元勇者提督 作:無し
The・World R:2
Δサーバー 悠久の古都 マク・アヌ
デュアルエッジ トキオ
トキオ
「那珂が1人で行っちゃってから随分経つけど…。
オレたち、どうしよう?」
電
「普通に考えるなら、この子をどうするか、なのです」
電ちゃんが手を繋いだ女の子を見る
その子の二倍ほどの大きさの大槍を抱き抱えた、緋色の女の子…リコリス
トキオ
「……どうすればいいと思う?」
電
「…この子は、ゲームのキャラクター…何かしらのイベントがあるはずなのです。」
トキオ
「イベント…か…。
よし!オレたちでリコリスのイベントをクリアしよう!」
とは言ったものの…
トキオ
(リコリスのイベントって一体…?)
データ潜航艦 グラン・ホエール
彩花
『それでわざわざアタシを呼びつけたって言うの?!
ほんっと信じられない…!何回言えばわかるのよ、アタシたちの目的はクロノコア!』
トキオ
「で、でも…もしかしたらこの子も関係あるのかも…」
電
「この時代で急に現れたのです」
彩花
『こんなNPCがクロノコアに関係あるわけ……。
あれ、微弱だけど反応がある…?』
トキオ
「ほんと!?」
彩花
(……この子が、クロノコアの所有者…?いや、それにしては反応が弱すぎる…。
それにそもそも別の反応も既に見つけてるし…。
関わりがあったのは間違い無いんだろうけど、時間を割くほどの理由は無いわね…)
彩花
『トキオ、やっぱり……あれ?』
…トキオ達の姿は既になかった
彩花
『……あんっの…バカトキオ!!』
Δサーバー 悠久の古都 マク・アヌ
トキオ
「さて、と…彩花ちゃんに捕まる前にぱぱっとクリアしちゃおう!」
電
「どーせ素直に認められるとは思ってないのです」
リコリス
「……」
トキオ
「…でも、そもそもリコリスが何も喋ってくれなかったら…何もできないよなぁ…」
トキオ
(…それにしても、今まで会った誰よりもゲームのキャラって感じだなぁ…。
…でも、いくらNPCだからって何も喋らなさすぎるよ…)
ゲームのNPCには、イベントが設定されている場合がある
イベントのあるNPCは比較的わかりやすくするために服装が派手だったり、見てわかるように頭の上にマークがついていたり…
まあ、この電ちゃんの手を繋いで離さない行為もそれに近しいものがあると思うけど…
そもそも自ら行動しない
こちらの行動に反応を示さない
どうすればいいのか…このキャラを動かすには……
トキオ
(…いや、待てよ…そうだ、一度だけしゃべってたぞ…!)
トキオ
「電ちゃん!その子が前に喋った時のこと覚えてる?」
電
「…いいえ、いつの話なのです?」
トキオ
「迷宮だよ、ほら!」
電
「あ…!」
トキオ
「会話をしたのはあの時だけし、戦ってたからなのか、それとも別に理由があるのかわからないけど…あそこにいたあの瞬間、間違いなく喋れてたんだ。」
電
「…でも、なぜか今は口を閉じて…」
トキオ
「あの変な拡張子のアイテムが答えになるのかも!」
リコリス
「……」
電
「…そういえば、迷宮と言えば…」
トキオ
「うん?」
電
「…一度だけ手を離してくれたのです、代わりに青葉さんの手を…」
リコリス
「…青葉…」
トキオ
「そう言えばその時だけは手を離してた…というかそもそも、青葉は今どこに居るんだろう…」
リコリス
「……」
電
「…あれ?」
トキオ
「…あ、もしかして今、喋った!?…って、うわっ!?」
転送音とともに景色が切り替わる
Δサーバー 隠されし 禁断の 聖域
ロストグラウンド グリーマ・レーヴ大聖堂
トキオ
「…転送された…!?……でも、シックザールとかじゃなさそうだ…」
電
「…この子がやったのですか?」
リコリス
「……青葉」
トキオ
「っ!…青葉が、ここにいるのか…?!」
つい体が強張る
まるで一歩歩けば斬りかかられるのではないか
そんな不安で縛り付けられる
電
「…青葉さんは、話のわからない人では無いのです」
トキオ
「……知ってるよ」
聖堂の重い、巨大な扉を開け放つ
トキオ
「………誰も、居ない…か」
誰もいない、誰の気配もしない
カツン、コツン、ぺたり
三者三様の足音だけが響く
トキオ
「…青葉は、どこにいるの?」
リコリス
「……」
リコリスは規則正しく並べられた長椅子の方を静かに指さした
電
「……誰もいないのです」
トキオ
「…うん、誰もいない…」
改めて見れば、R:1の大聖堂と少し違う
像のない台座に赤い傷痕があるし、細部の作りも少し…
トキオ
「…何か、ある?」
長椅子の下で光が反射した
それを手を伸ばして拾い上げる
トキオ
「カメラ…?」
古い、ポロライドのカメラのような…
電
「それは…」
トキオ
「電ちゃん、知ってるの?」
電
「…青葉さんの、カメラに…そっくりで…」
トキオ
「え?…うっ…」
ふと…体に何かがのしかかるように重くなった
ぐるぐると渦巻く感覚、自分がどこかに飛んでいきそうな、ふわふわとした感覚…
トキオ
「…なんだ、これ…!」
…その感覚の中に、観た
すごく断片的で、はっきりとはわからなかったけど
トキオ
「……青葉は、ここで…」
背後から一瞬で何かに貫かれて…
その時に…槍を、そしてカメラを手放した…
トキオ
(じゃあ青葉はPKされて…!
