元勇者提督 作:無し
呉鎮守府
提督 三崎亮
「…お前は確か…」
「はい、軽巡大淀です」
「…そう言う意味じゃない」
「…私は横須賀鎮守府、火野拓海提督の秘書艦です」
「やっぱりか…何をしにきた」
「…共に大本営を打ち倒していただきたいのです」
「………誤報じゃねぇんだな」
「はい、間違いようもなく、提督は殺されました」
「…そうか」
「それも大本営の手によって」
「………そうか」
「どうですか?受け入れていただけますでしょうか」
「……」
再び復讐のために、俺は戦っても良いのか?
次は自身の手で戦うわけではない…戦うのは艦娘、傷つくのは仲間だ
「そうですか、わかりました」
「おい、俺はまだ…」
「………私には未来が視えます」
「……紋様…!」
最後まで聞く必要はなかった、こいつは碑文使いに成っている
「そういう事です、といっても…少し先までですけど」
こちらに向き直ってそういう
「最後に私はこう言われました…これからは碑文の奪い合いになると」
「奪い合いだと?」
「深海棲艦は既に第二相…惑乱の蜃気楼イニス、第五相…策謀家ゴレ、第六相…誘惑の恋人マハこの三体を手にしています」
「…だがスケィスは俺の手中にある、フィドヘルもお前が持っている」
「新旧の八相はわかたれています、あなたのスケィスと、過去のスケィスが戦ったように、古い碑文は全てあちら側にある」
「………戦力は向こうが上だと?」
「そうなります、勝つつもりなら全力で碑文を集めてください」
どこか腑に落ちないが、致し方ない
「それと、近いうちに葬儀があるそうです」
「葬儀だと?」
「………何事もなく、終わってほしいものですね」
宿毛湾泊地
提督 倉持海斗
「…ぅ……」
「お、起きた起きた、丁度よかった」
「……北上?」
「大本営の人が来てるよ、応対できる?」
「……わかった」
「ここに暁をはじめとした駆逐艦が来ているのではないか?」
いきなり何を言い出すんだと思えば
何故そんなことを聞くのかすらわからない
「いいえ、そんな話は聞いていません」
「この泊地を改めても構わないか」
「どうぞ、と言っても…我々もつい先程到着したばかりですが」
そういえばついさっき目が覚めたところだからか、まだ体が重い
なんで寝てたんだったかな
「この部屋は?」
「えーと……どうやら保管庫らしいです」
「保管庫か…ん?鍵がかかっているな…鍵は?」
「預かってません」
でも確か…もぬけの殻だって聞いてたけど
「提督!提督!!」
「摩耶?だ、どうしたの、そんなに慌てて」
「暁達だ!暁達が!」
それを聞くや否や大本営の職員は慌てて外へと走っていった
ああ、この人たちが探している駆逐艦とはあの子たちだったのか
僕も急いで外に出る
みんなが何かを囲んでいた、啜り泣いている子も居た
「…提督、これ」
「…艤装…?…まさか…」
「暁ちゃん、響ちゃん、雷ちゃん…3人分の艤装です」
「…この破損状況、空いた穴などから、戦艦クラスの敵と会敵、沈んだものと…」
「………そんな…馬鹿な…拓海は何を…」
そこまで言って思い出す、彼は死んだのだ、そしてこの子達も…同様に
「…………嘘だ…嘘だ…」
ただ目の前が真っ暗になってしまった
隣で事務的な会話が聞こえる、どうやら大本営の職員はこの話を記録しているらしい
なんでだ?なんでこんな事になった?
