元勇者提督   作:無し

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虚像

The・World

Δサーバー 終末の 果ての 迷宮

那珂

 

…強く拳を握り、構える、左右の拳を顔ほどの高さにあげて、顔を守る

基本的なボクシングの構え…

 

川内「…懐かしいねえ、よくスパーリングしたっけ?…那珂は覚えてないかなぁ…」

 

那珂「覚えてなきゃ、再現のしようもないでしょ」

 

川内「そりゃそうだね」

 

…同じ構えを一瞬取ってから考える仕草を見せ

 

川内「…いや、やっぱいいや」

 

隙だらけの両手を広げた、構えも何もない…

 

川内「先に仕掛けて良いよ」

 

那珂(…姉さんは、こんな事はしないけど…)

 

距離を詰め、腹部目掛けて突き上げる様に右拳を振り抜く

 

川内「…軽いなぁ…」

 

拳を片手で掴んで受け止められ、捻られる

 

那珂「っ…!…なんて、握力…!」

 

那珂(姉さんはこんなに握力ゴリラじゃないから!…って…)

 

可笑しい

やっぱり可笑しい

 

私の思ってる姉さんと何でこんなに乖離(かいり)してるの?

私の想像が、悔いが、形を得て現れてるはずなのに…

私の知ってる姉さんが言わないことを言って、違うことをして

 

那珂「本当に姉さんなの…!?」

 

川内「酷いなぁ…どう見たって、私でしょ?」

 

私の手を離し、両手を広げて笑う

 

那珂「っ……」

 

体を沈める様に、低く、深く

頭を地につけるかの如く沈め、そして再び浮き上がる様にして距離を詰める

 

那珂「!」

 

持ち上げた頭に蹴りを合わせられ、無様に転がる

 

川内「ほらほらどうしたの、那珂…そんな手、通用しないよ?だって那珂を一番知ってるのは私だから」 

 

那珂(…偽物とは絶対に言えないほど、私の手の内を知り尽くし、それに悉く対応してくる…)

 

…つまり、これに勝つのは本物同様に絶望的だ

 

那珂「……いいね、やる気でちゃうよ」

 

川内「おっ……そろそろ準備運動は終わった?」

 

那珂「これだけアップの時間があったんだから、そりゃあもうあったまったよ…!」

 

両手を軽く振り、額の汗を拭い、一度目を閉じて深呼吸する

視覚、聴覚、触覚

全てをシャットアウトし、落ち着く

 

那珂「…臨、兵、闘、者、皆陣、列在前…」

 

目を開く

目前まで迫った拳をいなし、カウンターパンチを脇腹に叩き込む

 

川内「っ…!」

 

那珂「…姉さんはさ、そんな卑怯な手を使ったりしないよ…うん、漸くわかったんだ、今の私が怖がってる事が貴方なんだ、姉さんの虚像でしかない」

 

川内「…だったら…?」

 

那珂「もう怖くない、だって…姉さんの事なら私たちが一番よくわかってるから…大丈夫」

 

川内「なにが大丈夫なのか…ゆっくり教えてもらおうかな!!」

 

距離を置くために飛び退いた虚像を追う

 

那珂(私が一番不安に感じてる手を打つなら、姉さんは…)

 

跳び上がり、振り抜かれた大剣を交わす

 

川内「っ!」

 

那珂「そうだよね、そうするよね…縦に振られてたら死んでたかも」

 

宙に浮いたまま大剣を振るったせいで…隙だらけの巨像

 

那珂「……」

 

そのまま、まっすぐ虚像に飛びつく

なりふりを構わずに、ただ、抱きしめる

 

川内「っ…!?」

 

那珂「…私が今一番怖い事は、姉さんをまた失う事…確かに貴方は虚像でしかない…だとしても、私は姉さんを失うことがただ怖い……残酷だよね、この恐怖心が姉さんを消すなんて」

 

