ケモミミだらけの異世界で顔の良い人に拾われた件について   作:疾風怒号

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(今回だけは最後まで読み通して欲しい…………、途中で切ると大きな誤解を招く描写があります、ご注意下さい)







16:衝突、或いは黒豹と雷竜

 

 

 

都合四発目の矢を、確かに反応の隙を突き、脳天に狙い違わず突き刺さる筈だった矢を弾き落とされた時には既にヴィーヴルの男はアーツの射程内に入り込み、フェリーンの傭兵_____シュヴァルツはいつでも撤退しうる準備を整えていた。

 

簡単とは言わないが、滞りなく終わる仕事だった筈だ。源石で駆動するヒーターを洞窟の丁度真上に置いて、それを選定の儀式が終わるまで守り通すだけの。

 

自分は傭兵、延いては射手であって間違ってもエンジニアではない、だからどういう理屈で機械が動き、それによってどのような影響が出るのかは知らない。傭兵は傭兵らしく与えられた仕事(エサ)を全うすれば良い話であるし、そもそも今回の仕事が終わればイェラグからは離れて元の傭兵団と合流する予定だった為に知る気も無かった。

 

だが、今なお雪原を走り抜けて接近してくるあの男は何だ? 全身に金色の稲妻を奔らせる得体の知れないヴィーヴル(トカゲ野郎)は何だ?

 

自分の矢がここまで完璧な形で避けられたのは、一端の傭兵として戦い始めてからこの方初めてだ。この吹雪の中で全てが見えているかのような反応速度、無駄の無い防御、標準を合わせるのにも一苦労するスピード、その全てが初めて見る物。名だたる傭兵の中にもここまでの猛者はそう居ないだろう。

 

 

興味。

 

 

そんな言葉が脳裏によぎった。気になる、気になって仕方が無い。盗める技術は全て盗んで生きてきた、そうでなければ明日にも死ぬような世界だったから。宝石商の娘でしかなかった私がここまで来れたのは貪欲に意地汚く多くの技術を盗み取ってきたからだ。

 

『欲しい』と、玩具屋のショーウィンドウを覗き込んだ子供のように思った。

 

吹雪の切れ間を狙って五発目の射撃。動きは既に観察し切った、並の相手ならば抵抗も近くも出来ずに脳髄をぶち撒けて死ぬ。嘗て『狙撃手として鍛え抜いてきた者とただの兵士では、その視界の広さ、明瞭さに天と地ほどの差がある』と教えられた。その言葉を信じるならば、男はこれで終わりだ。

 

しかし、男はその矢が初めから見えていたかのように淀みない動きで杖を手繰り、横合いから弾き飛ばす。それどころかそのまま杖を翳し、辺り一帯に電撃のアーツを撃ち放った。眩しさに思わず眼を覆い、視界が回復した時には平然とした態度で、ほんの十メートル程の距離に男が立っている。

 

 

「……っし、これで機械は全部壊れただろ」

 

 

聴き慣れないイェラグ特有のスラングを吐き捨てて、見覚えのある男は此方に杖を向け……いや、先に刃が付属したアレは、杖と言うよりも槍と呼んだ方がいいか。

 

 

「よう。三族会議以来だな、ウチのお嬢様に手を出そうなんざ良い度胸だ」

「…………」

 

 

男の言葉にあくまでも沈黙し、思考を巡らせる。目前の男は類稀な強者と見た。電撃を受けたヒーターは目立った外傷こそないものの、先程から嫌な音を立てて白煙を吐いている。恐らくまともには使えない上に、源石技術の導入自体が遅れているイェラグの事だ、よしんばこの男を撃退したとしてもスペアなど期待は出来ない。

 

よって、私はこの場から今すぐ退散するべきだ。既に準備は出来ている。戦った所で仕事は完遂出来ない上に、そもそもこの男と戦って勝てるかどうかは分からない。その上相手がよりにもよってシルバーアッシュ家の護衛であるなら、雇い主が喧嘩を売ったのは、没落寸前からどうにか持ち直したとは言え一応は同格の貴族そのものだ。逃げ帰った所で売られるか消されるかのどちらかだろう。

 

