元勇者提督 作:無し
離島鎮守府
提督 倉持海斗
「……やだ…私出ていきたくない…」
「…そう言ってくれるのは嬉しいよ、少なくともここが良くなったことの証明だ……だけど…島風、君はここを去らなきゃいけない…」
「……なんで?この前の作戦で活躍できなかったから?今までグータラしてたから!?ごめんなさい…やだよ……せっかくみんな優しくて、仲良くしてくれるのに……1人になったら…暗いのが…」
「暗いの?」
「……時々、暗い何かに襲われそうな夢を見るの…夢を見るたび、誰かが手を握っててくれる、加賀さんや赤城さん、翔鶴さん、みんなが優しいから頑張れるのに……」
「……そっか…」
やっぱりまだ小さな子供なんだ…なのに、そんな子を急に新しい環境に投げ出す、厳しいなんてレベルじゃないよね
「提督」
「…鳳翔さん、どうしたの?」
「舞鶴には駆逐艦しかいないと聞いています、私もそっちに異動の願いを出そうかと…実戦経験はほとんどありませんが、横須賀時代から訓練は積んでますから、練度は十分に…」
「………」
ありがたい申し出ではある
島風を安心して任せられる人だし、多分島風も心を開いてる
少し顔が明るくなってるから
だけど、それは鳳翔さんにしんどい思いを強いる事になる
「…ちょっと考えさせて…」
人事異動の話は最近絶えない
憲兵のこともそうだけど、朝潮と荒潮のこちらへの転属願、島風を舞鶴に送れと言う指令書、そして翔鶴を改装するため本部によこせ、と言う何よりも危険な紙切れまで有る
翔鶴だけは譲れないライン、明石曰く、間違いなく戻ってくることはない、直接的な表現では言わないけど、死を連想させる会話だった
なんだかんだで鳳翔さんは色々な気配りをしてくれていた、抜けた穴は小さくはないだろう、しかし、その穴ひとつで崩れる程、みんなやわじゃない…反発はあるだろうけど
鳳翔さんは、舞鶴に行ってもらおう
「そうですか、島風は以前の実戦とその前、この練度です、殆ど戦えないため、念のために1人つける…と、恩を売りましょう」
「…加賀、怒ってないの?」
「むしろ島風1人を送り出した時は怒るつもりでした、私たちにとって大事な家族ですから」
「…家族か……」
「みんなそうです、こんな施設で暮らしてれば、そうなりますよ」
「…………」
家族か…
僕にとっては仲間、それ以上の言葉が当てはまらない
仲間であることと家族であること、どちらがいいと言うことはないだろう
だけど、意識の差は、いつか深い溝になる
「加賀、島風の怪我が治るまで、目一杯遊んであげて、どうせ今は動けないから」
「お気遣い感謝します」
「…こんな事しかできなくてごめん」
「…翔鶴に話さなかったことは賢明でした、あの子は、自分の命を軽く見過ぎている、自分を引き換えに取り消せるなら、と必ず言うでしょう」
「わかってる」
福岡 博多
「んー!やっぱラーメンは豚骨だな!」
「…おかしいクマ…球磨達は長崎と佐世保の造船所に来たかったはずだし、食事は多摩に任せてたはずだクマ…」
「木曾はラーメンが食べたくて仕方なかったらしいニャ…」
「…じゃあ私たちも食べればいいんじゃないのかな」
「…屋台ラーメンなんてありえません…」
「…俺はありだから飯食いたいんだけど…」
「提督はナシだよニャ?」
「何言ってるクマ、多摩?まさかこんなもん食べたいやつなんて木曾だけで十分だクマ、球磨達は佐世保バーガーを食べるんだクマ」
「ぷはー!旨かった!よし!じゃあ佐世保バーガー食いに行くか!そのあとチャンポンだ!」
「………グルメ旅行だっけ?」
「…さあ?でも私は北上さんと一緒ならそれで…!」