……どうなった…?槍を失った青葉は、どう…)
ふっと、今に引き戻された時に見た最後の人影
白髪に黒い衣装のプレイヤー…
トキオ
「……」
電
「…大丈夫ですか?」
トキオ
「うん…」
電
「…やっぱり、大丈夫には見えないのです。
質問を変えます、何かあったのですか?」
トキオ
「……オレ、多分今…過去を見たんだと思う…。
青葉が…一瞬でやられてた、不意打ちで、誰かに…。」
リコリス
「……」
トキオ
「…すごく断片的で…顔も見えなかったし、何が起こったのか、よくわからなかったけど…。
青葉が誰かにPKされて、それで槍を失って…。
リコリス、青葉に何があったの?なんで君がその槍を…」
リコリス
「……」
電
「…何か、答えてください…」
リコリス
「わからない」
トキオ
「え?」
リコリス
「わたしは、なにも、わからない。
でも、それが欲しい。」
電
「欲しい?…カメラの事なのですか?…目が見えてないんじゃ…」
カメラを覗き込んでいると…かちゃりと音がした
トキオ
「……っ!」
いぃぃぃぃんっ…!
風が唸るような音が聖堂に響き、次に金属音
火花が何度か散り、トキオが大きく飛び退くことでその音はやっと一時的に止む
トキオ
「青葉…!」
青葉
「……」
不意打ちで仕留めにきた…でも…
トキオ
(…なんだか、様子がおかしいぞ…迷宮の時みたいな、コピーなのか…?)
トキオ
「…青葉、これ」
持っていたカメラを青葉に差し出す
青葉
「……」
青葉がカメラを受け取ろうと手を伸ばす
トキオ
「…青葉…あ……」
青葉の手がカメラに触れた瞬間、青葉の姿が掻き消え、カメラが落ちる
落ちたカメラがフラッシュを焚いて、写真を吐き出す
呆然としたオレの表情を写した写真を
トキオ
(……そうか)
リコリスを見つめる
目を閉じた少女は、じっと此方を向いて何かを待っていた
トキオ
「わかったぞ…リコリスのイベント…!」
電
「え?」
…きっと、迷宮で戦った青葉は、今現れた青葉は、リコリスの中にあるイメージ的な存在
それが明確なヒントだったんだ
あの時の迷宮で出会った青葉はそもそも別な存在、迷宮にとってもイリーガルな存在、本来出てくるはずだった敵はあの時転がってた石の方だった…
……あの石の正体が何だったのかは、今は考えないでおこう
トキオ
(それを一瞬で撃破して、そうまでしてオレ達と戦ったのは…なんでだろう…。
でも、それは無視して考えても…間違いない)
トキオ
「リコリスのイベントは、青葉を復活させる事が目的なんだ…!」
電
「青葉さんを…?」
トキオ
「リコリス、キミは…っ…!」
また、何かが廻る感覚
ぐるぐると渦を巻いて、その中に落ちるように…
トキオ
(今度は、リコリス…?……これは、リコリスの…記憶…!)
トキオ
「あ…」
[yromem.cyl]
そう表示されたアイテムが、手に握られていた
トキオ
「…これは…?」
リコリス
「yromem.cylを、私にください」
トキオ
「え?」
…このアイテムを…
リコリスに…
リコリス
「……」
トキオ
「リコリス…?」
アイテムを受け取ったリコリスは、オレの声に反応するかのように顔を此方に向ける
リコリス
「……きっと、もう少し早ければ、ああはならなかったのに」
トキオ
「え?」
電
「…何を言っているのですか…?」
リコリス
「…さっきのは、わたしの記憶…リコリスの
トキオ
「リコリスの…記憶…?」
リコリス
「…そう…だから、全部思い出した」
そう言うリコリスの声から、少しの怒りが感じ取れた
リコリス
「…トキオ、青葉を助けて」
そして、大きな寂しさも