元勇者提督   作:無し

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離島鎮守府跡地

キタカミ

 

…目を閉じ、呼吸を整え、集中する

 

キタカミ(…歩調、この感じ……)

 

キタカミ「神通?」

 

夕立「ぽい?」

 

キタカミ「……ごめん、勘違いだった」

 

相変わらず、海は怖い

でも、誤射への恐怖心はなくせる筈だと信じてる

だから最低限の気配で味方を認識…と思ったけど、すでに10連敗中 

 

キタカミ(ま、心眼なんてそう簡単にはいかないし、そもそも乱戦になったらそんな紛い物は役に立たない…特に期待もしてなかった)

 

結局頼れるのは自分のスキルだけ

磨き上げた砲撃の技術と、研ぎ澄まされた感覚だけ

 

悔しいけれど、綾波の言う通りなのだろう

チームとして動くのは向いていない

独力で戦い続ける方があっている

 

ただ、それは…

 

綾波が言った、「あなたと私はよく似ている」と

 

そう言う意味なのだろう

でも綾波はチームでも力を発揮できるはずだなら

私もそうする事ができる……ハズだ

 

綾波「まだ続けてるんですか」

 

キタカミ「……悪い?」

 

綾波「わかりませんか、無駄だと言うことが……今のあなたは、触れたら爆発する機雷と同じ、言っては悪いですが、とことんチームには向いていない…提督代理まで務めたことのあるあなたなら、指導者の重責はわかるでしょう?」

 

キタカミ「いまは教導担当もやってる」

 

綾波「その役職すら、自ら捨てたじゃないですか」

 

キタカミ「っ……」

 

綾波「あなたは別に間違ってない、自分がみんなを守る為に教えられることは何かを必死に考えて、自分と同じ道筋を辿らせることにした…その小さな頭で必死に考えて、自分のできる最善を教えた」

 

キタカミ「…だから?何」

 

綾波「あなたとアケボノさん、何が違うと思いますか?」

 

キタカミ「……」

 

綾波「答えは、知識量です」

 

キタカミ「知識量?」

 

綾波「あなたは本を読むのは好きですか?」

 

…嫌いではない、だけどこの世界に来てから開いた本なんて、学校に通ってた時の教科書くらいだ

 

綾波「その様子では、この世界では、と言うところか…神通さんに聞きました、前の世界と体の根本的な作りが変わっていると…同じ人間、同じ容姿に育っても、内部構造も同じと言うわけではない…」

 

キタカミ「それは体の作りでしょ」

 

綾波「ええ、ですが…性格も…だとしたら?」

 

キタカミ「……」

 

綾波「表には見えない、小さなところが違うとしたら?」  

 

キタカミ「それは、あるのかもね、それで?」

 

綾波「アケボノさんはこの世界に来ても本を良く読んでいます…レ級になっても本を求めたのは性格が残っていたからでしょう、では…そこで知識量の差ができたとして…」

 

キタカミ「だから何さ」

 

綾波「あなたは空母のことについてわかりますか?艦載機運用は?それでは海図は読めますか?海流の流れは?」

 

キタカミ「……」

 

綾波「アケボノさんは、低くないレベルでそれをやってのけてますよ」

 

そこが、差か

知識量の差なのか

 

綾波「彼女は生来の研究家です、加賀さん達に艦載機運用の指導すらしていたとか」

 

キタカミ「それは…」

 

綾波「指揮官クラスが膝を突き合わせて海図を眺めている時、自分で何がいいかを判断し、意見する胆力もある、いや、胆力ならあなたもあるでしょうが、あなたはその意見をするだけの知識が足りていない」

 

キタカミ「…関係あんの?私の悩みとさ」

 

綾波「ありますとも……知識を得れば、わかりますよ…あなたなやろうとしていることは、不可能…無理、無意味だって」

 

キタカミ「……へえ…真っ向から、否定してくれるんだ」

 

ムカつく話だ

 

綾波「…私は、あなたを高く評価しています、それは1人の兵士として…しかし、束ねる立場としては…どうにも向いていない」

 

キタカミ「束ねる?」

 

綾波「あなたはチームで動くと言うことを認識しながら、意識できていないのではないですか?あなたの探知に気配が触れれば、即座に起爆反応するほどに神経を研ぎ澄ますのは恐怖故、だとしても…それは艦隊のことを考えての行動とはとても言えない」

 

キタカミ「……」

 

綾波「あなたが意識改革を必要とするならまずはそこでしょう…チームとはあなたの思い通りに動く存在ではありません、あなたは大人びた性格ではあるが、思考は思ったより子どもなのかもしれません」

 

キタカミ「……なにそれ」

 

綾波「だって、そうでしょう?…全部自分でやる、そう考えて戦ってきたんでしょう?それは…不知火さんの悪い癖と同じ、ではありませんか…?」

 

キタカミ「…そんな事ない……そんな事、ない」

 

本当に?…自分の中で誰かに聞かれた気がして、自信無く、どう一度否定の言葉を口にした

でも…

 

綾波「…阿武隈さんは?不知火さんを即座にカバーしたり、みんなに頻繁に指示を飛ばすのはあなたが教えた事ですか?違いますよね、あなたが教えられたのはあくまで砲撃センスを伸ばす事だけ…さて、ここで元の知識の話に戻しますよ」

 

綾波はポケットから手帳とペンを取り出す

 

