元勇者提督 作:無し
本土
東京
提督 倉持海斗
「初めまして、曾我部隆二さん」
「どうもぉ、時間通りの来訪で助かります」
「早速本題なのですが、この子の腕を治したいんです」
「うちは外科でも内科でも無いんだけどなぁ、とりあえず飴ちゃん食べるかい?お嬢ちゃん」
「…遠慮します」
掴み所のない長身の幸薄顔
しかし危険な雰囲気があり、踏み込みづらい
「ま、いいや、俺がアンタのために時間とった理由は分かってんだろうな、勇者サマ?」
「……僕に出来ることが?」
「ああ、俺は試したいことがあるし、多分その子のためにもなる、それでいいんだろ?」
「わかりました、お願いします」
この年になって再びこの世界に足を踏み入れるなんてね
「それは、あんたのPCを精巧に再現したものだ、ただし女神と違って俺らにはドレインは扱えないからな、そこだけは我慢してくれ」
「理解しています、ところでなんでわざわざ曙にまでこれを?」
「必要な処置だ、もしあの仮説が正しいなら、嬢ちゃんの腕はこっちでなら動くさ」
「…ゲームの中で動いても困るんだけど」
「いんやぁ…そーいうことじゃないんだけどなぁ……」
「言いたいことは伝わってます、僕がやるべきことを教えてください」
「そうだな、とりあえず嬢ちゃんの方を解決しよう」
「ねぇ、なにが起きてんのこれ、周り見えないんだけど…」
「……ちょっと待ってな、えーと、こっちをこうして…色覚デバイスを変えてやるから」
「…見えたわ、なにこのおじさん」
「……俺なんだけど、おじさんかぁ…」
「へぇー…で、そっちが提督な訳?」
「曾我部さん、曙のPCは…」
「あー、すまんな、いいのがないからとりあえずプチグソに入れといたわ、可愛らしいペットでいいだろ」
「…ペット!?ふざけんな!」
「あーあー、威勢のいい嬢ちゃんだなぁ」
「もうさっさと用事終わらせなさいよ!」
「よし、じゃあやるか、そのキャラデータをあんたのパソコンに送る、バージョンアップデートをかけといてくれ」
「…なるほど、リアライズするわけですね」
「ああ、まあ、物は試しだけどな、そして嬢ちゃんの腕は……よし、動いてるな」
「え?うごいてんの?これ」
「大丈夫大丈夫、ネットに接続してる間だけは動くから」
「なにそれサイボーグにするつもり?!」
「お、いいなぁ、今なら10%ポイント還元だ」
「全然お得じゃない!」
「とりあえず原理を」
「まあ、簡単に言えば暗示だよ、腕がないという暗示が強く染み付いたから、どうしても動かせないんだよ」
「じゃあ動くって言えば動くんじゃないの?」
「脳が信号を拒否してるんだ、そんな簡単には動かない、だからネットを介して電気信号を発する、ネットからの信号はちゃんと受け取ってくれるからな、すると動く、これが簡単な原理だ」
「……わけわからないわよ」
「ま、一時期教えてた俺すらわからないからねぇ…仕方ねぇさ」
「とりあえずこれでやる事は終わりですか?」
「ああ、アンタの方もしっかり動いててよかったよ、これなら仕事って言えるからな、いやー、よかったよかった」
「これからどうすれば?」
「女神様に頼るのが早いんじゃねぇの?会えるとしたら今はアンタだけだぜ、勇者サマ」
「わかりました、また来ます」
「じゃあ、ログアウトだ」
「……ダメな、やっぱり動かない…」
「気にすんな嬢ちゃん、お前さんのパパがすーぐなおしてくれっから」
「パッ!?誰がパパよ!」
「曾我部さん、そんなに老けて見えますかね…」
「いやぁ?揶揄い甲斐があるなぁって思っただけさ、さて、また連絡してくれよな」
「はい、それではまた」
「あんなにしょぼくなってんじゃ、少年が見たらガッカリするぜ、勇者サマ」
「この移動、意味があったの?」
「あるさ、大丈夫」
「とてもそうは思えないけど」
「……大丈夫だから…」
「…なに暗い顔してんのよ」
「まだ、黄昏なんだなって思ってね…」
「そうね、今から夜になるところね、それが何?」
「……夜明け前が最も暗い、今からもっと暗くなる…?いや、そうはいかない…大丈夫だから……」
離島鎮守府
「えらく早いお帰りでしたね、まさか日帰りとは」
「のんびりしてられないんだ、明石、パソコンのデータを確認して、届いてるデータがあればインストールしておいて、バージョンもアップデートしてくれて構わないから」
「わ、わかりましたけど…」
「鳳翔さんは?」
「間宮さんと食堂に…」
「……そう言えば食事がまだだった…ごめん曙、気がつかなくて」
