YggdrasilⅡ ~ユグドラシルⅡ~ 作:名無しちゃん
「いやあ、なかなか迫力ありましたね。
リ・エスティーゼの中心に築かれた魔王城にモモンガの楽しそうな笑い声が響いた。
「まさに怪獣王の再現でしたね。あの冒険者の荷物にあった地図をもとに
ヘロヘロが笑う。新たなアインズ・ウール・ゴウンのギルド拠点にリ・エスティーゼ王国の首都が選ばれたのは単に『怪獣に壊される見映えの良い建物が有る』からだけだった。
「……しかし、拠点作成ツールやポイントが表示されないとは。仕様が変わりすぎですよ。全く運営は何をやっているんだか……」
モモンガは頭を抱える。
「ギルド拠点は新しく作れない仕様とかですかね? それに我々以外のテストプレイヤーも見かけませんよね? ゲーム時間で一週間以上になりますけどイベントらしいイベント告知も無いですし。運営仕事しろよ、って感じです」
ヘロヘロも文句を並べる。
「……未だにログアウト出来ないとか。事故ですよ。事故…………まあ、ユグドラシル始めた頃の『未知への冒険心』を思い出して楽しいは楽しいんですけど」
「なんかカンスト異業種の我々ってもしかしたら強くてニューゲーム状態だったりします?」
二人は顔を見合わせて笑った。
「とりあえずNPCの配置をどうしますかね? こちらは捨て拠点としての活用とするとして……ナザリックのPOPモンスターだけってわけにいかないですよね」
「雑魚過ぎますからね。やはり傭兵モンスターを用意するしかないですよ。モモンガさん、冒険者が持っていた金貨はどうでしたか?」
「ナザリックの頃の新金貨より質が悪いですね。傭兵システムに適用出来るか微妙ですよ。試してみないと駄目ですね」
「それじゃあ一旦別れて作業します? モモンガさんは傭兵モンスターやシステム変更をナザリックで試してもらって、私がこっちの拠点整備するってことで。こっちにはソリュシャンとデミウルゴス、コキュートスを残してもらえればいざという時に安全に逃げられると思います」
「わかりました。では早速──」
かくして二人はしばらく別れて作業する事になった。
◆
首都リ・エスティーゼの異様な佇まいに戦慄したガガーラン達は道を戻り、要塞都市エ・ランテルに向かった。途中で出会った王国避難民からラナー王女もエ・ランテルに向かったとの噂を聞いて道を急ぐ。
彼女達が辿り着いたエ・ランテルは不気味な静けさに包まれていた。
「……なんだかよ、マズイとこに来ちまった気がするんだけどよお?」
ガガーランが戦鎚を両手で構える。ティナとティアも殺気を発しながら得物を構える。
「……おいおいおい……マジかよ? どうなっているんだよ?」
エ・ランテルはゾンビが徘徊する街になっていた。
◆
ナザリックに戻り、傭兵システムに新たに入手した金貨を試していたモモンガの元にデミウルゴスからの〈メッセージ〉が届く。普段とは異なり明らかに動揺している様子のデミウルゴスにモモンガは不安を大きくする。
〈デミウルゴスよ。いったい何があった?〉
〈……それが……ヘロヘロ様の身に……なんというか……その…………とある事態が起こりまして……〉
〈……ヘロヘロさんに?〉
〈……はい。……ヘロヘロ様に……〉
デミウルゴスは逡巡しながらも意を決してモモンガに報告する。
〈…………ヘロヘロ様が卵をお産みになられまして……〉
〈────へ?〉
◆
ナザリック地下大墳墓 第九階層のとあるBARの扉を開けて一人の守護者が入ってきた。
「──これはこれはアルベド様。ようこそお見え下さいました。本日はいかなるご用でしょう?」
マスターの副料理長は姿勢をただす。ナザリックにおいてNPC間に尊卑は無い、とされてはいるが立場の差やレベルの差はいかんともしがたいものがあるのだった。
「……今夜はただの客に過ぎないわ。わたくしだって飲みたい時はあるのよ」
そう言いながらスツールに腰を降ろす。カウンターには既に先客がいた。
「──ふっ。わたくしもこれと同じものを頂戴」
アルベドは既に酔いつぶれている先客のグラスを指差す。
「お待たせ致しました。オリジナルカクテル『ナザリック』でございます」
アルベドの前に置かれたカクテルは様々な色が層になっていた。どうやらナザリック地下大墳墓の各階層をイメージに作られたようだ。
「…………綺麗」
アルベドはひと口飲むとホゥっと息をはいた。傍らで眠っているシャルティアを優しく眺めながら呟く。
「…………まさか貴女の気持ちがわかる日がくるなんて思いもしなかったわ」
アルベドはふと真剣な面持ちになり、副料理長に顔を向ける。
「……ねえ、今からわたくしが呟く事は『聞かなかった事』にしていただけますかしら? よろしくて?」
副料理長はブンブンと頷いてみせる。アルベドはうつむき両手で頭を抱えて小さな声で呟いた。
「…………こんな事が起こるなんて……まさかモモンガ様とヘロヘロ様の間にお子が産まれるなんて……至高のお方同士でそのような事が起こる可能性は思わなくもなかったけれど、同性でそんな事態が起きるとは……なにかの間違いとは思いたいけどあの卵の中には間違いなくアンデッドの反応が……嘘よ……いや、でも………」
ナザリックの夜は更けていくのだった。
モモンガ「…………なんじゃこりゃあ! ……ふう沈静化してしまったか……いやいや、どういう事? ヘロヘロさん」
ヘロヘロ「産まれてくる子供はきっと男ですよ。モモンガさん」
モモンガ「どうしてわかるんですか? ヘロヘロさん」
ヘロヘロ「これこそ『男の中の男』だからです。モモンガさん」
モモンガ「いやいやそれは無いですって。どうせ卵の形のウ●コですよ? ヘロヘロさん」
アルベド&シャルティア「悔しいがあきらめるしかないわ」ないでありんす」