元勇者提督 作:無し
呉鎮守府
軽巡洋艦 川内
「………だめ、か」
「ああ、お前のデータを見るに難しいってよ」
「……改二にさえなれれば、何か変わるとおもった、でも……」
「無理する事はねぇよ」
「……あれから何日経った?」
「もう、6日になるな」
「私は神通にも、那珂にも負けない、練度も70まで来たよ」
「……そうだな」
「…それでも、届かなかった…時間、か」
「……行くか?」
「うん、提督も?」
「………ああ、呼ばれてる気がする」
『来てくれて嬉しい』
「……春雨」
『あと30分で深海棲艦の侵攻が始まる、次は四国全土をもらうよ』
「……お前の狙いはなんだ?お前自身はそんなことをしても嬉しくないだろ」
『…さあ、私にもわからない………ふ…ふふ…!』
「…その目…そして周りに出てる泡……」
「AIDA…あの時より強いって言うの…!?」
『そウ…デモコレヲヤルト…危ないカラ……暴走させなかっタだケ…!』
「……川内、本気らしいぞ」
「……わかってるよ…提督、離れてなよ」
「……せっかくだ、その岩に乗らせてもらうか、駆逐艦、春雨の墓標に」
『中々、洒落タ事してくれルネー…』
「……よし、此処からなら良く見える、深海棲艦も、俺らの仲間も」
『…なァんダ……もう、戦争ノ用意ハ済んでタ?』
「思う存分やろうぜ」
「…勿論…!」
『行クよ…川内…!』
駆逐艦 曙
「最終確認です!全員逃げ場を潰して追い込むんですよ!逆にこっちにきたら分断されないように逃げて!」
「了解!」
「我々連合艦隊、総勢18名でできるだけ敵を瀬戸内海においやります!」
『こちら第三艦隊旗艦明石、空母艦載機により敵艦を多数補足、ただし超長距離のため攻撃は不可能、貴艦からマルサンマルの方位』
「こちら連合艦隊旗艦曙了解、龍驤さん、翔鶴さん、艦載機を」
「はい!」
「行くでぇ!お仕事お仕事!」
「此方曙、艦載機を発艦、位置追跡は?」
『此方明石、順調です、データ兵器も、超長距離砲も準備はできています』
「艦載機敵艦直上!!」
「敵艦直上了解、此方曙、攻撃要請」
『要請了解しました、扶桑さん、押さえててください!第一射用意!』
「光った…!」
「敵艦被害軽微!着弾点が西にズレとる…!やけどAIDAに効いとるらしいわ!範囲内の敵消滅しとるで!」
「曙より、着弾点が正確ではない模様、マーカーを落としてもらいます、マーカー投下!」
「投下!」
『マーカー確認…誤差修正完了!撃ちます!』
「っしゃあ!!ええでええで!大戦果や!」
「敵艦隊に大打撃、間髪入れずに攻め込みます!」
『了解!扶桑さん!装備を…!よし!接近して超長距離曲射砲に!』
「…実験会場じゃないんですからちゃんと戦果をあげてくださいね…!」
「敵艦載機来ます!方位サンマルマル!」
「第七駆逐隊展開!対空射撃用意!」
「第七駆逐隊展開完了!」
「第八駆逐隊!広がってソナーで潜水艦を警戒!」
『こちらイムヤ!敵潜水艦発見!そちらからすると方位ヒトナナロク!』
「第八駆逐隊対潜開始!」
「敵艦載機目視!」
「第七駆逐隊撃ち方用意…始め!」
佐世保鎮守府
「四国のすぐそばで大規模な戦闘が始まった!我々は前回同様の地点に展開、入り込んできた敵を殲滅する!全員持てる限りの弾薬を持て!力の限り敵を殲滅せよ!」
「「「「了解!」」」
軽巡洋艦 川内
「…向こうも、始まっちまったみたいだな」
『ヤラせハ…シナいヨ…!』
「当たれ…当たれぇぇ…!」
激しく撃ち合う、向こうのほうが姿勢が低い上にスピードも早く滑るような移動
残念ながら不利なスタートを切ってしまった
『堕ちロ…堕チロ!!』
すぐそばを砲弾が通り抜ける
風圧で皮膚が切り裂かれる
「…今日の私は…今までで一番強い…!」
『最高だネ!!』
腰の艤装から魚雷を抜き取り投げつける
『水に落トサず直接…!?』
「くらえっ!!」
さらに砲撃
大爆発が巻き起こる
『ッッ!』
「まだ終わりじゃない!!これは味わった事ある!?」
距離を詰め、ゼロ距離からの砲撃
『イタイ…じャナイカ……!』
雰囲気が変わった…
来る!
