元勇者提督   作:無し

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第611話

The・World R:2

Σサーバー 隠されし 禁断の 罪界

青葉

 

青葉「っ……んぅ…?」

 

何処だ、ここは

巨大な木が大量に…

 

青葉(森…?)

 

青葉「うわっ!?」

 

立ち上がった瞬間に巨大な刃物がすぐ隣を通過する

 

青葉(な、なにあれ…木からぶら下がってる…?巨大な刃が…振り子みたいに揺れて……っ!…ここって…まさか)

 

青葉「痛みの森…!そうだ!見たことがある…The・WorldのR:2で2回だけあった、超高難易度の限定イベント…!」

 

でも、何故ここに…

 

私は、どうしてここに?

 

青葉「…オートリーブしたところまでは覚えてる…リコリスさんか………せっかく、捕まえるチャンスだったのに」

 

…仕方ない、隣で目を瞑っている少女は未だに我関せずと言った様子なのだ、若干黒い感情が湧き上がるが、諦めの念にかき消される

このイベントから抜け出す方法を探すしか…

 

青葉(……人の気配?)

 

槍を向ける

 

三郎「おっ…こんなとこに人発見…」

 

メイド服の女性PC…

なのに、テキストに表示されるネームは三郎(さぶろう)

 

青葉「イベントの参加者…?」

 

三郎「半分正解、半分ハズレ…だってクリアする気はないから」

 

青葉「じゃあ何故ここに?」

 

三郎「人間観察、そっちは?」

 

青葉「…気づいたらいただけです」

 

三郎「へえ…そう言うのも悪くないね」

 

青葉(…変わった人だな…)

 

三郎「ところでさ、テキストオンにしてる?名前見て何も思わないの?」

 

青葉「…思って欲しいんですか?そういうウケ狙い…だったり?」

 

三郎「おー、久々にいいヤツ発見!」

 

青葉「…いいヤツ?」

 

三郎「三郎、なんて男っぽい名前で、キャラも声も女なんて変だ!お前はネカマか!ってヤツが多いのに…私が不快に思うかもって理由で触れなかった」

 

青葉「まあ…」

 

三郎「それに、まあ…ちょっと変なヤツだけど、固定概念に縛られず生きてるみたいで好印象」

 

青葉「は、はあ」

 

三郎「…さて、そっち重槍士?…なかなか強そうだね…ええと?」

 

青葉「青葉です、そっちは斬刀士ですか…」

 

三郎「良かったら、一緒に行かない?飽きたらやめるけど」

 

青葉(…この世界…まだ良くわかってないし、色々動く為にも…)

 

青葉「喜んで」

 

 

 

 

青葉「はぁっ!!」

 

三郎「おー…強いじゃん…」

 

青葉「そっちこそ、人間観察が趣味な割には強いですね」

 

三郎さんの動きは誰かと合わせることに特化してるようで、斬刀士の割に支援スキルや魔法攻撃なども使いこなしていた

 

青葉(斬刀士が魔法スキルを覚えるには高額な消費アイテムを手に入れなきゃいけないのに、複数種を使い分けて、なおかつ使いこなしてる…)

 

つまり、ただの成金がスキルを買い漁ったとかじゃなく、様々な種類のスキルを必要と感じて集めた

そしてその練度からプレイヤーとしてのスキルも十分にあるということ

 

青葉(頼りになるのは間違いないけど…狙いが読めないのが怖い、安心して背中を預けるのも……)

 

青葉「っ?」

 

前方で戦闘音

 

三郎「行ってみる?」

 

青葉「はい」

 

 

 

 

 

ハセヲ「らぁッ!!…クソッ!…オラァッ!!」

 

三郎「…黒の錬装士(マルチウェポン)か…」

 

青葉(…見た目が違うけど、あのネーム…過去の三崎司令…?)

