元勇者提督 作:無し
工作艦 明石
「なるほど、ではコレはその折にいただきます」
「はい、一週間以内に確認致しますので」
その日のうちに私は工廠内での活動を認められた
もちろん謝り歩いた後に
未だ目を覚まさない青葉さんが目を覚ましたら、全員の前で再び謝る事を約束した
今の私の最優先の仕事はデータ兵器の実用化
コレの安全確認を行い、今回の協力の対価として呉にも渡す事になった
もちろんヘルバさんにも許可は得た
正直、ずっと不安だった、北上さんと同じくらいの長い間此処にいる
なのに戦果はあげず、ずっと大人しく仕事をこなすだけ、かと言って他の人より仕事の量は多くない
昔はそれでもよかった、むしろ、楽だと思っていた、かまけていた、でも、いつからだろう、北上さんが全員を引っ張るようになったのは
あの人の異常な練習時間、練習量は、自分で艤装を手入れすることで私にも隠してきた事のようだけど、調整すればわかる、金属疲労で壊れそうなパーツも多い、壊れたら新しい艤装を用意した方が安く上がるくらいだ
私は…無力だった、いつからだろう、正しい意味で此処の一員となったのは、本当に心の底から一喜一憂しながら、此処で暮らして、戦っていたのは
「煙幕弾ですか」
「発煙筒でもいいんだけど…前方に大きく目隠しを作りたいの」
「…確かに制空権を取れれば一方的に攻撃できる上に、被弾の可能性も下がりますね」
「お願いできるかしら」
「はい、すぐに取り掛かります」
最近色々な仕事がくる、無茶な内容も含めて
毎日のように北上さんが駆逐艦達を連れてきて、変なものを作れと言ったり、加賀さんがさっきみたいに新しい戦い方をするための装備を要求してきたり
自分の艤装を用意する暇はあまりない、今まで通りに活動していたら
結果私は自分の時間をとことん削った、すると何故だかむしろ楽しくなってきたのだ、ようやくとことんやりたい事ができているのだから
不思議と今が楽しい、楽しくちゃいけないけれど、これで漸く私も一緒に戦えるのだ、と思うと楽しくて仕方がない
執務室
「こちら発射の際にかかる負荷と威力の算出データです」
「…使えそう?」
「戦艦クラスでしたら可能かと、普通の弾薬と違い、レールガンタイプとなりますので専用の艤装になります」
「………それで?」
「私が使います」
「戦艦クラスじゃないと使えないんじゃないの?」
「擬似的に戦艦の馬力を出します」
「どう言う事?」
「これの発射の際、とても強い負荷がかかり、大体の艦娘はバランスを大きく崩すでしょう、なので、後方にアームを出してバランスを取り、踏ん張る力を上げます、そうする事で戦艦以外でも使えるようにします」
「成功しそう?」
「実験の許可さえいただければ」
「…安全第一でよろしく」
「ありがとうございます!!」
「元気になったみたいだね」
「…改めて、申し訳ありませんでした」
「いや、いいよ、気にしないで」
「そう言うわけにはいきません、私は自分の罪を理解しています、何があろうとそれを受け入れる覚悟ですので」
「…明石は…強く、なったね」
「…ありがとうございます」
「…本当はみんな強いんだ、それに自分が気づけてないだけで…少し、誰か背中を押す人が必要なだけ、明石はもう大丈夫?」
「はい、これからの戦いに備えます」
「…じゃあ、午前は工廠を閉鎖して、訓練に参加する事、良く練習しておいてね、通常戦闘も含めて」
「はい!」
「明石、その煙幕弾ってアタシにもくれるの?」
「え?北上さんにですか…?」
「ん、まあ、使えないことはないかなぁって」
「……わかりました、配備します」
「おっ、アタシがまた強くなるのが嫌?」
「…正直に言えばそうですね、私の目標の一つですから」
「………そっか!嬉しいよ」
「でも、これからは負けませんから」
「…明石には明石の戦い方があるもんね」
「ええ、これで…やってみせます」
私のやり方で、みんなを助けるために
呉鎮守府
「いつまで拗ねてるんだよ、仕方なかっただろ?」
「まあ、その通りだクマ、だけど詳しく説明してくれりゃこっちも手を貸したクマ」
「…」
「言えない事情があったんですって!きっと、何か…」
「大井が北上の肩を持つなクマ…お前は北上をいたぶるのが趣味なはず…」
「ニャ…」
「……別に私はそう言うわけじゃ…」
「違うんだよなぁ、大井姉は自分だけ心の底から楽しんだから申し訳ないんだよなぁ?」
「…姉さん達、私の趣味は木曾をいたぶることでした」
「……悪かったって」
「はぁ…そんなに姉ちゃん達は頼りないかクマ」
「…ニャ…悔しいニャ……」
「失礼します、今よろしいですか?」
