元勇者提督   作:無し

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記録 転機

The・World R:2

Δサーバー 悠久の古都 マク・アヌ

那珂

 

那珂「うっわあ……なっつかしい…」

 

ブラックローズ「アタシからしたらようやく見慣れた景色…って感じだけどな」

 

那珂「ねえねえ彩花ちゃん、ここにいる間って好きに動いても良いの?いろんなとこ行ってみたいんだ〜、一人称のThe・Worldなんて普通プレイしないし」

 

彩花『あのねぇ…まあ、いいわ…くれぐれも邪魔だけはしないで』

 

那珂「はーい……あれ?」

 

砂嵐三十郎「俺の顔に何かついているか」

 

那珂「いや、出てくるんだなーって思って」

 

砂嵐三十郎「ジッとしてるのは性に合わなくてな、何でも、俺もいる時代にも行ったらしいが、俺は置いてきぼりをくらった…もう待つのは飽きた」

 

那珂「へえ…意外と情熱的じゃん!」

 

砂嵐三十郎「そうでもない」

 

ブラックローズ「おい、そういや電はどうしたよ」

 

那珂「んー?電ちゃんはあんまり前には出てないみたい…ところで、ここっていつぐらいなの?」

 

トキ☆ランディ『正確な日時は言えるけど、あんまり意味ないと思うウパ』

 

那珂「…確かに、日時がわかってもあんまり意味ないかも…」

 

ブラックローズ「…とりあえずバラバラに動く…ってことでいいのか?」

 

那珂「うん、那珂ちゃんも行ってみたいところ沢山あるし」

 

 

 

 

マク・アヌは5つのエリアに区分できる

冒険に出る、帰還するドームエリア

ギルドのショップなどがある中央地区

船着場のある港地区

少しレベルの高い装備の売買施設のある錬金地区

ギルド@ホームの入り口や、薄暗い裏取引のある傭兵地区

 

数あるタウンの中で1番の広さと便利さを誇るマク・アヌ

誰かと会うにも、人を探すにも、ここが使われる

 

那珂(……せっかくここにきたなら、力を取り戻すべきだよね)

 

カートリッジを持ち上げて、少し見る

 

那珂「……ゴレ…」

 

少し、体の内側が熱くなった気がする

 

 

 

 

 

傭兵地区

 

那珂「…はあ…居ないなあ…」

 

私が探してる子は、一体どこに……

 

那珂「……ん?」

 

…この感じ

 

那珂「何か、用?」

 

3人のPCが物陰から姿を表す

 

ボルドー「ヘッ…こんな人気のないところを1人で歩くと危ねぇって忠告してやろうと思ってなぁ…?」

 

那珂「ふーん……それはいいけど、タウンじゃPKできないし…そんな人数で囲われても全然怖くないよ?」

 

ボルドー「…んだと」

 

イバラのような刺々しい刀身の剣が向けられる

女性の斬刀士、そして残り2人は男性の撃剣士と双剣士…

 

那珂(…あの武器の適正レベルは…あ、だったらあんまり強くないね)

 

那珂「もしかして、やりたいの?エリアに出る?いいよ、ボッコボコにしてあげるけど」

 

ネギ丸「んだと!?てめえ誰に向かってそんな事…!」

 

ボルドー「待てネギ丸…オイ、アンタ何モンだい…」

 

那珂「んー……カオティック経験アリの…新人PC?…なんかちょっと違うかな…」

 

カオティック…カオティックPK、悪虐非道のプレイヤーキラーの中でも特にヤバい連中が7人選ばれ、賞金をかけられる

 

PKの中でもカオティックPKだけは一般プレイヤーも一目おく場合もあるほどの強さを誇る

 

ボルドー「カオティックだと?笑わせんじゃねえよ、アンタの名前なんか聞いた事ねえな」

 

那珂(じゃあ那珂ちゃん達はカオティックじゃない時期…相当昔だなあ…)

 

那珂「うん、サブアカウントって知ってる?」

 

