「俺のメガネ返せーーーー!!」
「あははははははははは!!!」
「はぁ…」
書類が宙をまい、機材の一部は凹み、…なんかもうてんやわんやである。メガネを盗られたコウキがメガネの奪還を試みて少女を追いかけている。
それを端っこで刹那が呆れた様子で眺めている。何もしていないのは自分に何もしようがないことを悟ってのことだろう
そういっているうちに少女が走ってこっちに向かってくる。マズイ、少女の姿とはいえ相手はアラガミだ。追突されたら肋骨の1~3番ぐらいは持っていかれるかもしれない。
自分の後ろにはイヅナ、ここが最後の砦、ここから外に出られては面倒が多すぎる!!覚悟を決めて踏ん張る!!
ぼふっ!!
入りましたぁ!! 腹筋辺りにものすごい痛みを感じます!! 正直、たまりません!! …勘違いすんじゃねぇ、小生にM属性はない!! 内臓がつぶれそう的な意味だ!!
「あ~ん…」
止まってしまったことが残念なのか、少女は少し後ろに下がる。
「よしよしいい子いい子…お願いだからそのままおとなしくな~…」
頭を撫でながら、ゆっくりと少女を中へと戻す。何故か幼いものの扱いには慣れている。誰に教えられたわけでもないのに。あと小生はロリコンではない。イヅナも付いて中に入り、ドアを閉め、ロックをかける。
「…ゲホッゲホッ…やばかった…朝食べたウィンナーが出そうになった…」
「お兄ちゃんのウィンナー、美味しかったなぁ~////」
「もう黙れお前は。小生だけならまだしも、他人がいる状態でそういうこと言うのは止めろ。もう朝食作ってやらんぞ」
「ちょーしょく?」
少女が不思議そうな表情を見せる。今日の本題だ。
「そう、朝食。朝ごはん」
「ごはん?!ごっはん~ごっはん~♪」
「理解は早いようだ。主に食事関係だが」
コウキが先ほどの衝突の際に少女の手から落ちた自分のメガネを拾う。コウキには悪いが、服がぼろ雑巾のごとく破けていた。フェンリル支給の服なんで安いっちゃあ安い。なので買い戻すのは苦ではないが。
「マキリは…いいか。あいついると小生が突っ込みに疲れる」
「呼ばれてるとかそんなものはどうでもいい、少女がいればそこに俺あり!! マキリ参上!!」
「「「おうわぁぁぁ?!?!?!?」」」
天井の板一枚が剥がれてそこからマキリが現れた。最近神出鬼没がデフォルトで備わるようになったマキリである。天井からの登場なので少し埃がついている
「まぁ残念ながら共犯者全員集まったとこで、会議を始めよう」
「小生の見立てではこいつはおそらくスサノオが人型になったモンと思うんだ。暴れてたときにどこからともなく出したあの大剣は、それこそスサノオの尻尾の先の剣にそっくりだった。
そして捕食器官が神機にそっくりだったのもそれで合点がいく」
スサノオ。
「神機使い殺し(ゴッドイーターキラー)」の異名を持つ第一種接触禁忌アラガミ。
神機を好んで捕喰するという偏喰傾向から、アラガミ化した神機使いの成れの果てとも噂されるが、その生態は謎。名前の由来は、日本神話に登場する神スサノオ(スサノヲ、スサノオノミコト)より。
日本神話における三貴子の末子に当たる。ヤマタノオロチ退治等で有名。
引用・GODEATER WIKI
漆黒の体躯、頭から背中にかけて生えた淡い桃色の長い髪、サソリのような概観。両手のはさみは神機の捕食器官に酷似しており、何の皮肉か、神機を好んで捕食をするという神機使い殺し。
あまりの危険性から一般の神機使いは接触すら禁止されているアラガミだ。
「ここにいる奴らは大体がそうだろうと思ってただろう。しかし驚いたのがこいつの偏食傾向だよ。まさかコア摘出後のアラガミ繊維を好んで捕食してるとは…」
マキリが神妙な面持ちで話す。また用語が出てきたので解説しておこうか。偏食傾向とは、アラガミが持っている捕食傾向のことである。簡単に言うと、アラガミにも好き嫌いがあるってことだ。基本的に自分と同じ外観のものは捕食しない。
「なぜこんなことになったなんて考えるのは野暮でしょうが…おそらく前回の事例と同じ、と考えてよさそうですね」
簡単かつ端的に刹那が解説する。アラガミが進化する過程で行き着いた、進化の袋小路。それが人型だったのだ。
「早い話がアラガミ 腐肉食動物(スカベンジャー)ってことか」
コウキが机の上で手を組み、若干俯くようにしてつぶやく。メガネの反射で目は見えない。どこぞの指令か
「言い方が気に入らんが、おそらくそうだろう」
腐肉食動物とは、捕食者(プレデター)の後に付いていって捕食者の食べ残しをあさる動物のことである。なるほど、神機使い(プレデター)の後から出て行って死体を喰らう。だがその言い方が小生はとても気に食わなかった。
「まさか神無月?こいつをヒトとして見てんじゃねぇだろうな?こいつは腐ってもアラガミだ。いつ襲い掛かってくるか分からないんだぞ? 詳しいことも解っていない状況で、憶測だけで物事を進めるのはどうかと思うがな」
