元勇者提督   作:無し

615 / 625
Rethink

離島鎮守府跡地

綾波

 

綾波「…そうですか、見抜かれましたか、それで?」

 

夕張『綾波の方針をある程度伝えた…支障をきたさない範囲で…ちゃんとみなとみらいの事も説明した、民間人を狙ってない事も、アレが深海棲艦から人間に戻った子達を返すための、そして艦娘というものを終わらせるための作戦である事も説明した、起きた誤算についてもね』

 

綾波「……」

 

夕張『そして、今起きている事態についても…そっちは問題は?』

 

綾波「神通さんが酷い体調不良を訴えていますが、先程快復しました」

 

夕張『…倉持司令官は、クビアのせいだ…と、青葉ちゃんにクビアが宿ってみたいで、今その青葉ちゃんの体は意識を失ってる、クビアと一緒に』

 

綾波「クビア……そうですか、クビアか…」

 

夕張『…どうしたの』

 

綾波「……私は、クビアはまだ誕生していない…そう考えていました、The・World内に意識だけが存在しているんだと……まさか、私の予測の外側で何かが起きているのか…」

 

いや、そもそも何かが違うのか

 

綾波「……わかりました、根本的な調査のやり直しが必要不可欠になりそうですね…私が手にしている情報以外の何か……もしかしたら、クビア本人が秘匿している誰も知り得ない情報があるのか」

 

根本的な、本質的な間違いがあるのなら、どんなに今の情報を組み立てても求めている形にはならない

 

何が違う?クビアはいつ青葉さんの内側に寄生したのか

そもそも、青葉さんはなぜ意識を失い、クビアの意識が表に現れたのか

 

綾波(…わからない…だけど、クビアが共鳴を引き起こす程にその力を蓄えられたのも…深海棲艦は減り続けているはずだ、だというのに…)

 

綾波「青葉さんは、何かを手にしたのか?…青葉さんが力を手にした事で、内に宿るクビアが覚醒した…としたら……何を手にした?」

 

 

 

 

 

 

The・World R:2

Δサーバー 悠久の古都 マク・アヌ   

             ドームエリア

川内

 

川内「…本当にネットの中に来ちゃったや…一か八かの賭けだったのにね…」

 

…このタウンは、正直あまり好きではない

何故かって、いつだって夕暮れだから…

 

いつだって、夜になる前の時間で、薄暗い夜がこれからやってくる兆候を、常に私に見せつけるから

 

川内「…っ?」

 

すぐ隣に、誰かが転送されてくる

 

川内「っ!」

 

…間違いない

大きく姿が変わっていたが、私の知るその人だ

 

ハセヲ「装備が……変わって…っ!?……まさか…レベル1!?」

 

何かに狼狽えたようにキョロキョロと辺りを見渡しながら、何かを操作する動作

必死に自分のステータスを確認しているのだろう

 

ハセヲ「そうだ…アイテムっ…!…メンバーリスト……装備は…!………消えてる…っ……は…はは……何も、かも…」

 

…何もかも消えた?

 

ハセヲ「キャラデータまで…まるごと……初期化しやがった……」

 

川内(…なるほどね、だからあんな格好なのか…)

 

……まだ碑文が、スケィスが目覚める前らしい

呆然としてる様を見て、何と声をかけるか躊躇っていたが…

 

ハセヲ「っ!」

 

…何かに反応したかのように、ドームエリアを駆け抜けて行った

 

川内「……追いかけようかなぁ…でも…」

 

じっと両の手のひらを見つめる

 

…少し、震えていた

戦うのが怖い…というわけではない

 

もっと、根幹の部分…

 

怖いのは、死とか、世界とか…

そういう概念的な部分にある

 

川内「……」

 

体の内側が熱い

何かの胎動が、感じ取れるように…

 

川内(……スケィスが、目覚めようとしてる…?)

 

私の内側で、ソレが暴れてる…

 

川内「………収まった…提督と、ハセヲと共鳴してた…って事?」

 

神通はこうやって力を取り戻した…って事?それなら…

 

川内「スケィスを取り戻せば、ワンチャンあったりするのかなぁ…」

 

…想像するだけでため息が出る

 

無茶もいいところだ

 

 

 

 

 

傭兵地区

那珂

 

那珂「うーん…こっち全然情報集まんないよ?」

 

ブラックローズ『知らねえよ!1人で飛び出しといて何文句垂れてんだよ!』

 

那珂「そう怒らないでよ、リアルの摩耶ちゃんの眉間に皺がよっちゃうよ?」

 

ブラックローズ『うるせえ!』

 

那珂「……はー…弱ったなぁ……ケストレルの下っぱには追い回されるし、朔望は見つからないし」

 

ブラックローズ『……サクボウ?』

 

那珂「朔望ね、朔と望、2人で1人の碑文使いだよ、ゴレの碑文使い…」

 

ブラックローズ『……どんな見た目だ』

 

那珂「えっとねー…ヘンテコな帽子に、ランドセル見たいなリュック背負ってるよ」

 

ブラックローズ『ヘンテコな帽子?』

 

