だけど…

 

キタカミ(…今の、爆雷?)

 

後続の2人が投げ入れたのは、爆雷だったとは思うけど…

 

キタカミ「!」

 

神通が逃げ始める

正面から潰しにかかれば早いはず、なのに逃げる

そして始まる砲撃戦

 

キタカミ(……狙いは滅茶苦茶…ずぶの素人の集まりって感じ…でも、角度をそれぞれ変えて打つことでまず誤射もないし、なにより当てに行ってない)

 

味方に当たらない攻撃を意識しているのだろう

神通には至近弾こそあれど、擦りでもする砲撃は無い

 

キタカミ「……な…!?」

 

神通の足元で何かが炸裂し、神通の動きが止まる

誘い込んでいた、その場所まで…なんらかの罠がある場所まで

 

そして先頭2人がまだ砲撃…先程同様、それが着水した地点に浮き…

でも、今度は取りに行く様子はない…

 

キタカミ「…そうか、今のあの複縦陣の位置、それとあの浮きの位置……神通を囲むように三角形にアミが貼ってあるのか…」

 

そうなると、あとは好きに打ち込むだけだ

 

神通は全然攻撃をしない、つまりこの演習はこのアミに入るかどうかで勝敗を決める演習…

そして神通はそれに完敗だったわけだ

 

キタカミ「撃破を求めない部隊…か」

 

なるほど確かに新しい、戦うなら敵を倒してなんぼ、そうじゃなきゃ自分が死ぬ

でも、自分たちに味方がいるなら、その倒す役割の補助に回ることで全体の生存率を向上させる……

 

素人集団が、100を越える深海棲艦を屠ったなんて、誰も信じないだろう

でも、これを見て私は理解した

コイツらならやれる

 

キタカミ「……でも、あの爆雷みたいなのは…」

 

嵐「あれは磁力機雷っていうやつで、ある程度近くに投げ込めば磁力で近くの金属に引っ付いてドカンって奴らしいぜ」

 

キタカミ「っ……いつの間に…」

 

神通「随分と、考え込んでいましたね…隙だらけでしたよ」

 

キタカミ「……隙だらけ…そっか…」

 

接近されて気づかないなんて、と思ったけど…それが当たり前なんだ

気を張らなきゃいけないのに

 

萩風「嵐、喋り方、綾波さんに見つかったらまた怒られちゃう…」

 

嵐「今居ねえじゃん…細けえなあ萩は」

 

野分「そういう問題じゃない、何の為に喋り方まで指導されてるのか聞かされたでしょ?」

 

キタカミ「……随分厳しいんだね?」

 

神通「そうですか?私にはこの子達への当たり方が随分と優しく感じますよ」

 

キタカミ「なんでさ」

 

神通「私に対する姉さんとよく似てるからです、喋り方や振る舞いなどの所作を叩き込み、ちゃんとした人間社会で生きていけるように、と」

 

キタカミ「……本当に?」

 

神通「そう言っていましたよ」

 

キタカミ「……」

 

だとしたら、何とも回りくどい

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