元勇者提督 作:無し
軽巡洋艦 夕張
「んー……夜に紛れて行動するのは得策とは言えないかな、タクシーとかを調べる数が減るし、そうなると向こうがやりやすいでしょ?」
「じゃあどうしよう…」
「ロータリーの監視カメラがないところを選んでタクシー乗り場に行きましょう、1人がそれでタクシーを拾って、後で合流、そこから3人で乗りましょ」
「そうこう言ってる間に四国ねぇ…」
「みた?離島鎮守府の記事」
「………とうとうあそこも落ちた、か」
「嫌な話よね」
「……ダメだ、お腹減って死にそう」
「まだ一日も空けてないわよ」
「…でも喉は乾いたかな…」
「………水分補給はしたい…」
「……はぁ…どうする?この辺りなら宿毛湾泊地があるけど、そこで適当に艦娘を捕まえる?」
「そうだね……流石に一般人はダメだし…」
「艦娘もアウトだけどね」
「………さて、多分目標地点まで後2時間は歩くわよ」
「……ごめん、やっぱやめとかない?」
宿毛湾泊地
提督 倉持海斗
「………ぁ…司令官…」
「おはよう、暁」
「…し、司令官…本物なの…?本物の司令官なの……?」
「……おいで」
「うん…よかった…また会えた……」
「怖かったね…もう大丈夫だから…」
「………あれ?雷と響は…?」
「2人はもう起きてる、みんなのところに行ってるよ」
「…よかった…」
「……暁、冷静に聞いて欲しいんだ」
「…私達は追われてるのよね…」
「………うん、だから君たちの自由はあまり無い、でも君たちを追い出したりはしないからね」
「…本当に良いの?」
「仲間じゃ無いか、何も気にしなくて良いよ」
「…司令官…」
「電の事だね」
「…うん」
「2人から聞いてる、ただ、どうなったかはわからない……」
「……助けたいの…だから行かなきゃ……暁はお姉ちゃんだし…」
「………暁、君は強いね」
「…立派なレディだから……」
「でも、君に万が一があれば響も、雷も悲しむ…電のことは…何も保証できないけど、僕らに任せて欲しい」
「どうするの…?」
「………まずは情報を集める、正直な話、望み薄だとは思うけど」
「…生きてる…のよね…?」
「……答えるのは難しいかな…何を言っても、気休めにもならないと思う」
「………そうね、ありがと、司令官」
「君たち3人について何だけど…鎮守府の建物から出ることはできない、基本地下の保管庫を居住区として欲しい……無理を言ってるのはわかってるんだけど…難しいんだ、それ以上となると」
「…わかってるさ」
「受け入れてくれただけでも十分すぎるわよ!」
「…そうよ、私たちを受け入れることはリスクでしか無い…司令官、本当に良いの?」
「良いんだ、君たちは僕の仲間で…何より、友達に頼まれたからね」
「………火野提督は、短い期間とは言え、よくしてくれたよ」
「寂しい思いはなかったわ、みんなといた時ほどじゃ無いけれど」
「…そっか」
「司令官、私たちを気にしてくれてありがとう…でも、ひどい顔してるわよ?」
「…いろいろあるからね」
「もう少しゆっくりしても良いのよ?お仕事なら手伝うから」
「暁も少しくらいならできるし!」
軽巡洋艦 夕張
「………はぁ…ついた」
「まだ見えるってだけじゃないですか…うぅ…門を叩いて入れてくれたらどんなに良いか……」
「…はぁ…嫌なものね…とりあえず少し休む?」
「そうね…あー、もう無人販売所のみかん持ってくればよかった」
「それは犯罪、にしても……ダメ、寒いわ…」
「…固まって休みもう…青葉なんてすっかり凍えてるわね…」
「………大丈夫…大丈夫です…」
「そんなに歯をガチガチいわせて大丈夫なわけないでしょ…コートくらい持ってくる時間欲しかったわ…着の身着のままで出てきたし…」
「………あぁ…泣きそう」
「……もしかしてガサも思った…?そうよね…国防の要が盗みなんて情けないこと考えるなんて…」
「………提督がいれば…こんな思いしなかったのに…」
「…全部大本営のせいよ…」
「やめましょ…あれ?この音………」
「…艦載機…?民間人がまだ戻ってないから派手に訓練してるのかしら」
「………隠れましょうか」
宿毛湾泊地
正規空母 赤城
「うん…上々ですね」
「どう?新しい艦載機の調子は」
「随分と良いですね、流星や彗星なんて初めて使いましたけど…」
「気に入ってくれて良かったよ…ところで、わかってると思うけど」
「………大丈夫です、3人は絶対報告しません」
「うん、それなら良いよ」
「……私を消せば早いのに、なぜそうしないんですか」
「君はみんなの要になってるからね、そんなことしたら僕が殺されちゃうよ」
そんなわけが無い
裏切ってる私をみんなの前に突き出せば…
恐らく私は可能な限り痛めつけられる…
それをわかってるからそんなことを言うんだ
私に気を遣って
「赤城?」
「いえ、何も…あれ?」
「どうしたの?」
「………夕張さんです」
「…夕張?」
「…提督、明石さん達を呼んでください」
「…ねぇ、あの艦載機、さっきからこの辺りをうろうろしてるわよ」
「………バレた?」
「そう思って良いです…逃げましょう……」
「………青葉、貴方そんな状態で逃げられるわけないでしょ…」