那珂「なんかね、胃みたいな形してるの、左右の端がね、片っぽは上向いてて、もう片っぽは下向いてて、お日様と月のシンボルがついてて」

 

ブラックローズ『もっとマシな説明できねえのかよ』

 

那珂「だって本当にそうなんだよ?」

 

ブラックローズ『胃の帽子って…グロすぎんだろ…!?』

 

那珂「形だけだって、見た目もちゃんと可愛いし!」

 

ブラックローズ『お前のセンス、理解できねー…』

 

那珂「もういいよ、摩耶ちゃんには頼らないから」

 

謝罪のショートメールを無視してタウンを散策する

 

那珂「はー……見つからないなあ……」

 

水路にかかった石橋の手すりに乗っかり、足をだらりと水路に垂らしてぼんやりと夕暮れを眺める

 

…落ち着く、すごく、暖かい

 

ゲームの中なのに、暖かくて、幸せな時間…

 

これが、もっと、みんなで…

 

那珂(そのために、頑張らなきゃいけないんだよね…)

 

那珂「…あれ?」

 

コンコンと乗っかっている手すりを叩く音で我に帰る

 

クーン「やあ!お嬢さん、暇してるの?良かったら遊ばない?」

 

黄色の民族衣装に青い長髪の、スカした男性PC…

 

那珂「女遊びなら、やめた方がいいと思うよ?」

 

クーン「そういうデンジャーなコもオレは好きなんだけどな、どう?オレ強いよ?」

 

那珂「強がってる男はダサいと思うけど…」

 

クーン「あー……アハハ、そう?オレダサいかなぁ…いや、お嬢さんの力になれるんじゃないか……と、思ってさ」

 

那珂「…どういう事?」

 

クーン「ケストレル…追われてるんじゃないの?」

 

那珂「……何で知ってるの?」

 

クーン「タウンで有名だからさ、女の子をケストレルが形相変えて追っかけ回してるって……“死の恐怖”を追っかけるみたいに」

 

那珂「…死の恐怖?」

 

クーン「あれ?知らない?百人斬りのPKK」

 

那珂(…知ってはいるけど…だいぶん昔の話…だよね?)

 

那珂「知らない」

 

クーン「えー、有名だよ?死の恐怖って呼ばれてる黒いPKKが同時に100人のPKを斬ったって…つい最近の話なんだけどな」

 

那珂(つい最近?…そういう時代に来たって事…?)

 

那珂「それが、なに?」

 

クーン「いや?…ただ、PKKを意図してやってるのか気になってね、そういう悪目立ちする行動はThe・Worldではすぐ広まるし…ターゲットにされやすいんだ」

 

那珂「だから…やめろって?」

 

クーン「…オススメはしない、オレは女のコが困ってるのを放っておけないタチでね」

 

那珂「なら大丈夫、困ってないから」

 

クーン「…そっか、ゴメン、何か困った事があればすぐ連絡してよ、オレはクーン、これ、オレのメンバーアドレスだから」

 

那珂「いや、要らない……あ、そうだ、聞きたい事があるんだけど」

 

クーン「ん?」

 

那珂「カナードってギルド、知ってる?初心者支援ギルドらしいんだけど」

 

那珂(まあ、多分知らないだろうけど)

 

クーン「おお、知ってる知ってる、だってオレ、ギルドマスターだし」

 

那珂「……え?」

 

クーン「つっても、この間ギルメンにマスター譲ったんだけどさ、何、カナードに用?紹介しようか?」

 

那珂「……えっ…と……」

 

クーン「まあ、でも…そういう事ならオレからも良いかな?」

 

那珂「な…何?」

 

クーン「…キミをカナードに入れるなら、ケストレルとのいざこざは先に解決しておきたいんだ、ご存知の通り初心者向けギルドだ、初心者がケストレルの連中に狙われるような事になるのは、ゴメンだからね」

 

那珂「……あー…」

 

クーン「それと、君の目的も聞かなきゃならない、何故カナードなのか…とか、その辺りも含めてじっくり……どう?向こうのテラスでゆっくり話さない?」

 

那珂(…これ、本当に知ってるの?ただナンパの口実に使われてるような気がしてきた……)

 

那珂「…や、やっぱり良いや、自分で何とかします!ありがとね!」

 

クーン「あ、ちょっと!」

 

そそくさとその場を後にする

 

 

 

 

錬金地区

 

那珂「……はぁ…疲れた、端から端まで全力疾走したせいで…脚痛い……ここまで陸を走ったの、久しぶりかも」

 

大きくため息をついて、息を整える

 

那珂「…あのクーンって人、本当にカナードのこと知ってるのかなあ……いや、情報収集ついでに聞いてみようかな」

 

次は、クーンについても調べないといけなくなったか…

 

那珂(…もし、本当に関連があって、力を借りるとして……情報が欲しい…となると…)

 

那珂「よーし、中央地区でギルドショップ巡り!……お金集めないと!」

 

となればアイテム集めから始まる

片っ端からアイテムを集めて売り捌く、これが最効率…

 

那珂「“The・World“を楽しむついでに情報も集めちゃおう!……あれ、ところで…トキオ君は…どこで何してるんだろう」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。