元勇者提督   作:無し

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提督 三崎亮

 

「ねぇ」

 

「ん?」

 

「私と死ぬ気?そんな顔してるけど」

 

「……まさか、ただ、覚悟は決めてる」

 

「なんの」

 

「最悪の事態になる覚悟だ」

 

「そんなところに連れてかれるの?」

 

「……お前も望んでいくことになる…」

 

 

 

「居る」

 

「…どうした、川内」

 

「居るんだ、誰か」

 

誰かとは誰か

スケィスか?それとも、別の何かか

 

『………』

 

「……ああ、そっか、お迎えかな?」

 

「…迎え?」

 

墓標とされた岩に寄り掛かるように、両足のないそいつは寄りかかっていた

太腿となるはずの場所は黒い艤装、頭には黒い帽子

 

「……艦娘…?」

 

「違う、深海棲艦だよ」

 

川内はそう言って、酒瓶を一つ掴み、水面に足をつけた

 

「……大丈夫か」

 

「…アルコール不足かな、震えてるよ」

 

瓶の先端を弾き、大きく煽った

 

「……っはぁ!……私も、覚悟決めなきゃだよね」

 

川内を連れて行くか、正直迷いはあったが

どうやら此処は俺と川内、2人ともケリをつける場所らしかった

 

「春雨?春雨だよね」

 

『………』

 

深海棲艦は俯いたまま答えない

 

「……無視は傷つくな、春雨、仲間じゃん」

 

『もう違う』

 

顔をあげ、そういう

決して憎悪などとは違う目

悲しい目

 

『私はもう、貴方達とは違う、今日、私はあなたに伝えに来た……この海になどと近寄らないで、できるだけ遠くに逃げて欲しいと』

 

「なんで?私たちは艦だよ」

 

『解体されれば違う…川内、お願いだから……この海はもう、だれかのものになってしまった、全てを制する意思が、存在してしまった』

 

意思に海が支配された

 

『黒い泡に全て呑まれた、この海は、もう、留まることを知らない、今すぐにでもあなたも呑まれる』

 

「……その黒い泡に?」

 

AIDAに、全てが呑まれる…

 

「なぁ、お前は一体なんなんだ」

 

『深海棲艦、だった…私はそれを超えてしまった』

 

「深海棲艦を超えた…?」

 

『私は言うなれば、深海棲姫…そしてこれがその証…』

 

「……AIDA」

 

『そう、この力を……扱い切れることがその証明…!』

 

つまり、コイツにやられたら…

また意識不明になる奴が出てくるって訳だ

 

「…川内」

 

『ふふっ…ここで…やる気?……本当に…?』

 

水中から石で出来た腕が飛び出してくる、深海棲艦を持ち上げる

そして、スケィスが姿を表した

 

「…スケィス…!」

 

「…マズイね、絶対に勝てない」

 

『大丈夫…今日は伝えに来ただけだから……でも、川内…貴方には逃げて欲しい、できれば、助かって欲しい……世界は滅びる』

 

「なぁ、それは…お前たちによって滅ぼされるのか?」

 

『そう、だけど…私たちはこの世界を支配したとしても、そのわずか先にあるのは…滅びなんだ…どの道、この世界は繋がってはいけないところに繋がってしまった…世界は、もう、一つになる…その衝撃に世界は耐えられない』

 

「ネットと、リアル…って事か」

 

『………わからないけれど、そうだと思う』

 

「…ねぇ、春雨…本当にあなたは敵なの?」

 

『敵だよ、今日は、サービス……いつか、私がみんな沈めなきゃいけない…』

 

「……」

 

「川内」

 

『川内、あなたが海を去らないなら、私が沈める、誰の手にも…あげない、じゃあね』

 

「まて、なぜお前はスケィスを従えてる」

 

『……空っぽだから、私が操れるだけ』

 

「空っぽ…だと?」

 

『そう、コレは…強いけど、空洞…だから誰かが操ることができてしまう…』

 

「じゃあ帰ってこい!スケィス!」

 

『それは無理、貴方のものじゃない……コレは貴方の記憶だけど、貴方の力じゃない』

 

「記憶だと…?」

 

記憶であって、力じゃない…?

 

『……さようなら』

 

「待って!」

 

「おい!待ちやがれ!」

 

声は虚しく静かな海に響くだけだった

 

 

 

 

「提督」

 

「なんだ」

 

「…明日、最後の日だよ」

 

「…そうだな」

 

「私の意思はやっぱり変わらない」

 

「ああ、よく知ってる」

 

「……じゃあ私の好きにするね」

 

「そうだろうな」

 

「そうだとも、私はまだここを去れない」

 

「だと思った」

 

「……私も、あの子に関わり抜くって決めたよ」

 

「…くっだんねぇな」

 

「そう、くだらない…だから、あの子の望む事をする……」

 

 

 

「提督、世界を救おう」

 

「当たり前だ、俺らはそのために戦うんだからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

離島鎮守府

駆逐艦 朝潮

 

「霞」

 

「…朝潮姉さん」

 

「毎日来てるのですか?」

 

「……その…うん」

 

「霰と大潮はお寝坊さんですね」

 

「そうね…」

 

「演習で出会ったよその霞はもっと悪辣な子でしたが、霞は違いますね」

 

「……やっぱり、らしくないかしら…」

 

「いいえ、とても良い子です、ただ元気が無いのは良くありませんね、私は姉として心許ないでしょうか」

 

「そんな事ない…けど…」

 

「……霞、おいで」

 

「…姉さん」

 

