「任務ご苦労二人とも。神無月から増援の要請が来たときは正直びっくりしたよ。百戦錬磨と呼ばれるレベルのお前が誰かに頼るなんざ珍しいからな。
応援要請の通信は録音して売りさばくことにするよ」
「コウキサァァァン?!なに企んでやがるんですか一割利益くれ」
「ハードなミッションこなしてガッポガッポ稼いでるくせになにほざく神無月よ。
この状況にツッコミがないことのほうが驚きだな」
少々呆れ顔のマキリ。色欲には正直ではあるが、根は真面目で誠実でいいヤツなのである。ウィークポイントが足を引っ張りすぎているのがアレだが
「して二人とも。その子は誰だ?」
「♪」
今現在小生はコウキと刹那と合流し、ヘリに乗り込んだところだ。
刹那というのはもちろん小生の友人の一人だ。新人でかなり実力は高く、ここ数ヶ月でレベル10までの依頼をこなすまでになった少女である。
勤勉誠実、実直真直ぐを体現する少女。銃を一切使用せず、剣でのみ決着をつける。旧型神機のロングブレード使いで、芸術的とも呼べる刀さばきで数多くのアラガミを葬ってきた
そんな刹那もこの状況を飲み込めないでいるようだ。
「話が進みませんので私が話します。…君はアラガミなのかな?」
さらっと核爆弾投下していきやがるこの女郎。エアー読め、エアーを。
「「「まさかの直球?!」」」
「う~ん…あらがみってなんだ?」
「「「わかってなかったーーー!!」」」
「ん? いや、納得だ。この世界の人間でアラガミを知らない人間はほぼ皆無だ。アラガミ自体は自分達の事をアラガミと呼ばれてることすら知らないだろうしな」
「「「な~るほど~」」」
よかった、疲れてるけど頭はさえてるわ、小生………ってかこの状況、大概まずくね?
数時間後、小生たちは誰もいない深夜のフェンリルのエントランスをこそこそ歩いていた。当然だ、天下のゴッドイーターがフェンリル内にアラガミを持ち込んだとなると前回同様えらいことになる。
コウキがハッキングし、帰等時の報告を多少捻じ曲げてもらった。このことは今は誰にも内緒だ。アラガミとの共生する道への新たな可能性である。
「一旦俺の研究室に連れて行こう。あそこなら多少は何とかごまかしが効く」
「「「りょ~か~い」」」
前記(第一話)の通り、コウキは天才化学者である。彼はその功績を認められ、自分の部屋とは別に、個人の研究室まで保有しているチートキャラである。
今暮らしている以上の部屋を望むわけではないが、やはりちょっとうらやましい。白衣を纏い、カルテを取り出し、キラリとメガネを輝かせるコウキ。いちいちかっこつけんな、尺が伸びるだろ
「さて、と。ここなら防音設備も整っているし、壁の強度も前回のことを踏まえて対アラガミ用に加工してある。それに使っていない研究室をいじればこの娘が暮らせるようにもなるだろう」
「防音設備つけた理由がカラオケしたいってだけだったのは秘密だ」
「余計な事言わないの神無月。さて…まずは一応色々しとくか。刹那、手伝ってくれ」
「身体検査……クックックックック…」
「神無月、マキリを拘束しといてくれ」
「了解、組み手甲冑術!!」
ジャンプで飛び上がり、マキリを地面に倒れさせ、両肩を膝ウラで固定する。本当ならここで顔面に刀の鞘などでボッコボコに追撃するのだが
「な、何をする神無月! 俺はノーマルだ、そんな趣味は 「覇ッ!!」 ふげごぼぉ?!」
「了解しました。じゃあこっちに来てくれる?」
反応しないアラガミの娘。あんなに元気だったのに、なぜだ?