「提督、大本営の人帰ったよ」
「…もう日が沈みかけてる、流石にもう良いでしょ」
「提督ー?」
彼女らはケロッとした様子で声をかけてくる
僕はなんと返せば良いのだろうか
「…ああ、そんなにショックだった?」
「当たり前だよ…4人も大切な仲間を…」
「………ごめん、提督、3人は無事…暁、雷、響の3人は無事だよ」
「え?」
「大本営が追ってることは知ってたからね、資材保管庫に詰め込んで、鍵かけた」
「でもボロボロでしたから、今はドックに移動してもらってます」
「………じゃあ」
「生きてるよ」
ああ、本当に良かった
「…提督、なんで泣けるの?私達人間じゃないんだよ?」
「死んでも代わりが効くのになんで泣けるんだ…?」
そう訊く彼女達の顔色は暗かった
不安や恐れが感じられる程に
「代わりなんて居ない、それは君たちもよく分かってるはずだよ」
「……提督、例えば、まだ目を覚まさない青葉は?」
明石の暴走の際に、背中を焼かれた青葉は未だに目を覚ましていない
だからなんだというのだろう
「…解体しようとは思わないの?」
この子達は何を言っているんだろう、本当に意味がわからない
「………仲間だよ…?」
「わかってる、私たちが気にしてるのはそんな事じゃなくて…」
「…青葉はいつか目を覚ます、それじゃダメなの?」
「…提督、私たちが言いたいのはそういうことじゃないんです」
「………これ、横須賀の提督からの手紙…私たちみんな見ちゃったけど…」
「拓海から…?」
おそらく彼が最後に綴ったであろう手紙
彼は最後にどんなことを思い、どんな言葉を残したのか
まず目に入るのは、謝罪の言葉だった
僕は、自分のほしい言葉を探してしまった
そして見つけた
『どうか、救ってやってほしい』
「やっぱりそうだ……君は優しいんだ…」
「…提督?」
「……今声かけちゃダメだよ」
「…いや、もう読み終わった、大丈夫だよ」
「……私たちがAI、人工知能かもしれない…それを聞いて何も思わないの?」
「え…?…この手紙を読んでどう思った?」
「どうって…いや、衝撃ばっかだけど…」
「……聞き方が悪かったかな…この手紙を書いた火野拓海は、艦娘についてどう思ってると思う?」
「…大切にしてると思います」
「そうだね…少なくとも、私たちを軽んじたりしてない人なのはよくわかるよ」
「死の間際まで…私たちを大事にしてるんだなっていうのはわかりました」
「拓海は………いや、火野提督は、一人でこれを調べ、知り、その上でこの手紙を残している…君達がAIかもしれない、だから僕は君たちと接する態度を変えると思う?」
「………みんな不安なんだよ」
「だとしたら、間違ってる、それに僕はAIの友達もいたしね」
「へぇ…AIと友達になれるの?」
「うん、まあ…なんにせよ、AIかもしれないとか、そんな事どうでも良いんだよ、君たちが大事な仲間であることは間違い無いんだから」
「……よかったです、そう言ってくれて」
「本当にねー」
「…ごめんね、不安にさせて」
「提督は何も悪いことしてないじゃないですか」
「こういう時謝るの悪い癖だよ〜」
「そうかもね」
The・World
フリューゲル
「なぁ、曽我部はん、態々こっちで会う必要あるんか?」
「流石にリアルで会うのはリスキーですからねぇ…特に、このお方が」
「うるっせえな、リュージ、お前は私に逆らわないって話だろ?」
「あー、はいはい、ウーラニア様の言う通りってことで」
「…で?これからどうするんや?」
「徳岡純一郎に、協力を求めます」
「国の軍人やろ?手を貸してくれるんかね」
「……それはアメリカの力にかかってます」
「だってよ、クサレ」
「クサメやねんけどなぁ…はぁ…アタリキッツイなぁ…」
「頼むから仲良くしてくれませんかねぇ…?」
「ん?誰だよオープンチャットで騒いでる輩は…こっちまで流れてくるじゃねぇか」