「じゃあ北上の手錠外してやれよ」
「逃げられると困りますので、提督にもかけましょうか?首輪」
「……すまん北上、逆らう元気がねぇ」
「………提督ってどこに行っても苦労人なのかもね…」
「んー!こいつも美味い!」
「……よく食うクマ…」
「…でもほんとに美味しいニャ、多摩もこれは好きニャ」
「…手錠のせいで美味しさ半減…」
「外したら逃げるじゃないですか?」
「逃げられないよ……」
「…なぁ、車止めてきたら俺の分のバーガーが消えてんだけど」
「何だ、いらないのかと思って食べちまったクマ」
「ケッ、車運転できるからってお高く止まってんじゃねーニャ」
「…なんでグレてるんだよ…」
「ふー!食った食った!……ん?おい、提督、あれ見ろよ」
「なんだ…艦娘か…?」
「ああ、あの制服は陽炎型だな、佐世保の鎮守府のやつかもな、せっかくだし挨拶してくる!」
「……なんかあいつテンション高くねぇか?」
「物怖じしないタイプだクマ、旅に向いてるんだクマ」
「した事ないけどニャ!」
「初めての旅がこんなのなんて嫌だーー!」
「うるさいですよアホ上さん、チョップ」
「成る程、呉からですか」
「ああ、まあ、なんだ…こいつらの建造されたとこを見に行きたいんだ」
「佐世保の鎮守府でしたらまあ、ご案内できなくもないですが……貴女はなんで手錠されてるんですか?」
「…拉致られたのさ、帰りたいよおぉぉぉ!」
「……もしもし、警察ですか?」
「違うクマ!あってるけどちょっと違うクマ!」
「姉妹だからノーカンだニャ!」
「愛さえあれば関係ないんですっ!」
「…木曾、俺らは無関係だよな」
「…ああ、俺たちは何も悪くない」
「まあ、とりあえず完全に誤報だからやめてくれクマ」
「あなた方の見た目だと誰でも通報しようとします、私に落ち度はありません」
「返す言葉もないニャ」
「結局貴女は呉に帰りたいんですか?駅まで送りますよ?」
「あー、私は呉の所属じゃないよ、離島鎮守府」
「…離島鎮守府…?…あの、地獄ですか」
「…今はマシだよ、地獄は少し前の話だよ」
「……大規模な戦闘の度に犠牲を払ってると聞いてますが」
「犠牲って言っても誰も沈めてないよ、みんなで助け合って、生き残ってきたんだから」
「…じゃあアレのの戦いに死者を出さない方法があると言うわけですか」
「……いや、特にないけど…みんな必死にやってるだけだよ」
「貴女達のところには特殊な装備があるんですよね?実験的な段階の装備が」
「え、なんの話?」
「……そうですか、ありがとうございました、私は用事ができたのでこれで」
「…行っちゃったクマ、鎮守府の案内は諦めるかクマ」
「もともと必要ないニャ、それより早く行かないと時間を無くすニャ、ハウステンボスのホテルに泊まる計画が…」
「…おい、この食べ歩き、博多ラーメンは置いといても多摩、お前も噛んでるな?」
「なんのことだニャ?遊びに行くだけに決まってるニャ」
「多摩姉さん、調べはついてるんです…海鮮和食が狙いですね?」
「くっ…!そこまでバレてるなら隠せないニャ…!」
「と言うか今お前が落としたパンフレットでバレたんだけどな」
「不覚…!」
「まあ、楽しけりゃなんでもいいだろ!さあ!次だ次だ!」
「なんか…こう、神聖な気分だクマ」
「ちょっと離れたところにいるだけだろ」
「それでもここで生まれたってなんとなくわかるクマ、まるで…そう、お母さんがいるみたいな感じクマ」
「呼んでみればいいんじゃねぇの?」
「…この一般道の真ん中で大恥をかけ、と?」
「球磨姉語尾…」
「北上は思うとこ無いのかクマ」
