元勇者提督   作:無し

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裏切り者

正規空母 赤城

 

「提督ー、入るよ」

 

提督は先の怪我から執務室を病室に移し、そこで基本的な応対をしている

なので此処は静かだ、誰も私の罪を、今は聞かないだろう…

それも数時間後までか

 

「どうぞ」

 

「失礼します、赤城です、お呼びでしょうか」

 

何も無い風に、今から行われるのがたとえ、死刑宣告だろうと、なんだろうと、それが待っていることを知らない風に…

 

「わざわざ来てくれてありがとう、報告の件なんだけど」

 

報告、か…密告とでも、なんとでも言えば良いのに…

 

「これまで通り続けてくれて構わないよ」

 

「…はい?」

 

「話はそれだけ、わざわざ呼んでごめん、もういいよ」

 

…どういう事だろう、全く頭に入ってこない

 

「…意味がわからないのですが…」

 

「ホンマにわからんか?」

 

後ろからの声にはっとする

いつから居たんだ、この人は…

 

「おう、赤城、そもそもなんで司令官がお前の悪さに気づいたかわかるか?」

 

「……貴女だったんですか、いつ気づいたんですか」

 

「たまたま、此処で司令官の他に持ってないはずのケータイを見たからな、そん時はまだ明石が持ってる事も知らんかったし、本土行くのも難しかった、しかもめっちゃ物々しい感じやったからな…夕張に軽く見てもらった」

 

「…なるほど、なんで今まで私に問い詰めなかったんです?」

 

「確かに、ウチや明石ならイヤイヤでも多少きつい事言うたりしたやろうからな、お前がそれ望んでるうちはあかんわ」

 

「…というか僕は別に赤城を罰するつもりは全くないんだけどね」

 

「…なぜでしょうか」

 

「赤城が情報を流してる割には此処への被害ってほとんどないからだよ、龍驤に言われた時は信じられなかったしね、それに…赤城は別に誰かを困らせるつもりはないんでしょ?」

 

「…当然です、私は、此処にいるみんなを家族のように大事に…」

 

「おい、赤城…」

 

「やめなよー?龍驤、今提督と赤城が話してるじゃん」

 

「……アンタもそうやけど前々から此処は緩すぎるわ、良い加減に…」

 

「龍驤、黙ろうか」

 

「なっ……お前…それは…」

 

龍驤さんの声に反応して後ろに振り返る

目の前には目に痛いほどの単色の泡

その泡は間違いようもないソレ

 

「…AIDA……」

 

「北上、いいの?」

 

「ん、どうせ明日の朝礼で言うじゃん、良いでしょ別に」

 

「…どう言う事やねん!北上は敵なんか!?はっきり答えぇや!?」

 

「心配しなくても良いよ、私は強いって教えてあげてるだけだから、手は出さない…だから黙ろっか、詳しい話は明日するから」

 

「…どっちも納得できんわ!なんやねん…赤城の事も!北上のことも…!」

 

「…簡単に言えばアタシは核兵器だよ、敵が使ってる以上、こっちも引かない」

 

「それに、北上はAIDAを正しく扱える、信頼しても良いと思う、と言うか、今まで実際にそれで戦果をあげてくれたしね」

 

「…いつからや?」

 

「前アオボノとやり合ったあたりかなぁ…」

 

「……なるほどなぁ…ホンマに大丈夫なんか…?まあ、ウチも新参や、とやかく言うことは今はせえへんけど…明日、どうなってもしらんで」

 

「よし、じゃあ黙っててくれる?」

 

「………わかったわ」

 

「…私が言うのもなんですけど、私自身も不満があります、なぜ裏切り者である私をそんな扱いにするんですか?」

 

「赤城が誰かを傷つけるために情報を流したわけじゃないって言うだけで、君が罰を受ける理由は僕には見当たらないよ、大本営が提示した条件はなんだったの?」

 

「…憲兵の配置を取りやめる事、それとある程度の黙認…」

 

「前者は蹴られたわけだね」

 

「…………はい、取りつく島もありませんでした…申し訳ありませんでした…」

 

「君が気にする事じゃないんだよ、赤城」

 