 

三郎「戦ってるモンスター、ありゃあデバフ特化だね、キツそ…」

 

青葉「私たちはまだデバフを受けていません、一気に仕掛ければ…」

 

三郎「おっ?助けちゃうの?ライバルだよ?無視して行けば一番目指せるのに」

 

青葉「興味ありません」

 

モンスターに飛びかかり、槍を突き立てる

 

青葉(ゼロ距離から…バクリパルス!)

 

槍を縦に回転させ、炎の斬撃で斬り刻む

 

三郎「はー…しゃーない、 鬼輪牙(きりんが)!!」

 

ハセヲ「な、なんだお前ら…!」

 

三郎「ついでに回復して…リプス」

 

青葉「助太刀します!…破魔矢の召喚符!」

 

大量の光の矢が敵の動きを止める

 

ハセヲ「 破裏剣舞(はりけんぶ)!」

 

青葉(ダブル…スィーブ!!)

 

モンスターが大きな音を立てて崩れる

 

三郎「ひゃー…最深部までまだまだありそうなのにこれって…ソロとかマジできついじゃん…やっぱなんも考えてないなあ、CC社」

 

青葉(…今、間合いに入っただけでデバフをかけられてた…ここに出てくるモンスター、イリーガルな敵が多いとか…?)

 

ハセヲ「オイ」

 

三郎「ん?何?」

 

ハセヲ「礼は言わねえぞ」

 

青葉(…尖ってるなぁ…)

 

三郎「ここはロストグラウンド」

 

ハセヲ「あ?」

 

三郎「だって、隠されし、禁断の…に繋がってて、汎用のエリアとは全然違う作り込まれたフィールド……って事は、クリアしても、報酬なんて何もない…私の考えだけど」

 

青葉(…確かに、ロストグラウンドは通常、アイテムもモンスターも存在しない、報酬は存在するはずがない…)

 

ハセヲさんは無視して歩いていく

 

三郎「あながち間違いでもないと思うんだけど」

 

ハセヲ「そんなもん、行ってみなきゃわかんないだろ」

 

三郎「それもそっか」

 

ハセヲ「…アンタら、ナニモンだ?」

 

青葉「え…青葉です」

 

三郎「三郎…あ、もしかしてアンタも固定概念持ってたりする?」

 

ハセヲ「固定概念?」

 

三郎「名前とあってないでしょ、声とPCの性別」

 

ハセヲ「どうでもいい」

 

三郎「おっ、お前いいヤツだな」

 

青葉(この人のいいヤツの基準ってそこなんだ…)

 

ハセヲ「チッ…意味わかんねえ」

 

三郎「……意味わかんないといえば、なんでこんなイベントやってんの?おかしいと思わない?クリアの報酬もなーんにも明かされてないのに…」

 

青葉「そうなんですか?」

 

三郎「突如現れたロストグラウンドに手をこまねいたCC社が、体裁整えようとして開催した……どう?」

 

ハセヲ「……」

 

三郎「間違ってないと思うんだけどなあ…このゲームには不思議な自立性があるし」

 

ハセヲ「ッ…」

 

ハセヲさんが明らかにその言葉に反応する

 

ゲームの自立性…普通のプレイヤーなら、意味がわからないと鼻で笑う単語だ

でも、私はそれの存在を理解している

 

青葉「どうかしましたか?」

 

ハセヲ「……もういい、ついてくんなよ」

 

ハセヲさんはこちらを向くことなく行ってしまった

 

青葉「…って言われましたけど」

 

三郎「いやー、面白い子だね」

 

三郎さんは躊躇いなく後を追いかける

数メートルは離れたが、問題なく会話できるほどの距離しか開いていない

 

青葉「…怒られますよ」

 

三郎「この状況で最適な言い訳、思いついたんだけど」

 

青葉「目的地が同じ…とか?」

 

三郎「おっ…友達になれそうだね」

 

つまり、この会話も聞かれている

前方からため息が聞こえてくる

 

私としても、ここまで来ると興味が出てくる

ついて行くのも、決して悪い事じゃないだろう

 