思考はあくまでも冷静だった。自らの情報を一つも溢さず、脳内でイェラグから逃げ果せる道筋を立てていく。そうしてその道筋が三パターンほど完成し、後は懐に忍ばせた閃光手榴弾で隙を作って逃げ出すだけとなったタイミングで…………

 

 

 

…………私の身体は思考を他所に、矢を番えて男に引き金を引いていた。

 

 

 

 

###

 

 

 

 

 

フェリーンの女が撃った矢を叩き落としてから十数分経つ。結論から言うと……この女、滅茶苦茶に強かった。何なら一発矢を肩に食らって今も突き刺さったままだ。抜けば出血が酷くなるだけなのでそのままにしている。

 

勿論女も無傷ではないし、今は雪の上に転がっている。何度か電撃の余波を受けているだろうし、腹を一回と顳顬(テンプル)を二回蹴り飛ばした。正直なところ殺すつもりでやったのだが恐ろしく頑丈で、効いてはいるのだろうが倒れる気配がまるで無かった物だから、これ以上長引いていれば追い込まれていたのは俺の方だった。

 

名前も知らないが、この女は学習能力と観察眼が異常だ。攻撃の瞬間だけは俺が辺りを探れない事に短時間で気付いている。だから俺はほぼ同時と見紛うほどのスピードで発射された二発の内、二発目の矢を肩に受けた。最後の矢は特別性だったようでべらぼうに痛い、螺旋状に付いた返しが動く度に肉を引き裂いていくのが分かる。

 

その上で徐々にスピードも上がっていた。初めは無駄だらけだった足運びが、徐々に雪を味方につけ始めて洗練されていく。これ以上戦うのはどう考えても得策ではなかった。

 

 

「……悪いな、姑息な事した自覚はあるよ」

 

 

ぐったりと倒れたままの女の敗因は二つだけ。足場に慣れたが故に『足場が雪である』という事を忘れてしまった事と、俺のアーツが二つある事を知らなかった事。情けない事この上無いが、炎を足元にぶち撒けて雪を溶かし、足を滑らせた所を杖で殴り付けただけだ。

 

口元に手を持っていくと、確かに息は途切れている。脈も弱い、後は死ぬだけだ。 時計を確認すれば選定の儀式が始まるまで時間が無い、間に合ってはいるが、あまり胸を張って成功したとは言えないだろうか。後はエンヤお嬢様から最も離れた場所に槍を突き刺し、アーツで雪の下に埋もれた氷を溶かしてやる、それで今回の仕事は終わりだ。選定は速やかに滞りなく終了し、きっと『お嬢様以外』の敬虔な信仰心を持つ少女が新たな巫女に選ばれる事だろう。

 

自分たちも傭兵を送り込んだ手前、貴族達も文句を付ける事は出来ない。手を下したのは俺だけ、エンヤお嬢様が動く必要も無い。

 

 

「我ながら完璧だ、痛てて………」

 

 

僅か数分後、選定の儀式は今までに前例が無いほど手早く終わる事になる。選ばれたのは何の変哲もない若い娘で、彼女は無事にカランド山に登り切り、晴れてカランドの巫女となった。洞穴の周りには"何故か"大量の死体が転がっていたが、結局何処の誰かなのは分からず仕舞いで、その話題は一週間程で新聞からは消え去る事になる。

 

一つ気掛かりな事があるとすれば、見つかった死体の数が『十二人』だったという事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エンシレントが洞窟の真上に移動してから暫く立ってから、新雪を突き破って一本の腕が突き出した。次は足、その次は腕、そしてぼこりと音を立てて身体が引き起こされ、雪まみれの顔を顰めた女が立ち上がる。

 

 

「まさか、あんな真似をしてくるとは…………」

 

 

未だに痛む顳顬と首を摩りながら、ぶるぶると頭を振って雪を払い、口から小さなゴミを吐き出した。雪に落ちたそれは、噛み砕かれた小さなカプセル。よく目にする市販のカプセル剤をもう少し大きくしたようなそれは、彼女が気絶する寸前に噛み砕いた『心拍数を一時的に抑える薬』だった。裏稼業一歩手前の傭兵のような物達にはそこそこ有名な物だ。

 

大抵の場合、傭兵は倒れた相手が即死だと思っていてもなんらかの形で確実に止めを刺す。殺し殺される関係にあった相手を万が一生かすような事が有れば、いつか自分にしっぺ返しが来ると知っているからだ。よってこの薬を口内に仕込むのはある種のお守り、酷い言い方をすれば気休めでしかない。

