黒陰の中で海を歩く   作:なもなきなにか

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契約 後編

 

 

 再び春海が目を覚ますと、そこは元いた工廠――ではなく、ルインたち核棲者(かくせいしゃ)が棲まう『???』の中の混沌空間だった。

 

 

春海「まだ······この場所ですか」

 

 起き上がろうと力を入れるのだが、押さえつけられているのか、起き上がる事はできなかった。

 

 「なんで動けないんでしょう?」そう思いながら、周囲を見渡すために少し上を向くと、動けない理由はすぐに分かった。

 

春海「ルインさんが膝枕してくれていたんですね。でも、このままじゃ動けませんし······ルインさん! 起きてください!」

 

 春海が呼びかけると、ルインは目を開き一度深呼吸をして

 

ルイン「おはようございます。頭痛はもう大丈夫ですか? My master」

 

春海「頭痛はもう大丈夫です。心配してくれてありがとうございます」

 

ルイン「それなら良かったです」

 

 

 

 話によると、私が倒れた後すぐに青ルインさんに代わり、膝枕しながら起きるのを待つつもりがそのまま寝てしまっていたらしい。

 

春海「······そういえば赤ルインさんはなんて?」

 

ルイン「力は貸してくれるみたいですが、今は出てきたくないそうです。

 ······あと、そろそろこの混沌の様な背景嫌になってきたので変えていいですか?」

 

春海「······できるんですか!?」

 

ルイン「一応は精神世界の類ですので。

 どのように致しますか?」

 

春海「なんでもいいです。こういう気持ち悪い系じゃなければなんでも······」

 

ルイン「承りました」

 

 青ルインさんはそう言って私に軽い礼をすると、同時に混沌だった世界が明るい花畑の風景に変わった。

 

ルイン「では、続きのお話はこちらで」

 

 そうしてルインに付いて行くった先には某フレクル戦艦が居れば確実に優雅なティータイムが始まっていると断言できるレベルのテラス? があった。

 

春海「······何なんですかここ」

 

ルイン「精神世界ですから何でもできるんですよ。では、お話はティータイムしながらでいいですよね?」

 

春海「そうですね。立ち話は疲れますから······それでお願いします」

 

ルイン「はい♪ ではこちらへお掛けください。My master」

 

 ルインに言われるまま春海は椅子に腰掛けた。

 ルインもティータイムの用意を終わらせてからその向かい側の席に座る。

 

ルイン「お待たせしました。さて、それでは私の役割についての話からでよろしいでしょうか?」

 

春海「お願いします」

 

ルイン「はい。極端に言ってしまえば、私の役割はこの艤装の管理及び基本的なアドバイスです。

 ······ちなみに彼女の場合は戦艦装備の担当アドバイザーと近接戦闘の教官という形になっています。

 他の核棲者(どうほう)も一人につき一つの艦種を担当しています」

 

春海「······つまり青ルインさんは艦種じゃなく全体を担当しているということですか?」

 

ルイン「いいえ。正確には輸送艦担当ですが基本的に輸送艦は使われませんので潜水艦と空母以外の全艦種の担当者代行が可能になっているだけです。

 簡単に言ってしまえばどの艦種としても動ける輸送艦。もっと簡単にすると、格闘ゲームの持ちキャラ以外でも上手く使えるけれども持ちキャラだとプロレベルな人です。

 ······説明が通じているかはともかく、駆逐、潜水艦以外の各艦種の担当者が力を貸してくれるようになるまで私がその艦種を担当します」

 

春海「······わかりました。

 ······他の艦種担当の人もルインさんだったりします?」

 

ルイン「いいえ。他の担当者は、各々の姿とコードを持っています。······彼女の『ルイン』のコードは先程思いついたようですが······」

 

春海「?······青ルインさんには別の名前もあるんですか?」

 

ルイン「いえ、私は名前も姿も無いので彼女と同じ姿で『ルイン』と名乗ることに決めました。

······青ルインを簡略化して『アオ』とでもお呼びください」

 

春海「はい。それでは改めて、よろしくお願いします。アオさん!」

 

アオ「こちらからも、改めて宜しくお願い致します。Master」

 

 

 

 それから二人は他愛もない話を交えながらティータイムを楽しんでいた。

 ポットから紅茶がなくなった頃、春海がふと思い出したことを言葉に乗せる。

 

春海「······そういえば、ここからはどうやって出ればいいんですか?」

 

アオ「はい? ······ここから出るには『出たい』とか『戻りたい』と念じれば出られますよ?」

 

春海「本当ですか!?」

 

アオ「はい。本当です」

 

春海「もっと早く教えて下さいよー」

 

アオ「すいません。知っているものとばかり······それともう一つ。再びこちらに来るときも念じれば来れます」

 

春海「わかりました。それでは私はこれで一旦帰ります」

 

アオ「畏まりました。また会える日を楽しみにお待ちしています。Master」

 

 その言葉を背に私は『帰りたい』と念じた。視界が暗くなっていく途中、アオさんが何かを言っていたようだが、聞き取ることはできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 意識を取り戻すと同時に目を開き、辺りを見回す。

 どうやら、ちゃんと工廠に戻ってこれたようだ。

 

