元勇者提督   作:無し

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発明品

新大阪駅

軽巡洋艦 大淀

 

大淀「わざわざこんなところまで呼び出して、4時間もかかりましたよ?帰りも同じだけ時間がかかります…なので、手短に、お願いできますか?」

 

夕張「もちもち」

 

瑞鶴「悪い話じゃないって」

 

大淀「……」

 

 

 

 

大淀「LSFDを使う?…なんのために」

 

夕張「リアルデジタライズを引き起こす為」

 

大淀「は…?ふざけてるなら…」

 

瑞鶴「待って、ちゃんと聞いて、リアルデジタライズからリアルに帰るには、LSFDを使う必要があると思うの」

 

夕張「過去に倉持提督やら敷波やらが帰ってこれたのは、内側から手を借りたから…じゃあ、今回も」

 

大淀「協力者を放り込む?…前回同様青葉さん…とはいきませんものね」

 

夕張「うん、撃たれてまだ意識が戻ってないらしいし」

 

瑞鶴「それに私達は直接会えないしさ」

 

大淀「で?誰が行くんです?」

 

瑞鶴「それは私、碑文の力を失ってないし、何かあっても対応できる」

 

大淀「リアルデジタライズは本当にうまく行くんですよね?」

 

夕張「…それは保証がない、そもそもネットも広いの、The・Worldに運良くいければ奇跡なんだから」

 

瑞鶴「ネットの中に放り出されてThe・Worldにすら辿り着けない可能性もあるって…でも、今ある道はこれ一つ」

 

大淀「随分と…分の悪い賭けに聞こえますが」

 

夕張「でも配当は最高よ?」

 

大淀「というと」

 

夕張「電ちゃんを取り戻せる」

 

大淀「やりましょう、では何をすればいいですか」

 

夕張「大淀には隠蔽工作を頼みたいの」

 

大淀「…隠蔽?」

 

夕張「私の研究室、物理的にやっちゃって!セキュリティロックは硬いけど、万が一でも侵入される恐れがあるから…LSFDの研究ノートとかはもう持ち出したし」

 

大淀「では、どうしますか…深海棲艦の襲撃という事にしてしまいますか」

 

夕張「…ついでに邪魔者消したりしないでよ?」

 

大淀「それは私の気分次第です、特に…正門前以外も復活したデモ隊が囲んでいましたし?」

 

夕張「大淀!」

 

大淀「…脅す程度にしますよ」

 

瑞鶴「それもどうなの…?」

 

大淀「では、私はこれで……」

 

夕張「待って」

 

 

 

 

 

 

横須賀鎮守府

軽巡洋艦 那珂

 

海斗「あ」

 

亮「よっ、災難だったな」

 

川内「こんにちは」

 

那珂「どうも」

 

海斗「ああ、こんにちは……まあね、そっちも呼び出し?」

 

亮「ああ…おい、そっちは誰もつけてないのか?」

 

海斗「まあ…みんな忙しいんだ、それに…青葉の事もあるし…」

 

亮「つっても不用心だろ、変な連中に絡まれなかったのか?」

 

海斗「車で来たから」

 

亮「ならいいけどよ……でも、1人で動いてるのはマズイだろ、他所から見たら宿毛の艦娘はロクに言うこも聞けねえ奴って事になるんじゃねえのか?」

 

海斗「……そう言われたとしても、僕はここに誰かを連れてきて…それで、余計に嫌な思いをさせる方が…良くないと思った」

 

亮(別に参ってる訳じゃ無さそうだが…)

 

亮「那珂」

 

那珂「りょーかいっ!」

 

飛び上がり、天井裏に張り付く

 

川内「んじゃ、仕事終わったら」

 

那珂「うん、また」

 

亮「一応、念のため護衛に那珂をつけとく、何もなけりゃいいんだがな…」

 

海斗「…ありがとう」

 

那珂(那珂ちゃん的にはそううまくはいかないとは思うなあ〜……ん?)