「…いいえ、私は皆んなを裏切り、そしてそれを誰にも明かさず、誰にも責められないまま終わることを望んでいました…決して許されることではないのに」

 

「君は裏切ってない、龍驤、今の話を聞いててもまだ赤城が裏切ってたと思う?」

 

「………」

 

「良いよ、しゃべって」

 

「…おっかないボディーガードやわ…まぁ、ウチには此処の事情やら、憲兵にどんな感情抱いてるやらはわからん…けど、赤城が皆んなを守ろうとしたったってことだけはわかったわ」

 

「でしょ?」

 

「…許さないでください、提督、私は間違ったことをしています」

 

「許されないことは君への罰にはならないと思うよ、それを心の底から望んでるなら」

 

「…罰を望んでるわけじゃありません、許して欲しくないんです…」

 

「じゃあ、君を追い詰めた僕を恨めば良い、僕はみんなに許されたくない」

 

「…何故?」

 

「この戦いは僕が始めてしまったからだよ、何が起ころうと、元凶は僕だからだから、許されちゃいけないんだ、君が何をしたとしても…それは僕のせいだ……それに、赤城、君は謝ったじゃないか、謝ったら許してあげなきゃいけない」

 

「謝ってすまないこともあります」

 

「…誰かが死んだらそうかもしれない、でも君が犠牲にしたのは自分だけ、なら…誰も君を責められないよ」

 

「………」

 

「…赤城、どうしても納得してくれないなら、明日の朝礼でみんなに話そうか、僕が罰を与えると言えば、きっと皆んなは強く反発する」

 

「…知っています、優しい子たちですから」

 

「君が望む形にはならないけど、君は愛されているよ」

 

「…お互い様です…提督、ありがとうございました」

 

「後のことは任せておいて」

 

「…お願いします」

 

 

 

 

 

提督 倉持海斗

 

「ごめん、龍驤、北上、外してくれる?」

 

「…わかったわ、ウチも赤城に詳しい話聞きたいしな」

 

「誰か呼んだ方がいい?」

 

「いや、もう来てるよ、曙、入って」

 

「…失礼します」

 

「うぉっ!?ずっとおったんか…」

 

「…がっつり聞かれてたみたいだねぇ…」

 

「……提督、お加減の方は如何ですか?」

 

「大丈夫、もう1人の曙は?」

 

「訓練に行きました」

 

「そっか、じゃあ2人でする話になるかな、ごめん、北上、龍驤、これもあんまり聞かれたくない話だから」

 

「明石にも?」

 

「うん、任せていい?」

 

「りょーかい、行こう、龍驤」

 

 

 

「はい、こちらがロシアのコミュニティです」

 

「へぇ…ウーラニアって人もすごいみたいだね」

 

「舞鶴と大本営の通信を全て傍受して、作戦概要を教えてくれました、その為に私はあの時、舞鶴の作戦を防げたんです」

 

「………どこで知り合ったの?」

 

「私が買ったスマートフォンにいつの間にか連絡先が、ハッキングされてたみたいで」

 

「狙いは僕かな…」

 

「提督、どうしていきなり」

 

「この人はCC社側の人間みたいなんだよね、曽我部さんから聞いてるんだ…でも舞鶴と大本営の交信を知ってるっておかしいと思わない?」

 

「それはそうですけど…」

 

「うん、直球で言ってしまうと、大本営はCC社が絡んでると思ってさ…CC社ってわかる?」

 

「ネットゲーム、The・Worldの運営元であることくらいしか」

 

「それでいいよ、次は大本営ってどんな存在?」

 

「…日本における軍部の一つです、海軍で最大の派閥と言える存在でしょう」

 

「大体正解、大本営の規模なら10兆円くらいかな?」

 

「なんの…買収ですか?」

 

「流石に気付くのが早いね、正解だよ」

 

「…さっきの話と複合すれば、CC社が大本営を買収してることになりますが」

 

「簡単に言えばそうかなぁ…CC社の本部ってさ、アメリカにあるんだよ」

 

「アメリカ相手には強気に出られない、と?」

 

「そうだね、僕はそれと、お金の力、両方が絡んでるのかなぁって思ってる」

 

