元勇者提督 作:無し
本土 横浜 繁華街
正規空母 赤城
「うーん、たまには遊んでこい、と言われても」
「私たちは本土での遊び方なんて…知りませんからね」
「傍目から見ると仙人のよう、との事ですよ」
「…翔鶴は正直もっと都会慣れしとるイメージやったわ」
「え!?わ、私は…その、くるの初めてで…」
「千代田さんは?」
「私も初めてです…」
「じゃあ頼りは龍驤さんですね」
「…なんや、鳳翔までかいな…って!アンタは元々内地所属やろ!?」
「あら、バレてしまいましたか」
「やー、えがったなー!」
「…はしたないですよ、龍驤さん」
「でも感動的な映画でしたねぇ…」
「うぅ…耳が痛いです、なんであんなに音が大きいんでしょうか……」
「千代田さん、大丈夫ですか…?」
「はい……」
「そろそろ飯にでもしよか!どうする?何が食いたい?」
「……思えば私たちは外の食事には縁がありませんでしたね」
「外はどのくらい辛いんでしょうか」
「お二人はいつもそれですね…」
「…あの、できれば劇物は…」
「劇物って…まあ、確かにあの辛さは殺人的ですからね……」
「辛いもの以外でってなると…食べたいものもわからんしなぁ…せっかくやしバイキングでも行ってみるか?なんか気にいるのあるかもやし」
「バイキング…?龍驤さん、貴女は行ったことが…?」
「んや、ないよ」
「ああ、知らないのですか…」
「鳳翔、いきなりどないしたんや…?」
[空母・戦艦お断り!]
「…はぁ!?なんやこれ!」
「本土の正規空母は暴食が多いんです、バイキングなんてしようものなら採算が全く取れないほどに…」
「そうなんか…どうする?適当に入れる店いこか…」
「じゃあとりあえずあそこに」
「あ、ごめんなさい、ピークタイムは艦娘の方は身分証をお願い致してまして」
「飯食うのにか……ほれ」
「…申し訳ありません、軽空母の方は問題ないのですが…正規空母の方はお断りしてまして」
「……あっほらし…次探すでー…」
「はぁ…ホンマに不愉快やわ…なんやねんこれ、なんかしたか?ウチら」
「店が回らないから、というのが理由みたいですね」
「やとしても…客を追い返すって……あー腹立つ」
「本土の正規空母はかなり食べますからね、フードコートなんかによく行きますよ」
「自由着席で断ることもできひんって事か……手慣れとるな」
「変装グッズを工作艦に作らせたりとかしてる光景も…」
「………法に触れてへんやろな…っていうかウチらが迷惑しとるんやけど…!それ…!」
「うーん、どうします?」
「赤城、加賀、えらい涼しい顔しとんな」
「いえ、別にこのくらいの時間でしたら」
「まあ、あんまり気になりませんね」
「……お二人とももっと長い間食事を取れない、なんてことザラでしたからね」
「………龍驤さん、私死んでも食べれるところ見つけてくるよ…」
「せやな、これ以上ひもじい思い絶体させへん」
「そうですね…これは深刻です」
「あの店なんてどうやろ、ガラガラやで」
「……アレはダメですね、夜営業のお店ですよ……あ、イタリアンなんてどうですか?」
「サイゼリヤ…超有名どこやな、チェーンやったら断られにくいか…?みんなそれでええ?」
「私はどこでも」
「そうですね」
「イタリアンなんて初めてですし、何よりこんな服でいいんですか?」
「確かカジュアルなレストランだったと思うし大丈夫ですよ、翔鶴さん」
「…前にウチが行った時はパジャマにサンダルのやつおったわ」
「私が行った時はコスプレイヤーさんがたくさん居ましたよ」
「絶対アレの帰りやん…」
「あらあら、わかりますか?」
「どうぞ、6人掛けのテーブルをご利用ください」
「よっしゃ、ようやく入れたで…!」
「読み通りでしたね、さて、何を食べますか」
「うーん、あ、今日はランチセットやってないんですね」
「ピザ…!私ピザ食べてみたいです…!」
「千代田さんそんなにはしゃがないで、目立ちますよ…あ、私はこのペペロンチーノというやつを」
「ペペロンチーノか、辛さたりひんかも知れんけどええんか?」
「…まともな食事を取るようにしないと、間宮さんにも…みんなにも申し訳ないです」
「私はチキンステーキにライスとサラダ、後辛味チキンもいただきましょうか」
「うーん…加賀さん、このエビのサラダをシェアしませんか?後私はこのグラタンが食べたいです」
「いいけれど、足りるの?貴女…」
「まあまあ、すいませーん、龍驤さん、私はこっちを」
「わかったわ、まずドリンクバー6とこのマルゲリータを二枚とコーンピザ一枚.小エビのサラダのLサイズを二つ、ペペロンチーノ1つ、アンチョビフリコにほうれん草のグラタン1つとミラノ風ドリアが一つ、このディアボラ風ってのにライスつけて、後辛味チキンも2つ貰おうか………ん?これだけかって?とりあえずデザートは後で考えるから、あとピザとサラダだけ先にくれたらあとはゆっくりでええからね」
「……店員さん泣いてましたね」
「何故……?」
「…多分安心したんだと思いますよ、ちょっと遅めのランチですから夜の営業に影響がでかねませんし」
「鳳翔さん詳しいですね」
「…離島鎮守府に着任する前は食堂をやってましたので…」
「なるほど、重みが違うわな」
「はー、よかったわ、ほんまよかった」
「結構美味しいですね」
「はい、刺激的な感じは弱いですけど…」
「これでも濃い方なんですよ、お二人は普段から辛いものばかり食べ過ぎなんです」
「…その様ですね…」
「明日から食生活を変えないと」
「旨みを強く出した吸い物なんかどうでしょう」
「あ、このドリンク美味しい」
「でもなんで正規空母や戦艦はよく食べるんですか?」
「補給は艤装に直接突っ込みますよね」
「……運動量も普通に他の方の方が多いですし」
「考えられるのは認識障害ですね、艤装に供給する物資の量から自分もこれだけ食べなければ、などと思うとか」
「…確かに、今日の食事は辛くないと言っても足りないとは思いませんものね」
「流石に満腹です」
「別に今の食料の貯蔵量ならもう少し食べても問題はありませんが、食べすぎても体に毒ですからね」
「うわ、そこも、あそこもお断りの札出てるな」
「法律的に良いのかしら」
「客を選ぶ権利は店にもあります…一括りにされるのは嫌ですが」
「今度は遠出して鎮守府が近くにないところに行きましょうか」
「………言いづらいのですが…」
「まさか…」
「はい、多分隣県どころか全国に行き渡ってます、その札」
「……頭にきました」
「生き残るためには仕方ないのです…」
「お店は仕方ありません、よその空母は何をしてるのですか」
「………はぁ…確かに私も昔、今より多く食べていた記憶はありますが…」
「食が原動力になる方も居りますので…」
「って事がありました」
「……うん、御愁傷様…」
「良いお店を知りませんか?」
「…高いところとかは?コース料理を出すお店とか、そのくらい高いところなら入り易いと思うよ、ほら、スマホなら調べられるし」
「成る程、美味しいところだと良いんですけれど…」
「多分大丈夫、だけど高いから気をつけてね」
「はい、財布の紐は硬いのでご安心ください」
この日から正規空母の食事がまともになった