「……文面が子供っぽいな、気づいてないのかもしれない」
「ああ、あの子らやね…ほんまに子供っぽいキャラやな…」
『あーもー!最近針の筵で辛いにゃしぃ!』
『しょうがないのは分かってるんだけど…』
『白露ちゃん…もう諦めたほうがいい気がするにゃ』
『今止めるのはいっちばん無駄だから嫌!』
『……はぁ…そもそも睦月達が島風ちゃんに変な言いがかり付けたのが悪かったんだけど…もー…やだ…』
『みんなも仲間外れにすることないよ…』
『…………睦月達がやろうとしたことをそのままやられてるだけだし…というかそろそろ素直に謝りたいにゃしぃ…』
『今謝ったら全部水の泡だよ!?ダメなものはダメ!』
『…本当にやるつもり…?』
『当たり前!ここでやらなきゃ一番艦の名が廃る!』
「…あの子達艦娘だな」
「カンムス…?ああ、日本独自の軍事力ってやつやね」
「いや、案外人間味があるもんだぜ?」
「ウーラニアは詳しいのか」
「まあな、知り合いがいる」
「……なんで兵器がゲームしとるんや、って言っていいんかな」
「…その考え方は改めたほうがいいですよ、彼女らは人間だ」
「……艦娘ってのは簡単に人を殺せる…その時点で武器と変わらん…」
「それはアメリカの意見か?テメー個人の意見か?」
「…ワタシ個人の意見やね、なんせ…船が意思もって喋ってるなんて、理解できんわ」
「…やっぱお前は好きになれねぇな」
「…でも、これからそれと協力する事になる相手です」
「…頭痛いわ」
「さて、あのまま個人情報垂れ流してる子供を放置するわけにはいかないよねぇ」
「へっ、気色悪ぃ」
「えーと、なんで送ってやろうかな…あぁ、これでいいや」
『お喋りは全体チャットじゃなくてパーティーチャットで!』
「そのまんまやね」
「まあ良いんじゃね?近けりゃ声も聞こえるから、ログを眺めない奴も多いしな」
『にゃしぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!』
『いっちばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!?』
「…あ、スパムで蹴られた」
「驚きのあまり叫んで、ってとこやろうな」
「……クッ…くっだんねぇ…ククッ…」
「さて、クサメさん、3時間後に舞鶴で、アポは取っておきます」
「頼んだわ、じゃあ3時間後な」
京都 舞鶴
曽我部隆二
「ああ、お待ちしてました」
「遅れてしもたかな」
「いや、時間より早い、お互いデートの相手を待たせたくないらしいですね」
「ええこっちゃ、さ、いきましょか」
「デイビットさん、できるだけ個人の感情は抜きでお願いします」
「…正直な話、心配はいらんよ」
「何がかは聞きませんけどね…ああ、ちょうどいい、ごめん、そこのお嬢さん、ちょっと良いかな?」
「ぽい?」
「……せめてアポくらいとって欲しいもんだなぁ…」
「いや、失礼、忘れてました」
「…曽我部はん、3時間前にアポ取る言うとったんはどこ言ったんや…」
「いやー、あはは、飴ちゃん舐めますぅ?」
「…お前さんよくこいつと組めるな」
「ちょっと考え直そうかおもてるとこですわ」
「ま、それよりせっかくだ、2人とも自己紹介くらいしたらどうです?」
「徳岡さんについてはよーく調べさせてもらっとるから結構、ワタシはNAB、アメリカのネットワーク管理局のデビット・ステインバーグと申します、よろしゅう」
「そりゃどうも、NABねぇ…うちのガキどもは確かにネトゲばっかしてるけど、なんかやらかすほどアホじゃねぇぞ」
「…ウチが来させていただいたんわ、腕輪についてですわ」
「…残念ながら腕輪は持ってねぇよ」
「そりゃそうだ、そんなのが本土にあるなんて事になったらどうなるか」
「簡単に言えば、手に入れるのを手伝って欲しいんです」