『少シ見せテアゲル…!』
AIDAがまるで何かのマークのように体にまとわりつく
「紋様か…!」
「…何を…」
『ココカらハ…私ノ世界…スケィス!』
岩人形とAIDAが混ざり合ったソレが姿を表す
「2対1…!」
かなり苦しい事になった…
第二艦隊
重雷装巡洋艦 北上
「阿武隈、アオボノ、摩耶、斬り込むよー」
「準備はできてる!」
「私的にはOKです!」
「…アタシは連合艦隊に入れてくれよ…クソが…」
「はいはい、突っ込む準備いいね?」
「行けるわ!」
「5カウント後に魚雷上がるから5…4…3…2…BOOM‼︎」
「っしやぁぁぁぁ!撃ちまくりだぜ!」
「北上さん!それは私がやります!」
「いいねぇ!よく当ててるねぇ!」
「ったく…腕輪の力なしじゃ私結構無力なもんね…駆逐艦らしく対潜に徹するわ!」
「偉い偉い、真下いるから頼んだよ」
「先に言いなさいよ!!沈みなさい!」
「くそ!上か!対空射撃は任せろ!」
私達の仕事は敵本隊をサイドから叩く事
私達の目的は…長門を見つける事
私達のやりたい事は…長門を助ける事
提督の意に反することをするのは、何度目だろうか
今日も笑って許して欲しい、いやきっと許してくれる、間違いなく
「敵戦艦にそんな感じのやついる!?」
「……居ない!此処のやつは全員やるよ!!」
第三艦隊
工作艦 明石
『第二艦隊が暴れてるから誤射に気をつけて!』
「あー、狙いがつけられない…もっと別の射角から狙えませんか?」
「無理ですね、此処でこれ以上動けば気取られる」
「こちら赤城、これ以上は支援できません、連合艦隊に合流しますか?」
『…いや、そのまま待機、撃ち漏らしをお願いします』
「了解」
「敵本体を離れた部隊を発見しました」
「射撃用意!」
「射撃用意!撃ちます!」
呉鎮守府
「提督はどこに!?」
「川内姉さんもいません…!」
「まさか駆け落ちかクマ…っぁぁぁ!?痛い痛い!木曾やめクマ!」
「いいから全体出撃用意!」
『秘書官の大井です、提督は現場からの指揮のために一足先に戦場に赴いたと言う手紙を発見しました』
「………うわぁ…」
「嫌な予感がニャンニャンニャ」
「那珂ちゃん、急ぎますよ!」
「那珂ちゃん現場入りまーす!」
『無事に連れ帰った場合、望み通りの褒賞を用意します、ただし間に合わなければ…全員覚悟する事……』
「……俺らは無関係なはずなんだがなぁ!?」
「悪いことしてなクマ!」
『全員出撃しなさい、今すぐに!』
「ひぃぃぃぃ!いくクマ!早く!」
「今の大井は北上すらも殺すニャ…」
提督 三崎亮
「…なんか悪寒がしたな」
『沈め…ッ!沈メ!』
「ズルいんじゃない!?そっちだけそんなの使って…!ああもう!!てー!!」
川内はスケィスの腕を織り交ぜた攻撃に防戦一方といなりかけていた、それでも意地で攻撃はしているが、いつ燃料と弾薬が切れるかわからない
『モラッた!』
「そうはいかない!!絶対に…!」
水面を飛び跳ねる、不規則な動きを繰り返すことで砲撃をかわし続けている
大きく飛沫をあげて魚雷の発射のカモフラージュも併せている
『クッ…!イつノ間ニ!』
大きく体を回し、造られた隙
「今!!」
「待て川内!行くな!」
「……え…」
『サヨナら』
駆逐棲姫の体が向き直ると同時に主砲から砲弾が発射され
川内を捉えてしまった
「…クソッ…!!」
川内は黒煙の中に沈むしかなかった
連合艦隊
駆逐艦 曙
「全体そのまま!陣形を崩さず攻め続けて!」
「敵がどんどん流れていきますけどいいんですか!?」
「それが目的!……上手くいって…!」
「曙さん!危ない!」
「大丈夫!そのまま撃ち続けて!」
消耗が大きい
対空も砲戦も、1発で確実に仕留められるならまだしも、弾幕を張る必要がある
「こんなのあとどれだけ継戦できるか……」