「…だとしたら私たちに何ができるんでしょうか」

 

「……曙、例えば…今から僕が世界を滅ぼすと言えば…どうする?」

 

「私はただ従います、提督の考えは分かりませんけど、貴方の考えは1番に私たち考えてくれているから…」

 

「…ごめん、曙、今回ばかりはそうじゃないんだ」

 

「……」

 

「曙、僕は…戦いの終わりのために世界を滅ぼす」

 

「…狡い人ですね」

 

「ごめん、そう言うのも覚えてしまったんだ」

 

「…もう夜です、今夜は月が綺麗ですね」

 

「そっか」

 

「文学はお嫌いですか?」

 

「いいや…ごめん」

 

「知ってます、提督、私は朧や、漣、潮…もちろん曙も、皆んな大事で大好きで…アイツらを傷つける奴は、絶対に許さない…大事な仲間で、姉妹で…」

 

「……」

 

「……それでも、私は提督の前に立ちはだかるつもりはありません」

 

「…いいの?」

 

「私の選ぶ道です」

 

「そっか…ありがとう」

 

「提督、貴方は愚か者じゃない、私はよく知ってますよ」

 

「愚か者だよ、なんの確証もない、赤城や北上をも、それどころか仲間を全て裏切るつもりなんだから」

 

「…皆んな、背中には用心していませんからね、丁度提督のように」

 

「…ねぇ曙、僕は君とどんな約束をしたの?」

 

「……さぁ?…戦いが終わったら指輪をくれるとかでしょうか」

 

「曙、君がもう良いのなら、元の口調でも良いんだよ」

 

「…まだダメです、私はすぐに泣いちゃうので」

 

「………そっか」

 

 

 

 

 

 

 

「みんな、今日急に朝礼を開いたのは、幾つか理由がある、先に、まず島風と鳳翔さんの正式な移動の日程が決まったよ、後一週間しかない、会えないわけじゃないけど、会うことは難しくなる、決して遠慮することなく、しっかり遊んで、思い出を作っておいてね」

 

「司令官、記念写真、取りましょうか…?」

 

「いいの?…じゃあ、後でみんなで撮ろうか…でも、先に話を終わらせるね、こっちも異動の話だよ、朝潮と荒潮が帰ってくる、こっちは明日、表向きは戦績が奮わないことが理由って事になってる、その辺りの理解をお願い」

 

「大潮と霰は頭を覚ますのかしら…」

 

「大潮は元気ですよぉ!」

 

「…アンタはそのまんまでいてね」

 

「それと、もう一つ異動の話がある、暁、響、雷、君たちは横須賀鎮守府に行く事になるよ」

 

「…え!?」

 

「私たちが横須賀!?練度も決して高くないのに!」

 

「…これだと喜んで良いの?提督」

 

「うん、喜んで良い事だよ、島風のことも、君たちのことも、昇進とか、その辺りに近いかな、君達の異動も一週間後、だからみんなでパーティーをしようか、とびきり楽しい思い出を作ろう…それと、横須賀には電がいる、決して寂しい思いはしないはずだよ」

 

「なるほど、だから横須賀かぁ…」

 

「確かに此処の戦力は過剰でした、目をつけられないためにも、戦力を下げる必要がありますからね…」

 

「…そこで憶測をするのは良いけど、北上、メインは君だよ」

 

「北上さんも何処かに行くの…?」

 

「北上さんがいなくなったら此処、大変な事になるんじゃ……?」

 

「はい、そこの面々黙るー、北上様が喋るんだから…よっと、全員聞こえてるかーい、hey!最後列ー!のってるかーい」

 

「…北上、ふざけないで」

 

「……はぁ、まあいいや、全員、まず騒がない事、何があっても大人しく最後まで話聞いてね、それと艤装展開したら吊るすから」

 

「何が始まるの…?」

 

「北上さん…まさか…」

 

「ほーれ、AIDAだよー」

 

ウワァァァァ!! キャァァァァ!!