「はぁ?……くっだんねぇ、なんで俺らが…おーい!コーヒーまだか!?」
「五月雨がひっくり返して掃除中だよ!」
「………くそっ…吸っても良いか?」
「ハバナですか、私はやらないのですが、そんなに良いものなんですか?」
「…ま、気が紛れる」
「ワタシも吸わせて貰いますわ」
「…大人しく飴ちゃんでも舐めるかぁ…」
「チッ、ずいぶんシュールな光景だな、葉巻にタバコに棒付きキャンディ、」
「健康に良いですよ?如何です?」
「…それより、本題を話してくれ」
「…私達は、世界の保全を目的としています、深海棲艦とかその辺は置いておいて、腕輪があることを知っているのはアメリカと日本だけ、アメリカの方も腕輪を要求し始める始末…まあ、腕輪を手にした所がネットワークの総支配権を得るのですから仕方ない」
「………」
「…腕輪を解析したいんです、データドレインをも防ぐ力がないと、世界は保てない」
「……悪いが協力はできない」
「まあ、そんな気はしてました」
「…無駄足かいな」
「…さて、ついでに確認ですが、火野拓海のことは聞いてますか?」
「…どういう意味だ?」
「………なるほど、来てよかった、いや、本当に良かった」
「なんだいきなり」
「…徳岡さん、あなた殺されますよ、大本営に」
「…なんだ、いきなり」
「………デビットさん以外に私は2人の協力者がいました、CC社、そして大本営とね」
「……それで?」
「大本営、っていうか、まあ、艦娘などの情報が欲しかったので、私は火野さんと懇意にさせていただいていました…昨日殺されましたが」
「ころっ…死んだぁ!?」
「ええ、まず大本営の仕業とみて良い」
「………なんでだ」
「彼の行動は目に余ったのでしょう、例えば…ここの盗聴器などの位置を事細かに伝えたりとか」
「……」
「彼からは色々聞いています、そして昨日、報告書を受け取る前に殺されてしまった…」
「失礼します!飲み物お持ちしましたー!」
「………置いといてくれ」
「可愛らしいお嬢さんやね…この子らもカンムス…か」
「見る目は変わりましたか?」
「……生憎独身やからね」
「俺はまだ話があるから、みんなで遊んでてくれ、いいな?ほら、早く行け」
「懐かれてるんですね」
「……娘みたいなもんだ」
「……」
「で、俺を殺す?大本営が?なんのために」
「…協力的でないものは粛清する、という事でしょう」
「だとしたら俺の娘を使って脅すだろうな」
「その手が取れない…としたら?」
「…何だと?」
「娘さんですが、今アメリカに居ます、ご存知でしたか?」
「………流石に知らなかったな、アイツは…今アメリカに…」
「…だから、脅しに使うのは難しい…となると、消してしまう方が早い」
「なるほどな…チッ、CC社みてぇなやり口だ」
「CC社…?ああ、そう言えば昔CC社に勤めてましたね」
「……俺は余計な事に首突っ込んで、クビだけどな、こっちのクビ」
「ええ、わかってます…CC社みたい…か」
「……なんだ?CC社が一枚噛んでるってか?」
「………何となく、納得した気がしました、その線で追ってみてもいいかも知れない」
「んな事よりだ、何だ?俺には大人しく死ねって話をしにきたのか?」
「とんでもない、私たちに協力してくれるなら…殺さないようにして見せます、という話ですよ」
「…どういう事だ?」
「NABは常に優秀な人材を求めとります、貴方をアドバイザーとして迎え入れる、すると大本営は手を出し辛くなる、下手に提督の仕事を解任しても不味いやろうなぁ、なんせアメリカでは大々的にNABの宣伝に使われるんやから」
「………で?俺の仕事は?」
「話が早くて結構、簡単に言えば…死なんことやな、今はカードが欲しいだけや」
「ま、そういう事です」
「…ここのガキどもに被害が出るような話は却下だからな」
