元勇者提督   作:無し

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足枷

宿毛湾泊地

 

「え?演習の依頼?」

 

「佐世保からの依頼です、岩川などもありますが、それらを軽く凌ぐ超実力派の武闘派集団です、我々の実力を図りたい、と」

 

「佐世保ねぇ…折角だしアタシ行っても良い?千代田もいるし、何より弟子がいるんだよねぇ」

 

「うーん、でも今僕はここを離れられないし…」

 

「書類を認めていただければ無礼にはなりませんよ、それに私たちはまだ新顔みたいなものですから」

 

「断れないよね、まあ、わかった、用意はしておくよ」

 

「よーし、じゃあ編成は阿武隈、曙、満潮、イムヤ、赤城、金剛ね」

 

「重巡は?」

 

「要らなーい、かな」

 

「んだと!?クソが!」

 

「摩耶、抑えて…北上はいいの?」

 

「アタシはお喋りしとくよ、向こうの提督とは顔見知りだから」

 

「…人脈広いよね」

 

「そうでもないのさ〜」

 

 

 

 

佐世保鎮守府

 

「演習の依頼受けていただけましたよ、明後日のヒトヨンマルマルから」

 

「……そうか」

 

「…司令、暗い顔しないでください、司令官に落ち度はありません」

 

「…すまん、俺はどうすればいいのかわからん…明日にはお前たちに死ねと言わねばならないかもしれん」

 

「そればっかりですね、昨日から」

 

「…家族を持つ者は…弱いな」

 

「……秋雲が怒りますよ、あの子は司令官に憧れてますから」

 

「…そうか」

 

「…龍田さんも、陽炎も…みんな貴方を信頼してる、そして忠誠を誓っています」

 

「…俺が誓えと言ったからか?だとしたら今すぐ捨てろ、自分のために生きろ…」

 

「………今が自分のため、なんですよ」

 

 

 

 

 

 

宿毛湾泊地

曽我部隆二

 

「しっつれいしま〜す」

 

「…ホンマに今度こそアポ取ったんやろね…」

 

「心配性ですねぇ…大丈夫ですって」

 

「あー、止まってくれ」

 

憲兵、と言うやつか

土色の制服に包まれた人間に止められる

 

「…ほら、何かあかん雰囲気やん」

 

「えーと、すいません、私曽我部隆二と申します、あと10分後にこちらの提督さんとお会いする約束してるんですけど」

 

今回ばかりはちゃんとアポを取ってきている

 

「……身分証明書は?」

 

「あー、免許書でも?」

 

「……確認できました、案内します」

 

「早めに戻れよ」

 

「おう」

 

憲兵同士での会話が聞こえてくるあたり、割とここは緩いのか?まあ、行ったことあるところは両方憲兵なんて居なかったが

 

 

 

「お待ちしてました、曽我部さん」

 

「…はぁー…意外だなぁ、まさかこんなところで会うなんて」

 

離島鎮守府の襲撃事件

アレでてっきり死んだと思っていたが、勇者は健在だったか

 

「そうですか、あまり暇はないので手短に用をお願いできますか?」

 

「じゃあさっさと始めましょう、まず、こちらNABのデビット・ステインバーグさんです」

 

「よろしゅう、こんなナリしてるけど日本語で大丈夫です」

 

「アメリカの方ですよね、それで?」

 

「……いや、アンタがおると思ってなかったけど、アンタがおるなら簡単な話やわ、カイトをそのままこっちに渡して欲しいんですわ」

 

「……あれは核兵器と変わりませんよ」

 

重苦しい雰囲気だ、前回とは違って早々に運ばれてきたコーヒーに口をつける

 

「こっちもそれはわかってます、いや…正直に言います、武器が無いんや、今のウチには」

 

「倉持さん、大本営の裏側はご存知ですか?」

 

「いいえ」

 

「日本という国は、金で買われています」

 

「そうですか」

 

「それだけ?もっと大きい反応を期待してた」

 

「日本自体はあまり大きく強い国ではありませんから」

 

「まあ、簡単に言えば、CC社です、CC社にこの国の上層部は金を握らせられ、軍事力をあまり持たないように、尚且つ腕輪の様な自分たちの武器になるものを集めている」

 

「………成る程、納得が行きました」

 

