元勇者提督   作:無し

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ケア

雷巡 北上

 

「ん、あんがとねー」

 

「おう、気をつけて帰ってくれよな、何ともないと良いんだが」

 

「…ほんとにね」

 

「提督や姉さんには俺から言っとく、じゃ、あとは任せとけ」

 

「お金はいつか返すよ、いつかさ、とりあえず10年後くらい?」

 

「…………まあ、無理矢理連れてきたし、別に返さなくて良いけど」

 

 

 

 

新幹線車内

 

まさか明石が暴走するとはねぇ…感染してたのを知ってて黙ってた私が悪い

被害状況も良くはない、たとえ治ってもこれまで通り?そうはいかない…良い加減色々洗う時期だね、アタシのことも含めて…

手っ取り早いのは研究施設を作りたがってるであろう、本部に行くこと

だけどコレをするなら先に他のことを片付けなきゃ翔鶴と青葉も巻き込む、事態を知られてた時は明石は場合によっては否が応でも連れていかれるだろうし…ここで迂闊に動けない

感染経路はおそらくは別にある

何が原因…?

 

可能性A.、アタシ コレは自分のAIDAをコントロールできるから違うとわかってる

 

可能性B、前に明石が口走った…裏切り者、ありえない話じゃない、アタシからしてもうちの情報とかの管理は相当ゆるい…

最近こそマシだけど、前は頭のおかしいノルマもあったから、そっちには気が配れなかったし…

何らかの条件で逃げた奴がいてもおかしくはない…だけどこの推察だとAIDA感染に無理矢理つなげた場合、大本営がAIDAを使ってるみたいな話になるから…ないかなぁ…アタシに何もアクションないし

 

可能性C、こっちは1番ありえる1番嫌な可能性…深海棲艦とウイルスバグが同じ存在になりつつある、と言っていた提督、その話を飛躍させれば早い…AIDAはどうなのか、正直、青葉と翔鶴の感染からその可能性は強く考えられる…あの2人の感染には私はノータッチだからね、そして…そこから広がった…つまり、深海棲艦はAIDAの入った袋っていう可能性…

 

可能性だけの話なら全てを切り捨てられない

自分を信じ、憶測を鵜呑みにするならCしかあり得ない

 

それだけはあってはならない最悪の解答…か

 

「……今が何とかする時だよねぇ…」

 

策はある

 

AIDAを完全に消去する手段…

有るのだろうか?果たしてそんなものが

有ったとして、感染者は無事なのだろうか

 

感染者からAIDAを取り除くことが優先か

取り除くだけなら…おそらくできるかもしれない

 

「………あれ?」

 

「ん?お前さん誰だ?」

 

「………ああ、成る程、コレはラッキーかもね」

 

秘策見ぃっけ

 

 

 

 

 

横須賀鎮守府

 

提督 火野拓海

 

「…ふむ……」

 

「提督?」

 

「…大淀、終末が近いといえばどうする?」

 

「え?…確かに今日は金曜日でしたね…私はショッピングなんかに…」

 

「…そういう意味ではない、世界の終わりが近い、といえばと聞いたのだ」

 

「……思い残すことのないように過ごすでしょうね…」

 

「ではそうしておけ、数日暇を与える」

 

「…本気ですか?」

 

「世界の終わりを予見する文が来たことだけは確かだ」

 

「信憑性は」

 

「…限りなく低い」

 

「では何故?」

 

「何故だろうな…信憑性は低い、限りなくな…何の根拠もないのに……不安でたまらない」

 

「お疲れなんだと思いますよ」

 

「…やめておけ、大淀…我々も覚悟をする時が近いというだけだ…」

 

「意味がわかりません」

 

「理解する必要はない、ぼんやりとでも知っておけば良い…知らぬものに気を配ることなどできんからな」

 

「…提督には何が…?」

 

「…所謂、知りすぎた、というやつだ、だが…向こうは私の能力を買っている…幸運にも殺されはしないだろうな」

 

「………不穏な話ですね」

 

「君にモノを言えた立場ではないが……我々は常闇の中にあることを自覚せねばならない」

 

「前は照らします」

 

「…それでは足りんのだ」

 

 

 

 

 

 

 

離島鎮守府

提督 倉持海斗

 

「おかえり、北上」

 

「…ひどい有様だねぇ…ていうか大丈夫?」

 

「僕は大丈夫、それよりも明石だ」

 

「…どうするつもり?」

 