「終わったっぽいな。おかえり。あとお疲れさん!」

 

 後ろから声が掛けられ、直後に『ガァン』と鉄板が床に叩きつけたような音が響く

 

春海「ただいま戻りました······でいいんでしょうか?」

 

紅刃「細かいことは気にするな! 禿げるらしいぞ?」

 

春海「女性は禿げません。それに私達の場合禿げたとしても入渠すれば治ります。多分······」

 

紅刃「そうなのか!? ······まぁそんなことはどうでも良いか!」

 

春海「······確かに今の私達にはどうでもいい事ですね。

 ······そういえば接続してからどれくらい経ちました?」

 

紅刃「ん〜······5分以上、10分未満かね? 本来なら1分も掛からない予定だったんだがね〜」

 

春海「すいません。中でティータイム······というか女子会してました」

 

紅刃「あぁいや、別にお前は悪くない。ただ自分の未熟さを再認識しただけだ

 こいつのシステムはとあるシステムを模したものを使ってる。

 だが、そいつらの場合は中で何やってても10秒程で出てくるから、もっと完璧に真似ないとなってだけだ。

 もう一度言うが、春海は微塵も悪くないから気にするな」

 

春海「分かりました。······ていうかさっきから気になってたんですが、なんですかその剣!? 装飾だと思ってた目玉もギョロって動きましたし、なんか禍々しいですし······」

 

紅刃「ん? あぁこれか! こいつは『ソウルエッジ』っていう異世界の魔剣のレプリカなんだとさ。兄貴くれた時に言ってた」

 

 紅刃は軽々と担ぎながら説明をするが、春海は疑問を感じて質問を投げ掛ける

 

春海「レプリカならなんでその目が動くんですか?」

 

紅刃「ん〜と、確か······レプリカだけどレプリカじゃないから······だったっけ? まぁアタシもよく分からん! 使いやすいからサブで使ってるだけだ!」

 

 その説明を聞いて困惑する春海を気にせず再び紅刃は床へと剣を立てる

 

紅刃「話を戻すがその艤装の名前。まだ言ってなかったよな?」

 

春海「······」コクン

 

 紅刃が声を掛けると、春海は虚ろな感じではあるもののコクリと頷き、それを「まだ聞いていない」という意味と取った紅刃は一拍おいて話を再開する

 

紅刃「そいつの艤装名は「『アマルガム』」······中の奴らに聞いたのか?」

 

 紅刃が質問を投げると、春海は眠気が覚めたかのように紅刃に目を合わせ

 

春海「······すいません。ぼーっとしてました。······なんの話でしたっけ?」

 

紅刃「お前の艤装の名前の話だ」

 

春海「あぁ、そうでした。それで、なんて名前なんですか?」

 

紅刃「······さっきお前が言った通り『アマルガム』だ。中のやつから聞いたのか?」

 

春海「初めて聞きましたよ? ルインさん達に聞こうにもノイズみたいなのが走って聞こえませんでしたし······」

 

紅刃「そうか。······じゃあさっきのは一体······」

 

 瞬間、工廠内に「電話だよ。電話だよお姉ちゃんから電話が来たよ」と凍華さんの声が響き、紅刃は懐からケータイを取り出して電話に出た。

 その間、私は口を閉じていた。

 

紅刃「······あぁ······了解! 春海も連れて向かう。もう少し耐えててくれ!」

 

 と、電話を切って私の方へ向き直った

 

紅刃「春海。こんな時間からで悪いが出撃だ。何も聞かずに着いてこい」

 

 いつものユルめな時と違って真剣な表情の紅刃は海へと向かって行き、私もその後に続く

 

 

 

 海に足をつけ、潮風に包まれる。

 水平線に反射する夕日で目が少し痛いが、そのくらいはなんとかなるだろう。

 

紅刃「アマルガムの初使用で初出撃だからヤバいと思ったらアタシがカバーするし、最悪逃げても良いが、ここの場所だけはバレないようにな」

 

春海「わかりました。最悪、逃げるだけ逃げて撒きます。······できる限りは戦いますけど······」

 

紅刃「ん。大丈夫そうだな! 

 じゃあアタシは先に出てるから、慣らしながらでゆっくり来てくれ」

 

 そう言い残して紅刃は水面を蹴り、大海原へと走って行った。

 

春海「······よしっ! 私もできる限り早く追い付きましょう!

 『アマルガム』起動(イグニッション)!!」

 

 春海は張り切って叫ぶ。同時に脳内に直接アオの声が入ってくる

 

アオ「張り切っているところ申し訳ございませんMaster。二回目以降の起動は、使いたい艦種と艤装名。例えとしては『輸送戦艦アマルガム』とコールしていただければ自動で起動及び展開致します」

 

春海「そうなんですか!?

 ······なら改めて『輸送戦艦アマルガム』出撃します!!」

 

 ······そうして、彼女もまた大海原へと駆け出して行くのだった······

 

 

 





)あとがき的なとこ(

 黒陰の章は一旦この辺で止めます。
 本編を適当に進めてからこっちも再開する形で考えてます。
 次回は紅刃視点からの予定です。

 それと書きだめしていたのもこれが最後ですので、次回は相当後になります。


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