元勇者提督 作:無し
離島鎮守府
工作艦 明石
「んー、まさかクリスマスを祝う?…祝うで良いか、まさか祝う日が来るなんてねぇ」
「まあ、ちょっと大人数が本土に行く許可出ただけですけどね…」
「残る私達はいろいろもらってんだからいーじゃんいーじゃん、やー美味しいねー…チキン?明石も食べる?」
「ターキーですよ、七面鳥…あ、北上さんそっちのサラダください」
「………何が違うの?」
「七面鳥の方が身がしまってて、燻製のような風味でしっかりした感じらしいですよ?…あとほら、脂が少なくてあっさりしてます」
「……それって身が固くて、独特の風味があって、さらにパサパサしてるって事だよね…美味しいけどさ、それならニワトリでいいよ私は…」
「あ、もう始めてたんだ」
「提督」
「僕も混ざっていいかな」
「はい、どうぞ」
「って言っても料理は私たちが作ったやつと間宮さんが作ったやつしかないけどねー、残存戦力は私と明石と翔鶴と青葉、この4人だけだし?青葉と翔鶴なんて先にみんなにお供えするって帰ってこないし」
「間宮さんにも行ってもらったのは…正直間違いかと思いましたけど、翔鶴さんと北上さんが全部やってくれましたからね」
「……明石と青葉は何も作らなかったの?」
「いや、その…あはは…」
「皿洗い担当艦が2名いたんだよ、それだけ……」
「し、失礼な…!サラダの野菜をちぎったのは私です!」
「明石、指切ったの?」
「……いやー…切り傷って慣れないですけど…変な感じですね」
「そうそう、ぱっくりいく感じが嫌だよね〜」
「……想像しちゃった…」
「でも意外だなぁ…料理も得意なのかと思ってたけど」
「偶々です!というかこの前の食堂担当の日に私の料理食べませんでしたか!?」
「うーん、ごめん、僕は普段から食べに行くのが遅くなるから誰が作ったかは知らないかなぁ…いつのやつ?」
「……前回のハンバーグカレーです…」
「あ、食べた食べた、美味しかったよ!」
「それならよかったですけど…」
「提督〜、ケーキ無いからさ、ほら、これ食べてよ」
「アップルパイ?北上が作ったの?」
「意外と何でもできる北上様だからね、昔言ってた焼きたてにアイス乗っけるってやつ、どう?寒いけどさ」
「うん、ありがとう、是非もらうよ」
「………良いなぁ…」
「あれ?北上さんは?」
工廠にアレを取りに戻ったら、北上さんだけ居ない…
「青葉たちを迎えに行くって、明石はどこ行ってたの?」
「え、あ、いや……その…あの……」
つまり、ここを逃せば…
渡すなら今しかない
「こ、これ!」
「この箱は…あ、もしかしてクリスマスプレゼント…?」
顔が曇ってる…やっぱり嫌だったかな.…前に本土に行った時に買ったやつだけど…
「…はい」
「……ごめん」
……受け取ってもらえないかぁ…
「…ですよね…」
「用意したかったんだけど買いに行く暇がなくて…明日みんなが帰ってきたら明石の分も渡すから…ごめんね…」
「……あ…そっちかぁ……」
「え?」
「な、なんでもないです!ほら、貰ってください!」
「う、うん、ありがとう…開けても良い?」
「その…はい、どうぞ!」
正直自分のセンスに自信はないけど…
でも、もしかしたら喜んでくれるかもしれない…と思って買った物を少し手を加えてみた…
「これって…」
「その、あんまり高い物じゃないですけど、腕時計を…」
「……ありがとう、嬉しいよ!」
「よ…よかったぁ……」
安心感で腰が抜けちゃった…
「だ、大丈夫…?」
「あ、あはは…あの…はい…大丈夫なので立たせてもらえませんか…?」
重雷装巡洋艦 北上
「んー?明石は?」
「疲れたみたい、立ってられないって言うから休ませたよ」