「別にいいわよ、食欲ないし」
「じゃあ部屋で休んでて、消化に良いものを届けてもらうから」
「アンタはどうすんのよ」
「……言われたことをやるだけさ、正しいことを」
「変わらずしばらくは防衛に専念します、敵が攻めてくる可能性は低いですが何が起こるかわかりません、主に機銃などを優先して、追い返すように戦ってください」
「わかりました、ところで曙ちゃんは…」
「まだです、でもおそらく解決はできます、時間がかかる事は間違いないですけど」
「そうですか、お食事は?食べてらっしゃいましたか?」
「いえ、取る余裕はなくて、あ、曙に消化の良いものを持って行ってもらえませんか?」
「提督は食べないんですか?」
「時間がなくて、今度ゆっくりいただきます」
「あ……そうですか…」
「アウラさえ、見つかれば全てが変わるはずだ」
「少なくとも腕輪の加護を…あれがあればもう犠牲は出ない…」
慣れた手つきでパソコンを開き、BBSをみる
白い幽霊 女の子 覚えのあるワードを探す
一つのスレが目に止まる
『勇者へ
お前がやろうとしてる事は破滅をもたらす
半存在を産むに他ならない
覚悟をして、私に会いに来い
古き友より』
「わかってるけど…今、ここで引き下がるわけにはいかないんだ」
「やっぱり、ヘルバだったんだね」
「色々な名を使ったがな、お前と話すときはこれと決めている」
「それで、何の用?」
「クビアをこちらに持ってくる気か?いや、現実にクビアを生むつもりか?」
「…そうなる事は理解しているよ」
「お前らしくもないな」
「やらなきゃみんなやられる、そして僕には助ける力がある、かもしれない」
「だからやるのか?」
「うん、やるよ」
「…変わりがないようで何よりだ」
「ブラックボックスは?」
「相変わらずお前の中にある」
「やっぱりまだいたんだね、アウラ…」
「リアライズについてだが、生半可なものではないぞ」
「アウラがいれば解決はするよ、何度もリアルに送られたし…」
「異世界の旅か、馬鹿馬鹿しい冒険譚と馬鹿にするのは今日までだな」
「そうしておいて(笑)」
「私も力になろう」
「いつだって頼りにしてるよ」
「あの石頭に連絡を取れ、そうすればこちらに繋がる」
「…え?…もしかして…」
「ああ、ハッキングしておいた」
「…そっちか、良かった」
「何を想像したんだ?ああ、あいつから届いた年賀状か?子供が写っていたな、可愛らしい子だった、嫁も美しかった」
「…やっぱり?」
「…さあな」
「アウラ、応えて欲しい、君の力が必要なんだ」
………
「お願いだから、アウラ…」
数刻前
東京
下北沢
「うん、そうだね、問題ないと思うよ」
「でも最近は激化してるって話でしょ?大丈夫かなぁ」
「国防軍はそのためにあるのではないのですか?」
「案外頼りにならないものよ?それに実はこんなにちっちゃい子だったりして」
写真を見せる
「へぇー、可愛い子だね、攫ったの?」
「…冗談がすぎると思わないの?」
「いや、アンタ年下に弱いじゃん」
「なんですとー!?」
「それあたしのセリフだっちゅーに!」
「いけませんいけません、こんなところで喧嘩なんて…」
「ところで、ヘルバからのメールは見たんだよね」
「…うん、だから、アウラを起こしに行く」
「ちゃんと目を覚まさせてやんなさいよ?」
「大丈夫、あの子はみんなが思ってるよりしっかりしてるから」
「やっぱりここに、たどり着くんだね」
「…君か…」
「久しぶりだね、カイト」
「アウラを起こしに来てくれたの?司」
「それは、いつだって僕の役目だから…」
「君とのリンクは切れたと思ってたけど」
「それだけが全てじゃない、それは知ってる筈だよ」
「そうかもね、ところで、どうやって起こすの?」
「今はまだ繭なんだ、すぐに、覚醒する、けどそれは時間と、それ以上のものでしか…」
「君の時のように」
「そう、だからそのリンクした子を見つけなきゃね」
「モルガナがやったのかな」
「多分違う、アウラが決めたんだと思う、だから…今一番君の心に近い子が、その役割を担ってる筈だよ」
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「司令官…」
「司令官、必ず、変えて見せますから、全部」
「…僕の心に一番近い…誰なんだろう」
間違った覚醒だけは塞がなきゃいけない、そのためにも早急に見つけなきゃいけない
「でも誰が…」
「私が全部、壊して見せます」