「納得?」

 

「艦娘は国を護る貴重な力だというのに、前々から無駄に危険な作戦を指示するものですから」

 

「へぇ、そいつは初耳だ」

 

「まず腕輪の件ですが、お断りします」

 

「………」

 

「腕輪は国や企業の様なものが管理するべきでは無い…誰の悪意に触れるかもわからないのですから」

 

「成る程、信用されてないらしいわ」

 

「あなたのことを指してるわけではありませんよ、ですが、世界のネットワークを支配する事も可能かもしれない…誰でも付け狙う」

 

「なおさらウチみたいな専門家が管理するべきやと思いますけど?」

 

「組織は外部からには強いでしょうが、内部からには非常に弱い」

 

「………そうでっか」

 

「あなたは悪用する気はないんですか?倉持さん」

 

「…以前貴方と話したことが全てです」

 

「……気は変わりませんでしたか」

 

「まだ時間はあります、終末の日はまだまだ先ですよ」

 

「………嫌な話だ」

 

「それで、本当は何の話をしにきたんですか?」

 

「…仲間を作りたかった、やけど協力者にはなってくれそうになさそうやね」

 

「具体的には?」

 

「……まだ未定です」

 

「成る程、誰と戦うかは?」

 

「決まっています、CC社の会長、ヴェロニカ・ベイン」

 

「…残念ながら誰か知りません」

 

「あまり表には出てきませんからね」

 

CC社会長 ヴェロニカ・ベイン 別名、女帝

若くしてCC社の会長に就任し、莫大な財産を築き、アメリカ政府の派閥をも牛耳っているという

 

「簡単に言えばそんなことです」

 

「それで?」

 

「……それだけですが」

 

「なぜ協力しなければいけないのかがわかりません」

 

「にべもないって奴やね」

 

「…倉持さん、私たちは私達なりに世界を救おうと思っています、もし、そのつもりがあれば我々はいつでも構いません」

 

「共に戦おう…という事ですか」

 

「…ええ、先日お伺いした時より、貴方の顔は暗く沈んでいますが…目は生き返っている、なにか…心境の変化があったのでは、と考えましたが」

 

「………たとえいつか、そうなるとしても…ここにいる仲間を危険に晒すことはできません」

 

「……」

 

「しかし、此方としても情報やデータは一つでも欲しい、こちら側に悪影響が出ない範囲でしたら協力します」

 

「…思ったより…辛い結果やなぁ」

 

「重畳ですよ、ご協力感謝します」

 

「………一つだけ、曽我部さん」

 

「なんでしょうか」

 

「…AIが憎悪を糧に生き続けるなんてことができるのでしょうか」

 

「…具体的にお願いします」

 

「……僕を殺したいほど憎むAIがいたとして…先に僕の周りの人間を排除し、徹底的に痛めつけ、苦しめてから殺す、そんな選択肢を取るでしょうか」

 

「…合理的ではありませんね、機械の思考回路じゃない」

 

「………そうですか、ありがとうございます」

 

「…相手は思ったより、人間に近いのかもしれませんよ」

 

「人そのものではないかとすら…考えています」

 

 

 

 

「これでええん?折角こんな田舎まで来て」

 

「十分すぎる、あの魔窟に行く時に隣に勇者が居てくれたら、とずっと思ってましたから」

 

「勇者って感じやないけどね、覇気がないわ」

 

「…甘く見ない方がいいですよ、彼は未だに勇者だ、似た雰囲気の少年をよく知っている」

 

「その子も勇者か?日本は勇者だらけやなぁ…」

 

「ゲームの発売日にこぞって休暇を取って勇者になりたがるくらいには勇者大国ですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

重雷装巡洋艦 北上

 

「…うわぁ…」

 

「北上さん?どうかしたんですか?」

 

「………年貢の納め時なのかなぁ…」

 

「これ、演習のメンバー表ですか?…あ、相手方のもある…旗艦瑞鶴に不知火、龍田、陽炎、秋雲、瑞鳳ですか」

 

「…瑞鳳ってのがねぇ…」

 

「なにやってんの?随分暗いけど」

 

「あ、満潮ちゃん」

 

「これ演習の対戦カード?…ああ、成る程」

 

「え?何がわかったの?え?え?」

 