「………」
それ絶対別の理由だなぁ…というか…大人しく部屋に帰るあたり…先は越されてるみたいだね
「お、良い腕時計じゃん、明石もやるなぁ…」
「ちょっと僕には勿体ない気もするけどね」
「……多分、世界で一番似合ってると思うよ」
「…照れるな…あはは」
「んー……私からは明日まで待ってね、阿武隈に頼んであるから」
「…やっぱり本土に行けばよかったんじゃない?青葉も北上も一回も本土に行ってないじゃないか」
「いやー…私は…」
……AIDAが暴走したら、と思うと怖い…なんて言えないなぁ…主力から外されたくないし
「それより青葉と翔鶴酷いんだけど!私がせっかく迎えに行ったのに北上さんは邪魔ですって」
「え?2人ともそんなタイプじゃないと思うけど」
「うん、盛ってるしね」
ごゆっくり、ってつけてるあたりまぁ、私もわかりやすいと言う事で…でも…翔鶴は多分…って感じなんだけどなぁ…
「あれ?提督、まだこれ食べてなかったんだ」
「甘いものは後で食べたいからね…今からいただくよ」
「……この皿って…」
確か冷蔵庫に入ってた青葉の失敗作の方…
私は出してないし、明石も出すわけ無い…
よくみたら料理も鳥は胸肉だけ減ってるし…
「もしかして食事の時まで変な気を遣ってるわけ?」
「そんな事ないよ、おいしいものを食べてるだけだよ」
「………提督ってわっかりやすいよねぇ…何?何やったの?ほら、怒らないから言ってみなって」
「いや、何もしてないよ」
「…じゃあ同情?今までクリスマスをちゃんと迎えたことがない、私たちに対して」
「……それは…」
まあ、わかってたよ、そんな事だろうとは思ってた
ここの戦力を空にしてまでみんなを本土に行かせようとしてた理由も、そんなとこだろうとは思ってた
「………じゃあさ、提督…」
「何?」
「せっかくだし、忘れないくらい楽しいクリスマスにしてよ」
「…よし、じゃあ明日もパーティーにしようか、きっと間宮も同じ考えだと思うし」
…そうじゃないんだけどな……
…ん、青葉と翔鶴…覗いてるな…?
「ほら、アップルパイ食べさせてあげる、あーん」
「え、別にそんな事はなくても…」
「私達を楽しませてくれるんでしょ?ほら、食べて」
アイスをたっぷりつけて差し出す
「…うん、美味しいよ」
「ま、当然だよね、このあたしが作ったんだからさ」
口元についたアイスを指でなぞり、口に運ぶ
チラリと翔鶴を見る
おや?青葉も良い反応してるなぁ…
「ごめんねー、口元汚しちゃった」
「アイスが溶け始めてるからね、でもすごく美味しいよ」
……もう少し反応して欲しかったなぁ…私だけ恥ずかしくて馬鹿みたいじゃん
「失礼します、提督」
「メリークリスマスです…司令官…」
「お、2人とも来たんだ、ほら、一緒に食べようよ」
「青葉、翔鶴、料理はまだまだあるから2人も食べて」
「……ええ、是非お言葉に甘えさせていただきます」
「あ、そのお皿…」
…ああ、まあそりゃあ捨てられたのかと思うよね
「ん…?もしかしてあのオムレツは青葉が作ったの?ごめん、全部食べちゃった」
「え?あ、アレを食べたんですか…?焦げてましたよね…?」
「美味しかったよ?」
…うーん、何回も言われたら価値がどんどん落ちてくからやめて欲しいんだけどなぁ……
「と言うか何で冷蔵庫にあったものを?」
「てっきり間宮が置いておいたものかと思って…ごめんね、青葉」
「い、いえ…その……ありがとう、ございます……」
「え、ご、ごめん!そんなに怒るなんて…」
「あ、提督、青葉さんが泣いてるのはそう言う理由じゃ…」
「失礼しまーす、明石、復調したのでもど…何ですかこの惨状……」