「やれる限りやる!正面の敵が突っ込んでくるわよ!」
「高雄!鳥海!合わせてー!」
敵は予定通り、待ち伏せのポイントへと流れ込んでいく
私達の仕事は成功…か…
そして……大本営の狙いも恐らく…
ここで私たちが退けば、提督は殺される、命令違反を理由として
そして、私たちが退かなければ…
『イムヤより連合艦隊へ!後方より潜水艦隊が接近!潜水艦隊が接近!』
来てしまった、敵の第二陣…!
「第八駆逐隊へ!後方へ展開して対潜開始!」
「霞!山雲!霰!左右警戒を解かずにそのまま私たちに合流してください!」
『くぅっ…!こっちはもう無理!退くわ!』
「ご苦労様でした!第三艦隊と合流を急いで!」
『了解!』
「第三艦隊!イムヤさんをドッグへ!」
『イムヤさん浮上できせんか!?見えません!』
『追われてて…!ぐっ……かわしきれない…!』
向こうはどうなってる…?
位置は?どこに誰がいて、どの距離だ?
わからない、わからないから対処ができない
「北上さん!北上さんとの距離は!?」
『無理!第二艦隊は一番遠い!』
どうすればいい?考えて
もっと、もっと……
「ソナーに反応あり!」
通り過ぎる…なら
「進路変更を!イムヤさんこっちに合流して!」
『わ、わかった!』
「第八駆逐隊!前進してイムヤさんが通り過ぎたら対潜開始!」
「敵魚雷来ます!」
「機銃斉射!近づけないで!」
「イムヤ合流しました!」
「爆雷投下!!」
「ボロボロじゃない!よくここまで戻れたわね……!」
「金剛さん、イムヤさんを曳航してください!」
「ワターシが抜けて大丈夫デスカー!?」
「元々曳航要員です!早く!」
「聞きたくなかったデース!!曙のDemon!!」
「早く行って!!対空が疎かになってる!朧!」
「わかってる!!」
重雷装巡洋艦 大井
「一体も侵入させないで!!」
「わかってるが……!」
「数が多いくらいで弱音を言うなクマ!!」
「由良さん!古鷹さん!防衛は任せます!」
「貴方はどうするんですか…!?」
「金剛型の2人を借りていきます!敵を撃滅します!」
「り、了解!」
「大井!焦るなクマ!」
「…焦ってません!」
「連れて行くなら神通と那珂を連れて行くクマ!金剛型も高速といえど、あの2人の動きには劣る、あいつらを連れて行くクマ!」
「……わかりました!ちゃんと守っててくださいね!」
「ここは任せるニャ」
「聞こえたな!2人も行ってこい!」
「お任せください!」
「那珂ちゃん行っきまーす!!」
軽巡洋艦 川内
完全に沈んだ
艤装は全てボロボロ
視界には海面の裏側
ここが海の中…
深く、暗い世界
冷たい、あの世…
果たして、沈んで良いのか…
それも考える気力がない
ああ、あの光は…あの黄昏の夕焼けに海が赤く照らされる光は……
夜の訪れ……か
提督 三崎亮
「……チッ…考えが甘かったか…!」
『ミタイダネぇ?川内、死ンジャっタヨ?』
不意に体を引っ張られる感覚がある
「…?…なんだ…この感じ…」
何かが自分の中で渦巻くような、何かに吸い出されるような
そうか…そう言うことなら、くれてやる
『次ハ、オマエダ…!』
「おい…ちゃんと川内を倒してからにするんだな…!」
『……何…?オカシクナッタカ!?』
「……そうだ…そのまま…!」
『……ナンダ…こノ…感ジハ……コれハ…!』
「いいぜ…!行ってこいよ!」
軽巡洋艦 川内
「……」
私の中に何かが渦巻く
薄暗く、孤独な深海に何かの気配がする
背中にまとわりつく彼女たちの手とは違う
こんな暗闇に誰が居るのだろう
その気配は何かを探っている
いや、私を探している
「……来い…」
まだ声は届かない
「……こっちに…」
決して、届くことはない…
「…来い…!」
はずだった
[ミ・ツ・ケ・タ……!!!!]
