空を見上げる。
南国の海にも似た透明な青。デュフォーは、今までの戦いを思い返していた。奇跡的な出会いから始まり、怒涛のように過ぎていった日々。ひたすらに全てを憎み、全てを力で圧倒しようとしていたのも遠い昔のように感じる。
ゼオン、お前と共に過ごした日々は、刺激的だったよ。本当なら終わっていた人生を変えてくれた。絶望に打ちひしがれた俺を救ってくれた。ありがとう。
途方もなく広がる平野をゆっくりと歩く。不意に頬を撫でた冷たい風に、少し身を震わせた。先の戦いで王が決まったと知るや否や、俺は旅に出ることにした。これから沢山の感情を学ぶのも、遅くはないだろう。彼に教えてもらった大切な道標だ。
そうして記憶に浸っていると、ふと頭上で何かが光った。一筋の銀の光が落ちてきて、眼前で止まる。これは、封筒か。手に取り開けてみると、記憶の中の彼が綴った手紙と、写真が一枚入っていた。魔界の言葉で書かれているが、不思議とすらすら読める。
文章からは、ガッシュを支えるべく奮闘している姿が伝わってくる。弟と再会でき、わだかまりもすっかりなくなったらしい。あぁゼオン、お前は幸せになれたんだな。憎しみに駆られていた頃とは違う、平和な世界を得られたんだな。
遠く離れた地で生きる家族を想うと、自然と口元が緩んでしまう。今はもう帰ってしまった彼を想い、これからもずっと幸せであることを願う。願わくば、いつの日か再会できることを信じて。
手紙を読み終えると、封筒が本の形に変わり、上空へ飛び去ってゆく。初めて見た時から、この魔本がどうなっているのか仕組みが理解できない。手紙と写真を大切にたたみ、大きなリュックサックの中にしまう。そして旅を再開する。彼との、生きろという約束のため。
……。
長く続く平野を歩いている最中だった。しばらく進むと、ふと見覚えのある建物を見つけた。無骨で堅牢そうな作りに見える。まさか、あれは。意図せずに言葉をこぼしてしまう。
「あの時の研究施設、なぜここに。爆破して無くなったはず…」
幻のように現れたそれ。アンサートーカーを使うが答えは出ない。問いを浮かべると瞬時に答えが弾き出される能力。デュフォーはこの異質な力を持っていたため、科学者に売られ利用されていた過去を持つ。
近くで見ようと動きだしたその時、強い頭痛に襲われる。そして、辺り一面が眩い輝きに包まれてゆく…。
「何だ、何が起こっている…」
周囲の明るさが元に戻る。そこにデュフォーはいない。