 

「…騒ぐなって言ったじゃん」

 

「いや、これは北上が悪いかな」

 

「ほら、別に攻撃してないんだからさぁ…」

 

「落ち着いてー、ほら!落ち着け!」

 

「みなさーん!言うことを聞いてください!落ち着きましょう、大丈夫ですから!」

 

 

 

「あー、皆さんが静かになるまでに…提督、どんくらいかかった?」

 

「…北上?」

 

「ごめんって…ほら、この通り私はAIDAを操れる、敵意のないAIDAだよ、どう?なんか聞きたいことある人ー」

 

「…本当に大丈夫なの?」

 

「この前の戦いも、他の戦いも、私はこれと共に戦ってる、例えば…イムヤー?」

 

「は、はい!」

 

「アタシが魚雷の観測に呼ばなくなったよね、でも外れなくなったでしょ?」

 

「は、はい…」

 

「そんな怯えないでよ…それもAIDAを使って潮の流れとかちょちょいっと調べたりね…ほら、AIDAって結構なんでもできてさ、こんな風に…ほれ、剣の形にしてみたり?単装砲の砲塔長くしたりしてさー、まあ粘土みたいに使ってるのよ」

 

「…そんなに便利なものなの?」

 

「あ、勘違いしないでね、私だから扱えてる、他のAIDAは危険なものには変わりないんだから、ほら、他にはない?なんか」

 

「…危険性がないことを証明して」

 

「それは無理、だから私は無理を押し付けるよ、私を信じて」

 

「………」

 

「ウチは信じたるわ」

 

「お、龍驤、いいの?」

 

「…みんな、うちは昨日知った、考える時間も十分もらったし、不公平や、やけどな、北上は今までめちゃくちゃ此処で戦って、みんな世話なっとるやろ…やらかしたらウチらで叩きのめしたろうや」

 

「はい!私も知ってました!…北上さんが最初に感染した時、ボコボコにされましたけど、それでもなんとか私が死なないようにしてくれたし!復帰してからもずっとAIDAを使ってトレーニングとかしてて…とにかく、信じて欲しいです!私的には間違いなくOKですから!」

 

「阿武隈ぁ?ありがとうだけどもう少し整理して喋ろっか」

 

「って言うか、みんな心配しすぎなのよ、そこのアホが暴走したらまた私が1人でボコボコにしてあげるから」

 

「……言ってくれたねぇ…アオボノ、アタシもだいぶん強くなってきてるよ?」

 

「へぇ?やるって?」

 

「お昼から空けといてね、演習場」

 

「上等…!」

 

「…全員、思うところはあると思うけど、納得できなければ個別に話を聞くよ、後で僕のところに来て欲しい、いつでも良いからね、後最後にもう一つだけ、これも一週間後…此処に憲兵が配備されます、決して問題を起こさないように…」

 

「……提督、そんな話をしては記念写真を撮りづらいのでは?」

 

「あ、そっか」

 

「…考えなしね」

 

「じゃあ、朝潮たちがきてから写真を撮ろうか、どうせならたくさんで撮りたいしね、明石、青葉、ちゃんと2人も写ってね」

 

「え…」

 

「その…私は…というか…明石さんも…?」

 

「…写真撮る側に回ろうかなって…」

 

「ダメだからね、よし、朝礼は以上だよ、解散」

 

 

 

 

 

 

呉鎮守府

 

「んー?神通姉さんどうかした?」

 

「…その、どうにも余計なものが見えてしまって」

 

「なにが見えちゃったの?」

 

「………強さの秘密…?」

 

「…?」

 

「ところで、それ以上食べるのはやめた方がいいんじゃないですか?」

 

「なんでー?美味しいよ?」

 

「…太るんじゃ…」

 

「大丈夫!訓練の内容変わって死ぬほど疲れてるから!」

 

「………そうですか」

 

「でもこれこんな味だったかなぁ…まあ良いか」

 

「味が変わったんですか?」

 

「うん、いつもより小さじくらい醤油が多いかな!多分!」

 

「…あんまり変わらない気が…あ、提督が来ますよ」

 

「え?どこどこ…?あ、本当だ………あれ?今の位置見えたの?」

 

「…あ…れ……?」

 

「2人とも、大丈夫…?」

 

「…おそらく」

 

「多分…」

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