 

川内「那珂」

 

那珂「うん、なんか…」

 

ざわつく感じ…

 

亮「どうした」

 

川内「……ここの大淀ってさ、“覚醒”してるの?フィドヘルに」

 

那珂「さあ…でも、今の肌にピリッとくる感じ…」

 

川内「似てる、八相に」

 

海斗「…碑文使いがいるって事?」

 

川内「……というより」

 

那珂「…っ!?」

 

砲撃の音…

そして、爆発音

 

亮「オイオイ…!」

 

海斗「このタイミングで襲撃…!」

 

川内(ここに、直接仕掛けてくるなんて…!)

 

那珂「行ってくる!姉さんはこっちをお願い!」

 

川内「わかってる…!」

 

 

 

 

那珂「っ…!」

 

砲撃がすぐそばの建物を一つ吹き飛ばす

ようやく、襲撃を知らせるサイレンが鳴り始める

 

那珂「哨戒網とかどうなってんの…!?」

 

大淀「火野提督不在の間、内閣府から派遣された閣僚が適当にやってましたから、見落としたんでしょう」

 

那珂「っ…!?いつの間に…って!」

 

大淀「話しかけないで、気が散ります…艦載機を操作しているので」

 

那珂「……敵の総数は?どこ行けばいい!全部やるから!教えて…」

 

息を吐ききり、目を閉じて呼吸を整える

 

大淀「なら…南西に展開した戦艦級と巡洋艦級合わせて10を…!」

 

那珂「臨…兵…闘…者、皆、陣列在…」

 

大淀「那珂さん!」

 

那珂「前!」

 

砲音と共に飛び上がり、蹴りで飛んできた砲弾を砕く

 

那珂「南西10体…了解…!!」

 

 

 

 

全力で迫り、拳打

直接の打撃、魚雷もなんなら直接叩きつければいい

 

那珂(…警戒すべきは…)

 

足元か?それとも遥か遠くか、真上なのか

 

本当にただ哨戒網を抜けてきたのか?

 

10体の中心に飛び込み、大立ち回りで嬲って、圧倒したとしても

 

那珂(…わからない、この感覚…っ?)

 

戦艦級に向けて振るった拳がすり抜ける

思わず瞬きする間に…

周囲の深海棲艦も消えている…

 

那珂(な、なんで…?……っ…ピリつく感覚も、消えて…?)

 

なにがおきた、なんで、どうして

疑問はいくらでも湧いて出る…

 

那珂「…深海棲艦、全部居なくなってる…」

 

大淀「那珂さん」

 

那珂「…何?どうなってるの?」

 

大淀「どうやら、LSFDを使っていたようです、ほら、見てください、私が倒した駆逐級から取れたものですが…」

 

壊れた機械がたくさんついたベルト…

 

大淀「…LSFD、限定空間融合装置、つまり、ネットとリアルをその範囲だけ融合させる機械です、これの範囲は、わずか数十メートル、そして効果時間は30秒程度…と、聞いています」

 

那珂「詳しいね」

 

大淀「まあ…それで、明らかにその時間を超えてこれを使っていた事から、先程の時間と距離は、あくまで“安全に動作する”という条件の下のようです」

 

那珂「……それで?」

 

大淀「深海棲艦が消えた事も含めて考えると…LSFDによって、召喚されたのが今戦っていた深海棲艦だった…と言う事になりまして」

 

那珂「…じゃあ、今の戦闘は、こっちが消耗しただけ?LSFDって艦娘のニセモノも召喚できるんだよね?イミテーション…だっけ、それも倒したところで意味ないんだよね…?こんなの、もう何しても意味ないって事?」

 

大淀「取り乱さないでください、それに、この装置を使うには大量の電力が必要です、今回倒した深海棲艦は体内に機械を埋め込まれていたので恐らくそれがバッテリー…それに、大量に使って無理やり効果範囲と時間を伸ばすしかLSFDはまともに運用できていません」