「どのみちバレたならここで資金は入手できないし…どう逃げますか…橋まで行く前にみんな倒れますよ…」
「……船を盗むしか無いわ、漁船とか…」
「………動かせて手漕ぎボートが限界です」
「…隠れて、車の音がするわ」
「………本当にバレてたんですね…」
「この辺でいいですか?」
『はい、東の山の切れ目に見えました、恐らく逃げ出したものと思われます』
「…わかりました、すぐ見つけます」
「ねぇ、待って?あれ明石じゃない…?」
「明石って…ああ、明石ね、それより逃げないと」
「違う、離島鎮守府の明石…友達よ、もしかしたら助けてくれるかも…」
「………どうする?」
「藁にも縋りたいです、大人しく助けを求めてみましょうか…」
「あ、手振ってる…見つかっちゃったみたいよ」
「……覚悟決めましょうか」
「夕張!久しぶり!」
「…明石、何も聞いてないの…?」
「え、いや、一応知ってるけど…まあ、それより早く乗って、寒いでしょ?」
「………うん」
「はぁぁぁ…!あったかい…!」
「でも流石に狭いわね…」
「あ、もう少し詰めて、私も後部座席に乗るから」
「え?運転席は…?」
「よ、お嬢さん方」
「…憲兵…!」
「………そう…」
「何もかも諦めた顔しないで、大丈夫だから」
「いや、どこが大丈夫なのかわからないんだけど…」
「……私たちの事は聞いてるのよね?」
「先に、火野さんのことは残念です、一応私もあの人に助けられてるし」
「…ああ、あの報告書の偽造ってそういう事だったんですね…」
「……」
「…逃げたのは3人だけ?」
「まあ、うちって元々在籍数は多く無いから……」
「……あんまり喋らないで」
「ごめんなさい、敵では無いので…もう着きますから」
宿毛湾泊地
「とりあえず早く建物の中に、誰が見てるかわからないので」
「………警察に連行される人ってこんな気分なのかしら」
「今連行してるのは憲兵だけどね…」
「余裕あるじゃない…」
「…応接室よ応接室…」
「てっきり営巣にぶち込まれるかと」
「………この度は、何と言えばいいか…」
「…全くその通りで…本当に残念な事です」
「…夕張?知り合いなの?」
「離島鎮守府の提督さんよ、何でここにいるのかは知らないけど」
「倉持海斗です、よろしくお願いします、今はこの宿毛湾泊地に全員で移ってきました」
「あ、そうなんだ」
「この前の作戦の成功を認められたから、移れたんですね」
「…それで、私達をどうするんですか?」
「貴方方の事は火野から頼まれています、どうぞここに居てください」
「…司令官…」
「待って、暁ちゃん達は?ここに来てるの?それとも離島鎮守府に向かって…」
「ここに居ます、と言っても、貴女方も、あの子達も外に出せない…正直に言って、まともな暮らしをさせることは出来ません」
「…屋内で過ごせるだけマシよ」
「そうね…」
「…でも長くは居られない…あの子達がここにいるなら私達まで世話になると負担がかかるばかりでしょ?」
「そんな事ない、何も気にすることはないんだ」
「…私たちは今の状況では出撃もできないの、何かあれば部屋の隅でカタカタ震えてるくらいしかできない…それにゴシップ大好きガサアオバなんて迷惑しかかけないわ」
「…傷つく…」
「全くですね」
「……少しの間だけお世話になったら、どこかに行くから…」
「どこに行くつもりかは考えてない、と」
「………」
「目的地が見つかるまでは是非ここに居てください、どうしても出て行くならそれは止めません」
「…お世話になります」
「なります!」
「よろしくお願いします」
「……っはぁ…息が詰まりっぱなしですよ、良かった本当に」
「そうだね、お疲れ、明石」
「はい、お疲れ様です」
「あとは大淀と電…か」
「…見つかるでしょうか」
「わからないよ…ん?電文だ……葬儀、か…」
「…大将ですか……それはそれは豪勢なものになるんでしょうね…」
「……荒れそうだな…」
「どうしてですか?」
「…反戦争派なんて、今までニュースにもなってない、そんなのいきなり襲撃されましたなんて…良いプロパガンダだよ、横須賀の守りが弱くなって、漁場が機能しません、国民の暮らしを守るためにも艦娘は必要だ、ってね…今までが無関心な人が多かったために、ごく少数の反戦争派は徹底的に叩かれる…」
「……そんな事のために…?」
「違う、これはついでにすぎない…多分、拓海は知りすぎたんだと思うよ、僕もそうだ」
「…提督はお守りします」
「ありがとう、でもその時がくれば僕は受け入れるつもりだよ」
「…自分をも殺す策を実行するからですか?」
「……聞かなかったことにしてって言ったよ」
「提督、私は…火野さんの手紙を読んで考え方を変えました、この世界は壊れかかってます…リスクが常にあり続けている以上…私は提督の背を押し続けます…それしかできませんから」
「僕はいまだに迷ってるけどね…」
「…どのみち失われる命なのではないか、と考えています」
「…それは僕もだ、だけど自分の感情で人の命を左右することは許されることじゃない」
「今更ですよ」
「うん、だけど未だに落ち着かないんだ、先の話でもね」
「どうせすぐ、私たちはまた戦いの中に誘われるんです、考える暇もなくなります」
「だから今考えないといけないんだよ」