抱きしめた虚像は、確かに暖かかった

感じてはいけない温もりを確かに持っていた

私の一番欲していた、そして恐れていた感覚を

 

川内「……那珂」

 

那珂「…なぁに?」

 

川内「那珂はもう間違えないね…大丈夫だよ」

 

那珂「……」

 

私の腕の中で崩れていく虚像を確かに感じながら…ただ、堪える

 

那珂「……本物も偽物も、やっぱりズルいなぁ…それ…私が今一番言って欲しくなかった言葉だよ…」

 

川内「たとえ(うつろ)の身でも私は私、それに…そう思って事は…ずっと待ってたんだよね?…大丈夫だよ、今の那珂なら、何かに呑まれた…り…」

 

…完全に消えた、目の前で姉さんを失った

私が一番恐れていたことが、現実に起きた

 

でも…

 

那珂「……知ってるよ…わかってる、だって私は強くなるから…姉さんよりもずっと……」

 

…あったかかった…

間違いなく、あったかくて…優しかった

偽物だとわかっていても、そう思うのが辛いほどに

 

那珂「……!」

 

…何かの鼓動が、体の内から聞こえた

 

那珂「…なに、か…が…」

 

…何かが…

 

那珂「……っ……う…?」

 

…あ、れ…頭がぼんやりして…

目の前が真っ白に…

 

 

 

 

 

 

那珂「っ!」

 

…次に目が覚めた時には、迷宮に戻っていた

 

トキオ「よかった…目が覚めた!」

 

電「大丈夫ですか?」

 

那珂「え…あー……うん……うん!?」

 

…なんか、服が…というか、色々可笑しいような…特に頭が重たい様な…

 

那珂「…えーと…電ちゃん、私の頭、どうなってる…?」

 

電「…帽子をかぶってるのです、大きな帽子を」

 

那珂「…私の想像だと、片方が上を向いて片方が下を向いてるヘンテコな帽子?」

 

電「…いいえ、丸い帽子なのです、取ってみればいいのでは?」

 

那珂「…うん」

 

帽子を外し、見つめる

 

潰れた玉のような形の帽子…

 

那珂(…環…か、私の心が落ち着いた…って事なのかな)

 

帽子を頭に乗せて立ち上がる

…服も、かなりフリルが増えたけど、綺麗なものになってるし

あと気になるのは…

 

那珂「なにこれ」

 

手袋のない片手につけられた、手首と二の腕を少し覆う…装飾具…?

 

電「多分、指輪に近いものだと思います」

 

那珂「指輪…ってことは」

 

触れた瞬間、目の前に魔導書が浮かび上がる

 

那珂「……は…はは…那珂ちゃんとうとう本当にゲームのキャラにでもなっちゃった…?」

 

AIKA「おめでとうございますですの」

 

那珂「あっ…AIKAちゃんだっけ」

 

AIKA「はい、貴方は自分の心に打ち勝ったですの、そして…自身に眠っていた力を解放したですの」

 

トキオ「つまり、那珂はこの迷宮をクリアしたってことになるのか…!?」

 

AIKA「そうです、トキオ、貴方もこの迷宮を踏破すれば新たな力が目覚めるですの!」

 

…これが、私の新たな力?

 

トキオ「よーし!オレもがんばるぞ!」

 

那珂「…よし、行こっか!」

 

…思ってた(ゴレ)では無かったけど…

今はこれもありがたい

 

電「…私も力が目覚めたりするのですか?」

 

AIKA「それは…わかりませんですの、この迷宮は心を写す鏡、でも本来はトキオの心のみを写すはずだったのに…」

 

那珂「なんだっていいじゃん、今は進もう?」

 

電「そうですね、わかったのです」

 

ポザオネ「イッシッシッシッ!ようやく追いついたアル…!」

 

トキオ「うわっ!?ど、どこだ!?」

 

那珂「誰?…声だけする…」

 

電「これは呼びかけのうちに入るのですか?」

 

AIKA「…多分?」

 

那珂「…じゃあ無視しようか」

 