 

那珂「つまり…欠陥だらけ、って事?」

 

大淀「ええ、イミテーションも…同程度の強さのもの同士なら、イミテーションの実力が劣るため、撃破は難しくないと報告が上がっています、焦る必要はないんです」

 

那珂「……って言っても…」

 

大淀「…私は私で、やる事があるので、鎮守府に戻らないと…っ?…ぁ…!」

 

那珂「…大丈夫?」

 

大淀さんか頭を抱えて俯く

 

大淀「……何、何これ…よげ、ん……予知…?……っ…!…那珂さん、逃げ…」

 

那珂「え?」

 

ジュッ…と、焼ける音がした

それも、真裏から

 

熱い、背中がすごく熱い

 

那珂「っ…この、炎…!」

 

消せない、海に背中を押し付けても消えない、振り払えない

 

どんどん、服が燃えて、体が焼けて…

呼吸をしないようにしても、体が酸素を求めてる

広がった炎に喉を焼かれてる

 

大淀「…っ…那珂さん…!」

 

脚部艤装が燃えて破裂した

もう水に浮かんでいる事もできなくて、もがくほどに身体が痛くて…

 

大淀さんが伸ばした手も、掴めなくて

 

那珂(ダメ…沈む…!)

 

酸素が足りなくて、目の前がチカチカして…

ぼんやりと、頭が白くなって…

 

 

 

 

軽巡洋艦 大淀

 

大淀「…沈んだ……っ…撃ってきたのは…」

 

砲弾が飛んできた方向を見る

レ級…それも、恐らく…

 

レ級「……」

 

大淀「イミテーション…しかも、最悪ですね」

 

そのレ級の肌が、褐色の良いものに変わっていく

 

大淀「…手数が多いのは知っていましたが、こんな手まで使えるとは…いや、それより、CCW(特定通常兵器使用禁止制限条約)くらい、ご存知だと思ってましたよ、アケボノさん」

 

アケボノ「……」

 

ニヤニヤと笑う素振りは、本物とは似つかない…本物はまだ多少、少しくらいは品位があるだろう

 

大淀(…予知通りなのか、今、那珂さんが沈んだのも…そして、さっき見た…海の影も)

 

強大な、まるで島のような…

 

何かが、海から大口を開いて現れる…

 

海の奥底から、それが現れる

 

その予知が…

 

大淀(私の予言が、変えられないのなら…太古から眠り続けたそれは、もう間も無く、目を覚ます…と言う事なのか…)

 

レ級の尻尾が大口を開き、砲口を覗かせる

 

大淀「……撃てばいい、撃ってみなさい……」

 

ナパーム弾、それが先程那珂さんを襲ったものの正体

正確には少し違うのだろうが、この息苦しさからしてまずそれに近いものだ

粘性のある可燃物、周囲の酸素を大量に消費するため、着弾点近くにいるだけでも危険な兵器だ

ただの水では消せない…だが

 

大淀「……そもそも、当たらなければ問題ないのでしょう?」

 

砲弾が少し離れたところで何かにぶつかったようにひしゃげ、中身を撒き散らす

 

大淀「…夕張さん、私は、貴方が気に食いません、私にはできない、多彩な発明で、ひらめきで、提督の注意を簡単に引き寄せてしまいますから……でも、今だから、貴方に感謝していますよ」

 

立て続けに放たれた砲弾が全て、同じ地点で固まる

 

大淀「…この、フィドヘルのカートリッジ…ありがたく、使わせていただきます… 天明修羅曼茶羅(てんめいしゅらまんだら)

 

砲弾が歪み、消滅する

 

大淀「……ごふっ…!」

 

頭が、熱い…

鼻血が垂れて、頭痛も…

 

大淀「反動…か…!っ…」

 

なんとか、顔を上げたとき、すでにイミテーションは消えていた

 

大淀(…たす…かっ…た…)

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