「データドレイン、とも思ったけど…その顔を見るに、任せても良さそうだね」

 

「あ、わかる?呉の提督からいい話聞いてきたんだよね、それと、お客さん連れてきちゃった」

 

「お客…?」

 

「ほら、入った入ったー」

 

「おう、勇者サマ」

 

「曽我部さん、お久しぶりです」

 

「んじゃ、あとよろしく」

 

「…あの嬢ちゃんに人の都合ってモンを教えてやってくれねぇかなぁ…こんなとこに連れてこられちゃ俺の予定も狂うっての…」

 

「それはすいません、しかし何で曽我部さんが?」

 

「何でも、俺はAIDAとかの専門家らしいぜ」

 

「…実際は?」

 

「全くそんなことはねぇ、が、力になれることは協力する」

 

「曽我部さん、単刀直入に聞きますけど、あなたは何処の誰ですか」

 

「…あー、東京に住んでるおっさんって答えちゃダメな雰囲気だな…NABだよ、NABと組んでる」

 

「NAB…アメリカのネット犯罪対策組織ですか」

 

「詳しいな」

 

「まあ、それで組んでるところはそれだけですか」

 

「…CC社とも」

 

「The・Worldの運営元にして、モルガナの生まれ故郷……ダブルスパイってわけですか」

 

「まあな、オフレコで頼むぜ」

 

「……CC社…モルガナのことに1番詳しいのは、CC社なのかな…」

 

「…モルガナって言うと、アウラのゆりかごか」

 

「アウラは目覚めた、だから役割は果たし、今モルガナは自由な状態です…そして、モルガナは悪意のみで今を生きている」

 

「AIに関しちゃそこまでだが…悪意のみで?感情は有るだろう、だが…悪意ってのはAIが持つようなものじゃない」

 

「それを持っているとしたら?」

 

「モノにもよるが、世界は終わる」

 

「今、AIによって世界が滅ぼされようとしています」

 

「…モルガナが?」

 

「AIDAについては?」

 

「…まあ、わかる範囲なら」

 

「それをコピーして、量産しているとしたら?」

 

「できるわけがない、ってのは求められてなさそうだな」

 

「…モルガナはリアルに流れ出し、海となった」

 

「………2020年に?」

 

「恐らく、そして今モルガナは深海棲艦やAIDAを従えて戦争している、僕を苦しめるためだけに」

 

「…じゃあお前さんがやれれば終わる話か?」

 

「いいえ、できるだけ僕が苦しむように全てを壊し尽くしてからら殺すと言われました」

 

「…そりゃまた愛されてんなぁ」

 

「…なので、僕は…倒す手段を考えてました」

 

「倒す?海になったんだろ?どうやって」

 

「現実世界の再誕、と言えばお分かりになりますか」

 

「…………おい、それってまさか、俺たちまで死ぬのか?」

 

「1人残らず」

 

「……なぁ、ふざけてんならそれで良いが…本気か?」

 

「本気です、モルガナはいずれ世界を滅ぼす、止める手段が他にあるならそれを取るけど、最後は…」

 

「…とって欲しくねぇ選択肢だな」

 

「避けて通りたい道です」

 

「……国防の要様にそんなこと言われたら、不安になるなぁ」

 

「…モルガナの悪意を、無くすことさえできれば…」

 

「……人の悪意ってモンは恐ろしい…か…」

 

「曽我部さん、最悪の事態を避けるために手を貸していただけますか」

 

「断れば死ぬんだろ、断れねぇよ」

 

「ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 

雷巡 北上

 

「おーし、おっけー」

 

「…北上さん、コレほんとに効果あるんですか?」

 

「さあね、でも夕張、うまくいけば儲けモンじゃない?」

 

「……確かに、明石のAIDAは神通さんの持ってきたワクチンじゃダメでしたけど…」

 

「……私も行くかなぁ、そんじゃあね」

 

「行くって言ってもゲームでしょ…?」

 

呉の提督はAIDAと何度も戦ったことがある、と言っていた

そしてAIDAと感染者を切り離した事もある、と言っていた

ネットゲームの中ならAIDAが形を持っていられるとしたら

できるだけ負担をかけずに切り離せるなら

 

なんだってやる、なんだって

 

 

「ふぅ…覚悟決めますかー、おーい、明石、起きてくれる?」

 

「………」

 

「…目は覚めてるみたいだね、いつから?」

 

「……少し前から、ここは?」

 

「夕張に作ってもらった仮設サーバー、動ける?」

 