「神通か、なんだクマ」
「その…北上さんに様子を見ておいてほしい、と」
「北上が?なんのためニャ」
「……怒らないでほしいのですが…自分たちは頼りないって泣いてるんじゃないかと言っておられました」
「…はぁぁぁぁ!?いい度胸してるクマ!」
「あっりえねーニャ…北上…殺すニャ」
「賛成です、とことん痛めつけましょう」
「………神通…?」
「そう言うことですので…」
「…予定通りなのか…いい姉妹だよな、全く…」
「そうですね…」
「そっちはどうなんだ?」
「…姉さんの夜恐怖症は…相変わらずです」
「那珂の方は?」
「…最近お仕事が減ってると嘆いています」
「那珂らしいな」
「前は瞬間移動や独特の所作でバラエティ含め引っ張りだこだったんですけど…その、ドッキリというんでしょうか、アレに引っかからないし、ヤラセでやると演技の下手さから…」
「…成る程な、そりゃテレビ局からしたら使いにくいわけだ」
「…まあ、那珂ちゃんは戦闘でも活躍してくれますから」
「…うちの3番手様は流石だな」
「…2番手だと思いますよ」
「…その位置は俺だ、文句あるか?一番手サマ」
「……ふふふっ、改二改装、するんですね」
「…ああ、どうなってもな」
「幸運を」
「ありがとう」
佐世保鎮守府
軽空母 瑞鳳
「…懐かしい臭いがする」
「…どうしたんですか?瑞鳳さん」
「千代田さんはわかる?」
「え?なにがですか?」
「………わからないならいいの…提督はどこかな…」
「今の時間は道場だと思いますけど」
「ありがと、一緒に来ない?」
「…はい」
「…どうした?」
「提督、誰か来た?」
「質問の意図が良くわからないが…?」
「………離島鎮守府」
「それがどうした」
「あそこで嗅いだ事のある匂いがしました、誰か来ましたか?」
「…瑞鳳さんはここで建造されたんですよね…?」
「……公式的には誰も来ていない」
「誰ですか?」
「北上だ」
「………そっかぁ…最悪…」
「…知り合いか?千代田はわかるか?」
「…えっと、はい、私は一応…」
「提督、轟沈した艦娘って、どうなるか知ってますか?」
「…なんだいきなり」
「私の知る限り…2種類です、1つは深海棲艦になる」
「最近本部の議題に上がっている話か、だが証拠がないとか…」
「2つ目は、記憶を引き継いで、再び建造される」
「…瑞鳳さん…もしかして…」
「千代田さんには言ってなかったよね、でももうバラしたし、いっか、久しぶり」
「…離島鎮守府で、お前は沈んでいたのか…?」
「そう、私は、あそこで新人の提督に殺された…次に目が覚めたらここで建造されてた、経験がある事がバレるとさっさと前線に送られるから黙ってたけど…ってこんな話はいいか、なんで北上がここに来たの?」
「…不知火が連れてきた、演習をしただけだ」
「データは?」
「…取ってない」
「非公式戦かぁ…」
「瑞鳳さん…?」
「…大丈夫、千代田さんのことは恨んでないから、私はあの提督だけ地獄に落とせれば充分だから」
「………」
「瑞鳳、千代田、今日はもう休んでくれ、俺も少し頭が痛い」
「お大事に、提督」
「……失礼しました」
離島鎮守府
「それでは、お世話になりました!」
「此方こそ、とても助かりました、今までありがとう」
「また遊びに来ますね、どうせ横須賀から定期船は出てるし、あ、そっちから遊びに来てくれてもいいんですよ!特に明石!」
「うん、わかってる」
「いやー、霰ちゃんとか青葉さんとか、目が覚めてない人がいるのに…帰るのは本当に申し訳ないけど、皆さんに幸運がありますように」
「ありがとね、夕張…」
「よし!じゃあまたね!」
「結局医官の派遣は蹴られた、か」
「まあしょうがないでしょう…期待はできませんでしたし」
「そこのお二人さん、安心してええで、ウチが夕張からある程度引き継いどるからな!今後も連絡を密にして必要なったらこっち来てもらう手筈や!」
「龍驤さん…いつの間に」
「ウチも力になるからな…」
「ありがとう」
「扶桑…」
「どうしたの?満潮」
「…この前の霰と大潮の事なんだけど…」
「……怖がる必要は無いのよ、きっと何も問題ないんだから」
「…私はここの恐ろしい時期ってやつを何も知らないわ」
「それは私も…折角だし、赤城さんや加賀さんにお話を聞いてみたら…?」
「………」
「…一緒に行ってあげるわ」
「ありがと…」
「昔のこと、ですか…」
「…いいけれど、面白く無いわよ…」
「…わかってるの、気持ちがわかるなんて言えないわ、だけど…できるだけ…できる限り寄り添いたいの」
「…優しいのですね」
「いいでしょう、軽くお話しします」