元勇者提督 作:無し
The・World
Δサーバー 終末の 果ての 迷宮
トキオ
???『……ぃぃい………ひぃぃよぉぉぉ…』
トキオ「…まただ、また何か聴こえる」
那珂「振り返らないよ」
電「なのです」
…迷宮を、順調に進めてはいる
だけど…おそらくこの迷宮は定期的に強敵と出会う
次、またあの強敵のエリアに飛ばされた時、オレは勝てるのか?
それもただ勝つだけを目指したら…きっと那珂や電ちゃんは自分を犠牲にする道を選びかねない
トキオ(2人を守れるくらいに強くならなきゃいけない)
これが那珂の言っていた気持ちなんだろう
オレは、今、2人を守りたいって強く思ってるんだ
トキオ「……よし!やるぞ!…って!?」
また、あの空間に飛ばされる
トキオ「気合い入れた瞬間飛ばされるのか…」
那珂「…さっきと同じ場所?」
電「…敵は…2人?」
あたりにはごろごろと転がった石の破片と霧…
視界がハッキリしてなくてちゃんと見えないけど、片方はオレにはわかる
トキオ「……青葉」
一歩前に出て、近づく
視界が少しクリアになる
トキオ「!」
青葉と…手を繋いだ、女の子
槍を抱えていた子と同じ…でも、電ちゃんといたんじゃ…
電「!…あの子は…そういえばいつの間にか姿が…!?」
那珂「手ぇ繋いでたんじゃないの!?」
電「全然気づかなかったのです!」
トキオ「……あの子も、敵?」
でも、今回槍を持ってるのは青葉だけ…
青葉「……」
青葉が女の子と手を握ったまま、槍をこちらへと向ける
トキオ「…やるしかないのか…これがオレの心の内にあるものなら…やってやる!!」
那珂「青葉ちゃんを倒すのかぁ…」
電「気が引けるのです…」
トキオ「え?……あの、青葉と知り合いなの?」
那珂「勿論、同僚みたいなもんだよ」
トキオ(うわぁ…一気にやり辛くなったなぁ…)
那珂「…と?」
那珂が顔をのけぞらせ、光の矢をかわす
那珂「アイドルは顔が命なのにー!そんな事するなら…那珂ちゃん本気で相手しちゃうから!いいの?」
青葉「………」
那珂「…青葉ちゃん、嫌な感じ」
電「…喋れないのですか?…もしかして、再現だから…?」
那珂「ていうか!この辺の足元の石邪魔!歩きづらいんだけど!こんな岩場で毎回戦ってたの?」
トキオ「いや…」
そう言われてみれば妙だな…この大量の石は何なんだ…?
結界の中にこんなもの…
那珂「うわっ!?」
石が溶けるように平たくなり、煙となって蒸発していく
那珂「…想像の中だからいらないものは消せる?とか…そもそも想像の中ではないのかな…心の内を表すってそういう意味だと思ってたけど」
電「何でもいいので、戦うのかどうかはっきりして欲しいのです」
那珂「倒さなきゃ進めない以上、やる以外の選択肢あるの?」
トキオ「…行くぞ!!」
剣を振りかぶり、大きく振るい、斬撃を飛ばす
トキオ「斬烈波!」
…いとも簡単に防がれるが、これでいい
青葉の攻撃の射程はオレよりも圧倒的に長い
その分、ゼロ距離に近づけばオレにも勝機はある!
だからまずは隙を作る
那珂「考え方は間違ってないけど、青葉ちゃん相手に油断しない方がいいよ」
トキオ「わかってる!油断せず、待つ…!」
那珂(…そうじゃないんだけどな…でも…青葉ちゃんのことを考えると、言うのも何だか…どうしたらいいんだろう)
トキオ(那珂たちはできれば戦いたくないはずなんだ、なら、オレが…!)
リコリス「リパルケイジ」
トキオ「えっ!?」
青葉と手を繋いだ女の子が、声を発した
そして青葉が前に踏み込み
那珂「!」
トキオ「ぐ…」
片手で槍を縦回転させ、高速の斬撃を放つ…
即座に剣で防ぐものの、わずかに槍の刃先が肉を削る
トキオ(あの子、今しゃべったよな…!何だ、どうなってるんだ!?)
那珂「ねえ!意思疎通できるの!?聞こえてるよね!?」
リコリス「……トリプルドゥーム」
トキオ「うわっ!?」
こちらの問いかけに応えることはなく、槍の攻撃が無常にも迫る
トキオ「くそっ!落ち着いて戦わないと…!」
とは言っても、混乱しない方が無理だ
リコリス「火炎太鼓の呪符」
トキオ「おわっ!?」
那珂「あぶなっ…!」
…遠距離攻撃と、中距離攻撃
青葉は一方的にこちらを攻め立て、反撃を許さない
トキオ(…オレは、どこまでやっていいんだ…!?倒してもいいのか…?いや、倒すしかないんだ!!)
リコリス「ダブルスィーブ」
トキオ「!」
大振りな横薙ぎを2度行う…
かつて見た青葉の動きが頭をよぎった
そして、小さく跳び、剣を叩きつける様に振り下ろす
青葉が狙うであろう、槍の軌道目掛けて
トキオ「ここだ!!」
青葉「……」
金属音が響き、青葉の槍の切先が地面を抉る
トキオ(このまま!!)
