元勇者提督   作:無し

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記録 裏切り

宿毛湾泊地 医務室

駆逐艦 夕霧

 

夕霧「んっ!?…っ…!…ま、またなんか壊れた…」

 

爆発…のような音、そして何かが破壊される音、怒号

まるで戦闘しているかのように激しい音が少し離れた位置から聞こえてくる…正直、怖い

 

朝霧「…あのー、あれ何が起きてるんですか…」

 

狭霧「さあ…でも、川内さんが目覚めたのは間違いないようですね」

 

意識を失った状態で…

おそらく、極度の緊張状態から一気に深い睡眠に落ちたと思われる川内さんは何をしても起きる気配がなかった

 

それが目覚め…爆発した

 

夕霧「…ほんとに何が…」

 

窓から覗こうとした瞬間、窓ガラスを何かが突き破る

 

夕霧「ひっ!?」

 

窓ガラス周辺の壁ごと吹き飛び、カーテンを巻き込んで何かが転がり込む

 

朝霧「人…っていうか…」

 

狭霧「川内さん…」

 

川内「っ……あ…アケボノぉぉ!!出てこい!!」

 

先程からの怒号の正体はこれか

 

狭霧「川内さん、落ち着いてください、アケボノさんは居ません」

 

川内「五月蝿い!アケボノ…殺してやる…!」

 

夕霧「ちょ、ちょっと待って!アケボノさんが何を…」

 

朝霧「っていうか、なんでそんな怒ってんの…?」

 

川内「那珂が死んだ!アケボノのせいで…!」

 

夕霧「えっ」

 

那珂さんといえば、呉指折りの実力者…

ただ、気になるところはアケボノさんは昨日は鎮守府に居た点

 

狭霧「那珂さんが?…アケボノさんのせい、というのは…」

 

川内「アイツのコピーにやられたんだ…アイツが手の内さえ晒していれば…!」

 

…つまり、イミテーションとかいう偽物と本物の那珂さんが戦って、那珂さんが負けたと…

確かに2人とも強い、強すぎるくらいに

だから、どちらかが、負けた方が死ぬのはおかしい事じゃない

 

ただ、イミテーションが那珂さんを殺したからと言って、オリジナルのアケボノさんが悪いかと言われると…

 

狭霧「…ちょっとよくわかっていませんが……話を聞くに…アケボノさんは悪く無いのでは?」

 

夕霧「あっ…」

 

言っちゃった…

 

川内「……悪いよ」

 

狭霧「でも、アケボノさんの手の内なんて知っていても対策できるかは別じゃないですか、あの人は私の知る限り、碑文、深海化、艤装、体術、それらを多彩に使い分けるし…手の内を全て知っていても全部潰すのは不可能ではないですか?」

 

川内「っ……」

 

狭霧「…貴方がアケボノさんを恨んでいるのは、ただ、憎しみをぶつけたいだけなのでは…」

 

医務室の壁が吹き飛ぶ

 

狭霧「……成る程、沸点に達しましたか…」

 

夕霧「あ、煽りすぎたんじゃ…」

 

川内「それ以上、何か言うなら…殺す」

 

狭霧「…だとしたら、場所を変えましょう、ここには他の患者さんも居ます、貴方が暴れたいのはわかりました、しかし…それとこれとは別、周りの迷惑くらい考えられない歳でもないでしょう?」

 

川内「…患者?」

 

川内さんがベッドを覆うカーテンを開く

 

川内「……青葉」

 

青葉「……」

 

青葉ちゃんが虚げに川内さんの方を向く

 

狭霧「…!」

 

川内「…青葉は、どっか悪いの…いや、撃たれたんだっけ」

 

夕霧「えっと…精神的なものも…」

 

川内「……精神的?じゃあ、私と同じだ…」

 

何かに惹かれるように、川内さんが青葉ちゃんに手を差し出し、その手を青葉ちゃんが取る

 

狭霧「…動いた」

 

夕霧「え?」

 

狭霧「なんで?何が起きてるの…?川内さんと親しかったから?じゃあ明石さんは?…他の誰にも反応を示さなかったのに」

 

川内「何言ってんの…?」

 

朝霧「…あれ」

 

夕霧「どうかした?朝霧…あ」

 

青葉ちゃんが、その虚な目でじっと朝霧を見つめる、そして次に川内の方に向く

 

狭霧「……」

 

川内「なんだ、青葉、何処も悪くないじゃん」

 

青葉「……はい」

 

夕霧「喋った…昨日までほとんど言葉を発しなかったんですよね!?」

 

狭霧「何が起きてるのか、わかりませんが…朝霧さん!春雨さんを…そうか、今日は夜まで帰らないんだ…ええと…なんてタイミングの悪い…!」

 

夕霧「あ」

 

青葉ちゃんがベッドから降りて立ち上がる

 

狭霧「…青葉さん、立てるんですか…傷は?痛むはずです、それに投薬しているので頭もぼやけてるんじゃ…」

 