綾波「私が短期間、離島鎮守府に在籍した時の記録、それから内通者に教えてもらった情報です…朧さんは…些か私の考えた闘い方と違うスタイルですが、那珂さんとの修行で結果的にそれをモノにし、踏み台にしようとしていました」

 

キタカミ「…何」

 

綾波「曙さんは黄昏の書の操作に悩んでいました、島風さんは速度を活かす戦術が単純であると言う悩みを自分自身のみの力ではなく、天津風さんと関わりを持つ事で解消しました」

 

綾波がページを捲る

 

綾波「清霜さんは、素晴らしい砲撃精度を最初に見せながらもそれ以降は目立った活躍はしません…ワシントンさん達は基礎能力こそ上昇しましたが、目立った成長をしたのは…アトランタさんのみ」

 

キタカミ「何が言いたいのさ」

 

綾波「今、名前を挙げた中に、あなたが育てられた人間はたった1人です、アトランタさんだけ……わかりますか?あなたは現、宿毛湾泊地にいる、あなたが教育を担当した34名のうち、1人しか才能を開花させることができなかった、これだけいるのに?」

 

綾波がパタンと音を立てて手帳を閉じる

 

綾波「阿武隈さんと不知火さんを除いて32名、もちろんアケボノさんや明石さんは含めていませんよ、さて、確率にして3.125%、これがどう言う意味か、これは、あなたが育てたところで3.125%の確率でしか、才能を開花させられないという数値です」

 

キタカミ「…違う」

 

綾波「ああ、確かに違う…阿武隈さんと不知火さんを足して8.82…%か、でも、これでわかるでしょう?」

 

…すでに、理解はしている

首を縦には振りたくないが

 

綾波「あなたは、個性を見ていない、綺麗に形作られた、そう、あなたの砲撃の仕方を真似することを強要しているに過ぎない…学校の先生が教科書を読み上げるだけの授業をしているときより退屈ですね」

 

キタカミ「…じゃあ、どうしろって?」

 

綾波「アケボノさんとの差、ですよ」

 

キタカミ「……いろんなことに詳しくなって、何でもかんでも教えてやれるようになれ…って?」

 

綾波「ええ、しかし…誰でもそれができるなら苦労はしませんよね、だから、私はあなたがそれに向いてないと言っているんです」

 

キタカミ「……」

 

綾波「あなたはあくまで戦力…智将ではないし、教官としては…いや、カリスマもあり、リーダー性もあるから向いていない訳ではありませんが」

 

キタカミ「……はあ…」

 

もはや反論する気すらおきない

 

綾波「…あなたは天才ですよ、天才だと思います、私同様にね、でも…それはあくまで、特定の分野において…みんなそうなんです、みんな何かの分野は得意だけど、何かは苦手…砲撃が苦手な人だって多いでしょう?」

 

キタカミ「そりゃあね、漣はいつまで経っても砲撃が上手くならないし、曙なんて出鱈目な動きして…ワシントンは言うことは聞くけど納得してないみたいだし、青葉は…なんか妬ましいし」

 

綾波「あなたでも嫉妬するんですね」

 

キタカミ「アンタの言う通り子供なもんでね、感情の行き場を…探してる…ずっと黒いのがモヤモヤして、苦しくなる時もある…」

 

綾波(碑文を除去したのに、感情の抑制がよりできなくなっている…?……変だな…)

 

綾波「…感情の行き場ですか、発散させるのが難しいのは、わかりますが」

 

キタカミ「…アンタはどうやってんの?イライラするでしょ」

 

綾波「…感情は、いや…感情の置き場を見つけました」

 

キタカミ「…置き場?」

 

綾波「…私の、行う事には…いや、行う事全てが無機質であるべきで…感情が、何かを左右してはいけません…だから、私は、そこに…」

 

…綾波の顔色が、少し悪くなる

 

綾波「……あまり、良いものではありませんが」

 

キタカミ「そっか、よくないこと聞いたか」

 

綾波「……それも含め、いずれ終わることです」

 

キタカミ「そう簡単に行く?」

 

綾波「心配してくださるのなら、私の役に立つ努力をして欲しいものです」

 

キタカミ「…ちぇっ…可愛くないな、年下のくせに」

 

綾波「歳を重ねる事しかして来なかった、自分を恨むべきでしょうね」

 

キタカミ「…煽ってくれるねえ…」

 

綾波「あなたは叩いた方がよく伸びるタイプだと思いまして」

 

キタカミ「どーだか」

 

綾波「…でも、あなたはまだ強くなれる」

 

 

  

 

キタカミ「って言われたけど…」

 

空薬莢を投げ、狙いを定めて撃ち込む

 

神通「…相変わらずお見事ですね、一列に並べてみれば完璧な一つの円に見えるでしょう」

 

キタカミ「私にできる芸当はここまで、さて、どうすりゃいいと思う?」

 

神通「さあ」

 

キタカミ「……アンタもメイガスを手放すことくらい、想像してるんだよね」

 

神通「だとしても、私は決して弱くなることはありません、この強さは、私が己を鍛え上げて作ったもの、メイガスの力に頼り切ったとは思われたくはありません」

 

キタカミ「…そりゃ失礼しましたよっと」

 

神通「…あなたが間違いを犯したとしたら」

 

神通がこちらのスカートのポケットを見る

 

神通「其れの力を、頼った事でしょう」

 

キタカミ「……これが、間違った力だって言うなら」

 

神通「私同様に」

 

キタカミ「チッ」

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