「…はい、現実、じゃないんですね」

 

「AIDAを消すのに都合がいいからね、多分だけど」

 

「………」

 

「……やっぱ消したくないんだ?」

 

「私には力がありませんから」

 

「そんな事だろうと思ってたけどさぁ…明石は明石の仕事があるじゃん」

 

「……置いていかれたくない…」

 

「だろうね、でも、明石のことは誰も置いてかないよ」

 

「…もう此処にはいられません」

 

「AIDAを取り除けば問題ないよね」

 

「……私は提督を刺して、その上青葉さんやいろんな方を傷つけました」

 

「だから?」

 

「………」

 

「子供じゃないんだからさぁ…抵抗するなら自分の答えをもとっか」

 

「…私も前線に出たいんです、それができないなら……嫌と言うほど忙しくて、そんな事もわからなくなるくらい辛い方がいい…誰かを疑ったり、見えない何かから守ろうとするのは…疲れました」

 

「…ねぇ、明石、AIDAはどこから来たの?」

 

「…ネットから?」

 

「違う、明石のAIDA、誰に寄生させられたかわかる?」

 

「……わかりません」

 

「本当に?今の間はわかるって事だと思うんだけどな」

 

「…本当にわかりません、だけど……青葉さんや翔鶴さんから…たまに何かの気配を感じていました」

 

青葉と翔鶴は元々組…じゃあ恐らく関係はない…?

感染させる素振りはなかった事になるしね

 

「それ以外は?」

 

「何も…」

 

「…ま、いいや…明石、せっかくだし自分の艤装作れば?それで戦えばいいんじゃないの?」

 

「……」

 

「不満?」

 

「いいえ…わかりました、追いつく覚悟をします」

 

「明石の怖かったことが、みんなに置いて死なれる事なら…私達は死なない為の戦いをしてる…きっと、大丈夫だから」

 

「………」

 

「んじゃ、今からいたぶって、AIDAを叩き出すけど、いい?」

 

「…はい」

 

……あ、どのくらいの加減でやればいいのかわかんないや

 

 

 

 

「ようっやくでてきたねぇ…」

 

「ハァ…ゔェ…」

 

「明石ー、あと少しの辛抱だからね」

 

「ァ……?」

 

「えーと、逃げ場作ってやるんだっけ、そらっ」

 

明石の頭上に黒い泡の塊が出てくる

 

「出たね、よし、此処から出るよー」

 

「ぅあ…」

 

 

 

 

「…あの……AIDA、放置したまんまでいいんですか…」

 

「夕張に作ってもらった隔離サーバーだから大丈夫だと思うよ、と言うか明石こそ大丈夫?息絶え絶えで」

 

「……あたまがぐわんぐわんします…でも…良くなってきました…」

 

「夕張ー」

 

「はいはーい、なんでしょう」

 

「その隔離サーバーってどうすんの?」

 

「手に負えないので横須賀に持ち帰って本部に送るつもりです」

 

「………厳重にお願いね、横須賀でパンデミック起きても知らないから」

 

「勿論、サーバーっていうかコレただの外付けですし、外に出る事はないですよ、おそらく」

 

「…怖いなぁ、まあいいけどさ、とりあえず明石の診察よろしく、アタシは事情を触れ回るから」

 

「お願いします、それでは」

 

 

 

「よっ、暁、雷」

 

「あ、北上さん…」

 

「ごめんなさい、助けられなくて」

 

「んー?呉の事?アレは2人は悪くないから気にしないでいいのさ〜、それよりどう?元気なった?」

 

「…暁は平気よ、レディーだし…ただ、響と、第七駆逐隊の人達はちょっとダメそうね」

 

「…理由って分かったりする?」

 

「…七駆、特に朧さんと漣さんは…みんながおかしくなるの見てたから…響は…青葉さんの腕を折りそうになったのよ…記憶が断片的に残ってて…」

 

「……ケアは大変そうだねぇ…にしても暁は偉いなぁ…ほんとに周りを見てて」

 

「や、やめてよ!当然の事なんだから」

 

「……」

 

「雷もおいで」

 

「大丈夫よ!雷は…」

 

「おいで」

 

「……うん」

 

「よーしよし、怖かったね、明石はちゃんと前の、みんなの知ってる頑張り屋さんで、おバカな明石に戻ったから」

 

「………本当に大丈夫なの?」

 

「大丈夫、少なくとも明石はね」

 

「え…?」

 