薄暗い世界に、赤い三つ目の巨人が私を捕まえに来た
両の手で包み、そして、私を海面へと引き上げる
死神はまだ私を死なせてくれないらしい
背中に張り付いた手を全て払い除け、私は浮上する
「来た…」
身体中の傷が、艤装が、全てが何かに置き換わる感覚
全てが作り替えられる感覚
「来た…来た…」
海面が見える、まるでその先は別世界
全てを突き破る勢いのまま私は海面に大穴を開ける
「来たぁぁぁぁーーーーーッ!!!」
『ッ!?馬鹿ナ!沈メタハズだ!!』
「だからちゃんと倒せって言っただろ」
『ソンナ…ソレハ…ソレハナンダ!?』
「……川内…改二…ってところかな…!」
神通や那珂とは違う、全身が黒に金の装飾
私だけの改二……
「…そして…コレも見せてあげる…此処に…」
艤装の周りに赤い紋様が浮かび上がる
春雨のそれより、遥かに赤く、濃く
『…ウソダ…マサカソンナ…!』
「来て!スケェェェィス!!」
「…これが…川内のスケィス…」
独特なフォルムの死神、いや、忍びか…
どちらとも言い難いその立ち振る舞い
「……春雨…覚悟は良いね…!」
『クソッ…!クソックソッ!!ヤッテヤル!!」
お互いのスケィスが武器をぶつける
スピードは充分だがパワーは互角か
「…春雨!!」
『ナン…ダ…!』
「春雨、今此処で全力で倒す!だから…だから!戻ったら!ウチに帰ろう!!」
『ソンナモノイラナイ!!私達ハ…世界ヲ…!』
「滅ぼす?そんな事はさせない…!あの時の話、春雨の本心だと思ってる!!春雨が世界を滅ぼしたいのかもしれない!もしかしたら違うかもしれない……!でもそんな事はどっちでも良い!春雨!私達は生きるんだ!」
『生キル…?』
「あの場所で生まれたことを私は呪った!!」
大きく、振り抜く、一撃、届いた
「私は何度も、味方を、仲間を……家族を失った!!春雨がなんであんな事をしたのかは知らない!だけど…今!再びチャンスがある今!春雨は…春雨は…生きなきゃいけないんだ!みんなの分も」
何度も、何度も連続で斬りつける
『私ハ今ヲ生キテイル!!私ハ私トシテ!生キテイル!』
「違う!力に全てを投げ出して…AIDAに呑まれた!それは春雨として生きていない…!」
岩人形のスケィスを、掴み、片手で締め上げる
「だから私は………駆逐棲姫!!お前を殺すしかない…!」
右手にデータでできた砲ができあがり、そこからエネルギー弾が放たれる
「……さようなら、駆逐棲姫」
着弾と同時に砲は形を変え、データを吸引し、スケィスごとAIDAを抜き取った
『……月ガ……月…が…綺麗」
「…おかえり、春雨」
スケィスを、AIDAをも抜き取られた春雨は
駆逐艦春雨となっていた
「……殺すんじゃ、なかったの…?」
「なんで殺さなきゃいけないの、悪い部分だけ、だよ、殺したのは」
「…甘いよ、川内…」
「立てる?」
「…うん…その改装、かっこいいね」
「ありがと、さ…提督!」
「そのうち迎えが来るだろ、お前はどうする?」
「…暴れたりないかなぁ?」
「…好きにしろ」
「やったぁぁぁ!待ちに待った夜戦だぁー!!」
「……うるっせ……」
今日くらいは、今日だけは許して欲しい
今の私は、誰にも負けないから
連合艦隊
駆逐艦 曙
「被害報告!」
「小破4!中破10!大破2!」
「燃料と弾薬は!」
「燃料はまだ余裕がありますが弾薬が僅か!魚雷は残りないです!」
「………」
退くしかない…
今は敵の攻撃が止んでる…
今なら逃げられる
『離島鎮守府連合艦隊へ告ぐ、こちら大本営作戦部』
「大本営!?」
「何、この通信どう言う事!?」
「………とりあえず、聞きましょう」
朝潮達の顔が曇った…つまり、そう言う事か
『君達の撤退は許されない、夜戦へと突入せよ』
通信が切れた
今の状態で夜戦に出ろ、と…?