「…うーん、その…アタシ瑞鳳苦手でさぁ…」

 

「包み隠さず言いなさいよ、誤射で沈めたって」

 

「うん…」

 

「……成る程…戦場である以上…誤射はありますからね…」

 

「…まあ、仕方ないことなんだから、いい機会よ、克服しましょ」

 

「……そうだね、いつまでも墓石に嘆いてたら向こうが嫌な思いするかもだし」

 

 

 

 

 

 

 

佐世保鎮守府

駆逐艦 不知火

 

「…ふむ…残念です」

 

「再戦ならずか、だが、お前を見てくれるはずだ」

 

「ええ、どのみちまだ勝てませんから…アドバイスの一つくらい欲しい物ですね」

 

「もらえると良いな」

 

 

 

2日後

 

 

 

重雷装巡洋艦 北上

 

「本日はよろしくお願いしまーす」

 

「ああ、よろしく頼む、そちらの提督は?」

 

「移動したばかりで手が離せず、という事なので…こちら書類になっておりまーす」

 

「……確かに、確認した、では」

 

「んじゃ、私観戦するので」

 

「……艤装を持ったまま、か?」

 

「いやー、終わったら帰るしね、着脱面倒なのよこれ」

 

 

 

 

駆逐艦 不知火

 

「本日はよろしくお願いします」

 

「よろしくお願いします、阿武隈です」

 

「おっ、2人ともいるじゃ〜ん」

 

「北上さん、ご無沙汰しています」

 

「あれ?お知り合いですか?」

 

「ん、不知火、阿武隈だよ、ほら前言ったでしょ…アレを私直々に教えてあげた子」

 

「………成る程、勉強させていただきます」

 

「え?へ?」

 

「阿武隈ぁ、ちゃんと活躍してよ?」

 

「は、はい!」

 

「…随分と緊張してるようですが」

 

「阿武隈なら大丈夫だよ、めちゃくちゃ強いから」

 

「え、そ、そうですか〜?えへへ…」

 

「あ、やっぱり今のなしで」

 

「…こんにちは!」

 

「瑞鳳さん…」

 

やけに機嫌がいいですね

 

「あ、貴方がここの瑞鳳?よろしくね」

 

「よろしくお願いします、ではまた!」

 

「……なんか寒気が…」

 

「阿武隈?どしたの?」

 

「うーん、冷えたのかな…鳥肌がすごいです」

 

「………」

 

どうやら私も冷えてしまったようです

 

 

 

軽巡洋艦 阿武隈

 

「全体!整列!」

 

「うわぁ…すごいキッチリしてる…」

 

「私たち緩いからねぇ…ま、緩い奴らなりに緩くやってきて良いよ」

 

「でもやるからには勝ちます」

 

「……気負わなくて良くなったもんね、赤城、曙、紋章砲はちゃんと確認した?誤作動とかやめてよ?」

 

「大丈夫、確認しましたよ」

 

「慢心はありませんから」

 

「……ところで、ずっと気になってるんだけど」

 

「…多分同じだけど何?」

 

「なんで向こうはみんな槍を持ってるわけ?」

 

「……新型の艤装ってとこじゃない?後で聞いとくわ」

 

「よーし、やるぞー!」

 

「「「「「おー!!!」」」」」

 

 

 

正規空母 瑞鶴

 

「向こうの赤城、なかなかの手練れね」

 

「そうかもしれませんね」

 

「…なに?あんまり興味ない?瑞鳳」

 

「まあ…」

 

「最近弓の鍛錬も怠ってるし、あんまり良くないわね」

 

「……結果は出してます」

 

「………結果が全てじゃないのよ」

 

「そうですか」

 

「始まるわよ、発艦用意!」

 

「………」

 

「彩雲と零式32型発艦完了!」

 

「試製烈風後、発艦しました」

 

「よし、まずは予定通りの動きね…龍田!不知火!複縦陣で前に出て!陽炎!秋雲!間に入って対空用意!」

 

「敵戦闘機発見、航空戦始まりました」

 

「彩雲だけ抜けたし充分…ちょっと待って、敵の戦闘機尋常じゃない量が居るわよ!」

 

「………50機程いますね」

 

「50!?瑞鶴さん、そちらの戦闘機は…」

 