「…望んで来てたらあったかもねぇ…今私の心は反抗期だよ…」
「それは悪いことしたニャ」
「本当は微塵もそんなこと思ってないんだろうね、心にもないこと言うのやめなよ」
「なんでわかったんですか!?さすが以心伝心の仲!私と北上さん!」
「いや、大井話に混ざってなかっただろ」
「実際あってるからセーフニャ」
「うちの軽巡もしかしてやばいのしかいない?」
「雷巡の私はセーフです」
「いやお前が1番やべーから」
「五月蝿いです」
「え、まさか私今日帰れないの?」
「なんなら明日も帰れんニャ」
「明後日まで攫うって事になってるクマ」
「………マジで警察に駆け込んでいい?」
「…すまんけど俺らも捕まりたくない」
「どっちに協力するかはわかるよな…許せ…姉さん」
「どうせ明後日には帰れるクマ、諦めクマ」
「……諦めるから手錠外して…」
「目が死んでるニャ」
「ああ!牢屋に入れて一生お世話したい!」
「………手錠外していいか?」
「ダメに決まってるでしょ!?木曾、あんたこの素晴らしい光景を終わらせてもいいの?」
「いや、俺はあんまり興味ねぇ…」
「……はぁ…せめて連絡の一つも入れさせてよ」
「…お前ら、ちゃんと連絡入れてるんだよな?」
「駆逐艦に頼んだクマ」
「問題ニャい」
「大アリだわ」
「え?何がですか?」
「……俺球磨型名乗るのやめようかな」
「そうしろ」
「あー、うん、正直助けて欲しい」
『って言われても…流石に今から九州には行けないかなぁ…』
「はい、わかってます…どのみち艤装は呉に捨てられましたので…帰れないので…明後日には帰りますので……」
『なんか口調がおかしい気が…』
「ごめんなさい、私のような蛆虫がごめんなさい…」
「………完全に壊れたクマ」
『えっと…三崎さんいたら代わって?』
「…どうぞ」
「……俺かよ…はい、代わりました…」
『……その…うちの最高戦力だから…大事にしてね』
「…なんか怒ってねぇ?と言うか俺も巻き込まれただけなんだが…」
『監督責任って言葉知ってる?』
「…誠に申し訳ございませんでした、手厚くもてなさせて頂きます」
「日本人の90%は責任って言葉が期待だクマ」
「男に限ればもっと行くと思うニャ」
「そう言う2人はどうなんだよ」
「嫌いに決まってるクマ」
『うん、よろしくね』
「ちょっと貸して、もしもし提督?」
『北上?何か言い忘れ?』
「私さぁ、今手錠かけられて大変な姿で過ごしてるんだよね、彼の提督にも見捨てられたしさぁ」
「ちょっ」
「……あれは、力関係を知った顔だクマ」
「鎮守府の力関係ならうちの方が上なはずだニャ、だけど明らかにこっちに非があるから強く出れんニャ」
『……流石にそこまでだと思わなかったよ…』
「頼む、話を聞いてくれ」
『北上の自由確保と定期連絡、よろしくね』
「小学生の遠足かよ…」
『何か言った?』
「いえ、この度はご迷惑をおかけしております」
『それじゃあね』
「よっしゃー!!自由だぁぁぁぁ!」
「生き返ってるクマ」
「刑期終わったやつってみんなあんな感じなのかニャ?」
「しらねぇよ、ていうか大井お前何しようとしてるんだ」
「え、鍵穴を潰そうと」
「やめろ!俺が殺される!」
「そんなにあそこの提督怖いのかクマ」
「いや、怖いのはアイツじゃなくてアイツを介して情報がいくとまずいやつがだな…」
「探り甲斐があるニャ」
「やめろ!」
「自分で明かしておいてやめろはないでしょう」
「あるわ!お前ら多少の慈悲はないのか?」
「諦めが肝心ってな…俺は知らねぇ」
「………はぁ…学生に戻りたくなるってこう言う気持ちなんだろうな」