これが大本営の指揮か…!
こんなものが離島鎮守府の真実か…!
「……此処で帰れば、司令官は受け入れてくれる、でしょう…」
「…おそらく、刑を受けるのは提督です」
みんなもう限界だ
私の仕事は何?私には何ができる?
できるだけ、誰も死なせない事
「第二艦隊第三艦隊にすぐ連絡を!」
「試みてます!」
「龍驤さん翔鶴さん千代田さん!ごめんなさい…前に出て飛行甲板を盾に…!」
「任せとけ…誰もお前を責めたりせんわ」
「そうそう、特に私はね」
「…もし沈んでも、私は帰って来れましたから」
なんでこんなに…心の痛む指示を私が出さなきゃいけないの…?
「第八駆逐隊!とにかく対潜の用意!爆雷の残りは!?」
「ありません…全部昼戦で使い切ってしまいました!」
「……どうしよう…」
おそらく潜水艦はまだいる…昼のように雷跡を撃ちまくることもできない
「第七駆逐隊!残弾は!?」
「……わずか…」
「…全員、こちらから攻撃は仕掛けません、必要のない砲撃は位置晒すことになります…照明弾は?」
「3発だけ…明石さんが持たせてくれました」
「…第三艦隊と通信できました!」
「装備を聞いて!第二艦隊は!?」
「第二艦隊残弾あるそうです!旗艦北上さん除き全員無傷!北上さんは阿武隈さんを庇って被弾し、一時撤退を余儀なくされたと…!」
「鎮守府に連絡して北上にバケツ被らせて!第二艦隊の阿武隈さんと連携して最低限の攻撃で敵を沈める方法をとります!」
「第三艦隊!補給用の弾薬を持ってるそうです!!」
「…どれくらい…?」
「戦艦2名分だと…」
「駆逐艦なら全員分には…なるかしら…」
「諦めるには、まだ早いですね…!」
「大本営なんかの思い通りに行くわけない…私たちの強さ、見せてやりましょう!!」
「「「「「「おーー!!!」」」」」」
重雷装巡洋艦 大井
「居た!神通さん!」
「はい!提督!…と……その方は…?」
「…春雨です」
「川内が置いていった」
「姉さんは!?」
「…夜戦に大喜びして出ていっちまったよ」
「…え?」
「神通、川内はもう、強いぞ」
「…そうですか…!」
「提督、付近の敵は沈めた、急いで戻ろう」
「那珂か…そうだな、大井が殺意剥き出しにしてなきゃさっさと降りたいんだが」
「…酸素魚雷、くらいたいんですよね?」
「…しばらく此処にいるわ」
「どうでも良いから早く降りてきませんか?」
「…わかった…とりあえず、神通!那珂!川内は太平洋側に向かった!追従して敵を殲滅して来い!」
「「了解!」」
「大井!俺と春雨を連れて戻れるか!?」
「当たり前よ!なんのために此処まで来たと…!」
「じゃ、急ぐぞ!指示を出す!」
離島鎮守府
提督 倉持海斗
「………はぁ…」
なんでこうなったのだろう
大本営の狙いは…結局なんなんだ?