「合わせて30ちょいね、でもこっちの方が優勢よ!」

 

「……脚の特徴は…?……ありがと、敵艦載機は21型らしいです」

 

「旧式ね、じゃあ数で押さなきゃってことか」

 

「航空優勢、艦攻発艦します」

 

「アウトレンジで…決めたいわね!」

 

「瑞鶴さん、どうですか?」

 

「………待って、彩雲が敵を発見…包囲修正、マルフタナナ…えっ…?」

 

「どうしました?」

 

「彩雲が落とされた…!何者よ…相手は…!」

 

「彩雲が…!?」

 

「敵艦補足まで2分切るわ!T字有利を作るために進路変更!」

 

「了解!」

 

「航空戦劣勢になり始めました」

 

「…嘘でしょ!?対空射撃か…!向こうはやけに上手いのが居るみたいね…!」

 

 

 

 

 

提督 渡会一詞

 

「…ふむ、五分か?」

 

「いや、うちの方が有利かな…曙の砲撃で完全に艦載機は沈黙するだろうから…」

 

「そんなに得意なのか、対空砲が」

 

「……ここまでだとは思わなかった…あの精度は…恐ろしいねぇ…」

 

「…どっちが上だ」

 

「アタシと?……そりゃアタシって言いたいけど…正直、五分かもしれない」

 

「ほう」

 

「………この動きを見るに、彩雲は予想通りだったんだろうね、潰してからT字有利を作りにくることを見越しての輪形陣形」

 

「来るのがわかっているなら他にも有利な動きがあると思うが」

 

「リスクを避けたんだと思うよ、この感じだと」

 

「…ほう」

 

 

 

駆逐艦 不知火

 

「敵艦隊発見!!」

 

「迎撃体制バッチリか…!単縦陣に変更!突っ込むわよ!」

 

「敵戦艦の砲撃来ます!」

 

「龍田!」

 

「はいは〜い、わかってるわ〜」

 

 

 

重雷装巡洋艦 北上

 

「え?アレ何したの?」

 

「砲弾を切り割いた、見づらかったか」

 

「……槍を持ってきてる理由がわかった…みんなできるの?」

 

「実戦レベルで扱えるのは龍田だけだ来ると分かっていれば全員捌けるが、龍田の反射神経は目を見張るものがある」

 

「………お互い、化け物揃いという事で」

 

「………」

 

「……なんか、変な感じだなぁ…」

 

「どういう意味だ」

 

「…あの瑞鳳、頗るやる気がない…いつもあんな感じ?」

 

「…最近はな…」

 

「最近…?」

 

「………実力はあるやつだし、前までは人当たりも良くてな、よく卵焼きを焼いてた」

 

「…甘いやつ?」

 

「ああ、すり身を混ぜて伊達巻にしたりとかな」

 

「…………」

 

いつだったかな、食べたな、それ…

じゃああの瑞鳳は…もしかして

 

 

「……」

 

 

「…こっちを見て、笑ってる」

 

「……見えるのか?」

 

「ギリギリね、あー…そんな……先に知りたかったなぁ……」

 

「どういう意味だ」

 

「…あの瑞鳳、私が沈めた子だ…」

 

「……何?」

 

 

 

 

軽空母 瑞鳳

 

「……ふふっ…」

 

気づいてくれた、かな

 

ちゃぁんと、引き摺り出すよ、私が…貴方を殺すために

 

「くっ…なんて正確に…」

 

「不知火ちゃん、無理にそれで防ぐ必要ないわよ?」

 

「防がなければ一撃で沈みます!」

 

「………待って、なんの音…?」

 

「うわっ!?水中から魚雷が!?」

 

「回避!!急いで!!」

 

 

 

 

 

提督 渡会一詞

 

「なんだ、あれは」

 

「………魚雷を深く沈めて、適当なタイミングで急速浮上させる、防げない魚雷…阿武隈……アンタ凄いよ、よく、やったね…」

 

「…恐ろしいな、あの一撃でこちらの陣形は崩された」

 

「さらに赤城のまだ発艦してない艦攻隊が襲いかかってくる、正確な砲撃も伴って…」

 

「……これは強い、納得だ」

 

「後30秒で終わりかなぁ…とりあえず終わったら瑞鳳に……ん?」

 