 

名前も知らないあの男が彼女に止めを刺さなかったのは、偶然でしかない。その結果として彼女は傭兵としての技術に更に一段磨きをかけ、数年後とある観光都市にやってくる製薬会社一行を苦戦させる事になるが、それはまた別の話………………。

 

 

「その顔、覚えましたよ。名も知らないヴィーヴルの方」

 

 

 

 

 

 

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「へくしッ!!!! 失礼、報告を続けます」

『何処かで噂されているようだな』

「からかわないで下さいよ……」

 

 

コッレーガさんの運転する車内でエンシオディスと通話を繋ぐ。後部座席には疲れ切った表情のエンヤお嬢様が眠っていて、少しだけ護衛の数が制限されていた事に感謝した。あのクソ寒い場所で正座してたんだから今ぐらいはゆっくり休んで欲しい。

 

 

「……という訳で、やっぱり十二人余計なのがいました。全員始末しましたが……、それで足が付くかどうかは分かりません。さっさと回収した方が良い気もしますが、それで難癖付けられても嫌ですし、放っておくのもアリかと」

『ふむ……』

 

 

画面の向こうで考え込む気配。犬歯で少しだけ唇を噛んで目頭を揉んでいる姿が頭に浮かぶ。

 

 

『分かった、此方で考えておこう。 ……儀式の結果はコッレーガから聞いた、良くやってくれたな』

「与えられた仕事をこなした迄です」

『謙遜はよせ、お前が防いでくれなければ私にはどうしようも無かったのだ、感謝しているとも』

 

 

よくもまぁ恥ずかしげも無くそんな事を言える物だ。普通に照れるからやめて欲しいんだが? なんて事を正直に言っても絶対やめないので、素直にお褒めに預かっておく。薄暗い車内でも頬が染まっているのがバレたのか、運転手がくすくすと笑った。

 

 

「しかしまぁ、前程ではないとは言えまた怪我か……」

「応急処置しかしていませんから、動かしたら駄目ですよ」

「分かってますって。 治ったら鍛え直すかなぁ…………」

 

 

謙遜とベタ褒めの応酬もそこそこに通話を切って包帯の巻かれた左肩を摩ると、コッレーガさんが尻尾で俺の頬を軽く叩いた。今の俺は上半身裸にジャケットを羽織っている状態だ。サポーターに近い働きをするMARTHE社製のインナー…………の試供品が矢のせいで破れたので、耐衝撃性検証のサンプルとして返さないといけないらしく、引っぺがされてしまった。

 

正直なところ、どうせ向こうで洗われるんだから脱がさなくても良いのでは?とか思ったりしたけど自分で思っていたより出血が酷かったので黙って従う事にする。普段はおどおどしているイメージがあるコッレーガさんも、怒ると結構怖い。

 

 

「鍛え直すのは賛成ですけど、怪我したら駄目ですよ」

「怪我しない為に鍛え直すんですって」

「それはそうですけど、エンシア様の事もありますし、本当に無理しないでくださいよ」

「…………何故そこでお嬢様の名前が?」

「来月カランドに登るんでしょう?」

「……あ、そうか。忘れてた」

「怒られますよエンシレントさん…………」

 

 

呆れ半分の目線を受け流して窓を覗くと、遠くに見慣れた邸宅の影が見える。これにて一先ず、二つある仕事の内一つは終了した。もう一つは、……というより先程まで忘れていたけど、残るはカランド山挑戦を終わらせれば心配事も無い。

 

 

 

 

 








戦闘シーンが書けない芸人こと疾風怒号です。エンシレントくんのタスクが三つ終了したので初投稿です。此処からは完全に開き直って捏造展開全ツッパしていくので悪しからず……、ご了承下さい。

それはそれとして次の危機契約が近付いてきましたね、今回こそ18等級を目指したいのに俺はウィーディとエリジウムの育成が終わっていません。皆さんはこうならないように普段から龍門ジンバブエドル幣を貯めておきましょうね!(二敗

それでは次回でお会いしましょう、疾風怒号でした!



追記

Wのスカートは第二昇進の姿だと透けているらしいです。非常にえっちですね。




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