眼前にある4つの死体はどうしたらいいんだろう
「提督ぅ〜、諦めなよ…死んだものは死んだんだよ」
「…北上、この刺客は、何が目的だったのかも分かってないんだよ」
「ごめんね、ついついやっちゃった」
たまたま、帰ってきた北上が僕の所に報告に来たタイミングで…この人たちは現れた
運が悪く、銃を構えた時点で北上の手によって、殺されてしまった
なぜ自分が狙われるのか、と言われれば思い当たる節はあるにはあるのだが
執務室の電話のベルが鳴る
『すまんカイト!無事か!?』
「…うん」
『ならよかった!こっちで2人捕まえてる、後で来てくれ、口は割らせておくから!』
「ありがとう…」
どうやら少なくとも6人で僕を殺しに来たらしい
「提督、しばらく動かない方がいいかもねぇ」
「………北上、僕にはわからないよ」
「え?」
「…何故こんなことになったのか」
本当にわからなかった
覚悟はしたはずなのに、人の死はこんなにも心を揺さぶるのか
「……私にもわかんないかなぁ…でも、提督、怯えなくて良いよ、私が守ってあげるから」
「怯えてなんかないさ…いや…怯えるべきなんだろう……」
「…提督…?」
「……ごめん、北上…」
これから起こることへの謝罪
君達を裏切ることへの謝罪
「………」
「…僕は、彼らの気持ちがわからない、同じ人間なのに…」
どんな気持ちで僕を殺そうとしたのか
躊躇わなかったのか
「……提督…コイツらは外道だよ、どんな形をしてても、どんな理由があっても、人を殺そうとした時点で」
背後から、包むように抱きついてくれた
安心させるために…落ち着かせるために
「…北上、離れて」
それは…僕には勿体無い
僕には…その温もりはあっちゃいけない
「なんで…私が人を殺したから…?私に触れられたくないって言うなら…離れるけど」
「………この人たちが外道なら…僕は……なんなんだろう…」
「…提督…?」
「僕は…仲間を手にかけようとしてる」
「ふーん、私も?」
「…うん」
「こっち向いて」
言いなりになる
北上は僕の手を掴み、自分の首へとあてる
「…ほら、締め上げて、ここで殺してみて」
「……え…?」
「ほら、殺すんでしょ、あたし達を」
躊躇ってる
できない…僕に、この手に力を込めることは…できない
「何が足りないの?提督、何が足りないと思う?勇気?違う、そんなものは勇気じゃない…コイツらにはなかった、提督、コイツらには心がなかったの、提督は心があるから私が殺せない…わかる!?」
「あっちゃダメなんだ…僕に……心なんて…!」
「なんでダメなの?今までの時間を全部否定したい?違うよね、提督…わかるでしょ?みんな提督のこと大好きだよ?提督は私たちが嫌い?」
「……違うんだ…この世界は…近いうちに滅びる…だから…世界を作り直さなきゃいけない…!」
「……それは誰の為?」
「だれ…の…?」
わからなかった
自分はそうあるべきと言う考えの元に
自分はそうするべきと言う己の声のままに世界を再誕させようとした僕は…
果たして誰のために戦っているのだろう
「提督、自分のために生きよう?お願いだからさ」
「……北上…」
「提督はもう世界を救った勇者なんでしょ?次の世界を救う勇者に全部任せようよ」
「………」
僕は、任せてもいいのか?
セグメントとなったアウラ
まだ出てくる八相
この戦いを投げ出しはしない
だけどいずれ滅びるこの世界を、誰かに任せるのか?
「……そんなのダメだ…」
違う、ダメなんだ
世界が滅びたら、守りたいものも、大事な仲間も失うんだ
「絶対にダメなんだ…!」
失いたく無いんだ…
僕は、仲間を守るために戦うんだ
「…提督、目を見て、言って?誰のために戦うの?」
「キミや…僕の仲間のために…」
「わかった、それなら…大丈夫」