トキオ「オッケー!」

 

電「先を急ぐのです」

 

ポザオネ「待つアル!人が呼んでるなら反応するのが世間の常識ヨ!」

 

那珂「うるさいよねー、誰なの?ほんとに」

 

トキオ「聞いたことある気はするんだけど…」

 

電「私はないのです」

 

ポザオネ「ムキー!!」

 

ふっと辺りが暗くなる

 

トキオ「な、なんだ!?」

 

那珂「っ!上だよ!!」

 

巨大な何かが降ってくる

 

電「っ……人?」

 

トキオ「で、でか…!?」

 

巨大なプレイヤーキャラクター…

 

那珂「……あれ?あ!思い出した!」

 

トキオ「こ、こいつ…那珂とブラックローズにボコボコにされたやつだ!…でも、こんなにデカくなかったよな!?」

 

ポザオネ「イーッシッシッシッ!!今のお前達なんて小指の爪ほどの大きさアル!簡単に踏み潰してやるネ!」

 

電「……それは無理なのではないのですか?」

 

ポザオネ「アラ?」

 

電「貴方の大きさが変わったのはわかったのです、でもこんな…メートル換算で20メートルはあるのです、でも、さっき貴方が降ってきた時、私達は吹き飛ぶことすらなかったのです…その巨大で、なおかつ重いのならこの迷宮ごと吹き飛ぶ筈なのです」

 

那珂「…ええと、つまり?」

 

電「それと、運動能力についてとかもあるのですが、見てる感じだいぶん鈍そうなのです…なので…」

 

電ちゃんが主砲を向けて撃つ

 

トキオ「うわっ!?」

 

那珂「こ、これって…」

 

パンっと音を立ててポザオネが萎む

 

電「巨大な風船だったのです」

 

ポザオネ「み、見切られていたアルか…この道化のポザオネの十八番、偽りの大巨人を…!」

 

トキオ「そのまんまだな…」

 

那珂「…で、手の内を明かされた道化さんは…どうなるのかな?」

 

ポザオネ「ひっ!?…あ、甘いアル!ここでワタシを倒したところでもう仕掛けは済んでるアル!お前達はもう終わりヨ!」

 

トキオ「なんの話だ!」

 

那珂「まーまー落ち着いて」

 

トキオ「え?…な、那珂?」

 

那珂「那珂ちゃん、暴力系キャラでは売ってないけど…少し路線変更も考えてるんだよね…どう思う?」

 

ポザオネ「ヒッ!…し、知らないアル!!」

 

電「に、逃げたのです…」

 

トキオ「速っ…」

 

那珂「……もうしばらくは出てこないでしょ、それにしても杜撰だよねぇ…始末したいなら後ろから不意をつけばいいのに、プライドが邪魔してできなかったのかな?」

 

電「三下の発想なのです」

 

トキオ(ふ、2人ともなんか怖いよ…)

 

 

 

 

 

ポザオネ「ヒー!ヒッ…こ、ここまで逃げればもう大丈夫アル……ヒ!?」

 

ガイスト「……」

 

ポザオネ「アイヤー、ガイストか!敵じゃなくて安心したアルよ〜」

 

ガイスト「ボクもホッとしたよ、キミを捕まえることができて」

 

ポザオネ「え?……ぎゃあぁぁぁぁッ!?」

 

ガイスト「キミに逃げ回られると厄介だからねσ(^_^;)ここで確実に息の根を止めておきたいのサ♪」

 

ポザオネ「な、なな……なん……なん、で……」

 

ガイスト「それと、最後に一つだけ聞いておくけど、プログラムはちゃんと仕込めタ?」

 

ポザオネ「……がふっ」

 

ガイスト「答えるのももう無理カ……急ぎすぎちゃっタ……洗脳が成功シテるといいケド♪……それにしても、あの3人……まさか、全員が素質アリなんて…本命はトキオだったケド、こんなに優秀なんてさすがダブルウェアだネ♪」

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