「よしよし、貴方はきっと元気な子、なんですよね」

 

「……わかんない…でも、ここは私には…冷たくて」

 

「それは違いますよ、霞、私の目を見なさい、私はちゃんと貴方を見ています、今目を逸らしたがっているのは……貴方なんです」

 

「…だって…」

 

「だって、は違います、目を見て話しなさい」

 

「……」

 

「じゃあ、わかりました…霞、司令官にこう言ってみなさい、笑って応えてくれますから」

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと、司令官!」

 

「ん?霞かな、ごめん、今手が離せなくて……」

 

「目を見て言いなさいな!」

 

「え?」

 

「……」

 

「ごめんごめん、忙しいからってよくなかったね、うん、ごめんね、霞」

 

「っ……そうよ!それで良いのよ!」

 

「それで何か用?」

 

「…もう済んだから帰る!」

 

「…うーん?」

 

 

 

「ほら、うまく行ったでしょう?」

 

「……嫌われない?これ…」

 

「大丈夫です、親しい人や優しい人は、貴方のことを理解しようとしてくれます、霰や大潮も、帰ってきたときあなたが暗いと悲しい気持ちになります、だからまず何より貴方が元気であるべきですよ」

 

「…わかった!そうするわ!」

 

「良い返事ですね、まずは荒潮のところにでも行きましょうか』

 

「そうね!あと満潮姉さんにも…心配かけたし」

 

「良い子ですね、折角ですし第八駆逐隊に混ざって出撃してみますか」

 

「本当に!?嘘じゃない!?」

 

「ええ、本当です、心配ありませんよ」

 

 

 

「ということで司令官、出撃の許可をくださいますか」

 

「うーん、そうだね、哨戒は必要だし、お願いしても良い?」

 

「はい、お任せください!」

 

「朝潮、気合が入ってるのは良いけど無理はダメだからね」

 

「はい、大潮と霰が帰ってきたんです……絶対にもう失いたくありません」

 

「うん、それなら良いよ」

 

「…大潮は…えっと、今いる方の大潮はどうですか?」

 

「……空元気かな、満潮、大潮、霞はそれぞれ1人だった、僕にはどうして良いかわからなかった…ごめん」

 

「姉の勤めです、私と荒潮にお任せください」

 

「任せっきりで悪いから何か望むものを用意するよ」

 

「……そうですね、では霰と大潮が目を覚ましたら、7人で遊びに行きたいです、あと…大潮は起こるかもしれませんが、2人とも大潮ではわかりにくいですし別の呼び方も考えてください」

 

「遊びに行くのはわかったけど、呼び方は君たちで考えた方がいいんじゃない?」

 

「たしかに、そうかもしれませんね、それでは失礼します」

 

 

 

 

 

鎮守府近海

 

「うーん、艦隊に北上さんがいても不安なものは不安ねぇ…」

 

「荒潮、そんなにそわそわしていては敵艦を見落とすかもしれませんよ」

 

「…誰も発見したくないと思うんだけど」

 

「大潮もそう思います!」

 

「……おっかないものね…」

 

「おーし、この辺かなー、てんかーい」

 

「え?ああ、見晴らしはいいですね」

 

「ここに展開するんですか?」

 

「魚獲るからね」

 

「大潮!今日も!獲ります!!」

 

「…これ哨戒じゃないんですか?」

 

「いつだってうちは食料に困ってるのさ〜」

 

「……鎮守府の屋上に干物が干してある理由がわかってしまいました」

 

「まあ、その…肉魚も冷凍してそこそこあるんだけど…何があるのかわからないのよ、ほら、爆雷積んで来たでしょ?それ使って」

 

「1人2回までよ、それ以上は対潜用だから、使い方聞いてる?」

 

「……満潮も大潮も…逞しくなって…!」

 

「…私はちょっとショックかしらぁ〜、というか朝潮姉さん、そんなことで感動しちゃ嫌よ…」

 

「こっちのが水中に落とすと軽い爆発みたいなことが起きるの、全く私たちは危険じゃないレベルだから安心して」

 

「行っちゃえば石打ち漁の要領です!」

 

「今の時期ならそこそこ大物が狙えるわね……晩御飯…」

 

「これは姉として負けられませんね…!」

 

「負けていいのよ!?多分これは姉の威厳なんてかかってないのよ!?」

 

「晩御飯はかかってるけどねー……うん、うん?群れがいるよー」

 

「わかるんですか…?」

 

「修行の賜物さね」

 

「…まあ、北上さんだからできる事だし、あまり気にしないでいいわよ」

 

「やっぱりここは変なところよねぇ……」

 

「それっ!ドーン!」

 

「……こ、これは…大漁よ!急いで回収しないと!」

 

「満潮姉さん!こっちでかいわよ!」

 

「それは曳航して!」

 

「お、いいねぇ…群れを掠めたみたいだね」 

 

「なんで私達哨戒に来たのにお魚を網に入れてるのかしら」

 

「ここでやるべき仕事をやるまでですよ!荒潮!」

 

「……まあ、平和になって良かったのかしらぁ…嫌な思い出は忘れられそうねぇ…」

 

 

 

「おーい、駆逐たーい」

 

「北上さん、何か用ですか?」

 

「帰るよ、予定より早いけど、大急ぎで」

 

「何かあったの!?」

 

「襲撃…?」

 

「霰が目覚めたよ、行こう」

 

「マジですか!帰りましょー!!」

 

「はい!急ぎます!」

 

「隊列崩すなー、荒潮と大潮はもっと速力落とせーい」

 

「ようやく目覚めたのね…!」

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