元勇者提督 作:無し
The・World
Δサーバー 終末の 果ての 迷宮
トキオ
トキオ「…ここに出てくるモンスター…みんな、バグモンスターだ」
名前の表記も、グラフィックもおかしくなってる
那珂「うえぇって感じ…でも、普通に倒せるんだね?」
電「ちゃんと死ぬのです」
トキオ(そういえば2人は艦娘なんだっけ、深海棲艦は普通には倒せないのかな?)
トキオ「…でも、敵が強いわけでもない…か……本当にここをクリアすれば強くなれるの?どうにもレベルが上がる気もしないし」
AIKA「もちろんですの!でも、レベルではありませんの」
トキオ「レベルじゃない?」
AIKA「ここは立ち入った者の心を映し出す迷宮、心の内に巣食う魔物が潜んでいるですの、ここを踏破すれば、一段と強い心に成長できるですの」
トキオ「心、か…」
確かに、今のオレに必要な強さはレベルじゃないのかも
那珂「やぁっ!!」
那珂の拳がバグモンスターを打ち砕く
トキオ「…那珂は艦娘なのに、殴るんだね」
那珂「まあね、だってここで弾の補充する手段がまだ無いし」
トキオ「あ…そっか」
那珂が手にじゃらじゃらと小さい弾を集めてこちらにみせる
那珂「これだけしかないの、一応弾の種類変えればあと少しはあるけど、あとは魚雷くらいだし、できるだけ節約しないと」
…そんなことまで考えて戦ってたのか
トキオ(…オレとは全然状況が違うけど、もし同じ立場だったとしたら…すぐに撃ちきっちゃいそうだな…)
トキオ「……ん?」
???『……ぃぃい………ひぃぃぃよ……』
AIKA「振り返ってはいけません」
那珂「これが、呼びかけ?」
トキオ「…なんだか気味が悪いよ」
AIKA「この呼びかけは、あなたたちの心に巣食う闇です、振り返ることは悔いること、悔いてしまえば後悔の迷宮に囚われ、2度と抜け出せなくなります」
那珂「…ふーん」
トキオ「……うわっ!?」
景色が急に切り替わる
那珂「……これは」
電「あのフィールドなのです」
…シックザールの結界…!
トキオ「なんで……いや、あれは…!」
中央に、司たちを襲ったあのガーディアンが…
那珂「あれ何!鉄アレイみたいだけど!」
トキオ「ガーディアンっていう…よくわかんないけどモンスターなんだ!その…スライムみたいだけど、うまくやれば近接攻撃でも倒せるはず…!」
那珂「つまり、不定形のモンスター…」
那珂が艤装から魚雷を引き抜き、ガーディアンに投擲する
那珂「電ちゃん!」
電「なのです!」
魚雷を機銃の弾丸が貫き、ガーディアンの側で炸裂する
トキオ(え、えげつねぇ〜…)
ガーディアンの一部が弾け飛んだものの、その破片がぐにゃぐにゃと集まり、再び元通りの形になる
那珂「…HP削り切らないと倒せないタイプなのか、コアを破壊したら倒せるタイプなのか、そこが問題だよね」
トキオ「…コアがあるとしたら、アレだと思う」
ガーディアンの中心にある、くすんだ黄金色の…腕輪の様な何か
トキオ「でも、アイツは体を触手みたいに伸ばして貫く様な攻撃をしてくるんだ、それに当たったら…」
電「…かなり危険、ということなのですね」
那珂「わかった」
那珂が武器を取り、前に出る
那珂「トキオくん、リーダーは君だよ、敵の動きを知ってるのは君だけだから…だから、生き残れるように、ちゃんと指示してね」
トキオ「えっ」
電「それしかないのです、任せました」
…オレが、リーダー…?
那珂「落ち着いて、大丈夫…私たちは作戦に従うのは慣れてるから」
トキオ「……わかった、でも」
両手の剣を構え直し、ガーディアンを見据える
トキオ「前に出るのは、オレだ!」
那珂「何言ってんの、コイツの攻撃危ないんでしょ…!?私達なら多少は耐えられると思うし…」
トキオ「大丈夫!…オレだけ安全なとこにいたくないんだ!それに……オレは…!」
両手の剣を一度大きく振り、敵を見る
トキオ(もう、後悔したくない!!)
トキオ「オレが注意を惹く!コイツは触手を伸ばして突き刺す様な攻撃しかしてこない!動きも遅い!だから対処を間違えなければ大丈夫!」
前に駆ける
ガーディアンの触手は見切って斬り落とす
トキオ(…イケてる!)