青葉「…大丈夫です……私、やる事があるので…行きますね」

 

夕霧「ちょちょっ!?ちょっと待った!!そんな体で何処に…っていうか点滴抜こうとしないで!?」

 

青葉「……貴方は…?」

 

夕霧「いや、ゆう……夕霧…です…って!そうじゃなくて!まだ動ける体じゃないから寝てないと…」

 

青葉「私がここで寝てる事は、良くないことだと思います」

 

夕霧「へ?」

 

青葉「私は、今、やる事があります、邪魔をしないでください」

 

…ぞわり

身体が、固まる

足が震えて、膝がガクガク言いだした

 

力が抜けて、腰が落ちそうになる…

なんでこんなに怖いの…?

 

狭霧「青葉さん」

 

青葉「……なんですか」

 

狭霧「ベッドに横になってください…」

 

青葉「お断りします」

 

狭霧「何故ですか、何処に行くんですか」

 

青葉「The・World……これ以上の災禍を…止めるために」

 

夕霧「これ以上…?」

 

青葉「…みんな辛いんです、今は感じませんが、きっと痛い、この身体は今も痛みを感じてる……でも、私の知らないところで、知らない誰かも苦しんでる…だから、私は…行かなきゃ」

 

川内「The・Worldに何があるの?」

 

青葉「みなとみらいの事件を、再び起こした犯人が居ます…それを捕らえる」

 

夕霧「犯人…?綾波とかじゃなくて…?」

 

狭霧「え?」

 

川内「じゃあ、私が部屋まで送るよ…邪魔したら、殺すからね、そっちの白髪も」

 

狭霧「白髪……」

 

ただ、見送るしかなかった

 

 

 

 

夕霧「……夜恐怖症…そして、不安定な興奮状態…」

 

メモをとりながら、じっくりと思案する

 

狭霧「少し良いですか」

 

夕霧「はい?」

 

狭霧「…さっき、みなとみらいの犯人が綾波って言ってましたけど…」

 

夕霧「…あー…横須賀の一部のメンバーは知ってるんです」

 

狭霧「…そうですか」

 

夕霧「…みなとみらいの件がよほど精神的にきてるんですね…それに対する強迫観念もある…結局根幹は恐怖心……故に、自分の身を守りたくて、攻撃的になる…」

 

狭霧「……だとしても…青葉さんは何をしようとしているんですか」

 

夕霧「恐怖心の源をなんとか…消し去りたいと思っているはずです、それを取り除くために手段は選ばないと思います」

 

狭霧「……止める手段を探さないと、手遅れになる前に」

 

夕霧「無理だと思います…今の青葉さんも、川内さんも…極度の興奮状態にある…今行けば、攻撃的な対応をされる可能性も…」

 

狭霧「……」

 

 

 

 

 

The・World R:1

Δサーバー 水の都 マク・アヌ

重槍士 青葉

 

フリューゲル『本当に良いのか?』

 

青葉「はい」

 

フリューゲル『…なら、構わないし…詳細はそっちに任せるケド…』

 

青葉「任せてください…」

 

…ジッと…タウンの奥を歩く、朱色の背を見つめる

 

青葉「カイトは私が処理します」

 

…それが良い事だって、私は信じているから

 

 

 

 

Δサーバー 萌え立つ 過ぎ越しの 碧野

 

カイト「珍しいね、青葉さんから呼び出しなんて…」

 

青葉「…すみません、急に来ていただいて」

 

…カイト、この過去のカイトと、あのリアルデジタライズの少年、トキオが関わる事で、過去の事件を利用しようとする勢力が自由に動けている

 

となると、真っ先に排除すべきは…その協力者となっているトキオ

 

だけど、トキオの周りに誰かがいる状況を作ると…万が一の恐れがある

万が一にも敗北するわけにはいかない

 

先にカイトを始末する

 

カイト「…青葉さん?」

 

青葉「……ごめんなさい、司令官」

 

カイト「え?」

 

ヴォータンを、突き刺した

深く、深く…

心の臓を目指して、突き立てて

 

カイト「…なん、で…?」

 

青葉「…これが、良い事だと思うから…では、不足ですか」

 

転送音がして、そちらを向く

 

青葉「……早かったですね」

 

トキオ「…な…?…な、何してるんだよ!オイ!」

 

カイト「…トキ、オ…逃げ…」

 

青葉「フリーズ」

 

カイトの身体からクリスタルが染み出すように溢れ、カイトの身体がクリスタルに囚われる

 

青葉「……次は、貴方です」

 

トキオ「…なんでだよ…なんで、敵じゃないんじゃなかったのかよ!!」

 

青葉「事情が変わったんです…大人の事情…ってヤツなんでしょうか」

 

槍をクリスタルから抜き、トキオに向ける

 

トキオ「こうなるなら…なんで助けたんだよ!なんで…なんで!」

 

青葉「……やりましょうか」

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