槍の柄に乗り、至近距離で…
トキオ「連牙・昇旋風!!」
青葉が剣撃を受けてふらつく
トキオ(今ここで、決める!!)
那珂(…青葉ちゃんなら、こう言う時!)
リコリス「斬風姫の召喚符」
トキオ「っ!」
白い風の筋が辺りを包み込み…
那珂「よっと!」
トキオ「うわっ!?」
風に斬り刻まれる直前に那珂に引っ張り出される
電「間に合って良かったのです」
那珂「青葉ちゃんならやるよねぇ…やると思ってたし、それしかないもんねぇ…」
那珂(……自滅技…って言ってもいいのかな、相変わらず捨て身の闘い方してるなぁ…)
竜巻が晴れた時、ズタズタに斬り裂かれた青葉が虚ろな目をこちらに向ける
トキオ「っ…」
思わず息を呑む
幽鬼を思わせる程の、異質な雰囲気だった
ひとくくりにされていた髪も乱れ、衣服も乱れ
傷ついた部分から、テクスチャの裏側の、世界の狭間が覗いていた
…ただ、これは…
トキオ(やっぱり、おかしいよな…)
トキオ「…なあ、お前って、何なんだ…?」
那珂「…どう言う意味?」
トキオ「
…ゲームの中に入ってるオレが言うのもおかしいんだけど
トキオ「明らかに、おかしいんだよ、あの青葉は…この世界の住人なんだと思う」
那珂「……つまり、別人ってことでいい?あの青葉ちゃんは本物じゃないって…」
トキオ「オレは、そう思ってる」
那珂「……なら、思いっきりやろっか!本物じゃないのにこんなに強いなんて…ちょっと嫉妬しちゃうけど」
トキオ(…っ…?何だ?この感じ…)
那珂「…トキオくん?」
トキオ(……声が、聞こえる…誰かの声が…それに、変な感覚が…)
那珂「あぶ…ないっ!!!」
金属音と共に我に帰る
那珂が青葉の攻撃を弾いてくれたらしい
トキオ「あ、ありがとう!!」
那珂「ぼやぼやしてたら死ぬよ!?」
トキオ「う、うん…っ!?」
青葉がふらりと揺れ、倒れる
電「…倒れたのです」
那珂「…さっきの攻撃で…体力の限界だった?」
トキオ「みたい…だね」
青葉の体が徐々に崩れ、光となって消えていく
その光の粒子は、あの目を閉じた少女の方へ
トキオ「…あの子が青葉のコピーを作り出していたのか…?」
那珂「…ねえ、見て、これ」
電「…青葉さんの倒れてたところに…なんでしょうか」
光の塊を拾い上げる
rae.cylと表示された
トキオ「あーるえーいー…ドット…この拡張子、何なんだ?」
リコリス「rae.cylを、私にください」
那珂「うわっ!?」
電「…どうなってるのです…」
このアイテムが欲しい…って事なのか?
トキオ「……あげてもいい?」
那珂「それは任せるけど…」
トキオ「…ほら」
アイテムを渡したと同時に、元の迷宮へと
電「……あ、あれ」
トキオ「また電ちゃんの隣に」
那珂「……よくわかんない子だね…名前は何なのかな」
リコリス「リコリス」
トキオ「え?」
電「…名前、なのですか?」
リコリス「うん」
那珂「会話ができてる…何で?」
トキオ「……わかんないや…」
那珂「……私もわかんないけど…この子、すごく不思議な感じする…」
那珂(というか、寒気がする……いや、この子のせいじゃないのかな…)
トキオ「…那珂?」
那珂「……あ」
電「どうかしたのですか?」
那珂「…みんな、逃げよう」
トキオ「え?」
那珂「バグモンスターが来てる!」
電「え?…きゃっ!?」
トキオ「うわっ!?引っ張らないでよ!!」
那珂「急ぐよ!!」
那珂(…この感じ……気の所為であって…)
AIKA「……たとえどんなに逃げても、逃れるのは難しいですの……貴方の恐れを、悔いを、迷宮は見逃してくれませんの」
那珂「っ!」
トキオ「ま、また!?」
再び結界に転送される
電「ペースが早くなってるのです!」
那珂「……いや…さっきまでのがトキオくんのだったとしたら、今回のは“私の分”かな…」
トキオ「え?」
電「っ…!…最悪なのです…」
カン…と、何かが床に突き刺さる音が響く
川内「…待ってたよ、那珂」
那珂「っ…!」
那珂の表情が一気に曇る
トキオ「…あれは誰」
電「川内さん…那珂さんのお姉さんなのです」
トキオ「アレが…!?」
…よく見れば、黒い衣装だけど…那珂の衣装と形は似てる
那珂「……2人とも手を出さないで、これは、私の問題だから」
那珂(…私が姉さんを置いてきたことをずっと悔いていたから…だから、今になって襲いかかってきた……)
那珂「だったら、ここで打ち砕くまでだよ…悔いも今、この瞬間をもって無くなる…姉さんはそこまで弱くない、私は信じてるから」
川内「…酷いな那珂は…知ってるでしょ?私が弱くて脆いことくらい…」
那珂「……確かに、姉さんに限らず人の心なんて脆くて弱い!でも…姉さんは、姉さんは私の前で間違ったりはしないから!」