「……どうした?」

 

「…………何、この感じ…」

 

「む…瑞鳳以外撃沈判定、か…」

 

「……待って…!ダメ…」

 

「…瑞鳳は…どこだ……?居ない?」

 

「止めて!瑞鳳を止めて!アイツ阿武隈達を殺そうとしてる!」

 

「何…?」

 

 

 

 

軽巡洋艦 阿武隈

 

「…ぐ…ぇ…」

 

後1人だったのに

急に視界がおかしくなったと思ったら、首に圧迫感

 

「いつの間に…!阿武隈さんを話しなさい!」

 

「どうせ模擬弾よ、撃ちなさい!」

 

「きゃあ!?何これ!」

 

「くっ…一航戦が…こうもあっさりとやられては…!」

 

何が起きてるの…?

本当に、何が…

 

「やめて!瑞鳳!やめて!」

 

「……やぁっと、来てくれた…!待ってたよぉ、北上さぁん」

 

「…き…きたかみ…さ…」

 

北上さんなら…きっと…

 

「…瑞鳳、やっぱりあの時の瑞鳳だったんだ…あの時はごめん、言い訳をするつもりはない」

 

…え?

どういう事?まさか、間違えて沈めた瑞鳳…

 

「そりゃそうだよ、言い訳なんかされても無様で愚かな北上さんが余計哀れになるだけだよ?ねぇ?」

 

「………私のこと殺したいんでしょ、いいよ…」

 

「……はぁ…くっだんな!!私はアンタを殺したい!でもアンタがそんな満足気な顔してるのに殺してもなんの価値もない!」

 

私の単装砲が視界の上へとフェードアウトしていく

 

「こいつ、殺すよ」

 

「………お願い瑞鳳、やめて」

 

「私と戦え、勝ったらやめてやる」

 

「……アタシにはもう…撃てないよ」

 

「なんで?一度沈めた相手でしょ?ほら、早くやってみてよ!」

 

「………」

 

「そう!その顔だよ!もっと苦しめ!」

 

「ぐっ!?」

 

右肩が沈む、急な岩が降ってきたような重みと、痛み

 

「やめて、お願いだから…!」

 

「じゃあ撃ってみなよ、殺してみなよ、私を…!」

 

「………」

 

「お前も、何か言ったら?助けてくださいってさ!!」

 

脇腹に激痛、痛い、痛い…

 

「…ぃ…ゃ…」

 

「は?死なないとわからない?」

 

「北上さんは…アンタなんかより強いから…!」

 

「………もういいや、アンタは死んでも良い」

 

「わかった!わかったよ…!」

 

「……へぇ?」

 

「………やる、相手になるから…」

 

「手を抜いたら、この子死ぬよ、負けたら死ぬ、他の子も全員ね」

 

「………わかったから…」

 

「で、さぁ………普通に相手してもつまらないし…もっと良いもの見せてあげる!!」

 

 

 

 

 

 

重雷装巡洋艦 北上

 

「…え…?」

 

周りが薄い青に染まる

 

「……なにこれ…」

 

「あはっ!あはははは!タルヴォス!!」

 

赤紫の巨大な…人…?

両手両足を縛られ、胸は槍に貫かれた

 

「………それは…何…?」

 

「…知らないんだぁ…ふふっ…」

 

体もいつの間にか浮いている

なんだ、この世界は、この状況は

AIDAが体から溢れ出す、まるで私を守ろうとするように

 

「……あー、わっるいんだぁ…そんなの使って…殺しちゃお!」

 

光線が飛んでくる

体を切り裂かれるように、当たれば痺れるように

 

「死ね!死ね死ね死ね死ね!」

 

AIDAを盾に防ぐ

私にはそれしかできない

どうすれば良い?

どうやって攻撃すればいい?してもいいの?

 

「さっさと消えてなくなれ!!」

 

でも、瑞鳳顔は決して晴れやかじゃない

恨みを晴らしたいのはわかる

だけど……なんであんなに暗い顔をしてるんだろう

あの巨人が悪いのか

だとしたら私のやれることはなんだろう

 

なんでもいい、瑞鳳を冷静にしなきゃいけない

そして、謝ろう、だから私はやれることをやる

この足枷を断ち切って、明日に進む

 

「………いくよ」

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