「…………」zzzzz
「(立ったまま寝てる…)」
「(立ったまま寝てるな…)」
「(立ったまま寝てますね…)」
「(寝顔写メゲット…と)」
「ドサクサまぎれてなにやってンですかァマキリさんンン?!?!」
「シッ! 神無月静かに、この娘が起きます!」
「「へい」」
「仕方ない、明日にしよう。俺は深夜アニメ見てから寝るわ。バガラリー全部見ちゃったし」
白衣をコート掛けにかけ、コキコキと肩をならすコウキ。てかバガラリー全話制覇とは……凄まじい
「俺はエロゲーの全トゥルーエンド見てから寝るわ。今夜は眠れねぇwwwうはwwwみなぎry」
平和的、かつ早急的に黙らせた。
「私は………………」ウ~ン
「無理して個性を見出そうとするなせっさん。マキリはいちいち言わなくていい。読者がよからぬ妄想を繰り広げてしまう。あとお前ら全員早く寝ろ」
少女をソファで作った簡易ベッドに寝かせた後、それぞれの部屋に解散する。風呂にはいり、自分の部屋のベッドに寝転がり、電気を消す。これから小生たちはどうなるのだろう。
人型のアラガミ…これで2例目である。人類とアラガミとの共存…アラガミとヒトとのコミュニケート…戦いでしかこの世界を知らない小生は、たったいま生まれた新たなる可能性に心を震わせていた。
「う~ん…」
朝か。窓から入る僅かな日の光が目に付き刺さる。なんだかぬくい。隣に何か生き物の気配がする。漢(オトコ)が一度は夢見るであろうシチュエーション。だがしかしそれはふざけた幻想に過ぎず、現実を知り、男は幻想をぶち殺されるのである。隣で誰かが寝ている
「むふにゃ…あん…うへへ……らめぇ…」
いっておくがさっきのは小生ではない小生の隣で寝ている、この世間一般的には美少女と呼ばれる部類の少女が、寝ぼけながらに吐いた言葉である。
「ン…お兄ちゃん…おふぁよ~…」
そういうわけだ兄弟。いいぜ…まだそっちの可能性を捨てきれないってんなら…まずはそのふざけた妄想を…
「お兄ちゃん、おはようのキスは?」
……殺せませんでした。ここまでくると正直無理。こいつはイヅナ。小生の、(非常に残念だが…だからそっちじゃねぇって!!)妹である
「おう。とりあえず深夜に無断で小生の部屋に入ったことを詫びてもらおうか」
「ん~~~~~~~~~」
スルーである。目をつぶって唇を若干突き出すようにしている。なんだこれ。
「とりあえずお前は服を着ろ。下着で寝るというのは男女問わず感心できん」
「どうでもいいから、ほら、ん~~~~~」
「なにひとつどうでもよくねぇよバカが」
頭を掴んで向こうへ追いやる。「む~~~」とか言ってもダメです。さっきから波線を使いすぎだ。とりあえず身支度。ボサボサの頭を掻きながら洗面所で歯磨きをする
「お前も身支度しろ、年頃の女がはしたねぇカッコしてんじゃねぇ」
口をすすぎ、さっぱりする。大分歯ブラシの先っちょが開いてきた。そろそろ買い替え時かもしれない。
「歯ブラシ忘れちゃったからおにいちゃんの貸してね~」
「ふざけたおせ、ほざきやがれ、いい加減にしやがれバカ妹」
「はぁん……その蔑むような視線、氷よりも冷たい言動、タマリマセンなぁ/////」
誰か助けて……
ここまでのイヅナの変態的特徴ワースト3を抑えておこう。
1・極端なブラコン。寝込みを襲われた経験数知れず。
2・なぜか小生に対してだけドM
3・甘えたがりを通り過ぎて兄に盛っている。甘えたい盛りとか、そういうレベルではない
以上。抑えました!!パタン…ハァ…
「他の女の匂いがする…」
ビクッ!! 怖!! 光彩の消えた目がこちらを見てます。ヤンデレの妹に愛されすぎて夜も眠れません(貞操的な意味と命的な意味で)
「仕事で一緒だった刹那さん以外に誰かとあったのかな?かな?」
「その喋り方止めないと怒るって何度言ったらわかるんだ…」
もうここまで来ると色々とヤバそうなので(鉈的な意味で)仕方なく秘密を打ち明けることにする
「後でこっそり教えてやる」
「なになに?お兄ちゃんの好みのプレイでもおしえてくれるの?!」
「じゃかぁしいこのバカが!! 浪花一閃ツッコミチョップ!!」
「むしろごほう…痛いっ?!」
小生とは真逆の容姿。髪の色は深い蒼のショートカット、赤渕のメガネ、身にまとっている服はジューダスゴシック上下。
白いものを多く身につける小生とはまったく方向性が逆だ。数年前…小生の髪が白に変わったとき、彼女はゴッドイーターになることを決意した。
そして数年後、白と黒の死神(ジョーカー)兄妹の片割れとして、フェンリル内でも5本の指に入る実力になりあがっていた。
小生のせいで家族が、戦うことでしか明日を見出せない兵隊になってしまった。この世界では失うことを恐れてはいけない。
生き物死ぬは自然の摂理、それがどんなことであろうと変わらない事実。だが、せめてこいつだけは。アラガミなんかに殺させやしない。兄として、家族として、ゴッドイーターとして。
バッドエンドなんぞ、小生が喰いちぎってやる。
「ふ~ん…まぁとにかく会ってみないと解んないだろうね~…」
事のあらましを大体に説明した。小生とイヅナはコウキの個人研究室に続く廊下をゆっくりとしたペースで歩いている。寝起きだからだ。昨日の戦車祭りの余韻か、起きぬけはとてもだるかった。
「そうだな。どれにしろ、面白そうなことに変わりはない。0.1パーセントでも面白みはあったほうがいいからな」
「すっごい冷えた言い方してるけどさ。めっちゃ口元緩んでるよ?本当は面白そうでたまらないんでしょう?かわいいなぁかわいいなぁ抱いて!」
本当に自分の欲望には忠実だ。こいつの願いは出来るだけ叶えてやりたいが、こればっかりは絶対にダメだ。妹を思う故に、である。……小生も大概シスコンなんじゃねぇか?そう思わないこともない今日この頃
コウキの研究所の前に付くと、ドタンバタンと音がする。派手にやってるようだ。
「イヅナ、小生の後ろから離れんなよ?」
「は~い♪」
意を決して扉を開く。