「………あかんわ曽我部はん、自分の末路見てるみたいやわ…」
「ああ、やっぱり?情が湧くタイプでしたか」
「…まあ、そりゃ湧くやろ、人間やねんから」
「とりあえず、早いとこ話を進めてくれると助かる」
「ボディーガードは足りてるんとちゃいますか?」
「……アイツらはそういう役割じゃねぇ」
「…本気で、こんな託児所で終わるつもりですか徳岡はん、ウチに来るんやったらもっとええ椅子用意できる」
「…馬鹿にしてんのか?」
「……失礼しました、でもアンタが欲しいのはホンマです、その腕を腐らせるには勿体無い」
「俺はここに骨を埋める覚悟できてるんだよ、託児所?上等じゃねぇか」
「おー、カッコいいですねぇ」
「茶化すなよ…そういう話じゃねぇんだから」
「徳岡さん、あなたにはこれから仕事が出てくるはずです、それまで生き延びていただきたい」
「……へいへい、わかりましたよ」
「話がまとまってよかった」
「…よし、ウチの本部に問い合わせましたけど、無事許可させたみたいですわ…その代わり、女帝には全部筒抜けやろなぁ…」
「大本営とCC社の繋がり、調べてみる価値はあるか…」
ガッシャーンパリーン
「…何の音や?」
「ちょっと見ていきましょうか」
「うえぇ…べとべとにゃしぃ…」
「睦月ちゃん、もう諦めましょ…素直に謝りましょ…」
「それさっき提案した時蹴ったのは白露ちゃんにゃしぃ!」
「うぅ…こんなにお菓子作りが難しいなんて思わなかったもん…」
「というか素人2人がレシピ本頼りでやってるのがおかしい気がする、誰かの力を借りよう」
「…みんな私たちの話なんて聞いてくれないわよ…」
「ネットで会った子供ですね」
「偶然ってあるんやなぁ…」
「…ま、なんだ、強く生きて欲しいですね」
「全くやな」
「にゃしぃぃぃぃぃ!」
「いっちばぁぁぁぁぁん!」
「ようやくできたにゃしぃ…」
「いっちばぁん…」
「………」
「………」
「これで、島風ちゃんに謝れるね」
「…うん、やっと歓迎会もできるね…」
「ご飯は買ってこようか」
「そうだね…ケーキは冷やしとこう…」
「提督に御礼も言っておくのね」
「よーし、やる事いっぱい…つかれた」
「…ふふっ…でも楽しい!」
「……仲直りできるかなぁ…」
「多分大丈夫!………だと思う」
「よーし、こういう時はお寿司にゃしぃ!」
「お寿司!お寿司!いっちばんちかいのは何処かな?」
「えーと、睦月達のお小遣いだと…足りない!!」
「提督にお金もらおう!」
「あ?寿司代…?この間焼肉に行ったばっかりだろ…」
「ちーがーうのー!」
「島風ちゃんの歓迎会+私たちの謝罪会見!」
「お、ケーキできたのか、良くやったぞー、偉い偉い」
「そういうことにゃ!」
「んー、まあ寿司代くらい別にいいんだけどな、宅配もあるし宅配してもらうか?」
「取りに行くから大丈夫!」
「そうか、わかった、気をつけろよ」
「はーい!」
「うーん、結局配達してもらってしまった…」
「明らかに2人で持てる量じゃなかったにゃしぃ…」
「………ま、いいかー!」
「いいかー!…あれ?」
「睦月ちゃんどうかした?」
「なんか前から変な人…ぎゃっ」
「睦月ちゃん!?あ、貴方誰!?」
「………ごめん、ちょっと眠ってて」
「ぐぬっ………うっ…」
「よし、急ぎましょう」
提督 徳岡純一郎
「んー、遅いな…」
「提督さん、お腹減ったっぽい……」
「そうは言っても…白露も睦月もまだ帰ってこないんだ、もう少し待て」
「………あの2人は悪い子っぽい、サンタが来ない子は知らないっぽい」
「夕立、サンタは…」
「時雨、ストップ」
「………」
「確かに心配ですね、宅配のお寿司だけ届いて本人は帰ってこない…」
「事故にでもあったのかもしれん……悪いが少し外に出てくる、何かあったらすぐ連絡してくれ」
「…良いのかい?態々提督が行く必要はないよ?」