三郎「…そういやさ、あんた…三爪痕(トライエッジ)って知ってる?」

 

ハセヲ「なんか知ってんのか?」

 

ハセヲさんが止まる

 

三郎「いや?アレって本当にPCなのかなって…だって、アレにやられたPCって、未帰還者になるんだろ?」

 

ハセヲ「NPCだって言いたいのか」

 

三郎「まさか、NPCならCC社が削除するなら対策とるだろ?」

 

ハセヲ「じゃあ、なんだってんだよ」

 

三郎「AI」

 

ハセヲ「AI?」

 

…感触と、背筋を触られたような感覚に襲われた

 

三郎「そう、AI…人工知能(artificial intelligence )、だからCC社は手出しできない」

 

ハセヲ「プログラムを消せばいいだろ」

 

三郎「…アウラ…知ってる?」

 

青葉「っ…!」

 

…この人、さっきから…

どこまで知ってるのか知らないけど、一体何者…

 

ハセヲ「アウラ?…大聖堂の、像の名前か」

 

三郎「半分正解半分ハズレ、かつてこの世界には、アウラってAIがいたらしい」

 

ハセヲ「消せなかったのか」

 

三郎「多分、前のリビジョンのBBSに書いてあった」

 

ハセヲ「そのアウラってAI、今は居ないのか?」

 

三郎「知らない、噂になってないって事は多分居ないと思うけど…」

 

…この世界に、もうアウラが居ない…?

 

青葉(…アウラはどこに…?)

 

三郎「代わりに三爪痕が現れたんじゃないかなー…と…家出した娘のために、父親が必死で頭を下げる感じ」

 

ハセヲ「代わりって、何のために?」

 

三郎「おっ…さあ、本人に聞くっきゃ、ないんじゃない?」

 

…アウラを見つける必要がある…という事なのか

 

青葉「…誰かいる?」

 

ジッと森の奥を見据える

老人のような出立ちのPCが木々の合間から姿を見せる

 

青葉「…太白さん?」

 

太白「おや…すまない、会ったことがあっただろうか」

 

青葉「…いいえ、一方的に知っているだけです」

 

三郎「イコロの太白かぁ…すごいライバルだね」

 

太白「私は競っているつもりはない、おそらく、最深部に行けば終わるイベントだろうからな」

 

ハセヲ「…本当なのか?それ」

 

太白「それは辿り着かなければ何ともいえない」

 

三郎「あり得ないって、クリアフラグが最深部到達なんて」

 

ハセヲ「アンタは黙ってろ」

 

太白「……お嬢さんはどう思う?」

 

青葉「えっ………その…三郎さんの言ってる事も、何となく共感できて…これは異質すぎると思います」

 

三郎「そうそう、クリアなんてないよ、こんなのイベントじゃないって」

 

太白「ふむ…一理ある」

 

ハセヲ「どっちなんだよ」

 

太白「ないと思って遊ぶか、あると思って遊ぶか、どちらが“ゲーム”として面白いか…人それぞれだと思わないか?」

 

 

 

 

青葉「…あの」

 

三郎「何?」

 

青葉「ハセヲさん置いてきちゃいましたけど…それに…勝手について行ってるし…」

 

太白「1人がいいんだがな…」

 

三郎「アンタのが先に最深部につきそうだし」

 

青葉(ああ、そういう目的…)

 

三郎「それに向こうは多分リタイアする、あのレベルじゃもうそろそろ勝てなくなってるだろうしさ」

 

青葉「……私、ハセヲさんの方に行きます」

 

三郎「無理無理、多分逢えないよ、ここ広いもん」

 

青葉「それでもです」

 

三郎「あーあ…時間もあんまりないのに…せっかく観光に来たんだから、ゴール見とけばいいのに」

 

太白「……それを何というか、知っているか」

 

三郎「ん?」

 

太白「寄生と言うんだ」

 

三郎「む…」

 

 

 

 

青葉(…ハセヲさんも太白さんも三郎さんさえも見失ってしまった…)

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