ガーディアンが同時に複数の触手を伸ばしてくるのを、回転しながら斬り落とす
完璧に対応できている、一本もオレに届くことなく斬り落とせている
那珂(あの動き…ちゃんと身体の動かし方を頭で組み立てて戦えてる…触手の伸びるタイミングも見切ってる…)
那珂「思ってたより、強いじゃん」
電「那珂さん!」
那珂「うん!」
後方からの遠距離攻撃がガーディアンを襲い、攻撃の手が止まる
弾け飛んだガーディアンの破片が辺りに散らばる
トキオ(よし!このまま…)
露出した腕輪目掛けて走る、そして剣を振りかぶり…
トキオ「ッ!」
その時ちょうど視界の端にチラッと見えた
吹き飛んだガーディアンの破片から、電ちゃんへと鋭く伸びようとしてる触手が…
走っていた足を止め、振り向きざまに剣を振る
トキオ「斬烈波!!」
斬撃を飛ばし、触手を斬り裂く
那珂「おー、ちゃんと気づけたんだ、ナイスカバー!」
トキオ(那珂は気づいてたのか…)
電「助かったのです!」
トキオ「良かった…間に合って」
……でも、足を止めたせいで、弱点だと思ってる腕輪は隠れてしまった
那珂「ダメージを与えても与えても、すぐに再生するどころか…再生速度上がってない?」
電「……どんどん攻撃速度も上がってきたのです」
トキオ「…早く倒さないと…」
那珂「…ねえ、電ちゃん」
電「………わかったのです」
トントン、と肩を叩かれる
那珂「トキオくん、前衛2人で行こうか」
トキオ「え?でも直接殴ったりしたら…」
那珂「大丈夫、那珂ちゃんには秘策があるから」
トキオ「……そこまで言うなら…お互いカバー重視!…左右にバラけて行く!」
那珂「よし!やるよ!」
トキオ「おう!!」
2人で歩調を合わせ、左右に広がる
外周を2人で回る様に動き、惑わせる
左右に分散したおかげで攻撃のペースは若干鈍く、精度も落ちた…
電(2人の位置がバラバラなせいで狙いが追いついてない…そして、3人目の私への狙いをつける余裕もない…)
電ちゃんの砲撃を受け、ガーディアンの攻撃が止まる
那珂(今!)
那珂がガーディアンに飛びかかり、砲弾を投げる
トキオ「えぇぇっ!投げちゃうの!?」
那珂(確実に仕留める!…この子に怪我をさせないために…私も…姉さんみたいになるために!!)
那珂が砲弾を至近距離で爆発させながら攻撃し続ける
トキオ(あ、あんな距離で戦うのは危ないんじゃ…!?…まさか…!)
外周を回る様な動きをやめ、一直線にガーディアンに駆け寄る
那珂(かったいなぁ…!でも、まだまだ!死ぬまでやるよ!)
那珂「っ」
トキオ「!」
腕輪がゲル状の体から僅かに露出し、那珂の意識がそっちに向く
そして、それを見越したかの様に、崩れたガーディアンの体から触手が那珂の背に伸びる
那珂(これさえ壊せば!)
トキオ「うおおぉぉぉぉッ!」
那珂「っ!?」
跳び上がり、那珂を掴んでガーディアンの側から離脱する
那珂「ちょっ…何して…」
トキオ「危ないだろ!!」
そのままガーディアンから距離を取り続ける
追撃は無く、そのまま離れられた
電「おかえりなのです」
那珂「…折角のチャンス、2度目も逃したね」
トキオ「…いや」
電「作戦は成功なのです」
ガーディアンのゲル状の体が崩れ落ち、煙を上げて蒸発していく
那珂「嘘!倒せてたんだ」
電「倒したのは、トキオさんなのです、那珂さんを助ける時にコアを攻撃していたのです」
那珂「へぇー!やるね!」
トキオ「…やるね、じゃないよ…!なんであんな事したんだよ!ボロボロじゃないか!」
那珂は至近距離で何度も、何度も砲弾のダメージを自分で受け続けて…
身体中やけどや破片でできた切り傷だらけになっていた
那珂「だって、あれが確実でしょ?事実、あと一撃で倒せてたじゃん」
電「残念ながら、那珂さん、貴方はトキオさんに助けられてるのです…あのままだと、貴方の攻撃より先に…背後から貫かれていたのです」
那珂「……そっか、ごめんね、守るつもりが迷惑かけちゃった!」
トキオ「…那珂…ちょっと待ってよ、おかしいよ…!」
那珂「え?何が?」
トキオ「確かに、オレのために…オレたちのために、危険を冒して敵を倒そうとしてくれたのはわかった、だけど…これが那珂の考えてる勇者なの…?」
那珂「……さあ、どうなんだろう…」
トキオ「え?」
那珂「那珂ちゃん自身、この感情は憧れでしかないからね…本当の勇者になんてまだまだなれてないと思う…だから、勇者の真似事をしてみたつもりだったんだけど…あれ?」
いつの間にか、あたりの景色が元の迷宮に戻っていた
トキオ「……あんな戦い方しちゃダメだ、あんな事してたら、みんな心配するよ」
那珂「それが役目だから」
トキオ「…今は、艦娘じゃないだろ?!オレと同じ同じネットに囚われた1人の人間だろ!?
那珂「…人間かぁ…」
電「……」
トキオ(…なんだ?この反応…オレ、変なこと言ったのか…?)
那珂「…トキオくんは優しいね、うん、君みたいな子が…必要なんだよ」
トキオ「え?」
那珂「君は、もう勇者なんだなって…そう思ったの」
トキオ「な、なに?いきなり…」
那珂「…ううん、なんでもない」
那珂(そう言う風な目で思ってくれてる子がいたの、久々に思い出したなぁ……)
電「…那珂さん、トキオさんは知らないだけなのです」
那珂「わかってるよ、でも…嬉しいでしょ?一瞬でも、浸らせてよ」
電「……わかりました」