ケモミミだらけの異世界で顔の良い人に拾われた件について   作:疾風怒号

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番外編です。







EX:開封、或いは「箱の中身はなんじゃろな」

 

「…………」

 

今、俺の目の前には金属の箱がある。1ヶ月と少し前にモスティマから渡された(押し付けられた)あの箱だ。アーツで中身を探ろうとしても相変わらず中身は見えず、開けるか開けまいかでここ暫くずっと悩んでいる。

 

 

「エンシレント、何してるの?」

「あぁ、今この箱を開けようかと……ってお嬢様ッ!!??」

 

 

いつの間にか背後に立っていたエンシアお嬢様が肩越しに箱を覗き込んでいるッ!何たる隠密行動!ゴウランガ! いや冗談じゃないぞ何で俺の部屋に入り込んでんだこのお転婆雪豹アイドル顔負け美少女。近くで見ると滅茶苦茶可愛い、の割に目付きは兄貴譲りで割と鋭いのがまた魅力だよな!

 

 

「あー! 隠さなくても良いじゃん!」

「隠すというか……、コレ普通に危ないかも知れないんですよ! ほら早く出てって出てって!」

「ふーん、そんなに危ない物を此処で開けるんだ、ふーん?」

「こんの…………」

 

 

眼を細めてニヤニヤと笑った憎たらしい顔(メスガキフェイス)に一瞬拳を握り掛けて堪える。此処で怒ったら負け、此処で怒ったら負け、落ち着いて要件を聞こうじゃないか。俺はクールな男、だからクールに対応できるぞフハハハハ。

 

 

「…………で、お嬢様はどうして此処に?」

「やる事が無くて、お姉ちゃんも最近は忙しいみたいだし」

 

 

つまり暇って事ですか、俺は暇じゃないんですけど。

 

 

「クーリエは?」「配達」

「ヤーカは?」「夕食の仕込み」

「エンシオディス様……は言うまでもないか。 エンシアお嬢様、お散歩でも行ってきたらどうです?」

 

 

俺が箱をくるくる回しながらそう言うと、お嬢様はぷぅと頬を膨らませた。

 

 

「お兄ちゃんが『外に出る時は護衛を付けろ』って」

「あぁ〜……、なるほど」

 

 

要するに俺に残された選択肢はお嬢様を部屋に入れておくか、お嬢様の護衛として付いて回るかのどちらかに限られると言う事だ。まさに八方塞がり、ブッダはまだ寝ているらしい。

 

 

「……此処にいても構いませんけど、大人しくしていて下さいよ」

「はーい!」

 

 

仕方が無いのでお嬢様は放置する、決して諦めたんじゃない、一番良いと思った選択肢を選んだだけであって決して俺は諦めたりなんかしてない。箱の中身もまぁ……爆発物とかでは無いだろ、あの距離感バグ女でもそんな滅茶苦茶な真似はするまい。…………俺は信じてる。

 

 

「で、その箱は何なの?」

「頂き物ですよ、ラテラーノから帰る時に貰った餞別です」

「中身は?」

「それが分からないから困ってるんですよね……」

 

 

エンシアお嬢様が箱を突っついた、金属製の底面がテーブルと擦れて硬い音を立てる。

 

 

「っていうか、この箱、鍵穴が無いよ?」

「多分ですけど鍵なんて元々無いんです。こうやってちょこっと捻れば…………ほら」

「わ、開いた」

 

 

がきん、と音が鳴り、箱の上下に隙間が出来る。これなら簡単に中身を見る事が出来るだろう。…………その中身が心配なのだが。

 

 

「……見ないの?」

「『見たくない』んですよ、間違いなく変なのが入ってますから」

「じゃあ私が見るね!」

「あー!!!!待って待ってストップ!!!!」

 

 

当たり前のように手を伸ばしたお嬢様から箱を取り上げて立ち上がる。腕を上に伸ばせばお嬢様では届かないのでモーマンタイだ。油断も隙もないなこの子……。また頬を膨らませたお嬢様を座らせてから俺も座り、テーブルに箱を戻す。