コウキがキラリとメガネを輝かせながら冷静かつ冷徹な物言いをする。彼とは同期だが、はっきりいってそんなに過去を知っているわけではない。
みな暗い過去を持ちながらに生きているやつがほとんどなので、彼もそうなのだろう。だから小生はあまり強くはいえなかった。
「そういうお前こそどうなんだ?そのいつ暴れだすか分からないアラガミをあろうことかフェンリルの自分の研究室に招きいれたんだ。お前もナニか期待することがあってのことだろ?」
不遜な笑顔を浮かべながらマキリがいう。こいつにだけは弱みを握られないようにしよう。あとナニをカタカナ表記にするな、なんか不吉だ
「とりあえず、だ。とっととその精密検査をしておこう。もしかしたらなにか面白いことが分かるかもしれない」
後ろではイヅナと少女が追いかけっこをして遊んでいた。
数日後、小生とイヅナはアラガミ討伐ミッションを受けていた。ザイゴートやオウガテイルなどの雑魚一掃ミッション、アラガミの少女も一緒である。
少女のアラガミとしての身体能力その他もろもろなどを調べるためだ。小生たちにとっては簡単すぎるミッションだが、ここのところハードなミッションばかり受けていたので丁度いいミッションになった。
「ごーはーんー♪」
「こうしてみるとただの無邪気な子どもにしか見えねぇけどなぁ…」
「こういう娘に限って不幸が降りかかるものだけど…どうしてだろうね、この娘には幸せになってもらいたくなるっていうか」
いつの時代もそうだ。無邪気で、邪を知らない子どもが真っ先に犠牲になる。汚れきった大人だけが生き残り、自らの私腹を肥やし、己の保身だけを考える。いつの時代だってそうだ。
その大人も今の時代となってはただの捕食対象に成り下がり、小生たちゴッドイーターに生かされているに過ぎないのだが。(そういう言い方はしたくはないのだが)
「今回は時間もあるし、3人そろってのらりくらりエリア内を散策しよう。ちなみにターゲットの数はオウガテイル4体、ザイゴート5体だ」
「了解!」
「ん~~~?りょーかい?」
不思議そうに首をかしげる少女。この娘の教育のことも考えなければなるまい。帰ってやることが出来てしまった。
「わかりましたーってことだよ」
「ん~~~~?」
…………予想以上に難航しそうだが。
「えぇい!!やぁあ!!」
イヅナが振るったヘルサイズ真が空中のザイゴートを次々撃墜していく。一匹がイヅナに突進するが、ジャンプでかわされ、頭上に乗っかられる。
「ゴメンね、とっととくたばって?」
超至近距離(というかゼロ距離)からのインパルスエッジがザイゴートの目玉を完全に粉砕する。イヅナの服は暗い色をしており、返り血がほとんど目立たない。だがうっすら浮かぶ血の色は、彼女の強さを表していた。
ザイゴートが地面に落ちる直前に一回転ひねりジャンプで着地するイヅナ。我が妹ながら、恐ろしいやつよのぅ…
「お・に・い・ちゃ~~ん!!」
着地と同時にステップで接近、後ろから腰辺りに抱きついてくるこの動作がなければ完璧だったんだが。顔をぐりぐりするな。手が小生の前のほうをまさぐろうとしてきたので手首を掴んで引き剥がす
「やめろ。戦闘区域で軽率な行動は避けろ。兵法の初歩の初歩じゃねぇか」
「だってお兄ちゃん、いい匂いするんだもん…なんていうか、クセになる生臭さというか…」
「やかましい!!! なんもしてねぇよ!!」
「え?ナ二をしてたのお兄ちゃん? そこんとこ詳しく私と一晩熱く語りつくさない?」
「もう黙れよ…この娘が空気じゃねぇか…」
「めだまうま~♪」
ぐちゃぐちゃと肉を喰いちぎる生々しい音を響かせながら、少女はザイゴートやオウガテイルの死体を美味しそうに捕食していた。なぜか捕食器官の租借と同時に顔の口ももぐもぐいわせている
「純粋無垢ゆえタチの悪い…」
「悪逆非道にございますってか…」
捕食器官を器用に使い、ザイゴートの柔らかい目玉の部分をえぐり出す様にして食べている。さっきの目玉が粉砕されたやつは普通に丸ごと食べていたが。
「とりあえずこんなところか。ミッションコンプっと」
Pipipipipipi
神無月の携帯がけたたましい音で鳴り出した。これは…エマージェンシーコール?
「…zーーーzー…こ……た…」
電波状態が悪いのか聞こえにくい。発信場所はこの近くだった。ゴッドイーターが使う携帯電話は、緊急時の応援が早急に場所に到達できるように発信位置まで画面に表示される。
「誰からだろ?この近くだよね?」
「わからん。だが大物である可能性は十分あるわな。おそらく単独で大物に挑んでやばくなったってとこだろ」
「もっとごはん~~」
丁度いい。少女も飢えているようだし、行ってみるか。いざとなればスタングレネードでそいつを目晦ましして…
「お兄ちゃん?眼が濁ってるよ?」