ボルドー「ハッ…ブラフかけて逃げようったって…」

 

那珂「…じゃあいいや、ついてきてよ」

 

 

 

 

 

 

ドームエリア

 

那珂「ふう…んー……っ…いい運動したっ…!」

 

身体の関節をポキポキと鳴らしながらドームエリアを散策する

 

このゲームの死体は半透明のお化けになって蘇生を待つか、ログアウトして最後にセーブしたところまで巻き戻される

 

まあ、つまりそろそろ…

 

ボルドー「……」

 

那珂「あ、きたきた、どう?那珂ちゃん強いでしょ?」

 

ネギ丸「ひっ…あ、姐さん…!」

 

ボルドー「ビクビクしてんじゃねぇ!!…おい、アンタ…アタシらケストレルに手ぇ出して…」

 

那珂「“がひ”が、黙ってないって?…良いんじゃない?“それもThe・World”って感じで」

 

ボルドー「っ…お前、がびと…」

 

那珂「もしかしたら、知り合いなのかもね…ケストレルのギルドマスターと」

 

実際は全然そんなことはない

ただ、ケストレルはThe・Worldにおいて超巨大なギルドで、そのギルドマスターのがびは有名だ

口癖は「それもThe・World(^ω^)」

 

このセリフの通り、大体のことがケストレルでは容認されている

逆に言えばケストレルでは何が起きても誰も深く関わらない

ギルドというコミュニティでありながら、個々で輪を作らなくては孤立する…

ギルドそのものは誰かに入れ込むこともなければ、特別なのはがびただ1人

だからそもそも、がびの報復はまずあり得ない

 

それでなおがびの名前を口にするのだから、怖い物知らずとてもいうべきか

 

那珂「あんまりケストレルの看板を汚すと、身内にキルされるよ?」

 

ボルドー「チッ…!覚えてやがれ!!」

 

これも実際に起こったらしい話だ

あるPKがPKK…プレイヤーキラーキラーにボコボコにされた時、ケストレルを名乗ったせいでケストレルのPKに追い回されたとか…

 

那珂(ギルドっていうか…もはや愚連隊だよね)

 

まあ、ケストレルを侮辱するような言葉は吐けない

ギルドを侮辱すればメンバーは怒るだろうし、本当に追い回してくる

 

千人規模のギルドを相手に取るのは、些か…

 

那珂(…さて、情報を集めるには大きいところ…でも、大きいギルドといえば、カナード、月の樹、ケストレル…月の樹はちょっと規律厳しすぎるから嫌だし、ケストレルはもっと嫌…カナード…は、初心者支援ギルドだから都合が良さそう)

 

方針は決まった

 

カナードにお世話になる形で行こう

となれば早速カナードについて聞き込みを……

 

 

 

 

 

那珂「…何で、誰も知らないの…?」

 

…誰も、カナードを知らない…

 

 

 

 

 

 

リアル

宿毛湾泊地 医務室

駆逐艦 夕霧

 

狭霧「……すごく楽になりました、ありがとうございます」

 

夕霧「お役に立ててよかった…そのカートリッジを起動すれば本来の力は使えます、ただ、カートリッジって脆いので、気をつけてください」

 

狭霧「はい…」

 

春雨(……ダミー因子の保有者はこれで全員回復した、まだ意識が朦朧としてる人もいるけど、苦しみを訴えはしていない)

 

春雨「…助かりました、夕霧さん」

 

狭霧「ええ、本当に助かりました…が」

 

…あれ、なんか空気が円満とは言い難い…

 

春雨「あなたは何者ですか?」

 

狭霧「…ここまでカートリッジの取り扱い、因子の摘出などに適性を見せるのは…おかしいと感じました」

 

夕霧「…えと、だから特務部で…」

 

狭霧「特務部で、なんですか?秋津洲さんにも数見さんにも問い合わせますが、なんですか?」

 

…なーんで、ここまで疑われてるのか…

 