「ごめん、なんでもない…よーし、今度みんなで休みとろっか、明石と提督だけ残してさ、みんなでピクニック行っちゃおう」

 

「…!いいわね!雷もお弁当作り頑張っちゃうんだから!」

 

「お寿司はダメよ?雷」

 

「えー!なんで!」

 

「よし、元気になったね、他の子のとこ行ってくるから、またねー」

 

 

 

 

「ん?阿武隈じゃ〜ん、響も、どうしたの?珍しいペアで」

 

「…その…北上さん、腕を出してみてください」

 

「ん?ほら」

 

「響ちゃん、大丈夫だから」

 

「……ごめん、北上さん…えい」

 

「…何?マッサージ?」

 

「……大丈夫なの?」

 

「ああ、そう言う事、いきなり腕を掴まれて何事かと思ったよ、青葉が痛がったくらいでこの北上様に勝てると思っちゃいけないねぇ…って言うか阿武隈、痛かったの?」

 

「いいえ、全く」

 

「…ほら、もうか弱い響ちゃんに戻ってるんだから心配ないでしょ…あ、そうだ、響、ちょいちょい」

 

「…どうしたんだい?」

 

「……こうやってみ」

 

「阿武隈さん、腕を出してくれないかな」

 

「へ?またやるんですか?」

 

「…すまない、つねるよ、えい」

 

「痛っ!?いや、二の腕つねらないで!」

 

「あははは〜、ほら、そのまま引きちぎっちゃえ」

 

「………無理そうだね」

 

「あれ?!響ちゃん楽しんでない!?いたたた」

 

「響、弱点はあるモノだよ、例えば脛をぶつけたら痛いしさぁ、って訳で心配ないよ」

 

「そうみたいだね」

 

「そろそろ放そうか!?」

 

「阿武隈ー、えらいえらい、んじゃーね」

 

「あ、ちょっ北上さーん!?」

 

 

 

 

「おっす七駆どもー」

 

「あら、帰ってたのね」

 

「おかえりなさい、北上さん、ご愁傷様です」

 

「ダブルボノは元気そうだね」

 

「…まあ、他がアレじゃあね」

 

「潮は翔鶴さんについてます、まだ元気そうなので」

 

「…あれだね、所謂老々介護状態だね、違うけど」

 

「何それ」

 

「助けがいる人が他の助けがいる人の事を助けてる状態、つまり潮にもケアがあるのに他の人のケアをさせてるってことよ」

 

「…否定はできないわね」

 

「ザミとボロは?」

 

「…その呼び方何?」

 

「奥です」

 

「ねぇ、ダブルボノ、ちょっと荒療治だから…手を借りたいんだけど」

 

「…アンタまさかそれ見せるつもり?」

 

「…それってAIDA…?」

 

 

 

「おっす、ザミー、ボロロン」

 

「…北上さん」

 

「こんにちは…お元気そうで何よりです」

 

「一応慰安旅行だったからね、アタシだけ車中泊になったけど」

 

「…何か用ですか?」

 

「…明石をさ、さっき治してきたんだ」

 

「明石さん、治ったんだ…」

 

「ん、まあね…AIDAの扱いには慣れてるし」

 

「……それ…AIDA…!?」

 

「い、嫌…!」

 

「…アタシさ、いつだっけなぁ…前アオボノと戦った時からこの子とずっと一緒なんだよね」

 

「ずっとそんなのを…!?」

 

「ん、まあ…使ってるとすごい負担があるけど…この子にもちゃんと意思があって、生きてるんだわ」

 

「でも、私達を…」

 

「大丈夫、この子は攻撃しない…ごめん、後々みんなに見せるつもりだったんだけどね?」

 

「………」

 

「ま、信頼しろなんて言わないよ、アタシはさぁ…そう、明石はもう大丈夫って伝えるためにコレを見せた、わかるでしょ?」

 

「わかりません…」

 

「そりゃそうだよねー、なんて言うの?ほんとに取り除けたよって事なんだけどさ」

 

「………北上さん、それ、今まで隠してたんですよね」

 

「朧、何も言わなくていいよ」

 

「…何するつもりですか」

 

「…………」

 

「自分を犠牲にするつもりですか…?」

 

「そんな高尚なモンじゃないさね、心配ないよ、少なくとも今はそのつもりは…まあ、あんまりないかなぁ…」

 

「…絶対にそうはさせませんから」

 

「ん、信じてるよ」

 

 

みんなやっぱり強いなぁ

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