 

 

「……開けますから、危ない事はしないで下さい…………」

「むー……」

「万一貴女が怪我でもしたら、俺は即刻解雇ですからね?」

「その時は私が雇ってあげる!」

「おおーそいつは有り難い」

 

 

どうやらシルバーアッシュ家の次女様には気に入られているらしい。気に入られる事した覚えは全く無いけど。銀色の眼をきらきらさせてサムズアップしたお嬢様に曖昧な愛想笑いを返して、箱に手を掛ける。

 

 

「したら開けますよ、危ないと思ったら俺を盾にする事、良いですね?」

「りょうかーい!」

「良い返事です。それじゃ、いきます!」

 

 

硬い蓋を勢い良く開く、勢い余って中に詰められていた緩衝材が部屋に舞ったが、それはすぐに振り払われた。そうして視界に映った物は…………

 

 

「……なにこれ」

「…………コイツぁ……参ったな。 お嬢様、使うようで申し訳ないのですが、エンシオディス様を呼んできてくれますか?」

「分かったけど……コレは?」

「コイツは『銃』、ラテラーノが誇る立派な武器です。それもコレは……中々に上等な筈…………」

 

 

…………ヴァーチェを殺傷し、俺の角を抉ったあの大型拳銃だった。

 

 

 

 

 

###

 

 

 

 

 

 

あの後どうなったか、全て説明すると長ったらしいので、忘れない為にも要点を纏めて此処に記そうと思う。

 

 

一つ、この銃は俺が引き続き預かる事。

 

一つ、その代わりこの銃の存在を一部を除いた誰にも知らせない事。

 

一つ、次に持ち主に遭った時に返す事。

 

 

そして、この三つのうちどれか一つでも破れば、その時は()()()()()を払う事。それさえ守れば特にお咎め無し……らしい。相応の対価、恐らく吹雪の中に放り出されるか、物理的に首が飛ぶかのどちらかだろうな。考えるだけで首元が寒くなってくる。『ラテラーノ公民以外がラテラーノ公民の守護銃を所持している』というのはそれだけで厄介事という訳だ。正直今すぐ壊して捨てたい所なんだが……。

 

 

「モスティマめ、次会ったら絶対押し付け返してやるからな」

 

 

引き受けた手前、そんな無責任な事はしたくない。というのも本音だった。

 

ケース内に入っていたのは大型拳銃本体、改造品らしい六角柱のバレルには『Probare te in nomine Domini(神の御名の下に貴方を試そう)』と一行刻印が刻まれ、薄気味悪い程に細やかなレリーフが彫り込まれている。木製のグリップにはラテラーノのマーキングが焼き付けられていた。

 

そしてもう一つがカラビナのついたバレットベルト、真鍮の薬莢に収まるのは怪しく光る黒い牙、驚いた事に純正源石製だ。恐らくは吐き出された弾丸の先に衝撃が加わる事で発砲時にハンマーを通して源石に込められたアーツエネルギーが暴発、炸裂する事で大きな威力を発揮する仕組みなのだろう。俺も一度は食らったが、角に当たって弾道が逸れたのは運が良かったとしか言いようがない。

 

源石弾丸は全部で13発、コレを狙って俺に渡したのなら、流石の悪趣味さと言った所だろうか。

 

 

バレットベルトの裏側に隠してあったメモには、『君の腕なら扱える筈だ』と青いインクで記されていた。試しに握って構えれば、成る程構造自体は単純だ。『銃』という武器は複雑な機構をアーツで制御して弾丸を撃ち込む物だと聞いていたが、この銃に限って言えばアーツを用いるのはほぼ反動の制御のみ。サンクタではない俺でも扱える。

 

 

「……にしては、威力過剰過ぎないか?」

 

 

尤も、人の胸に風穴を開けられる武器を使ってまで、殺したい相手などいる筈も無いのだが。

 

 

 

 

 






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追記:お気に入り登録1000件突破しました。読者の皆様、本当にありがとうございました。m(_ _)m
これからも精進して参りますので、どうか宜しくお願いします。



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