黒陰の中で海を歩く   作:なもなきなにか

5 / 8
契約 前編

 

 

 

春海「······これは?」

 

紅刃「見て分かると思ったんだが······まぁ艤装だ」

 

春海「誰のですか?」

 

紅刃「一応は春海用のだ」

 

春海「私の適正艤装じゃ無いですよね? まず大きさ的に」

 

紅刃「お前の艤装コアを素材にしてるから使えるとは思うし、念を入れてサポートにちょっとしたシステムも使ってあるから大丈夫だ」

 

春海「······本当に大丈夫ですか?」

 

紅刃「大丈夫だとは思うが······ひとまず着けてみればわかる」

 

 そう言って紅刃は入り口で止まっていた足を動かし始める。

 多少の······いや、だいぶ大きな不安を抱きながらも私は紅刃の後を一歩ずつ付いていく

 

紅刃「ひとまず着けてみてくれ。そうすればその後のチューニングとかができる。最悪作り直すことになるが······そん時にゃリクエストも取り入れる予定だ」

 

 という紅刃の言葉を聞き、『今着けなければまた後でやることになるだけだろう』とそんなことを思った。

 

春海「······本当に大丈夫ですよね?」

 

紅刃「ああ! 大丈夫だ。······もしも駄目だったら艤装を強制シャットダウンするから安心しろ!」

 

春海「着けてから言わないでくれます?」

 

紅刃「悪ぃ悪ぃ。そいつ自体は起動(イグニッション)って言えば接続できるからさっさとやっちゃいな」

 

春海「艤装名は?」

 

紅刃「適合してから教える」

 

春海「わかりました。では“起動(イグニッション)”」

 

 そういうと同時に私は、艤装に吸い込まれていくような感覚とともに意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、次に意識を取り戻すとそこは光のない空間······言い表すならば、混沌の渦とでも言うべきだろうか? そんな空間に私は立っていた。

 

春海「ここは一体······?」

 

 という私の問いに答えるかのごとく、どこからか声が聞こえる。

 

「ようこそ同志よ! 我々の中へ! 我々は貴殿を歓迎するぞ」

 

春海「誰ですか!? それに『我々の中』ってどういう······」

 

「そんなことより顔を見せてくれ。目を見て話そうではないか!」

 

 不安定に響いていた声が不意に後ろで収束して聞こえ、振り向くとそこに藍色のタキシードのような衣服を纏ったル級が立っていた。

 

ル級「改めて、ようこそ My master」

 

 彼女はそう言って礼儀正しくお辞儀をして「質問はございますか?」と問いを投げかけてくる。

 

春海「······聞きたいことはいくつかありますが、まず最初に『ここはどこか』そして次に『あなたは誰か』まずはこの二つを答えてください」

 

ル級「はい。ここは我々『ザザザザッ』の中になります」

 

 とそこまで言うと、ル級の纏う衣服は赤黒く変色し、オーラ? のようなものも変化した。

 

ル級「そして、『ザザザザッ』のコアに棲まう者。核棲者であり、貴公のサポーターとなった者だ」

 

春海「名前を教えて下さい。それと口調や服が変わった訳も」

 

ル級「焦るな主よ。名前なら核棲者なのだが······強いて名乗るなら『ルイン』とでも名乗ろう。姿がル級だからな」

 

 言い終わると同時にルインの纏う衣服は藍色に、オーラもまた先程のものに変化する。

 

ルイン「三つ目の問いへの回答ですが、我々『核棲者』は『ザザザザッ』の名前の通り、様々な魂及び艦種が混ざっているので極稀に他の魂が表側に出ます。現在My masterが会話した二つの人格······というか魂が主に出ていますが、後々、他の子達とも仲良くして頂けると幸いです。

 さて、一つお願いなのですが彼女の質問に答えていただけませんか?」

 

春海「彼女? もう片方の魂さんのことですか?」

 

ルイン「はいその通りです。無理にとは言いませんが。受けて頂ければ、彼女が持つ経験という力を十分に貸してくれることでしょう」

 

春海「? だとしたらあなたの役割は何なんです?」

 

ルイン「それについての答えは彼女の質問を受けるかの選択をした後にお答えします。彼女がきちんと我慢して表に出て来なければ······ですが」

 

春海「······わかりました。私は赤ルインさんの質問を受けます!」

 

ルイン「そうですか。私からも感謝申し上げます。では、先程の質問についての回答を······」

 

 その時、ルインの衣服がまた赤黒く変わっていき、周囲の空気······いや、ルインからの圧が変化する。

 

ルイン「ふふッ我が赤なら奴は青か? わが主よ」

 

春海「そう······ですね。ですが青ルインさんの話を先に聞きたいので代わってもらえませんか?」

 

ルイン「まぁそう急くな主よ。我の問いに答えてからでも聞けることだ。それなら別に後回しでも良いであろう?」

 

春海「······確かにそうですね」

 

ルイン「最悪、我からでも伝えられることである故、教えることもできるが?」

 

春海「いや、青ルインさんから聞きたいので大丈夫です」

 

ルイン「そうか。奴の出番を減らせると思ったのだが残念だ。······ではそろそろ質問を始めさせてもらおう。

 ······と思ったがその前に主よ。貴方の名を聞かせてくれないか?」

 

春海「私の名前ですか? 知ってるものかと思ってました。

 白露型の五番艦の春雨。名前は深代 春海といいます春海で呼んでください」

 

ルイン「ふむ。それならばそう呼ばせてもらおう。では本題だが、我々という力を得たとして、どのような目的に使い、何を望む? 平和か? あるいは復讐か?」

 

春海「なぜそんなことを聞くんです?」

 

ルイン「なに。ただ道具として使用者の目標を聞いておきたいだけだ。その方が色々と動きやすいし、助言もしやすい」

 

春海「······わかりました。でも、目標と言われても今は特に無いです。強いて言うなら復讐とは違う形で元いた鎮守府の仲間を“解放”したいとだけ」

 

ルイン「“解放”ねぇ······先にいっておくが全員が望んでいるとは限らんぞ?

 それでもやるか? ハルミ嬢」

 

春海「全員が望んでいるわけでないのは分かっています。でも、私と同じ様な沈み方をする人を少しでも救えるならそれでいいです。私みたいな偶然は多分······もうないでしょうから」

 

 言い終わると同時に激しい頭痛が私を襲った。

 

春海「痛ッ······すみません。ちょっと頭痛が······」

 

ルイン「主よ落ち着いて深呼吸をするのだ! そうすれば収まるはずだ!!」

 

 ルインのその言葉すら今の春海には痛みを増長させるだけのものであり、そのまま彼女の意識は痛みによって押し潰された。

 押し潰される寸前、彼女はナニカの声を聞き、同時に意識は押し潰された······

 

 

 






)あとがき的なとこ(

 思ったよりも長くなり過ぎてます。予定では艤装の名前を明かすあたりまでのつもりだったのですが······
 設定などの疑問点もコメント頂けると嬉しいです。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。