夕霧「じゃあそうしてください、ただ、なぜ私を疑っているのか、何のために疑ってるのかハッキリさせてください」

 

狭霧「朝霧さんです」

 

夕霧「…朝霧が何か」

 

春雨「彼女はダミー因子保有者…ではない、となると正規のモルガナ因子を保有している事になる……では、どの因子なのか」

 

…そうだ、それがあった

 

春雨「ダミー因子なら、複製された事もあるし…頷けた、しかし、モルガナ因子を保有しているとなると話は違う、川内はここにいるし、神通は綾波さんといる」

 

狭霧「キタカミさんは行方をくらましましたが、アケボノさんもまだここに居ます、因子保有者の行方がわかっていないのはイニス、フィドヘル、ゴレ、マハ、の四つ、その内の一つ、イニスには姿を隠す力がある…」

 

春雨「朝霧さんは、瑞鶴さんではないのですか」

 

……弱ったな、これは逃げ場がなさそうだ

 

夕霧「……先に私の質問に答えてください」

 

春雨「なんですか」

 

夕霧「…春雨さん、貴方はなぜダミー因子を所持していながら苦しんでいないのか、可能性は幾つかありますが、私は因子を失った…と考えるのが、やはり適切だと感じました」

 

狭霧「…失った?春雨さんがスケィスを手放したと」

 

夕霧「ですが、それは頷けない、春雨さんの性格からしてそれは適切な答えではない……だとしたら、なぜ貴方がこの騒動の中、ただ1人ダメージを負っていないのか」

 

春雨「……わかりません、私自身、何故なのか…」

 

夕霧「わからないはずが、ないでしょう…!思い当たる節くらい…!」

 

コンコンと、ドアをノックされる

 

曙「入るわよ」

 

狭霧「曙さんに…倉持司令官、それと…」

 

海斗「青葉は気を失ってる…ベッドを一つ使っても良い?」

 

春雨「どうぞ、ご自由に…」

 

…青葉さんがベッドに寝かされる迄の間、沈黙が訪れる

 

海斗「狭霧、悪いんだけど、青葉の体を拭いてあげて、酷い雨だったから」

 

狭霧「わかりました」

 

海斗「それと、春雨」

 

春雨「なんでしょうか」

 

海斗「きっと、君が無事だったのはクビアのせいだよ」

 

夕霧「…聞いてらっしゃったんですか」

 

海斗「うん、外まで聞こえてた」

 

春雨「クビアのせい、というのは…」

 

海斗「まず、この騒動は…青葉が内包していたクビアの意識に対する共鳴…そして、クビアはスケィスと2度密接な関わりがある」

 

春雨「青葉さんが、クビアを?」

 

海斗「…一度は、碑文使いの反存在として対立した…そして、トドメを刺したのは、スケィスの碑文使い…もう一つは、僕たちと対峙した時、クビアは倒されたスケィスの碑文石を依代に実体化した」

 

春雨「…スケィスを、糧に…?」

 

海斗「そう、だから…きっとクビアとスケィスは近しいものがあるんじゃないかな…だから、川内も苦しんでいなかった」

 

春雨「……川内は?」

 

曙「消えたわ、多分…ネットに落ちた」

 

春雨「っ…!」

 

夕霧「…力を、手にしようとしてるんだと思います」

 

狭霧「何か、知ってるんですか」

 

夕霧「ここまで来たら、何も隠すつもりはありません…ただし、この狭い部屋の中でだけです、改めて名乗りましょう、私は横須賀鎮守府所属、実験軽巡洋艦、夕張」

 

狭霧「…やはり」

 

海斗「うん、アケボノから聞いてるよ」

 

夕霧「…流石に見抜かれてますよね…ええと、朝霧はお察しの通り、佐世保の瑞鶴です、私達は綾波の協力者として、いろんな工作をしてます、ただし、貴方たちの味方として…ここで確約しておきます、綾波は貴方たちの敵じゃない」

 

春雨「…知ってますよ、そんなこと」

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