「………ま、アイツらも努力家だからな」
「?」
軽巡洋艦 夕張
「…どう?」
「思ったより持ってます、よかった…これで今日は何とか食いつなげる…」
「………グスッ…」
「泣かないで、仕方ないのよ…仕方ない…」
「………どうするんですか、これから」
「…せめて電がいればなぁ…あの子はなんだかんだで顔が広いし、離島鎮守府にでも逃げられたかもしれないのに」
「あそこなんてすぐに手が回るわよ…暁達、大丈夫かしら…」
「大淀さんがついてるはずだけれど…」
「………情けない…もう嫌です…」
「青葉、泣かないで…お願いだから…」
「…何で私達は駆逐艦の子からお金を盗んでるんですか、私達はどうせ…」
「艤装を使って逃げれば探知されるかもしれない、陸路しかないのよ………これからどうするにしてもね…」
「国外に出られれば話は早いけど」
「………全部大本営が悪いのよ…提督を殺して、私たちを解体なんて…信じられない…!」
「…ガサ…」
「………解体って、本当に死んじゃうのかなぁ……一般人になるだけじゃないの…?」
「提督が言うには違うらしいわ、だから私達は……」
「………ぅ…」
「目が覚めそうね…どうする?」
「……いくら何でもこんなところに放置できないし…」
「事情を話しても捕まる可能性が高いです…せっかくタクシーを乗り継いでここまで来たのに…」
「…どのみち逃げ場はないわ……匿ってくれるアテもない以上ね」
「………これだけあれば沖縄まで行けるかしら」
「…艤装は置いてきたし、沖縄から逃げることもできないわ」
「おーい!白露!睦月!」
「誰かがこの子達を探してる…ちょうど良いわね」
「うん、利用させてもらおう」
提督 徳岡純一郎
ガサッガサガサッ
「ん?」
ニャシィ…
「睦月か!?」
「………ぅぐ…司令官殿…」
「睦月!白露!何があった!」
「…背後から何かされたような…」
「なんだと…?白露!白露!起きろ!頼む!」
「………いっちばぁん…」
「……寝てるだけ…?」
「………なんだ……クソ、ビビらせやがって…」
「…心配してくれたの…?」
「………当たり前だ、娘が帰って来ないんだからな」
「……」
「睦月?どうした?」
「…何だか心がすっごくポカポカします!睦月、感激!」
「………はっ、ここは1番!?私は2番!?」
「ああ、白露、おきたか」
「…提督!?というかどういう状況!?」
「襲われたらしいな、というか、お前ら怪我はないか?何処か痛いところは?」
「………ない?かな?」
「…な、な、ない…!さ、財布が無い!」
「んだと!?……くそっ、金目当ての強盗か…?何にせよこんなガキを狙う必要ねぇだろ……!」
「………ごめんなさい」
「何でお前が謝るんだ」
「…だって私たち艦娘なのに…」
「………はぁ、そんなこと気にしてどうするんだ?それより、さっさと帰らないとお前らの分の飯が食われちまうぞ」
「…ぅげ…」
「夕立ちゃんは良く食べるからにゃ〜」
「…さ、帰るぞ」
「…ごめんなさい」
「ん?」
「提督、どうかした?」
「いや、気のせいだろ…多分」
「ただいまー!」
「ようやくご飯が食べられる…」
「お寿司お寿司!早く!お寿司!」
「よーし、飯!の前にだ…白露!睦月!」
「「はい!!」」
「また何かあるの?」
「…島風ちゃん、大丈夫だからね?」
「うん、私見てたから大丈夫」
「「島風ちゃん、ごめんなさい!」」
「睦月達は勝手に勘違いして島風ちゃんに嫌な思いをさせました!」
「だからお詫びに、ケーキを作りました!今日は、ごめんなさいと、これから仲良くしてって気持ちを込めて、頑張って用意しました!」
「だってさ、島風、どうだ?」
「うん、ありがとう…これからよろしくね!」
「…やった!」
「頑張った甲斐あったね!」
「よし、じゃあ改めて、飯にするぞ」
「「「「いっただっきまーす!」」」」